鶏肉

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羽をむしった鶏
生の鶏肉のプレート
鶏肉(broilers or fryers, leg, meat and skin, raw)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 897 kJ (214 kcal)
0.17 g
糖類 0 g
食物繊維 0 g
15.95 g
飽和脂肪酸 4.366 g
一価不飽和 6.619 g
多価不飽和 3.352 g
16.37 g
トリプトファン 0.171 g
トレオニン 0.729 g
イソロイシン 0.742 g
ロイシン 1.306 g
リシン 1.438 g
メチオニン 0.439 g
シスチン 0.189 g
フェニルアラニン 0.631 g
チロシン 0.574 g
バリン 0.768 g
アルギニン 1.136 g
ヒスチジン 0.466 g
アラニン 1.001 g
アスパラギン酸 1.544 g
グルタミン酸 2.55 g
グリシン 0.981 g
プロリン 0.761 g
セリン 0.663 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(4%)
28 µg
(0%)
0 µg
91 µg
チアミン (B1)
(6%)
0.073 mg
リボフラビン (B2)
(12%)
0.141 mg
ナイアシン (B3)
(32%)
4.733 mg
パントテン酸 (B5)
(20%)
0.994 mg
ビタミンB6
(24%)
0.318 mg
葉酸 (B9)
(1%)
4 µg
ビタミンB12
(23%)
0.56 µg
コリン
(8%)
41.6 mg
ビタミンC
(0%)
0.2 mg
ビタミンD
(0%)
2 IU
ビタミンE
(1%)
0.22 mg
ビタミンK
(2%)
2.3 µg
ミネラル
ナトリウム
(6%)
84 mg
カリウム
(4%)
203 mg
カルシウム
(1%)
9 mg
マグネシウム
(5%)
19 mg
リン
(22%)
155 mg
鉄分
(5%)
0.69 mg
亜鉛
(15%)
1.47 mg
マンガン
(1%)
0.016 mg
セレン
(26%)
18 µg
他の成分
水分 67.3 g
コレステロール 93 mg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
鶏肉アミノ酸スコア[1][2]
鶏肉(100g中)の主な脂肪酸の種類[3]
項目 分量(g)
脂肪 15.95
飽和脂肪酸 4.366
14:0(ミリスチン酸 0.099
16:0(パルミチン酸 3.325
18:0(ステアリン酸 0.844
一価不飽和脂肪酸 6.619
16:1(パルミトレイン酸 0.923
18:1(オレイン酸 5.543
20:1 0.095
多価不飽和脂肪酸 3.352
18:2(リノール酸 2.987
18:3(α-リノレン酸 0.155
20:4(未同定) 0.103

鶏肉(とりにく、けいにく, Chicken)とは、キジ科ニワトリ食肉を指す。

概要

鶏はもっとも代表的な家禽であり、単に鳥肉といえば鶏肉を指すことが多い。牛肉豚肉羊肉と並んで世界で日常的に食用にされる肉のひとつである。

中部地方の一部、関西地方九州地方では「かしわ(黄鶏)」とも呼ばれる。「かしわ」とは本来褐色の羽色の日本在来種のニワトリだが、それが鶏肉一般の名称に用いられるようになった(かしわめしかしわうどん)。

これに対して、香川県岡山県兵庫県播州地方では、老鶏(特に排卵を終えた雌鶏)の肉を「かしわ肉」と呼び、販売され、食されている。

一般社団法人・日本食鳥協会では、毎年10月29日を「国産とり肉の日」としている[4]。10(とお→とり)、2(に)9(く)→肉の韻から定めた。

鶏肉は牛肉、豚肉と異なり、食のタブーに触れることが少ない食肉であるため[5]、世界中で広く利用されている。ただし鳥葬が行われる地域では一般に鳥肉を食すことは避けられている。

常用漢字表では漢字の「鶏」は音読みが「ケイ」、訓読みが「にわとり」であるため、「鶏肉」を「とりにく」と読むのは表外読みであるが、新聞常用漢字表では2001年(平成13年)に「鶏」に「とり」という訓読みが追加されているため、マスメディアでは「鶏肉」を「とりにく」と読むこともある[6]

歴史

日本列島では弥生時代稲作農耕の開始とともに家畜が導入され、大陸からブタとともにニワトリが伝来している。古代には主に鳴き声により朝の到来を告げる「時告げ鳥」として利用され、廃鶏の利用として副次的に肉食が行われていたと考えられている。『日本書紀』によると、日本では天武天皇5年(675年4月17日のいわゆる肉食禁止令で、4月1日から9月30日までの間、稚魚の保護と五畜(ウシウマイヌニホンザル・ニワトリ)の肉食を禁止された。江戸時代後期には西日本を中心にニワトリ食の記録が見られ、主に水炊きによって食べられていたと考えられている。

アメリカ合衆国では元来、貴重品であったが[7]第二次世界大戦中に牛肉や豚肉が不足したため、鶏肉の消費量が増加した。栄養学抗生物質の研究の進歩により大量飼育が可能になり、生産コストが下がったのは1950年代で、ケンタッキーフライドチキンもほぼ同時期に全米に展開しはじめた。後に牛肉や豚肉に比べてコレステロールや脂肪分が少なく健康に良いといわれ、鶏肉の人気が上がった。ヨーロッパでは、BSEの影響で1996年に初めて鶏肉の消費量が牛肉や仔牛肉を上回った。

昔からアメリカとカナダでは、チキンスープを飲むと風邪が治るという言い伝えがある。近年、チキンスープの栄養には風邪の症状を和らげる作用があるという研究結果が発表された[8]

2017年には、日本ではそれまで消費量1位であった豚肉を抜き、鶏肉が消費量1位になった[9]

鶏の種類

軍鶏(しゃも)
天然記念物
烏骨鶏(うこっけい)
天然記念物。
ブロイラー
食肉用の若鶏で、大規模な鶏舎で育成される。
銘柄鳥
ブロイラーの飼育方法(飼料内容、出荷日令等)とは異なる工夫を加えたもの。
地鶏
一般的に地鶏という表示をするには品種・飼育期間等の条件がある。(名古屋コーチン、土佐地鶏、比内鶏薩摩地鶏

部位

胸肉

脂肪が少なく、全体的にパサパサした食感であり、敬遠されがちである。もも肉に比べると値段は安く、100gあたり40~60円前後で売られている。

ささみ

胸肉に近接した部位で、タンパク質の含有率が比較的高く、胸肉よりも脂肪が少ない。脂肪が豊富なもも肉に比べると、胸肉以上にパサパサした食感であり、風味は劣る。形が笹の葉に似ていることから付けられた名称。サラダ、和え物に良い。中央に固い筋があり、これを取り除いて販売されることもある。各部位の中でも比較的高値である。

もも肉

脂肪分が豊富で、様々な料理に用いられる。すね肉と一体で骨を付けたまま調理されることも多い。

すね肉

人間における膝下に相当する部位。ドラムスティック( Drumstick )と呼ばれ、骨付きのまま唐揚げや煮込み料理に用いられる。

手羽

翼の部分。以下の3つの名称がある。

手羽先
肉はほとんどなく、多くがゼラチン質と脂肪である。このため、主にから揚げ煮込み出汁に使用する。人間の肘から指先までの部分に該当する。手羽先から手羽中の部分を除いた先端部分は「手羽端」という。
手羽中
肉と共にゼラチン質部分が多い。肉を骨から一部離して裏返し、骨を手で持って食べやすくしたものを「チューリップ」と呼び、から揚げにする。これを開いたものが手羽中開きで、これ若しくは手羽中を串に刺したものをイカダ串と呼ぶ。さらに手羽中を二つ割にしたものをチキンリブまたはチキンスペアリブとも呼ぶ。人間の肘と手首の間の部分に該当する。
日本ハムはチキンリブ(手羽中の二つ割り)の唐揚げ(加工肉/総菜)を「チキチキボーン」の商品名で販売している[10]。また、山口県長門市深川養鶏農業協同組合[11]と宮崎県日南市(スーパー戸村)では、チキンリブ(手羽中の二つ割り)をスパイスで味付けした加工肉を「チキンヒーロー」の名前で販売しており、それぞれの地域でローカルフードとなっている。
手羽元
別名「ウィングスティック」( Wing Stick )。骨と肉と皮が程々にあるために正肉に近く、他の料理の具としたりから揚げや煮物にも適する。人間の肘と肩の間の部分に該当する。手羽元を使用したチューリップも存在する。

派生語

以下は、鶏肉の部位としては認められていないが、焼き鳥焼肉煮物ではこのように呼ばれる。

  • もつ、ホルモン、ジブレッツ内臓肉の総称
  • レバー肝臓
  • ハツ、ハート…心臓
    • ハツモト…心臓の根本、血管がつながる部分。
    • ハツヒモ…ハツモトにつながる血管の集まり
  • トリガツ…素嚢
  • センイ…(腺胃)
  • スナギモ(砂肝)…筋胃 (砂嚢)
    • エンガワ…砂肝の周りにある筋肉(中間筋)
  • シビレ胸腺。オタフクとも呼ばれる。
  • アズキ…脾臓。メギモとも呼ばれる。
  • セギモ…腎臓
  • シロ…空腸
  • シラコ(白子)…精巣
  • キンカン…未産卵
    • チョウチン…キンカンのついた卵管卵巣。タマヒモとも呼ばれる。
  • 皮、ひな皮…鶏皮
  • ぼんじり、三角、ぼんぼち(ぽんぽち)…尾
  • ツボ…尾腺(鳥類が羽に塗る脂を分泌する器官)
  • ヤゲン(軟骨)…ささみ肉の部位にある剣状突起の軟骨
  • ひざ軟骨…膝の関節にある軟骨(一般的にから揚げに使われる部位)
  • はらみ…腹筋 肉だが農林水産省の食取引規格でもつ扱いされている。
  • ネック…首・頚部筋。セセリ、コニク(小肉)とも呼ばれる。
  • サエズリ…食道・気道。ジューシーセセリ、ノドブエとも呼ばれる。
  • エボシ(烏帽子)…とさか
  • モミジ…足先。呼び名は形状に由来する。

チキンオイスター英語版という部分がももの付け根の近く(腸骨の背側のくぼみ)にあり、フランス語ではソリレス(sot-l'y-laisse、「愚か者だけが残す」)という名称で呼ばれている[12]

また、肉・内臓を取り去った残り(大部分は骨)を鶏がらと呼ぶ。

鶏がらやモミジは中華料理西洋料理ラーメン等の出汁を取るのに使われる。モミジは中華料理では「鳳爪」(繁体字: 鳳爪簡体字: 凤爪広東語:フォンジャーウ)(en)と称して、揚げて煮込み、皮と軟骨を食べる料理にも加工される。日本では大分県日田市周辺の郷土料理(もみじ (郷土料理))となっている。

細菌による食中毒

腸管に常在菌として存在しているカンピロバクター( Campylobacter )、サルモネラ( Salmonella )、アルコバクター( Arcobacter ) や、屠畜過程で大腸菌ブドウ球菌により汚染される場合があり、新鮮な肉でも高い率で食中毒原因菌に汚染されており[13]、食中毒を惹き起こすことがある[14][15] が、刺身たたきユッケに使われることもある。

日本でのカンピロバクターによる食中毒患者の報告数は、2003年以降は年間2000人を越えており、重要な食中毒菌となっている[13]。なお、人間以外のライオントラといった肉食動物が生肉を食べても食中毒にならないのは、カンピロバクターに対する強い耐性を持っているためである。

鹿児島県宮崎県大分県の一部では、鶏刺しが郷土料理として食べられているが、岩屋あまね[16]によると、過去のデータからは鹿児島県民によるカンピロバクターによる食中毒は多くなく、「発生しているのは全て他県からの住民である」という報告例がある[17]。その報告例には鶏刺しが原因と疑われているカンピロバクター食中毒で、同じものを食べた5人のうち3人が発症し、その3人はそれぞれ福岡、長崎、熊本出身、残りの2人は鹿児島、宮崎の出身で、鹿児島の学生は便からもカンピロバクターが検出されたが、一切の症状が出なかったとある[17]。「免疫が持っていたので発症しなかったのか、腸内フローラの問題かどうかはわかりませんが興味ある事例」であるとしている[17]

料理

養鶏が盛んな地域では特有の地鶏品種が存在することが多く、鶏料理も盛んである。

鶏料理の種類

豚肉料理や牛肉料理に替わる素材にもなる(揚げ物)。挽肉にしたり、つくね料理の具材にもなる。

脚注

  1. ^ http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/search/
  2. ^ [『タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告』日本アミノ酸学会監訳、医歯薬出版、2009年05月。ISBN 978-4263705681 邦訳元 Protein and amino acid requirements in human nutrition, Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007]
  3. ^ http://ndb.nal.usda.gov/
  4. ^ 10月29日(木)は「国産とり肉の日」。「国産チキンまつり」、全国で展開中。『産経新聞』2015年10月28日
  5. ^ 食のタブーが厳しいことで知られるユダヤ教イスラム教でも鶏肉を食べることは禁止されていない。
  6. ^ 「鶏肉」はケイニク? トリニク? - NHK放送文化研究所、2006年11月1日
  7. ^ 『クルーグマン ミクロ経済学(第2版)』. 東洋経済新報社. (2017). p. 357. "現代のアメリカ人はチキンをたくさん食べていて、それを特別なものだなんて全く思っていない。だが昔は必ずしもそうでなかった。旧来、鶏を育てるのは高くつくことだったので、チキンは贅沢な料理だった。2世紀前のレストランのメニューでは、チキン料理は一番高かった。1928年になってすら、ハーバート・フーバーは当選後には大きな繁栄を有権者に約束する公約として「すべての鍋にチキンを」というスローガンを掲げて大統領選挙を戦ったのだ。チキンの地位が変わったのは、鶏を育てて加工するための技術的に進歩した新しい方法(それがどんなものかは知りたくはない!)が開発されたからであった。" 
  8. ^ Rennard BO, Ertl RF, Gossman GL, Robbins RA, Rennard SI (October 2000). “Chicken soup inhibits neutrophil chemotaxis in vitro”. Chest 118 (4): 1150-7. doi:10.1378/chest.118.4.1150. PMID 11035691. https://doi.org/10.1378/chest.118.4.1150. 
  9. ^ 鶏肉が食肉消費の主役に”. 2018年9月13日閲覧。
  10. ^ あのチキチキボーンが好きなだけ自作できる「チキチキボーンの素からあげ粉」を使ってみました”. Gigazine (2013年8月26日). 2019年8月16日閲覧。
  11. ^ 岡山駅前商店街に山口の料理店「としちゃん」 かまぼこ、けんちょう煮など提供”. 岡山経済新聞 (2018年4月25日). 2019年8月16日閲覧。
  12. ^ スチュワート・アレン『愛の林檎と燻製の猿と―禁じられた食べものたち』集英社、2003年、ISBN 978-4087733990
  13. ^ a b カンピロバクター食中毒の現状と対策について 国立感染症研究所 感染症情報センター
  14. ^ 市販鶏ひき肉中の ArcobacterCampylobacterSalmonella 汚染状況日本家政学会誌 Vol.62 (2011) No.11 p.721-725
  15. ^ 東京都食品安全情報評価委員会 (2004年7月9日). “カンピロバクター食中毒を低減させるために”. 2006年11月29日閲覧。実験により、調理の際「中心部まで肉の色が変化していることを確認すれば、ほぼカンピロバクターが不活化する温度に達していると推測できる」と結論付けている。
  16. ^ 2007年当時、鹿児島県加世田保健所に所属
  17. ^ a b c 西村雅宏 (2007年7月15日). “VOL.147 食生活がカンピロバクター食中毒を防ぐ”. メールマガジン「食中毒2001」. 2007年8月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月14日閲覧。

関連項目