日産・180SX

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日産・180SX
RS13/RPS13/KRS13/KRPS13型
後期型 フロント
後期型 リア
概要
販売期間 1989年5月 – 1999年1月
ボディ
乗車定員 4人
ボディタイプ 3ドア クーペ
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン 前期型:CA18DET
中後期:SR20DET
後期(S,G):SR20DE
最高出力 175PS/6,400rpm(CA18DET)
205PS/6,000rpm(SR20DET)
140PS/6,400rpm(SR20DE)
最大トルク 23.0kgf·m/4,000rpm(CA18DET)
28.0kgf·m/4,000rpm(SR20DET)
18.2kgf·m/4,800rpm(SR20DE)
変速機 5速MT
フルレンジ電子制御4速AT
前:マクファーソンストラット式
後:マルチリンク式
前:マクファーソンストラット式
後:マルチリンク式
車両寸法
ホイールベース 2,475mm
全長 4,520mm
全幅 1,690mm
後期型 Type-X,S:1,695mm
全高 1,290mm
車両重量 1,220-1,240kg(AT搭載車)
その他
姉妹車 日産・シルビア(S13型)
総生産台数 約115,000台
※新車登録台数の累計は11万3109台[1]
系譜
先代 無し
後継 7代目シルビアに統合
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180SX(ワンエイティエスエックス)とは、日産自動車が製造していたクーペ型の乗用車である。

S13型シルビアとは姉妹車(同型番車種)で、ボディスタイルは短いノッチ(段差)のあるハッチゲートを用いたファストバッククーペとなっている。ガゼールの後継車と思われがちだが、ガゼールとは販売網が異なっており[注釈 1]、直接の後継車ではない。

概要

180SXは、S13型シルビアの日本国外輸出型である北米向けの240SXがベースとなっており、北米ではスポーツ・スペシャリティであるZXSXNXの日産クーペラインナップの中核モデルであった。これを日本仕様として仕立て直し、発売したモデルである。キャッチコピーは前期型が『日産からのプレゼンテーションです。』中期型が『このクルマに似合うひとがいる』後期型が『for FR Pilot』というもの。発売当時としてはまだ珍しかったフルレンジ電子制御ATを採用しているが、車の性格上販売数の9割以上がMTであった。

日本国内へはS13型シルビアより1年遅れで投入されているが、これには好調な売れ行きながら、発売後一定期間が経ち新味のやや薄れたS13型シルビアへのテコ入れ策として、営業側からS12型シルビア/ガゼールに存在していたハッチバッククーペ投入の強い販売要請を受けたことが背景にある。なお、北米向け240SXおよび欧州向け200SXは、S13型シルビア用のノッチバッククーペボディに180SX用のリトラクタブルヘッドライトを含むフロント回りを装着して販売された。

エンジントランスミッションサスペンションなどの車としての基本構造は全てS13型シルビアと共通である。車体周りでは、ステアリングホイールのデザインを除くインテリアとドアパネル、フロントウインドシールドなども共通となっている。その一方、ヘッドランプはS13と異なり角型2灯式のリトラクタブルヘッドライトを採用した。これは、当時の北米の法規上、S13型シルビアのヘッドランプの高さでは認証が取れなかったためである。このため、多くのパーツに互換性があり、外装の交換を比較的容易に行うことができる。この特性を利用して、後述するシルエイティなどの改造車も誕生することとなった。

販売当時はスタイリッシュなFRスポーツとして外観や機能性に高い評価を受けた。北米ではS13型240SXとして販売され、外観や車名の類似性もあり「240Zの再来」と言われて若者を中心に支持を得た[2]が、日本国内では開口部が大きいハッチバック車特有のボディ剛性低下や重量増により、走行性能を重視するユーザー層からは姉妹車であるシルビアほどの人気は出なかった。しかし、マイナーチェンジ後の2Lエンジン搭載車はよりスタイリッシュになったこともあり、徐々に人気を獲得していった。また、当初から自然吸気エンジン搭載グレードがラインナップされたされたシルビアと異なり、日本国内では1996年に後期型が発売されるまでターボエンジン搭載車しか用意されなかった。

日本国内ではシルビアがS14型フルモデルチェンジした後も生産や販売が続けられた。全幅が広がり3ナンバー車となったS14型シルビアの販売が低迷した際は、新車で購入可能な唯一の5ナンバー枠FR車として再評価される動きもあり、結局、シルビアが5ナンバー車として最終型のS15型にモデルチェンジするまでの間、180SXは小規模なマイナーチェンジはあったものの、大規模なモデルチェンジが行われないまま10年近く生産・販売が続いた。しかしクーペ市場の低迷による販売台数の減少は避けられず、生産工場も九州工場から高田工業、そして日産の関連会社である日産車体へと順次移管され、最後期はZ32コンバーティブルと同様、組み立てラインに乗せられず、ほぼ手作業で生産されていた。

生産終了後から約20年が経つ現在でも、軽量な5ナンバーボディで後輪駆動方式(FR)を採用している点が近年では希少になったことや、姉妹車のS13型シルビアとほぼ同じ構造でスポーツ走行にも適した設計であったことから、アフターマーケットにて主にドリフト用の改造パーツが充実しており、シルビアと共に一定の人気を保っている。また、車の性格上、姉妹車及び他社の類似車種同様にメーカー側の想定外の事態として若者の無謀運転による死亡事故が全国各地で相次いだ。そのため、現在でも国産車としては任意保険料率の高い車種である。

歴史

初期型(RS13/KRS13型、1989年-1991年)

1990年発売の限定仕様車 Type II レザーセレクション

日本では1989年にプリンス、チェリー系列で販売が開始された。ただし、それに先立ちアメリカでは2,400ccのKA24ESOHCエンジンを搭載し、「240SX」(トゥー・フォーティー・エスエックス)として販売されていた。また欧州では、日本仕様と同じ1,800ccのCA18DETDOHCターボエンジン(175PS)を搭載し、「200SX」(トゥー・ハンドレッド・エスエックス)として販売されていた。

初期型の特徴としては、日産の翼形グリルをイメージしたダミーのグリルがフロントバンパーにあること、前席シートがヘッドレスト一体型なことである。グレードは「TYPE I」と「TYPE II」で、「TYPE I」はスピーカーやパワーウィンドウが付かないなど競技用のベース車用途を対象にしていた。タイヤサイズは、前後とも195/60R15となっている。エンジンは全グレードで同一。

1990年には500台限定の特別仕様車「TYPE II レザーセレクション」を発売。シートが全て張りで本革ステアリング、シフトノブ、エアロパーツ、フッ素コーティング塗装のスーパーレッドを採用し、スカイラインローレルセフィーロと共通のアルミホイールが標準で装備された。

このモデルはフロントグリルのデザインが独特であることと、国内版は搭載エンジンが1,800ccであり2,000ccエンジンを搭載する中・後期型に比して非力なため、中古市場では不人気で、ほとんど流通していない。だがその希少性により、バンパーなどの中古部品は中期型・後期型と比べ比較的高い値段で取引される傾向にある。また海外では、その特徴的なフロントグリルのデザインから "pignose"(豚鼻)と呼ばれることがある。

HICAS II / SUPER HICAS

メーカーオプションで設定された四輪操舵システム。搭載車は型式の頭にKが付与され区別される。

登場時は先進的なシステムとして注目されたが、走り重視のユーザーには「ドリフト走行時にリアが意図しない動きをする」といった理由により不評であった。そのため当時の中古市場では非搭載グレードに比べて不人気で、相場も安く程度の良い個体が多かったが、後にHICASキャンセラーというサードパーティ製パーツが登場したことでこのような差異は見られなくなった。なお、2017年まではHICASキャンセラーを用いた四輪操舵から二輪操舵への変更は改造申請が必要であり、変更を行った車両は原則として改造車の扱いを受けていたが、同年4月から当該改造が検査項目から除外され、申請は不要になった。

中期型(RPS13/KRPS13型、1991年-1996年)

180SX 中期型
180SX Type-II

中古市場では最も台数の多いモデルである。 1991年にS13型シルビアと同時にマイナーチェンジを実施し、エンジンを従来のCA18DET型からSR20DET型2,000ccDOHCターボエンジン(205PS)に変更したが、車名は「180SX」のままで「200SX」には変更されなかった(後述)。また、これにより型式もRS13型からRPS13型に変更となったが、オプションのサイドデカールに関してはこれ以降も「RS13」と書かれている。

同時にフロントバンパーのデザインが大きく変わり、ダミーのグリルが廃止されエンジンフードとバンパーの段差がなくなったことでスタイリッシュになった。

タイヤサイズは205/60R15にワイド化されており、同時にアルミホイールのデザインも変更されている。また、四輪操舵システムはSUPER HICASに進化している。その他、安全装備の強化として後席シートベルトの3点化、サイドドアビームの追加、燃料系へのロールオーバーバルブの追加、ヒーター付ドアミラーの設定(寒冷地仕様車)が実施されている。フロントシートは一般的なローバックシート(ヘッドレスト分割式)に変更されている。

1992年、標準装備が充実した新グレード「TYPE III」を追加。新型のデジタル表示式オートエアコンは「TYPE III」のみ標準装備となっていた。

1994年にはグレード名が変更され、「TYPE III」は「TYPE X」に、「TYPE II」は「TYPE R」となり、「TYPE I」は廃止された。エンジンのロッカーカバーの塗色は赤色から黒色に変更となった。また、エアコンの冷媒がR134aに変更されている。同年4月以降は生産は高田工業に委託された。

1995年5月には運転席SRSエアバッグが標準装備となったほか、アルミホイールのデザイン、ドアミラーパワーウインドウのスイッチ形状が変更された。また、それまでブラック一色であったドアミラーがボディ同色になった。オーディオは一新され、「TYPE X」用のオーディオはCD付きとなった。

1996年1月に「TYPE R」をベースとした限定車「TYPE R スポーツ」が300台限定で発売された。主な装備は、専用ボディカラープラチナホワイトパール(QN0)、ストラットタワーバー、サイドシルプロテクター、ニスモスポーツマフラー等で、オーディオは装備されていない。

後期型(RPS13型、1996年-1999年)

180SX 後期型のリアビュー(オプションのカーボン調リアガーニッシュ装着)

1996年秋にビッグマイナーチェンジを行い後期型となる。フロントバンパー、大型リアスポイラー、リアブレーキの容量アップ、ABSの標準装備化、アルミホイールのデザイン変更[注釈 2]、キーレスエントリーの採用(TYPE Xのみ)、一部内装の変更などの仕様変更がされ、SR20DE型2,000cc自然吸気(NA)エンジンを搭載した「TYPE S」が設定された。また、リアコンビネーションランプがスカイライン風の丸型に変更されたが、スカイラインはツライチであったのに対し、180SXでは出目になっている点が異なっている。


1997年には「TYPE S」を元に装備充実を図ったグレード(TYPE G)が追加され、ボディカラーにイエローが新設された(スーパーレッドは廃止)。

1998年12月[3]に生産終了。在庫対応分のみの販売となる。

1999年1月[4]に販売終了となった。

車名の由来

「180」は、デビュー当初搭載されたCA18DET型エンジンの排気量である1,800ccを表し、「SX」は日産の輸出用ミドルサイズ・スポーティークーペに対するネーミングである。なお、1991年のマイナーチェンジで排気量2,000ccのSR20DET型エンジンに変更されたが、「ワンエイティ」等の愛称が定着していたこともあり、車名は「200SX」とはならずに「180SX」のまま販売が続けられた。 「ワンエイティ」という呼び名が広く浸透している一方、稀に「ワンパチ」や「イッパチ」「ワンチ」と言った愛称で呼ばれることもある。


ベースモデルである北米仕様車の240SXの車名は、搭載されているKA24E型エンジンの排気量2,400ccを表しており、180SXはそれに倣い付けられた名称である。

なお、欧州仕様車の200SXには当初CA18DET型エンジンが搭載されていたが、「200SX」の車名で販売されていた。のちに日本仕様と同様に2,000ccのSR20DET/SR20DE型エンジンに換装され、名実共に200SXとなっている。

取扱販売店

プリンス店系列(スカイライン販売会社)、チェリー店系列(パルサー販売会社)で販売されていた。

改造車

シルエイティ

180SXのフロント部分の外装パーツをほとんど板金作業を伴うことなく、S13型シルビアのそれに変更した車両。いわゆる顔面スワップの代名詞的な存在として知られる。なお、この互換性はあくまで同型番であるS13型シルビアのみにあるもので、それ以外の型式のシルビアには当てはまらない(なお、アフターパーツメーカーからは、S14型シルビアやS15型シルビア用の変換キットも発売されている)。この場合ノーマル比で4cmほど全長が短縮されるため、記載変更申請が必要となる。また、こちらは日産の純正新車扱いの改造車が限定発売されている。

ワンビア

上記とは逆に、シルビアのフロント部分の外装パーツを180SXのものに変更した車両。通称ワンビアと呼ばれるが、これはあくまでシルビアがベースであり、正式には180SXという車種ではない。大幅な板金作業を伴いS14、S15型のワンビアの製作事例もあるが、こちらはシルエイティとは異なり、変換キットは発売されていない。なお北米仕様の240SXにおいては、180SXと同様のハッチバックスタイルとともに、このようなノッチバックスタイルも通常販売されていた。

その他

S13型シルビアと共通の弱点として、助手席側メインフレームが途中で途切れていることが挙げられる[注釈 3]。そのためモータースポーツの世界やスポーツ走行をする際は致命的といわれており、アフターパーツの補強フレームが使用されることが多い。(加工が不要なため、改造車の扱いにはならない) 中古市場において対策されていない車両、つまりノーマル状態に近い個体はボディの歪みが少ないため高値がつくとされるが、経年によるボディ剛性の低下には注意が必要である。

また、S13型シルビアがノッチバックボディであるのに対し、180SXはボディ後部の開口部が大きなハッチバックボディであることから、ボディ剛性の点ではもともと不利な面がある。

脚注

注釈

  1. ^ ガゼールがモーター店で販売されたのに対し、180SXはプリンス店チェリー店で販売されていた。
  2. ^ 1998年にP11プリメーラがマイナーチェンジした時、2,000cc車のアルミホイールがこれとよく似たデザインになった。ただし、ホイールインセットはシルビアQ’s・180SXは40mm、プリメーラは45mmである。なお、ホイールサイズはどちらも15×6J 4-114.3である。
  3. ^ ベースとなったS13シルビアは開発時点ではデートカーのコンセプトだったため、ボデー剛性より軽量化が重視された

出典

  1. ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第78号7ページより。
  2. ^ 180SX(日産)1989年4月~1998年12月生産モデルのカタログ”. カーセンサーnet. 2015年2月15日閲覧。
  3. ^ 180SX(日産)のカタログ” (2020年1月18日). 2020年1月18日閲覧。
  4. ^ 180SX”. トヨタ自動車株式会社 (2020年1月18日). 2020年1月18日閲覧。

関連項目