不登校 (理由別長期欠席者数)

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統計用語理由別長期欠席者数」における不登校(ふとうこう)とは、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒登校しない、あるいはしたくともできない状況にある(ただし、「病気」や「経済的な理由」による者を除く。)の[1]のことである。

なお、不登校児童生徒(ふとうこう・じどう・せいと)とは、「理由別長期欠席者数」の「不登校」の項目に計上される対象となる児童自身・生徒自身のことである。「統計法」(昭和22年法律第18号)に基づく「学校基本調査」(指定統計第13号)においては、「小学校」「中学校」「中等教育学校前期課程」に在籍する者のみが調査の対象であるので、これらの学校に在籍し、かつ、「理由別長期欠席者数」における「不登校」に計上される対象者群を指すことが多い。

この定義による「不登校」とは、広義の不登校者のうちの長期欠席者のうちの、さらに一部をさす最狭義のものである。こういった用法が生まれた経緯は「長期欠席」を参照。

概要[編集]

「学校基本調査」においては、「小学校」「中学校」「中等教育学校の前期課程」に在籍し、長期欠席(原則として、欠席日数が年間30日以上)であり、「欠席状態が長期に継続している理由が、学校生活上の影響あそび非行無気力不安、など情緒的混乱、意図的な拒否、および、これらの複合等であるもの(ただし、「病気」や「経済的な理由」による者を除く。)」[1]が「不登校」の項目に算出される。

「理由別長期欠席者数」(「病気」「経済的理由」「不登校」「その他」で構成)における計上方法は、次の通りである。(詳しくは、「理由別長期欠席者数」の項目を参照のこと。)

  1. 「病気」「経済的理由」のいずれかのみに該当するものは、それぞれ「病気」「経済的理由」に計上する。
  2. 「不登校」のみに該当するものは、「不登校」として計上する。
  3. 「病気」「経済的理由」「不登校」のいずれかのみに該当しないものは、「その他」に計上する。

なお、「統計法」に基づく「学校基本調査」(指定統計第13号)においては、「小学校」、「中学校」、「中等教育学校の前期課程」に在籍する者のみが調査の対象であり、「幼稚園」「高等学校」「中等教育学校後期課程」「大学短期大学および大学院を含む)」「高等専門学校」「専修学校」「各種学校」に在籍する者について、算出されない。しかし、平成16年度より、文部科学省は、「学校基本調査」とは別に、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査届出統計)」を行い、その中で、「学校基本調査」の「不登校」の項目と同一の内容で「高等学校における不登校生徒数」も算出している[2]

なお、「学校基本調査」において「不登校」の項目は、1998年(平成10年)から使われ始めたものであり、それまでは「学校ぎらい」という語が1966年度から使われていた(それ以前は「その他」に含まれていた)。「学校ぎらい」の定義は「心理的な理由などから登校をきらって長期欠席した者の数」であったが、「不登校」への変更時に「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、「病気」や「経済的な理由」による者を除く)」と軽い変更がなされた[3]。ただし年次統計表などでは「不登校」と「学校ぎらい」は同じ区分となっており、内容的にはほぼ同等である。なお、この統計において「登校拒否」の語が分類項目として使われた時期はない。

年間通算30日以上の欠席を基準としたのは1991年以降であり、それまでは年間通算50日以上の欠席を基準としていた。なお、1998年までは50日の方も並行して統計が取られている。

なお、理由別長期欠席者数の統計全体では、「病気」の項目が年度によって大きく異なっているという疑問点がある。通常、病気を患う人の数は年度によってあまり増減することはないはずであり、これは人為的な何らかの意識が働いたためである可能性が高い。「病気」が多い年度では「不登校」が少ないといった傾向があるため、時期によっては、本来「不登校」に入れるべき例を「病気」に入れていた例が多かったり、その逆であったりすることが考えられる。

「不登校」の隣接概念
処理 出欠 状態 原因
欠席 一過性の欠席(短期欠席) 一時的 風邪・災害・ほか様々
長期欠席 病気 医学的問題(療養・疾患・障害)
経済的理由 経済的問題
不登校
※具体例は後述
その他 ※具体例は後述
停学・休学 欠席 強制または任意 懲戒、留学など
出席停止 欠席とも出席ともみなされない。 伝染病・教育妨害 疾患・性行不良

具体例[編集]

「不登校」と計上される具体例[編集]

不登校の具体例としては、次のものが掲げられている。[1]

学校生活上の影響 いやがらせをする生徒の存在や、教師との人間関係等、明らかにそれと理解できる学校生活上の影響から登校しない(できない)。
あそび非行 遊ぶためや非行グループに入ったりして登校しない。
無気力 無気力で何となく登校しない。登校しないことへの罪悪感が少なく、迎えに行ったり強く催促すると登校するが長続きしない。
不安など情緒的混乱 登校の意志はあるが身体の不調を訴え登校できない。漠然とした不安を訴え登校しない等、不安を中心とした情緒的な混乱によって登校しない(できない)。
意図的な拒否 学校に行く意義を認めず、自分の好きな方向を選んで登校しない。
複合 不登校状態が継続している理由が上記具体例と複合していていずれが主であるかを決めがたい。

「不登校」ではなく「その他」と計上される具体例[編集]

次に掲げる場合には、「不登校」ではなくて「その他」に計上される。[1]

原則:「病気」「経済的理由」「不登校」のいずれにも該当しない理由により「長期欠席」した者の数[1]

  • 保護者教育に関する考え方、無理解・無関心、家族介護家事手伝いなどの家庭の事情から長期欠席している者
  • 日本国外での長期滞在、日本国内・日本国外への旅行等のため、長期欠席している者
  • 連絡先が不明なまま長期欠席している者(1年間にわたり居所不明であった者を除く。)
  • 欠席理由が2つ以上あり(例えば「病気」と「不登校」など)、主たる理由を特定できない者

学校基本調査において不登校に区分される児童自身・生徒自身に関する法令運用[編集]

課程の履修および修了[編集]

学校基本調査において、長期欠席に関する調査が行われるのは、「小学校」「中学校」「中等教育学校の前期課程」に在籍する者に限られている。

日本の初等教育の課程(小学校など)と前期中等教育の課程(中学校など)は、単位制を併用しない完全な学年制である。法令においても、「学校において、各学年の課程の修了又は卒業を認めるに当たつては、児童・生徒の平素の成績を評価して、これを定めなければならない。」(学校教育法施行規則第57条など)と定められている。しかし、日本のこれらの課程では、年齢主義の考え方を受けて、例え丸一年学校を欠席しても学年を修了し、自動的に次学年に進級する場合も多い。そのため、卒業した児童・生徒が、例えば科目等履修生となって未学習の部分を学習するという制度はない。

このため、教育制度上、初等教育の課程、および、前期中等教育の課程における長期欠席者に対しては、学習権または教育を受ける権利の保証のため、各種の諸策が講じられなければならないと考えられている。中でも「不登校児童生徒」については、その原因が明確でないにもかかわらず、就学者のうち、一定の比率を占めているので、相当に考慮されなければならないと考えられている。

そのため、不登校児童生徒に該当する在籍者が、要件を満たすフリースクールなどへ登校することや、ITを活用した自宅学習をすることが、文部科学省の通知[4][5]で、指導要録において出席日数に組み入れることができることなどの措置がある。

幼稚園」「高等学校」「中等教育学校の後期課程」「大学短期大学および大学院を含む)」「高等専門学校」「専修学校」「各種学校」においては、義務教育を実施する課程がないためか、学校基本調査における長期欠席者数そのものに関する調査がなく、理由が「不登校」である長期欠席者数も算出されない。

特別支援学校においても、個人の特性(障害等も含む)に応じた教育が行われており、「小学校」「中学校」「中等教育学校の前期課程」と大きく制度が異なるため、学校基本調査における長期欠席者数そのものに関する調査がなく、理由が「不登校」である長期欠席者数も算出されない。

就学義務との関係[編集]

日本国憲法の第26条第2項に「すべて国民は、法律[6]の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」(後略)と定められており、具体的に学校教育法により、保護者は、原則として学校に子を9年間「就学」させる義務(就学義務[7]を負っている。

学校教育法に基づく義務の催促については、学校教育法施行令に定められており[8]市(特別区を含む)町村の教育委員会に義務の督促を受け、なお履行しない保護者は、学校教育法の第144条に基づいて10万円以下の罰金に処せられる。

ただし、「不登校児童生徒」について、保護者が学校に就学させる「義務の催促」をいきなり受けることはない。これは、「不登校」については、 (1) 何よりもこどもの意思を尊重しなければならないこと、(2) 学校側の責任も含まれる場合があること、 (3) 健全な心身の発達をめざすにあたって必ずしも学校が有効に機能しない場合もありえること、などを理由としている。このため、学校などは、より良い教育環境を整備する責務を負っている。なお、就学義務違反に対する罰則については、過去に有罪判決も出ており、こどもの学ぶ権利を保障するしくみとして、現在も機能している。

少年補導との関係[編集]

「正当な理由がなく、学校を休み、又は早退等をする行為」を行っている少年(20歳未満のすべての者、女性を含む) は、「怠学」という不良行為を行っているとして少年法に基づいて定められている少年警察活動規則に規定する不良行為少年に該当し、少年補導の対象となる。しかし、「正当な理由」の範囲については、明確な基準がなく、補導の対象場所をゲームセンターなどに限定しているため、通例「不登校児童生徒」であるだけで少年補導することはまずない。(もちろん、ゲームセンターなどでたむろしている少年を補導したところ、たまたまその少年が「不登校児童生徒」に該当したという例はありうる。)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/06020203/012/002.pdf 平成20年度 学校基本調査の手引
  2. ^ http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/11/08111707/004.pdf 「(4-1) 高等学校における理由別長期欠席者数」の「(注2)」を参照
  3. ^ [不登校]折原茂樹ほか「教育に関する調査統計の読み方」考
  4. ^ http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/021.htm 不登校への対応の在り方について(15文科初第255号 平成15年5月16日)
    後半の「不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」を参照
  5. ^ http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/06041201.htm 不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について(17文科初第437号 平成17年7月6日)
  6. ^ 教育基本法第5条、学校教育法の「第2章義務教育」
  7. ^ 学校教育法
    第17条 保護者は、子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満12歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学 校の小学部に就学させる義務を負う。ただし、子が、満12歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないとき は、満15歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間において当該課程を修了したときは、その修了した日の属する学年の終わり)までとする。

    2 保護者は、子が小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。

    3 前2項の義務の履行の督促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は、政令で定める。
  8. ^ 学校教育法施行令
    (校長の義務)
    第19条 小学校、中学校、中等教育学校及び特別支援学校の校長は、常に、その学校に在学する学齢児童又は学齢生徒の出席状況を明らかにしておかなければならない。

    第20条 小学校、中学校、中等教育学校及び特別支援学校の校長は、当該学校に在学する学齢児童又は学齢生徒が、休業日を除き引き続き七日間出席せず、その他その 出席状況が良好でない場合において、その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を当該学齢児童又は学齢 生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知しなければならない。

    (教育委員会の行う出席の督促等)
    第21条 市町村の教育委員会は、前条の通知を受けたときその他当該市町村に住所を有する学齢児童又は学齢生徒の保護者が法第17条第1項又は第2項に規定する義務を怠つていると認められるときは、その保護者に対して、当該学齢児童又は学齢生徒の出席を督促しなければならない。