山室信一

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山室 信一
(やまむろ しんいち)
人物情報
生誕 (1951-08-23) 1951年8月23日(66歳)[1]
熊本県熊本市
学問
学派 東京大学法学部第一類卒業
研究分野 政治学[1]、近代法政思想史[2]
研究機関 衆議院法制局
東京大学社会科学研究所
東北大学
京都大学人文科学研究所
主要な作品法制官僚の時代』(毎日出版文化賞)
キメラ』(吉野作造賞)
思想課題としてのアジア』(アジア・太平洋賞特別賞)
憲法9条の思想水脈』(司馬遼太郎賞)
学会 日本政治学会[1]
主な受賞歴 毎日出版文化賞(1985年)
長谷川如是閑賞(1985年)
吉野作造賞(1993年)
アジア・太平洋賞特別賞(2002年)
司馬遼太郎賞(2008年)[1]
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山室 信一(やまむろ しんいち、1951年(昭和26年)8月23日 - )は、日本歴史学者政治学者。専門は近代日本政治史、近代法政思想連鎖史。京都大学人文科学研究所名誉教授。

概要[編集]

最初の著作『法制官僚の時代』で、「模範国」と「準拠理論」という概念を提示して近代日本における国民国家形成と学知の導入の密接な関連性を明らかにして以降、落語や講談などの大衆演芸と法政思想との関連にも光りを当てるなど従来の見解にとらわれない歴史像の展開を試みてきている。

その視点は満洲国を始めとする帝国と植民地とを「異法域結合」の統治空間として統合的に捉える「国民帝国」論の唱導へと広がり、そこでもまた「統治様式の遷移」・「統治人材の周流」、「統合化原理」・「差異化原理」の相反ベクトルなどの分析軸を提唱している。さらに、アジアという空間を思想課題としていかに捉えるかという問題意識の下に、「基軸」・「連鎖」・「投企」という作業仮説を設定して独自の空間学を創り出そうとしており、その体系化に向けて「空間形成」や「空間心性」を主題とした研究を進めている。

山室の研究スタイルは、地を這うような史料の博捜の中から独自の分析概念を案出し、新たな知見の地平を切り拓くという学問的な営為を一貫して維持し続けている点にある。こうした一見すれば地味な作業は、欧米から受容した枠組みや理論を当てはめることが優先される日本の学界や出版界では、必ずしも受け入れられてはいないように見受けられる(ただし、著作の殆どが授賞の対象となっている)。しかし、韓国・中国・台湾などではその成果が注目され、韓国では主要著作・論文の殆どが翻訳出版されている(840頁近い『思想課題としてのアジア』のハングル訳は14年の歳月をかけて刊行が予告されている)。台湾でも国民帝国論や思想連鎖論をテーマとした国際シンポジウムが中央研究院や台湾大学などで開催されており、東アジア各国での講演や集中講義も毎年行われている。

なお、『キメラー満洲国の肖像』簡体字版の刊行に次いで、『憲法9条の思想水脈』も繁体字による中文訳刊行が予定されている。ハングル・中文・英訳版を含め、満洲国に関しての研究において、山室の業績は世界的に見ても共通の前提となって議論が進められている。

また、憲法9条や「安全保障法制」をめぐる雑誌論文がハングルや中文に訳されている。

さらに、近年の第一次世界大戦に関する研究では日本の係わり方を2つの実戦と3つの外交戦の複合戦争として捉える見方を示し、その成果は英語・フランス語・ドイツ語・ハングルなどによって翻訳・刊行されている。

このような幅広い関心をもった研究スタイルを持続できている背景には、京都大学人文科学研究所の共同研究による切磋琢磨が大きく与っているものと考えられる。同研究所のHPによれば、9年間にわたって続けられた「第一次世界大戦の総合的研究」成果は、岩波書店から『現代の起点 第一次世界大戦』全4巻として刊行されたほか、山室の『複合戦争と総力戦の断層』などが人文書院からレクチャー・シリーズとして既刊17冊を数えて、なお続刊が予定されている。人文研が創始し、その「お家芸」とされる共同研究におけるオーガナイザーとして、次世代の研究者と相互啓発のプラス面が出ているのであろう。その第一次世界大戦の共同研究を承けて、現在は「現代/世界とは何かー人文学の視点から」が開催されている(京都大学人文科学研究所研HPに依る)。

なお、特筆・追記すべきこととして、明治期の雑誌・飜訳書のマイクロフィルム版史料集成や岩波書店刊行思想大系などの編集・注記そして中野目徹・筑波大学教授と10数年の時日を費やして刊行した岩波文庫版『明六雑誌』全三巻など、史料の蒐集と複刻という事業に永年従事していることも貴重な貢献であると思われる。

経歴[編集]

熊本県熊本市生まれ。1975年(昭和50年)東京大学法学部卒業。衆議院法制局参事、東京大学社会科学研究所助手、東北大学助教授京都大学人文科学研究所助教授を経て、同教授2013年から2015年まで同所長。 2017年定年退任、名誉教授。 こうした経歴を簡略に纏めたものとして、朝日新聞夕刊「人生の贈りもの」に2015年1月、10回にわたってインタビュー記事が連載された。

また、日本国内では各種研究助成金の審査委員を、海外では、東アジア歴史研究フォーラム委員、台湾大学日本研究中心評議員、中華民国日本学叢書海外編輯委員、中国・南開大学日本研究所客座教授などを務めている。

受賞/受章歴[編集]

著作[編集]

単著[編集]

編著[編集]

共編・校注[編集]

  • 『東アジア近現代通史』岩波書店(和田春樹, 後藤乾一, 木畑洋一, 山室信一, 趙景達, 中野聡, 川島真=編集委員)
    • 第1巻 東アジア世界の近代 19世紀
    • 第2巻 日露戦争と韓国併合 19世紀末–1900年代
    • 第3巻 世界戦争と改造 1910年代
    • 第4巻 社会主義とナショナリズム 1920年代
    • 第5巻 新秩序の模索 1930年代
    • 第6巻 アジア太平洋戦争と「大東亜共栄圏」 1935–1945年
    • 第7巻 アジア諸戦争の時代 1945–1960年
    • 第8巻 ベトナム戦争の時代 1960–1975年
    • 第9巻 経済発展と民主革命 1975–1990年
    • 第10巻 和解と協力の未来へ 1990年以降
    • 別巻 アジア研究の来歴と展望
  • 『東アジア近現代通史』岩波書店(上)・(下) 2014年

論文[編集]

  • 未完の『東洋平和論』 (李泰鎮ほか編『安重根と東洋平和論』日本評論社、2016年) → ハングル版は刊行済み。英文版は近刊。

海外での出版物(単著)[編集]

英文
  • Manchuria Under Japanese Dominion ;Encounters with Asia, Translated by Joshua A. Fogel ,Pennsylvania University Press .
  • The Philosophy and Possibilities of An Chunggun's Unfinished On Peace in the East,in Yi Tae-Jin; Eugene Y. Park and Kirk W. Larsen eds.Peace in the East:An Chunggun's Vision for Asia in the Age of Japanese Imperialism, Lexington Books,2017.
中国文
  • 「憲法九條:非戰思想的水脈與脆弱的和平」 八旗文化・台北
  • 「滿洲國的實相與幻象」 八旗文化・台北
  • 「近代日本的東北亜区域秩序構想」 中央研究院東北亜区域研究・台北
ハングル
  • 「사상과제로서의 아시아,그이후(思想課題としてのアジア、その後)」 ソウル・J &C
  • 「憲法9条の思想水脈」(朴東誠訳)ソウル・東北亜歴史財団
  • 「日露戦争の世紀-連鎖視点から見る日本と世界」(鄭在貞訳)ソウル・小花
  • 「キメラ―満洲国の肖像」(尹大石訳)ソウル・スミョン出版
  • 「多にして一のアジア」(任城模訳)ソウル・チャンギ出版
  • 아시아의 시점에서 입헌주의를 생각한다  말과활  11号
  • 만다라(曼茶羅)로서의 중국  동북아재단 편『연동하는 동아시아 문화』  역사공간 
フランス語
  • La Première Guerre mondiale dans l’histoire de l’Asie orientale : un regard japonais  Ebisu No.53  

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]