栄冠は君に輝く

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映像外部リンク
吹奏楽演奏
《吹奏楽行進曲》栄冠は君に輝く(行進曲ヴァージョン) - YouTube - ミュージックエイト
《吹奏楽ヒット》栄冠は君に輝く - YouTube - ミュージックエイト
WSL-17-011 栄冠は君に輝く(吹奏楽セレクション) - YouTube - ウィンズスコア

栄冠は君に輝く』(えいかんはきみにかがやく)は、加賀大介が作詞、古関裕而が作曲した歌・行進曲で[1]1948年に発表された。副題は「夏の全国高等学校野球選手権大会の歌」。

概要

兵庫県西宮市にある阪神甲子園球場で開催される夏の全国高等学校野球選手権大会の大会歌として大会の開会式、閉会式で演奏され奉唱される。更に、現在では大会の主催新聞社である朝日新聞社の告知CMや、大会中の5回裏終了時から6回表攻撃開始前のグラウンド整備時の球場内BGMとして、下記の大会イメージアーティストが歌う同曲が使用されている。また、NHKテレビ中継番組では出場校のふるさと紹介にてNHK学校紹介用BGMがバックに流れたり[注 1]、かつては朝日放送テレビBS朝日朝日放送ラジオの各中継のテーマ曲としてインストで流れたりした[注 2]。また、バラエティ番組でも野球のゲームコーナーや野球がらみのネタなどで頻繁に使用される。大会を象徴するテーマ曲として、知名度は非常に高い。原曲の調性は変ロ長調であるがハ長調の楽譜も初心者の演奏用に提供されている。

本来は、全国高等学校野球選手権大会の大会歌であるが、学校・地域によっては運動会や夏以外の地方大会・地区大会の行進曲、応援団応援歌として使用することもある。なお、全国高等学校野球選手権大会で入場行進に用いられるのは第21回大会(1935年)から使用されている山田耕筰作曲、富田砕花作詞の『(全国中等学校野球)大会行進曲(歌)』であり、本作は大会歌として行進とは別に歌唱される。

なお本楽曲は日本コロムビア管理楽曲であり、使用には許諾が必要。

歴史

策定の経緯

1948年に学制の改定に伴い、それまでの「全国中等学校優勝野球大会」が「全国高等学校野球選手権大会」に改称する事になったことにあわせ、更にこの年の大会が第1回大会から数えて30回目の節目の大会であったことから主催者である朝日新聞社が新しい大会歌として全国から詞の応募を募った。応募総数5,252編中から、最優秀作品に選ばれたのが加賀の詞であった。

当初作詞者は高橋道子(結婚後は中村道子。松江安見の大姪)名義となっていたが、これはプロの文筆家で地元・石川で執筆活動をしていた加賀(当時の本名:中村義雄)が、周囲から懸賞金(大賞賞金は5万円で、当時の公務員の平均給与の10倍以上であった)目当てと思われるのを嫌い、自分の名前を伏せて婚約者の名前で応募したためであり、第50回記念大会1968年)を機に加賀本人が作詞の真相を語り「加賀大介作詞」と改められた[2]。その頃、本名も中村義雄からペンネームの1つであった「加賀大介」に改名している。

加賀は野球球児であったが、試合中の怪我による骨髄炎のために右足切断を余儀無くされ、野球を断念した経緯がある。この詞には、野球に対する加賀の熱い想いが強く込められている。

創唱歌手(発表当時のオリジナル)は、当時の名流行歌手である伊藤久男である。ちなみに伊藤は当歌の作曲者である古関裕而とは戦前からの深い付き合いである同郷(福島県)の友人同士であり、戦前から歌謡曲・軍歌・戦時歌謡においても名タッグとして活躍していた関係を持つ(2人の代表作は『イヨマンテの夜』、『暁に祈る』など)。

歌碑の建立

1989年、根上野球場に歌碑が建立された[3]。加賀の出身地である石川県(ペンネームの“加賀”は旧国名から)根上町(現・能美市)には、歌碑が立てられている。なお、出身の能美市立浜小学校の後輩に、甲子園に出場して第74回選手権大会における5打席連続敬遠で有名な松井秀喜(当時・星稜高)がいる。

エピソード

曲の利用
その他
  • この大会歌が制定された1948年小倉高校は夏の甲子園2連覇を果たす。小倉は全国中等学校野球大会の最後の年に優勝し、全国高等学校野球大会の最初の年にも優勝したのである[4]。その栄光を記念して、小倉高校明陵同窓会は学校創立80周年にあたる1988年にグラウンドの隅に2連覇記念碑を建立した。その大きな大理石の碑には「ああ栄冠はわれに輝く」と刻まれ、同校生徒の誇りとなり、心の糧となっている。
  • NHK連続テレビ小説エール」(2020年度上半期)では、第20週で「夏の全国高等学校野球選手権大会の歌」を主人公:古山裕一(古関裕而)が朝一新聞社から依頼され、歌詞「栄冠は君に輝く」を数名と選び、曲を書き、佐藤久志(伊藤久男)を説得して歌ってもらうエピソードが10月30日の放送で登場する。
久志役を演じた俳優の山崎育三郎は元々8月10日の高校甲子園の初日で甲子園球場内で歌う予定だったが、新型コロナウイルスの影響で高校甲子園は中止となって果たせなかった[注 3]

イメージアーティスト一覧

1996年まではアーティストを起用せず、関西地区の高校生による合唱を放送していた。

第79回大会 1997年 BORO
第80回記念大会 1998年 なし[注 4]
第81回大会 1999年 なし
第82回大会 2000年 なし
第83回大会 2001年 中島啓江
第84回大会 2002年 大友康平HOUND DOG
第85回記念大会 2003年 森山良子
第86回大会 2004年 MIYUZONE
第87回大会 2005年 錦織健
第88回大会 2006年 夏川りみ
第89回大会 2007年 サーカス
第90回記念大会 2008年 小椋佳
第91回大会 2009年 馬場俊英 / 夏川りみ[注 5]
第92回大会 2010年 平原綾香
第93回大会 2011年 岩手県宮城県福島県の高校生と、1995年に生まれた兵庫県の高校生
第94回大会 2012年 熊本県水俣鹿児島県松陽鶴丸鹿児島の4校の高校生
第95回記念大会 2013年 大阪府・兵庫県・奈良県京都府の高校生
第96回大会 2014年 愛知県岐阜県三重県の15校の高校生
第97回大会 2015年 東京都神奈川県の高校生 / Dream5[注 6]

なお第70回記念大会1988年)の開会式プレイベントでは山本直純指揮、さだまさし歌唱で観客全員に歌詞カードを配布のうえ「5万人の大合唱」として歌われたことがある。

資料

  • 『ピアノ伴奏付 思い出のラジオ歌謡選曲集 2』(全音楽譜出版社、ISBN 4117693115

レコード

  • 『栄冠は君に輝く〜全国高等学校野球大会の歌〜』(作詞:加賀大介、作曲・編曲:古関裕而、歌:伊藤久男・コロムビア男声合唱団、録音:1949年6月2日、発売:1949年7月1日、日本コロムビア、A597)
    • なお1984年には朝日新聞社より新たに吹き込まれたレコードが発売され、その後CDにもなり大会期間中球場内で販売されている。また通信販売で入手可能。

収録曲

ここでは2003年版について記す。

CD
全作詞: 加賀大介、全作曲: 古関裕而。
#タイトル作詞作曲・編曲編曲時間
1.「栄冠は君に輝く」(合唱バージョン)加賀大介古関裕而古関裕而
2.「栄冠は君に輝く」(行進曲)加賀大介古関裕而久石譲
3.「栄冠は君に輝く」(NHK学校紹介用BGM)加賀大介古関裕而龍野順義
4.「栄冠は君に輝く」(オリジナル復刻盤)加賀大介古関裕而古関裕而


脚注

注釈
  1. ^ 2017年の第99回まで
  2. ^ ただし和歌山放送は、今でも夏の大会のテーマ曲として歌入りで使用。
  3. ^ 2020年10月30日放送の朝イチで公言された。
  4. ^ ただしこの大会の開会式のプレイベントで当時のジャニーズJr.により歌われ、大会中は毎試合のグラウンド整備時でも流された。
  5. ^ 夏川バージョンは8月11日の試合で流された。
  6. ^ テレビCM「ダンス編」にて使用(ラジオCMでは、地方大会では合唱バージョンのみ。全国大会は合唱バージョン・Dream5バージョンの両方存在)。
出典
  1. ^ <朝ドラ「エール」と史実>「やはり球場に立ってよかった」甲子園で脳裏に湧いた「栄冠は君に輝く」実話(辻田真佐憲) - Yahoo!ニュース”. Yahoo!ニュース 個人. 2020年11月1日閲覧。
  2. ^ 朝日新聞百年史編修委員会『朝日新聞社史 昭和戦後編』朝日新聞社、1994年、68-69頁。 
  3. ^ 丹下友紀子 第10回 開会式のドラマ、2015年7月8日、毎日新聞(東京朝刊)。
  4. ^ 大羽武著『甲子園2連覇 -焼け野原から立ち上がった球児・福嶋一雄-』(朝日クリエ 2012年7月25日)、 大羽武著『甲子園2連覇 -夏の甲子園大会12勝0敗、5試合連続45イニング無失点、甲子園の土を最初に持ち帰った球児、平成25年野球殿堂入り・福嶋一雄-』(電子書籍、BookWay、2015年5月5日)。

関連項目

外部リンク