テオ・アンゲロプロス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テオ・アンゲロプロス(ギリシャ語:Θόδωρος Αγγελόπουλος,英語:Theo Angelopoulos 1935年4月27日 - )は、ギリシャ・アテネ出身の映画監督。「テオ(Theo)」の部分は正確にはTheodorosであり、「テオドール」、または「テオドロス」と読める。長回し、360度パン、曇天での撮影の徹底など、頑ななまでに独自のスタイルを貫き、世界中から絶えず新作の公開が待たれる。
目次 |
[編集] 履歴
アテネ大学を卒業後、兵役を経て、パリのソルボンヌ大学に留学。のち退学。その後、パリ高等映画学院に入学するが、教師と対立し放校処分になる。1964年11月に軍部台頭で政情不安定なギリシャに帰国。左翼系日刊紙『ディモクラティキ・アラギ』で映画批評活動を始める。1965年には、ヴァンゲリス・パパタナシューのグループが主演する長編映画『フォルミンクス』に着手するが製作者と衝突して未完に終わる。1967年の軍事政権発足後、1968年に映画雑誌『同時代映画』を創刊。同年、短編映画『放送』を発表。1970年に長編第1作『再現』を完成する。
『1936年の日々』に続く「現代史三部作」の二番目の作品に当たる『旅芸人の記録』が世界的な評価を受け、現代史三部作の締めくくりである『狩人』でその評価を確実なものとする。現代史三部作は第二次世界大戦を挟んだギリシアの歴史を描いたものだが、トルコからの侵略、ナチスの侵攻、イギリスの進出と圧政、そして大戦後の左右両派による内戦と右派軍事独裁体制、という複雑な歴史を描き、共産主義を一つの理想と捉えたユートピア思想的なものだった。
その後、ギリシャ現代史に関する集大成的な作品と言える『アレクサンダー大王』を制作。だが、世界的な共産主義の退潮と独裁体制の崩壊に伴い「20世紀最大の理想の一つである共産主義」に別れを告げ、「国境」に視点を移す。『シテール島への船出』、『こうのとり、たちずさんで』、『ユリシーズの瞳』といった「国境三部作」は、それをテーマとする。『ユリシーズの瞳』においては、これまで一度もギリシャを出なかった舞台をバルカン半島全体に広げ新境地を開くかに思われた。だが、次作の『永遠と一日』においては、国境を題材の一つにしながらも舞台を再びギリシャに戻すと共に、これまでにない内省的な作品となった。
新しい三部作である、「20世紀三部作」の第1部『エレニの旅』においては、舞台をバルカン半島以外にも広げ、新たなる展開を示した。20世紀三部作は、当初『トリロジア』という題名の1本の長編となる予定であったが、上映時間が膨大になりすぎるため、三部作として製作されることとなったという[1]。
現在、第2部『THE DUST OF TIME (第三の翼)』の公開が控えており、舞台はついにヨーロッパを離れてニューヨークにまで発展する節が言及されている。
[編集] 作風
彼の場合、長大な長回しが話題にされる。彼の真骨頂は、思想を如何にして映画表現として実現するかと挑戦し続けていることにある。彼の特徴的な、長回し、同一シークエンス(カット)内における時間の転移、人物のストップモーション的な利用、360度パン、クローズアップの不使用、などは、彼のその挑戦と大きく結びつく。
『旅芸人の記録』以降、全ての作品で曇天(または降水時)での撮影が徹底されているのも特徴(ただし、『永遠と一日』では例外的に晴天での回想シーンが存在する)。また、『アレクサンダー大王』まで劇中歌以外の音楽がほとんど使用されていなかったが、『シテール島への船出』以降全ての作品でエレニ・カラインドロウが音楽を担当するようになっており、それまでの印象を変えるものとなった。
テーマ、表現手段(手法)共に峻厳である余り難解さや退屈さを指摘されることも少なくない。だが、映画に対する挑戦意識と到達した地点は、現存する中ではもっとも高い作家の一人である。
ギリシャでは、しばしば「子供が寝付かないで困るときはアンゲロプロスを見せろ」と言う。長回し、少ない台詞などに関して言われる冗談である。
[編集] 作品
- 放送 Εκπομπή (1968)
- 再現 Αναπαράσταση (1970) *1971年ジョルジュ・サドゥール賞受賞
- 1936年の日々 Μερες του '36 (1972) *1973年ベルリン国際映画祭国際批評家賞受賞
- 旅芸人の記録 Ο Θίασος (1975) *カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞
- 狩人 Οι Κυνηγοί (1977)
- アレクサンダー大王 Μεγαλέξανδρος (1980) *ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞
- シテール島への船出 Ταξίδι στα Κύθηρα (1984) *カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞
- 蜂の旅人 Ο Μελισσοκομοσ (1986)
- 霧の中の風景 Τοπίο στην ομίχλη (1988) *ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞
- こうのとり、たちずさんで Το Μετέωρο βήμα του πελαργού (1991)
- キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒 LUMIERE ET COMPAGNIE (1995)
- ユリシーズの瞳 Το Βλέμμα του Οδυσσέα (1995) *カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ受賞
- 永遠と一日 Μια αιωνιότητα και μια μέρα (1998) *カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞受賞
- エレニの旅 Τριλογία 1: Το Λιβάδι που δακρύζει (2004)
- テオ・オン・テオ THEO ON THEO (2004) ※ドキュメンタリー、出演
- それぞれのシネマ 〜カンヌ国際映画祭60回記念製作映画〜/3分間 Chacun son cinéma / Trois minutes (2007)
[編集] DVD
アンゲロプロス作品のほとんどはDVD-BOXという形態ではあるが、現時点で全ての長編作品を鑑賞することが可能である。BOXセットの内容は『テオ・オン・テオ』以外は全て単品未発売である。
- 『テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX I <現代史三部作>』 (『1936年の日々』『旅芸人の記録』『狩人』) 紀伊国屋書店 KKDS-130
- 『テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX II <国境三部作>』 (『シテール島への船出』『こうのとり、たちずさんで』『ユリシーズの瞳』) 紀伊国屋書店 KKDS-131
- 『テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX III <時空を超える旅>』 (『アレクサンダー大王』『蜂の旅人』『霧の中の風景』) 紀伊国屋書店 KKDS-132
- 『テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX IV <永遠の旅>』 (『永遠と一日』『再現』『放送』『テオ・オン・テオ』) 紀伊国屋書店 KKDS-133
- 『エレニの旅』 紀伊国屋書店 KKDS-261
- 『それぞれのシネマ 〜カンヌ国際映画祭60回記念製作映画〜』 角川エンタテイメント ACBF-10572
[編集] 脚注
[編集] 外部リンク
- オフィシャルサイト
- The Internet Movie Database:Theo Angelopoulos

