グランド・ホテル形式
グランドホテル方式(グランドホテルほうしき)とは、映画において、同一時間及び同一の場所に集まった複数の人物の行動などを、同時進行的に一度に描く作品の手法の事である。映画『グランド・ホテル』によって効果的に使用された為、この名が付いている。
群集劇(ぐんしゅうげき)、群像劇(ぐんぞうげき)、アンサンブル・プレイとも呼ばれる。
主にパニック映画などでこの手法を取られることが多いが、シナリオや演出の都合上、舞台作品でもこのパターンが多く見られる。
内容
詳しくは各項目を参考にしていただきたいが、特定の場所で共通した事件が起き、それに巻き込まれた人々のそれぞれの行動や言動などを、ストーリーを交錯させつつ描いていく。
例えばこの手法の名前にもなっている『グランド・ホテル』では、とあるグランドホテルのそれぞれの宿泊客の人生が描かれている。
落ち目のバレリーナや自らを「男爵」と名乗るコソ泥、余命いくばくもない工夫、その工夫の働く会社の社長と、速記秘書、そして妻の出産報告を待っているフロント係、といった具合である。それらが出会いと別れを繰り返していき、一つの物語を構築していくのである。
登場人物に共通して起こる事象は、猛吹雪に見舞われる空港(『大空港』)や、アメリカの禁酒法(『バッカーノ!』)などが挙げられる。異質なものとしては宇宙人の侵略(『インデペンデンス・デイ』)や異星への不時着(『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』)というものがある。
類似する形式
「グランドホテル方式」では、複数の場所(部屋)で物語が進行するが、それを一室内に限定したものが「密室劇」であり、映画『十二人の怒れる男』等で有名である。
一方、密室化した乗り物に乗り合わせた人物間の人間関係と、乗り物そのものに襲いかかる障害を同時並行で描く物語のことを、映画『駅馬車』にちなんで、「駅馬車方式」と呼ぶこともある。
主な作品
映画作品
- グランド・ホテル(1932年/アメリカ)
- 幕末太陽傳(1957年/日本)
- 大空港(1970年/アメリカ)
- タワーリング・インフェルノ(1974年/アメリカ)
- ナッシュビル(1975年/アメリカ)
- コットンクラブ (1984年/アメリカ)
- ザ・プレイヤー(1992年/アメリカ)
- ショート・カッツ(1994年/アメリカ)
- パルプ・フィクション(1994年/アメリカ)
- プレタポルテ(1994年/アメリカ)
- インデペンデンス・デイ(1996年/アメリカ)
- ボルケーノ(1997年/アメリカ)
- マグノリア(1999年/アメリカ)
- マイ・ハート、マイ・ラブ(2000年/アメリカ)
- トラフィック(2000年/アメリカ)
- ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS(2003年/日本)
- ラブ・アクチュアリー(2003年/アメリカ・イギリス)
- デイ・アフター・トゥモロー(2004年/アメリカ)
- クラッシュ(2004年/アメリカ)
- シリアナ(2005年/アメリカ)
- 明日、君がいない(2006年/オーストラリア)
- ボビー(2006年/アメリカ)
- THE 有頂天ホテル(2006年/日本)
- バベル(2006年/アメリカ)
- バンテージ・ポイント(2008年/アメリカ)
- 2012(2009年/アメリカ)
- インセプション(2010年/アメリカ)
- ニューイヤーズ・イブ(2011年/アメリカ)
テレビドラマ作品
- ER緊急救命室(1994年〜2009年/NBC)
- 24 -TWENTY FOUR-(2001〜2010年)(フォックス放送)
- 踊る大捜査線(1997年/フジテレビジョン・映画化)
- HEROES(2006年〜/NBC)
- ラスト・フレンズ(2008年/フジテレビジョン)
- 素直になれなくて(2010年/フジテレビジョン)
- Q10(2010年/日本テレビ放送網)
- アスコーマーチ!〜県立明日香工業高校行進曲〜(2011年4月〜/テレビ朝日)
アニメ作品
- トランスフォーマーシリーズ(1984年~/サンボウ・プロダクション)
- 無限のリヴァイアス(1999年~/サンライズ)
- .hack//SIGN(2002年~/ビィートレイン)
- バッカーノ!(2007年/ブレインズ・ベース)
- ef - a tale of memories.(2007年/シャフト)
- ef - a tale of melodies.(2008年/シャフト)
- WHITE ALBUM(2009年/セブン・アークス)
- デュラララ!!(2010年/ブレインズ・ベース)
ゲーム作品
- ドラゴンクエストIV 導かれし者たち(1990年/エニックス)
- ファイナルファンタジーVI(1994年/スクウェア)
- EVE burst error(1995年/シーズウェア)
- スターオーシャンシリーズ(1996年~/スクウェア・エニックス)
- 街 〜運命の交差点〜(1998年/チュンソフト)
- ソニックアドベンチャーシリーズ(1998年~/セガ)
- コール オブ デューティシリーズ(2003年~/アクティビジョン、スパイク、スクウェア・エニックス)
- SIRENシリーズ(2003年~/ソニー・コンピュータエンタテインメント)
- Soul Link(2004年/Navel)
- SWAN SONG(2005年/Le.Chocolat)
- 絶体絶命都市2(2006年/アイレムソフトウェアエンジニアリング)
- ef - a fairy tale of the two.(2006年~/minori)
- カタハネ(2007年/Tarte)
- 428 〜封鎖された渋谷で〜(2008年/チュンソフト)
漫画作品
- アンネ・フリークス(2000年/小手川ゆあ・角川書店)
- ライン(2003年/小手川ゆあ・角川書店)
- 屍鬼(2008年/原作小野不由美、作画藤崎竜・集英社)
- 君のナイフ(2009年/小手川ゆあ・集英社)
- 日常(2006年/あらゐけいいち・角川書店)
小説作品
- カラマーゾフの兄弟(フョードル・ドストエフスキー)
- 幼年期の終り(アーサー・C・クラーク・ハヤカワ文庫)
- 銀河英雄伝説(田中芳樹・徳間ノベルズ)
- 異形コレクション「グランドホテル」(井上雅彦編・廣済堂文庫)
- 異形コレクション「夏のグランドホテル」(井上雅彦編・光文社文庫)
- ハイペリオン(ダン・シモンズ・ハヤカワ文庫)
- バッカーノ!(2003年/成田良悟・電撃文庫)
- 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(2009年/入間人間・電撃文庫)
- レディ・スクウォッター(都築由浩・電撃文庫)
- ラッシュライフ(伊坂幸太郎・新潮社)
- シンセミア(阿部和重・朝日新聞社)
- ブギーポップは笑わない(上遠野浩平)
- 屍鬼(小野不由美)
- 私が彼を殺した (東野圭吾)