鷲田清一

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鷲田 清一
(わしだ きよかず)
人物情報
生誕 (1949-09-02) 1949年9月2日(74歳)
日本の旗 日本
京都府京都市
居住 京都市北区[1]
出身校 京都大学
子供 長男:鷲田めるろキュレーター
二男:安達もじり演出家
学問
研究分野 臨床哲学
倫理学
研究機関 関西大学
大阪大学
大谷大学
京都市立芸術大学
学位 文学修士(京都大学・1974年)
称号 大阪大学名誉教授(2011年)
京都市立芸術大学名誉教授(2019年)
主要な作品 『モードの迷宮』
『顔の現象学』
『「聴く」ことの力』
『「ぐずぐず」の理由』
『しんがりの思想 反リーダーシップ論』
影響を受けた人物 フッサール
メルロ=ポンティ
影響を与えた人物 檜垣立哉
小西真理子
学会 日本倫理学会(第29期・第30期会長)
主な受賞歴 サントリー学芸賞(1989年)
桑原武夫学芸賞(2000年)
読売文学賞(2011年)
紫綬褒章(2004年)
京都市文化功労者(2019年)
京都府文化賞特別功労賞(2022年)
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鷲田 清一(わしだ きよかず、1949年9月2日 - )は、日本哲学者臨床哲学倫理学[2]評論家大阪大学名誉教授京都市立芸術大学名誉教授。せんだいメディアテーク館長[3]サントリー文化財団副理事長[4]京都コンサートホール館長。関西大学文学部教授、大阪大学総長京都市立芸術大学理事長・学長などを歴任した[3]

京都大学文学部哲学科を卒業し、京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学フッサールや、メルロ=ポンティといった現象学身体論の視点から、他者、所有、規範、制度などの諸問題を論じる。

ファッションと自己の相関を考察した『モードの迷宮』(1987年)、『顔の現象学』(1998年)などにより、独自の研究領域を開拓した。また、医療や教育の現場に哲学の思考をつなぐ「臨床哲学」を提唱し、『「聴く」ことの力』(1999年)、『くじけそうな時の臨床哲学クリニック』(2001年)などを著す。臨床哲学とは、いたずらに学説を援用するのではなく、身体のある場所から哲学を始める方法である。哲学の発想を社会が抱えている諸問題につなげることによって、哲学が社会に対してできることを探求している。

フランス発祥の哲学カフェを1990年代、日本に初めて持ち込んだ[5]

来歴[編集]

1949年京都府京都市で生まれた[2]。京都市立醒泉小学校を経て、京都学芸大学附属中学校に進学し、京都教育大学教育学部附属高等学校の一期生となった[6][7][8]京都大学文学部哲学科を卒業後、京都大学大学院文学研究科に進み、博士課程を単位取得退学した[2]関西大学文学部で教鞭を執り、教授などを務めた。その後、大阪大学に移り、大学院文学研究科の研究科長や文学部長などを歴任した[2]。さらに、大阪大学の副学長、および、その設置者である「国立大学法人大阪大学」の理事を経て、大阪大学の総長に就任した[2]2011年、大阪大学総長を退任、名誉教授となる[2]。同年9月に大谷大学に転じ、文学部哲学科の教授を務めている(現在は客員教授)[9]2015年4月より2019年3月まで京都市立芸術大学理事長・学長。2019年4月、京都市立芸術大学名誉教授。

活動[編集]

専攻は臨床哲学・倫理学。現象学や身体論を専門としており、ファッションを研究している。また、サントリー学芸賞桑原武夫学芸賞読売文学賞評論・伝記賞[10]など各賞を受賞している。かつては大佛次郎賞サントリー学芸賞(思想・歴史部門)、和辻哲郎文化賞(学術部門)、河合隼雄学芸賞選考委員[11]などを務めていた。また、教育出版の高等学校用倫理教科書の著者であり、全128ページのうち82ページを現代社会の諸問題に割く教科書を作っている。

主張[編集]

「身体」を「からだ」と読む(捉える)鷲田は、「身体」は自分がどのように経験するかという視点から見たとき、「身体」は、「像(イメージ)」でしかありえないと指摘している。「身体」のなかで自分がじかに見たり触れたりして確認できるのは、手や足といったつねにその断片でしかなく、のような「身体」の内部はもちろんのこと、背中や後頭部さえじかに見ることはできない。そして自分の感情が露出してしまう顔もじかにみることはできない。「身体」を知覚するための情報は実に乏しく、自分の「身体」の全体像は、離れてみればこう見えるだろうという想像に頼るしかない。つまり、自分の「身体」は、「像(イメージ)」でしかありえないことになる[12]

受賞[編集]

栄典
  • 2004年:紫綬褒章受章[3]
  • 2019年:京都市文化功労者表彰[13]
  • 2022年:京都府文化賞特別功労賞受賞
社会的活動

人物[編集]

家族・親族
長男の鷲田めるろキュレーターで、哲学者のメルロ=ポンティに因んで名づけられた[14]。次男の安達もじり(母方の姓を名乗っている)はテレビドラマ演出家で、画家のアメデオ・モディリアーニに因んで名づけられた[15]

年譜[編集]

<主な出典:[6][7][8][16]

  • 1962年3月 京都市立醒泉小学校卒業。
  • 1965年3月 京都学芸大学附属中学校卒業。
  • 1968年3月 京都教育大学教育学部附属高等学校卒業。
  • 1972年3月 京都大学文学部哲学科卒業。
  • 1974年3月 同大学大学院文学研究科修士課程哲学専攻修了。
  • 1977年3月 同大学大学院文学研究科博士課程哲学専攻単位取得退学。
  • 1978年4月 関西大学文学部哲学科講師
  • 1981年4月 同大学文学部助教授
  • 1988年4月 同大学文学部教授。
  • 1992年4月 大阪大学文学部助教授
  • 1996年4月 同大学文学部教授。
  • 1999年4月 同大学大学院文学研究科教授。
  • 2003年8月 同大学大学院文学研究科長・文学部長。
  • 2004年4月 同大学理事・副学長。
  • 2007年8月 第16代大阪大学総長[17]
  • 2011年
    • 8月 大阪大学総長退任(任期満了)、同大学を退職。
    • 9月 大谷大学文学部哲学科教授、大阪大学名誉教授。
  • 2013年4月 せんだいメディアテーク館長[18](現任中[注釈 1])。
  • 2015年
  • 2019年
    • 3月 京都市立芸術大学理事長・学長を退任[20]
    • 4月 京都市立芸術大学名誉教授[21]
  • 2024年
    • 4月 京都コンサートホール館長に就任。

著書[編集]

単著[編集]

編著[編集]

共著[編集]

共編[編集]

翻訳[編集]

共訳[編集]

関連書[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 2023年3月時点。

出典[編集]

  1. ^ “行き過ぎた「所有」越える「当主」思想 哲学者、鷲田清一さん”. 産経新聞. (2023年1月27日). https://www.sankei.com/article/20230127-ELYZ3IEHZFPDZOW6FITGAMFLXU/ 
  2. ^ a b c d e f 鷲田清一『哲学の使い方』岩波書店、2014年9月、著者紹介(奥付)頁。ISBN 978-4-00-431500-1 
  3. ^ a b c d e f 大学概要”. 京都市立芸術大学. 2017年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年5月28日閲覧。
  4. ^ 評議員・役員(2023.7現在)サントリー文化財団ホームページ
  5. ^ [特集ワイド]鷲田清一さんと「哲学カフェ」 「わからなさ」に耐えよ/「多様性」が生む「分断」 考えること あきらめない毎日新聞』夕刊2024年2月21日2面(同日閲覧)
  6. ^ a b 鷲田清一『二枚腰のすすめ 鷲田清一の人生案内』世界思想社、2020年6月30日。 
  7. ^ a b 文化芸術情報誌 えるふ vol.30 Spring 2023”. 公益財団法人ちゅうでん教育振興財団. 2024年2月19日閲覧。
  8. ^ a b 文化芸術情報誌 えるふ vol.31 Summer 2023”. 公益財団法人ちゅうでん教育振興財団. 2024年2月19日閲覧。
  9. ^ 「経歴」『鷲田 清一 【哲学 倫理学】|教員一覧|大谷大学(2015年2月10日時点のアーカイブ)』
  10. ^ 【新書】『語りきれないこと』鷲田清一著 MSN産経ニュース(2012年3月18日)同日時点のアーカイブ
  11. ^ 河合隼雄学芸賞|一般財団法人 河合隼雄財団”. 一般財団法人 河合隼雄財団. 2017年5月28日閲覧。
  12. ^ 鷲田清一『ことばはちからダ!現代文キーワード』(河合出版)pp.126-135「身体」
  13. ^ 京都市文化功労者表彰”. 京都市. 2022年9月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月29日閲覧。
  14. ^ 「[ひと模様]21世紀美術館で長年キュレーター 鷲田めるろさん 44 石川」『読売新聞』、2018年6月17日、27面。
  15. ^ 「[みすゞの世紀]14 県民の「映画作り」密着 山口」『毎日新聞』、2001年6月1日、20面。
  16. ^ 「鷲田清一名誉教授 略歴」『メタフュシカ』第42号、大阪大学大学院文学研究科哲学講座、2011年12月、5頁、doi:10.18910/23310 
  17. ^ 京大卒業後の略歴は、『阪大NOW』NO.97 2007 6月号(編集・発行:大阪大学総務部評価・広報課、2007年6月20日)3頁。
  18. ^ 「トピックス」『無盡燈』第138号、大谷大学同窓会本部、2013年9月、7頁。 "本学哲学科の鷲田清一教授が、宮城県仙台市にある「せんだいメディアテーク」の新館長に4月1日付で就任されました"
  19. ^ 「人事」『無盡燈』第140号、大谷大学同窓会本部、2015年9月、9-10頁。 
  20. ^ “京都市立芸術大次期学長に赤松氏 鷲田氏は1期で退任”. 京都新聞デジタル版. (2018年12月11日). オリジナルの2018年12月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20181211231213/https://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20181211000201 
  21. ^ 京都市立芸術大学名誉教授一覧” (PDF). 京都市立芸術大学 芸術資源研究センター. 2022年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月29日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]