格闘技

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格闘技(かくとうぎ、正しい表記は「挌鬪技」)とは、主に自分の体での攻撃・防御を行う技術、もしくはスポーツ競技、あるいはそれを基にした興行のことである。格闘技を行う人のことを格闘家と呼ぶ。また、体技格技マーシャルアーツ (Martial arts) などとも呼ばれる。

狭義では、素手で組み合ったり、手足で打ち合ったりする形式の競技 (en:Hand to hand combat) のことである。ルールが明文化され近代スポーツとしての体裁を整えた、主として武術由来の試合競技を指す。

広義では戦場などにおける白兵戦や、弓道剣道などの武道と同様の意味で使われる。

「格闘技」の語源は明らかではないが、「格技」から変化した、プロレスラーアントニオ猪木が使い始めたなどの説がある[要出典]

競技としての格闘技

概要

格闘技という言葉は、競技の分類の一つである。球技陸上競技という言葉と同次元の言葉であるといえる。

競技であるため、安全性、実戦性、観戦者への娯楽性、競技者の満足等を鑑みて競技ごとに様々なルール(競技規則、禁止行為)が設けられている。例えばボクシングでは、ナックル以外の部位を使用する攻撃、および上半身の前側面以外の部位に対する攻撃はルールで禁じられている。それらは一般的スポーツと同様である。

格闘技が他の競技と比して特徴的な点がいくつかある。一つが「1対1」である。エキシビションマッチなどのわずかな場合を除き、試合場内に同時に3人以上の競技者が存在することはない。団体戦にしても1対1を何回か繰り返すものである。

また、一定の基準を満たす攻撃が成功した場合(例:柔道投げ技による一本)や特定の状態に持ち込まれた場合(例:ボクシングのKO)には、試合時間やそれまでのポイントにかかわらず、試合の決着がつく点である。つまり、一発逆転のチャンスがあると言える。加えて、大抵の格闘技で、制限時間が定められており、ほぼすべての競技で、引き分けの回避、試合時間の短縮などを目的にポイント制が導入されている。

相手の体を直接どうにかする競技であるため、喧嘩闘争と似ていることも多い。もともとは、戦場などでの使用を目的とした戦闘技術体系(後述)が、競技化されたものも多い。

どういう行為が認められているか、で大きく分けて3種に分けられる。

1. 打撃系

殴る蹴るという行為が認められていて、つかむ投げるなどの行為が認められていない競技。ボクシングやテコンドーなど。相手に攻撃を当て、実際のダメージにより勝敗を決する場合(直接打撃制)と、実際に与えたダメージでなく、しっかり当たったかにより勝敗を決する場合がある。前者の例がボクシングであり、後者がテコンドーである。

また、キックボクシングシュートボクシングムエタイのように基本は打撃攻撃で、一部つかみながらの攻撃(首相撲、投げ、立ち関節)を認めているものもある。

2. 組技系

つかむ投げるなどの行為が認められていて、殴る蹴るという行為が認められていない競技。相手を倒すまでの攻防がメインの競技と、倒してからの攻防がメインの競技がある。相撲アマチュアレスリングなど。

3. 総合系

殴る蹴る、つかむ投げるの両者が認められている競技。

種類

格闘技は異なる複数の競技をおこなう選手が他のスポーツより多い。特に以下の分類で同じ分類の競技ではより多くなっている。

組技系格闘技 - 打撃系格闘技 - 総合格闘技
組技系格闘技
組技(投げ技絞め技関節技フォール技固技など)を主体とする格闘技。柔道ブラジリアン柔術サンボレスリング相撲合気道などがある。
打撃系格闘技
打撃技(突き技、蹴り技など)を主体とする格闘技。空手道少林寺拳法カンフーテコンドーボクシングキックボクシングシュートボクシングムエタイなどがある。
総合格闘技
打撃技、組技、立技、寝技の要素を含有する格闘技。修斗少林寺拳法日本拳法空道柔術(JJIF)、バーリトゥードなどがある。
着衣格闘技 - 裸体格闘技
組技の有る格闘技において規則上、着衣を掴めるか掴めないかは重要である。着衣の有無より掴むことを認めるかどうかで分類される。相撲はまわしを掴めるので着衣格闘技に分類される。
着衣格闘技
柔道、相撲、空道、ブラジリアン柔術、柔術 (JJIF) 、サンボなどがある。
裸体格闘技
レスリング、修斗などがある。
立技格闘技
寝技のない格闘技。相撲、ボクシング、キックボクシング、テコンドーなどがある。
立技組技系格闘技
寝技がなく組技主体の格闘技。総じて「相撲」とも呼ばれる。護身や戦闘よりも神事、遊戯等を目的にした土着的なものが多い。相撲、ブフ(モンゴル相撲)、シュアイジャオシルム(韓国相撲)、チタオバセネガル相撲などがある。

戦闘技術としての格闘技

素手や小さな武器を用いた戦闘技術という意味で「格闘技」を用いる用法もある。

その意味で用いられる格闘技、すなわち体系だった近接格闘術には、いくかの種類があり、白兵戦術、逮捕術護身術などがそれにあたる。武術も意味的にはこれに含まれるが、武術は含めないのが慣習である。

それぞれ状況は異なるが、実際の闘争での戦闘術であり、競技である格闘技における技術とは似て非なるものである。

一般に、軍隊格闘術軍用格闘技軍事格闘技などと呼ばれる。競技や興行の格闘技と違い、軍隊が戦争で行なう白兵戦を前提としているため、相手を殺傷することを目的とした技術である。全隊員に短期間で一定の戦闘力を身につけさせるため、習得容易で効果的な技が多い。軍隊では格闘術にあまり重きをおいておらず、体力向上、士気高揚目的という説もある。
ソビエト連邦コンバット・サンボ(コマンド・サンボ)システマイスラエルクラヴ・マガ日本自衛隊格闘術などがある。自衛隊格闘術は戦技競技会、徒手格闘選手権大会として競技化されている。
これは警察犯人逮捕するための技術で、主に日本拳法武道をベースとしている。軍隊格闘術と違い、相手を殺傷するのではなく制圧、拘束するのを目的としている。この逮捕術も競技化されている。
これは相手を攻撃することを目的としているのではなく、自分の身体を防護することを目的としてるが、実戦を想定した技術である。

興行としての格闘技

格闘技は、直接に肉体がぶつかり合い、はっきりと勝負が決着する様がわかりやすく、また人の基本的な情動とも結びつくため、これを鑑賞する楽しみ方がある。そのため、球技のプロスポーツと同様に試合を興行として行う例も数多い。オリンピック競技にも採用されているボクシングがその代表例である。

プロレス

プロレスは上記定義の格闘技とは別物であるが、格闘技を説明するにあたり、プロレスは避けて通れない。 興行を特化させ、試合を真剣勝負からショー、エンターテイメントとしたものとしてプロレス(プロフェッショナル・レスリング、プロモーション・レスリング)がある。プロレスは様々な格闘技の技術が盛り込まれ、独自のアレンジ(魅せる技としてのアレンジ)が加えられている。しかし、試合は真剣勝負ではなく、示し合いによる格闘ショーである。場合によっては、勝敗が最初から決まっている場合もあり、格闘技とは別のものである。演劇やサーカスと似たようなジャンルであり、エンターテイメントの一分野とされることもある。特にWWEは自社の興行を「スポーツ・エンターテイメント」と、ハッスルは「ファイティング・オペラ」と呼んでおり、興行が競技試合でないことを明示的に示唆している。

一方で、1997年10月11日にプロレスラーの高田延彦ヒクソン・グレイシーをメインイベントとしたPRIDE.1が開催され、以後PRIDEは人気のある総合格闘技興行に成長したように、プロレス興行で行われた異種格闘技戦UWF系の競技性を強めたプロレス興行は後の総合格闘技興行に影響を与えた。また総合格闘技興行にプロレスラーが参戦したり、逆にプロレス興行に総合格闘技選手が参戦したりするなど、格闘技とプロレスの関係性は強い。K-1UFCなどの興行はプロレス的な演出と、プロレスにはない競技格闘技としての性格を併せ持つことで人気を得た。

相撲

日本の格闘技相撲神社奉納相撲が行われるように神事神道儀式)としての側面もあるが、江戸時代からは興行としても行われている。

主要な興行格闘技団体

相撲
ボクシング
プロレス
総合格闘技
  • K-1 - 立ち技中心(ただし、それに限定しない試合も行われる)
  • DEEP
  • Strikeforce
  • UFC
  • 修斗
  • パンクラス - プロレス団体からの派生のため、プロレス団体とされる場合もある
キックボクシング

格技

連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による武道禁止の占領政策のもと文部省の中学学習指導要領新制中学校での「武道」(剣道柔道相撲)を「格技」に言い換えた。その後、「武道」という言葉が復活したこともあり、「格技」のほうは「格闘技」と同じような意味で使われるようにもなった。

社会的な位置

多くの国や民族に、それぞれに独自の格闘技があり、多くの場合にそれに専従する格闘家がある。格闘家は当然強いので、特別な扱いを受けるが、これには英雄と悪人という2つの側面がある。

代表的な格闘技

関連項目