EVE burst error

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EVE burst error』(イブ・バースト・エラー)は、シーズウェアが製作したAVGEVEシリーズの一作目。私立探偵天城小次郎と国家エージェント法条まりなを交互に操り、連続殺人事件の裏に隠された秘密に迫る。マルチサイトシステムが人気を博し、アダルトゲーム市場およびコンシューマ市場で大ヒットを記録した。PC98版(18禁)、SS版(推奨年齢18歳以上)、Windows版(R指定、18禁)、PS2版、PSP版がある。FM TOWNSでも発売が予定されていたが、開発中止になっている。

目次

[編集] ゲームの概要

基本システム
いわゆる「コマンド総当り方式」を採用している。フラグを立てるには、用意されているコマンドを手当たり次第に選択しなければならない。
マルチサイトシステム
いわゆる「群像劇」を実装している。小次郎編とまりな編のどちらか一方だけを進めても必ずどこかで行き詰る。たとえるなら、小次郎編で開けられないドアをまりな編で開けることで、小次郎編が進むようになる箇所が、いくつか存在するのである(逆もしかり)。よって、適宜シナリオを切り替えてゲームを進める必要がある。これは、シーズウェアの『DESIRE』で採用されたマルチサイトシステムを進化させたものである。
シナリオ紹介
  • 小次郎編
さびれた倉庫街に事務所を構える探偵の天城小次郎は、紛失した絵画の捜索を依頼される。灰色の脳細胞を駆使し、見事探しあてるが、やがてこの絵画をめぐり重大な事件が起こるのであった。
  • まりな編
内閣調査室の捜査官・法条まりなは、エルディア駐日大使の娘である御堂真弥子の護衛を命じられる。ふたりは行動を共にするうちに友情を深めてゆくが、彼女たちの裏ではある陰謀の準備が着々と進められていた。
『悦楽の学園』との関連性
シーズウェアが発売したAVG『悦楽の学園』と世界設定を共有しており、関連するキャラクターや組織などが登場する。なお、本作の開発当初は「悦楽の学園2」と呼ばれていたが、完成間近になって現在の「EVE burst error」になった。

[編集] 各版の特徴

[編集] PC98版

1995年11月22日発売。定価8800円。18禁。3.5インチFD7枚組。制作期間は4ヶ月。

[編集] セガサターン(SS)版

1997年1月24日発売。定価7800円。18歳以上推奨。販売元はイマジニア株式会社。品番T-15022G。

CD-ROM4枚(小次郎編DISC、まりな編DISC、テラー編DISC、Making of EVE burst error DISC)とマニュアル、キャラクター設定集で構成される。小次郎編、まりな編、テラー編各DISCを入れ替えながらゲームを進める。

主要キャラクターにはボイスが追加されたが、小次郎編の小次郎およびまりな編のまりなには音声がない。プレイヤーが操作するキャラクターへの感情移入を容易にするための配慮である。

PC98版に存在した描写は、すべて別の表現に置き換えられている。またPC98版でカットされた、ハイジャックを解決するシーンが、オープニング・デモに収められている。

「Making of EVE burst error DISC」の内容は、MAKING(製作現場、後日談)、SOUND(声優、収録風景、MUSIC)、CG GALLERY(未公開映像、ANIME)となっている。これらは本編をクリアしないと見ることができない。

[編集] Windows版(R指定)

1997年5月30日発売。定価7800円。タイトルは『EVE burst error Windows95』である。SS版を忠実に再現した作品。 SS版ではサイトチェンジに際し「小次郎編」「まりな編」各DISKを交換しなければならない欠点があったが、このWindows版ではプレイ状況に応じたCDの入れ替えのみになっている。

[編集] PS2版

2003年7月24日発売。通常版は定価6800円。限定版は定価9800円。タイトルは『EVE burst error PLUS』である。

限定版DVD-BOXにはDVDサウンドノベル「EVE Memories」と設定資料集「EVE Encyclopedia PLUS」が付属する。

キャラクターデザインとシステムが一新された。声優も一部、変更されている。エンディング直前の「犯人入力」を省略。

2005年3月24日には廉価版が発売された。定価3000円。

[編集] Windows版(18禁)

2003年11月28日発売。定価8800円 。タイトルは『EVE』である。

PS2版に性描写を追加した作品。声優が大幅に変更される。PC98版『EVE burst error』とWindows95版『悦楽の学園』が付属する。

[編集] PSP版

2010年3月25日発売。定価6090円 。タイトルは『burst error-EVE the 1st』である。

リメイク作品。キャラクターデザイン、システム、音楽が一新された。新たなキャラクターが追加され、シナリオも一部変更されている。また声優も変更されている。

[編集] 登場人物

EVEシリーズの登場人物を参照。キャストはプラットフォームによって異なる。

  • 天城 小次郎(あまぎ こじろう)
:SS版、PS2版-子安武人 Win18禁版-十文字隼人 PSP版-杉田智和
  • 法条 まりな(ほうじょう まりな)
声:SS版-岩男潤子 PS2版-三石琴乃 Win18禁版-如月美琴 PSP版-遠藤綾
  • 御堂 真弥子(みどう まやこ)
声:SS版-岡本麻弥 PS2版-堀江由衣 Win18禁版-Ruru PSP版-水原薫
  • プリン Prine
声:SS版、PS2版-水谷優子 Win18禁版-AYA PSP版-長谷川明子
  • 桂木 弥生(かつらぎ やよい)
声:SS版、PS2版-本多知恵子 Win18禁版-日下千鶴 PSP版-成田紗矢香
  • 鈴木 源三郎(すずき げんざぶろう)、PSP版では葛木 源三郎(くずき げんざぶろう)
声:SS版-納谷悟郎 PS2版-大塚明夫 Win18禁版-佐倉徹 PSP版-麦人
  • 柴田 茜(しばた あかね)
声:SS版、PS2版-かないみか Win18禁版-みちる PSP版-三宅華也
  • 二階堂 進(にかいどう すすむ)
声:SS版、PS2版-上田祐司 Win18禁版-中澤アユム PSP版-川野剛稔
  • 氷室 恭子(ひむろ きょうこ)
声:SS版、PS2版-松井菜桜子 Win18禁版-神月あおい PSP版-今井麻美
  • シリア・フラット Ciria Flatte
声:SS版、PS2版-高乃麗 Win18禁版-一条沙希 PSP版-植竹香菜
  • アクア・ロイド Aqua Royd
声:SS版、PS2版-田中敦子 Win18禁版-深井晴花
  • 松乃 広美(まつの ひろみ)
声:SS版、PS2版-むたあきこ Win18禁版-吉永あゆり
  • ストールマン・孔 Stohruman Koh、PSP版では孔雲樵(こう うんしょう)
声:SS版、PS2版-茶風林 Win18禁版-茶風鈴 PSP版-河本邦弘
  • 香川 美純(かがわ みすみ)
声:SS版、PS2版-渕崎ゆり子 Win18禁版-結城みづほ PSP版-城雅子
  • 甲野 三郎(こうの さぶろう)
声:SS版、PS2版-野沢那智 Win18禁版-オイリーはな PSP版-園部啓一
  • グレン Gren
声:SS版、PS2版-飯塚昭三 Win18禁版-秋田邦彦 PSP版-川原慶久
  • ロス・御堂 Los Midoh 、PSP版ではロイス・御堂
声:SS版、PS2版-若本規夫 Win18禁版-馬並硬太 PSP版-太田哲治

[編集] 各版の評価

[編集] PC98版の評価

売り上げ
1995年11月1日から30日までの間に2847ポイントを記録(実売数とポイントの関係は不明)。パソコンソフト全体で15位となる。
ユーザーの評価
  • FCGAMEX(NIFTYのフォーラム)
貴方が選ぶベストゲーム'95
対象:1995年に発売された18禁ゲーム、およびR指定のゲーム
投票期間:1996年1月4日~1996年1月23日
ベストパソコンXゲーム部門 2位
ベストシステムXゲーム特別賞 1位
ベストシナリオXゲーム特別賞 1位
ベストグラフィックXゲーム特別賞 3位
ベストサウンドXゲーム特別賞 2位
ベストX-ADV賞 -
貴方が選ぶベストゲーム'96-'01
歴代ベストXゲーム部門 投票期間 順位
'95 1996年1月04日~23日 6位
'96 1997年1月01日~20日 5位
'97 1998年1月11日~31日 7位
'98 1999年1月10日~31日 11位
'99 2000年1月01日~16日 16位
'00 2001年1月01日~21日 19位
'01 2002年1月05日~27日 23位

[編集] SS版の評価

売り上げ
1997年1月20日から26日の間に10万6694本の売り上げを記録。この期間に最も売れたゲームとなる。1997年末までの累計では19万5071本。コンシューマ全体で64位となる。NO.442(1997年05月23日発売)のギャルゲーデータバンクによると、1996年1月1日以降に発売された美少女ゲームの販売本数ランキングでは5位(18万8206本)。NO.456(1997年08月29日発売)の97年上半期売り上げTOP100で30位を獲得。AVG部門では4位(19万404本)。
Vol.4(1997年2月7日発売)の集計では11万4840本の売り上げを記録。この期間に最も売れたゲームとなる。Vol.10(1997年3月21日発売)までの累計では18万9003本。
1997年1月1日から31日の間に13万0543本の売り上げを記録。テレビゲームソフト全体で13位となる。1997年3月末までの累計では18万9142本。
ユーザーの評価
読者が選ぶTOP20で年間16位を獲得(FCSFCN64PCエンジンメガドライブSSPSPC-FXGBバーチャルボーイキッズギアネオジオ3DOなどのソフトを含んだランキング)。NO.420(1996年12月20日発売)からNO.472(1997年12月19日発売)までの累計。
Vol.5(1997年2月14日発売)の読者レースで3位を獲得。以後、13位、3位、2位と推移し、97年末のvol.45(1997年12月12日発売)では7位を獲得(全投票平均9.4101点、10点満点)。最終号 の読者レースランキングでは、全セガサターンソフトの中から1位に選出された。
第3回 電撃王ゲームソフト大賞 トレンド賞(9位)、第3回 電撃王ゲームソフト大賞 ヒートアップ賞(8位)を獲得した。
販売元のイマジニアに寄せられたアンケート葉書より(出典:電撃セガサターンVol.1)。
1位 天城 小次郎 944票
2位 桂木 弥生 636票
3位 法条 まりな 628票
4位 氷室 恭子 540票
5位 プリン 455票
6位 御堂 真弥子 400票
7位 柴田 茜 197票
8位 甲野 三郎 110票
9位 シリア・フラット 103票
10位 鈴木 源三郎 98票
11位 二階堂 進 56票
12位 松乃 広美 52票
13位 グレン 20票
14位 アクア・ロイド 16票
15位 香川 美純 2票
15位 ロス・御堂 2票
17位 ディーブ 0票

[編集] Windows版(R指定)の評価

売り上げ
1997年5月1日から31日までの間に4117本の売り上げを記録。パソコンソフト全体で16位となる。1997年8月末までの累計では9475本。
ユーザーの評価
  • FCGAMEX(NIFTYのフォーラム)
貴方が選ぶベストゲーム'97
対象:1997年に発売された18禁ゲーム、およびR指定のゲーム
投票期間:1998年2月1日~1998年2月7日
ベストXゲーム部門 20位
ベストシステムXゲーム部門 16位
ベストシナリオXゲーム部門 13位

[編集] PS2版の評価

売り上げ
初週2万3669本で初登場7位にランクイン。累計で4万5000本を販売(ネットヴィレッジ株式会社平成16年3月期中間決算短信より)。

[編集] 物語の解説


注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。 [記述をスキップ]


[編集] 各地名

舞台は日本ベイエリア大使館が数十ヶ所に存在することから、東京ウォーターフロントであると推測される。なお、氷室恭子および松乃広美が登場するため、シーズウェアのAVG『悦楽の学園』と世界観を共有していると見られるが、物語上の接点はない。

セントラル・アベニュー
モダンな建築物が建ち並ぶビル街。昼夜を問わずネオンサインが輝く。
プリンセス・ホテル
政府の要人も利用する高級ホテル。十階から上がVIPルームとなっている。最上階にはレストラン展望台がある。地下にはショットバーがあり、小次郎とグレンの待ち合わせ場所となっている。
エール外国人学校
エルディアの教育基金を元に作られた国際外国人学校。九時から十八時の間は、校内の施設(図書館プール)を一般に開放している。英語アラビア語を必須科目とする。現在のところ、治外法権は存在しない。ストールマンが校長(ディレクター)を勤める。
エルディア大使館
ベイエリアの一等地に位置する。ロス・御堂が勤務する。厳重な警備を誇る。違法な電波を遮断する仕掛けもあり、館内の会話を盗聴することは不可能。
あまぎ探偵事務所
小次郎が倉庫を改造して開いた事務所。探偵ライセンスを停止されているため、看板を出せず、仕事の依頼は絶無。従業員も存在しないが、のちに氷室が加わる。
桂木探偵事務所
かつては業界トップの業績を誇った。腕利きの探偵である源三郎と小次郎を同時に失い、依頼の達成率が悪化。二階堂に殺人の容疑が掛けられたことにより、経営はさらに傾くが、のちにプリシアを保護し、名誉を一気に回復する。
サン・マンション
小次郎と弥生が同棲していたマンション。源三郎の逮捕をきっかけに、小次郎は港の倉庫街に移るが、弥生は402号室に留まった。のちに、まりなと真弥子が403号室で生活を始める。

[編集] 用語集

内閣調査室
オフィス街に本部を構える。内閣に直属し、諜報を行う。略称、内調。同名の組織は実在しており(現在の名称は内閣情報調査室)、施政に必要な情報の収集にあたっているが、実際の任務は左翼に対する諜報だとも言う(詳しくは内閣情報調査室を参照)。
教育監視機構(JES)
『悦楽の学園』にも登場した架空の組織。教育機関で起こる事件は大抵の場合、被疑者が未成年であるため、警察の介入は困難だった。この問題を解決するために作られたのが教育監視機構である。専従の捜査員を派遣し、教育委員会および警察と共に事件の解決にあたる。テストケースであり、組織の実態は国民に知らされていない。治外法権や外国への応用も検討されている。真弥子の護衛を務めるため、まりなは一時的に教育監視機構の所属となる。
エルディア共和国(Eldia)
通称エール。アラビア半島の南西部に位置する君主共和制の多民族国家。国王が首相を任命。国教イスラム。前国王の死去にともない、世論は民主化へ傾いている。主な収入源は観光鉱物
前国王
エルディアの君主だった人物。一年前、死亡。テラーによって殺害されたと言われる。今は亡き王妃が不妊症であった為、子供はいない。
テラー(terror)
国際指名手配ナンバーB12AJ23。旧エルディア情報部の実行部隊。主な武器はエルディア軍のサバイバル・ナイフ
王権派
王制の維持を志向する勢力。
反王権派(改革派)
エルディアの民主化を押し進める勢力。Cプロジェクト崩壊後、ロイド首相のもとで王宮省、科学局、情報部を解体。プリシア即位の動きに対し、真弥子の即位を画策する。
Cプロジェクト
Neo Cerebral Project(新たな頭脳の計画)。発案者は源三郎。先進国の援助を受けて旧エルディア科学局が極秘裏に進めていた。しかし、局長のドールマンが息子に殺害されたことにより、崩壊する。
μ-101
Cプロジェクトの成果。陸幕二部が回収に乗り出す。
国璽
エルディア唯一の官印。王位継承の証しで、戴冠式の際に必要となる。
ラストマ・グルリタ・ラシャール卿
国璽の製作者。一世紀前、自害。
トリスタン号
戴冠式が行われる客船。日本に停泊中。船名はケルトの伝説「トリスタンとイゾルテ」に由来する。船籍はエルディア。

[編集] 時系列

PC98版での公安警察データベースクラッキングした時の情報によると、物語の舞台は西暦1995年の日本である。

  • 二年前(1993年)
テラー、要人の暗殺を開始。
源三郎、エルディアより帰国。桂木探偵事務所の所長となる。
  • 一年前(1994年)
前国王、死亡。
シリア、エール外国人学校に赴任。
まりな、米国へ栄転。
  • 三ヶ月前(1995年9月)
ストールマン、ドールマンを殺害。これによりCプロジェクト崩壊。
源三郎、刑務所に入る。
  • 1995年11月末
御堂、刑務所を襲撃。源三郎、戸籍上は死亡。
ディーブ、絵画の捜索を桂木探偵事務所に依頼。
  • 12月2日(まりな編スタート
まりな、帰国。
  • 12月3日(小次郎編スタート
小次郎、絵画の捜索依頼を受ける。プリンを保護。
まりな、真弥子の護衛を開始。
  • 12月4日
小次郎、絵画を発見。
ストールマン、殺害される。
  • 12月5日
二階堂、殺害される。
  • 12月6日
ディーブ、殺害される。
  • 12月7日
戴冠式。
アクアおよびロス・御堂、殺害される。
トリスタン号、沈没。
  • 12月9日
小次郎、まりな、プリシア、トリスタン号から脱出。
  • エンディング
プリシア、真弥子の日記を読む。
真弥子、エルディアにてよみがえる。

[編集] 物語の解釈をめぐる論争

EVEの物語には、数多くの謎が存在する。連続殺人事件の真相は、物語の終盤、真弥子の日記をひも解くことによって明らかになるが、他の謎については、一切、語られない。このため、パソコン通信のフォーラムや電子掲示板では、残された謎を解明すべく論戦が交わされた。一致した見解はいまだ得られていないが、物語の代表的な解釈を以下に記す。

序章
  • 渦巻く陰謀
識字率が五割ほどしかないエルディア国民は、国家に対する奉仕を強制されてきた。教育の拡充を求める動きもあったが、自己の利益のみを追求する前国王はこれを快く思わず、改革の芽を摘んだ。反王権派とはこうしたエルディアの現状に怒りを覚える勢力であり、前国王の暗殺も辞さなかった。
他方、御堂によると、前国王は王権派からも命を狙われていた。なぜ、身内にも敵がいたのか。これは、御堂のように前国王を心から信奉する者の他に、利権にありつくために前国王の取り巻きを務める勢力も存在すると考えれば、納得がいく。王権派は利権を失いたくないから改革に反対すると、真弥子は指摘する。新しい王を立てることでより大きな利益が得られるなら、現国王の暗殺に踏み込むこともありえるだろう。御堂は前国王の執政を「やりすぎ」と評している。前国王は、王権派の機嫌さえも損ねる政治を続けていたのだ。プリシアによれば、反王権派の一部は元々、王権派である。御堂が言う、前国王の殺害を目論む「王権派」とは、こうした勢力のことかもしれない。物語の後半、御堂とディーブのすれ違いが明らかになるが、これこそ、王権派が一枚岩でないことの証拠である。
さて、上記の事情から暗殺に対する策を講じなければならなくなった前国王は、源三郎が発案し、ドールマンが引き継いだCプロジェクト(新たな頭脳の計画)を利用することにした。なんらかの手段でプリシアの遺伝情報を入手し、彼女のクローンを作らせると、自分の記憶を移植した。これにより、対立者の目をくらまし、機を見て再び即位することが可能になる。プリシアの身体を選んだのは、即位に王族の血が必要だからだろう。
培養液の中で18歳の少女として創造されたクローン(コードネームμ-101)には、前国王のみならずアクアの記憶までもが植え付けられた。対立者の目をあざむくには、ごく普通の少女として振る舞う必要があるからだ。また、技術上の問題から、移植された前国王の意識は非常に不安定であり、時おり休まなければならない。第三者の人格を移植することで、こうした隙間を埋めようとしたのだ。
では、なぜアクアの記憶なのか。謎を解く鍵は彼女の出生にある。前国王には妾がおり、子をはらんだが、堕胎を拒否して逃亡。ロス・御堂と結婚する。出産後、王位継承のさまたげになるとの理由から、妾は前国王の差し金により殺される。「自分の子にも継承権がある」と妾に主張されては困るのだろう。生まれた子は御堂の子として育てられた。それがアクアであり、出生の秘密は御堂から聞かされている。よって、彼女の記憶を移植されたクローンは、自分にも継承権があると思い込み、即位に向かって動き出すはずだった。クローンに乗り移った前国王は、元の身体をこの世から葬ると、政敵の目をあざむくため、御堂真弥子として生活を始める。
アクアの記憶は、本人の承諾のもとに移植されたと思われる。根拠を、以下に述べる。
プリシアは、緩やかな民主化を考えていた。しかし、アクアは彼女を王制の信奉者と見なしており、民主化を断行するには、プリシアの即位を妨害しなければならないと考えていた。
他方、前国王の忠実な部下であるロス・御堂にとっての課題は、真弥子の即位をいかに実現するかである。御堂はアクアに協力を持ちかけたと思われる。真弥子が即位すれば、アクアにとってはプリシアの排除となり、民主化をさらに進めることが可能になる。そこでアクアは御堂と共謀し、生まれたばかりの真弥子に自分の記憶を移植、自らの意思で即位するよう仕向けたのだ。
しかしながら、真弥子の脳には前国王の記憶が眠っており、彼女が即位すれば、民主化を阻まれるに違いない。トリスタン号における会談でプリシアが、真弥子は暴君になるだろうと語るが、アクアは否定しない。真弥子を即位させた後の展望はどうなっていたのだろう。
アクアは、母の命を奪い、また国民を苦しめる王制を憎んでいた。となれば、彼女の記憶を移植された真弥子も、同様に王制を憎むはずである。実際、真弥子は、王制を廃することを目的に即位を決意する。アクアはこれを期待していたと考えられる。
御堂とアクアはこうして、真弥子の擁立に向けて動き出すのだった。
  • 真弥子の肉体と精神
プリシアと遺伝的に同一であるため、容貌がプリシアに酷似しているが、前国王の意識が眠っている時に限り、茶色の髪と瞳になる。特殊な薬品を服用することで、前国王の記憶を脳に固定している。服用をやめれば記憶が失われ死に至る。
普段は、アクアの記憶をベースに作られた人格「真弥子」が活動する。時おり前国王の意識が出現し、御堂に指示を出す。前国王と御堂の陰謀を知らない彼女は、自身を18歳の女子高生と信じている。前国王は真弥子の記憶を自由にのぞけるが、逆は不可能である。
  • 王権派の巻き返し
急速な民主化を危惧するプリシアは、アクアが主導する改革を快く思っていなかった。そこで、前国王の権勢が衰えると、自らが次の王となり、緩やかな民主化を行うプランを打ち立てる。プリシアに仕えるストールマンも、伝統を無視した改革に反発しており、両者は反アクアとして活動していくことになる。
ところでプリシアは、前国王の陰謀をどこまで知っていたのだろうか。彼女はCプロジェクトについて小次郎に聞かれた時、なにも知らないと即答する。この言葉は信用に値する。前国王がCプロジェクトの全容を掴むことができたのは、御堂を通じてドールマンの研究を調べたからである。Cプロジェクトの存在は極秘であり、王族といえど簡単には手を出せなかったのだ。それはドールマンが殺害されたあと、科学局が取り潰され、機密の保持が図られたことからもわかる。前国王を暴君と呼ぶプリシアは、権力の中枢と距離をとっていたであろうから、これらの情報に触れる機会はなかったと思われる。彼女は、情報部の次長であるディーブの存在さえ知らなかった。また、エルディアの内情に詳しくないはずの小次郎がCプロジェクトの名を出しても驚かなかったり、国璽の秘密を小次郎に明かしていることから、Cプロジェクトについてのみ嘘を言っているとは考えにくい。しかしながら、トリスタン号においては真弥子を「悪しき亡霊」と表現している。自分のクローンが作られ、前国王の記憶が移植されたことは知っていた。
他方、ストールマンは、Cプロジェクトの秘密を知りうる立場にあった。父を殺害し、Cプロジェクトを崩壊させると、日本にいる源三郎に連絡を入れる。崩壊したCプロジェクトの機密を守るため、発案者である源三郎に刺客が差し向けられる恐れがあったからだ。源三郎は自ら刑務所に入り、情報部から逃れようとする。
  • 国璽をめぐる争い
プリンセス・ホテルにおける小次郎とプリシアの会話から、エルディアの王位は血縁によって受け継がれることがわかる。しかしこれは単なる習慣に過ぎず、国璽さえ持っていれば王族でなくとも王位の簒奪者となりうる。ゆえにエルディアでは、国璽をめぐる争いが絶えなかった。
国璽は普段、誰の手によって管理されているのだろう。はっきりとした説明がないため、この点に関しては沈黙せざるを得ないが、ストールマンはなんらかの手段を用いて国璽を手に入れると、戴冠式が行われる日本に持ち込んだ。万が一に備え、国璽をふたつに割ると、一方を自宅に、もう一方をエール外国人学校のディレクタールームに隠す。両方そろわなければ、国璽は意味を持たない。
11月末~12月4日
  • 暗示
戴冠式の一週間前、プリシアが日本に到着する。彼女はストールマンと接触すると、暗示をかけてもらい、女王に仕える侍女プリンとなる。プリシアの命を狙う御堂たちの目をあざむくためだ。ふたり一緒に行動すると、御堂に捕らえられた時のリスクが大きい。プリンとストールマンはいったん別れ、しばし別行動をとる。
ストールマンは国璽の模造に着手する予定だった。本物の国璽を御堂らの手から遠ざけ、プリシアの即位を確実なものとするために。しかし、真弥子の即位を画策する御堂は、ディーブにストールマンを捕らえさせる。そして、拷問にかけ、国璽のありかを吐かせる(ドールマンが開発した自白剤を使ったとみられる)。ストールマンの自宅に残された足跡がまっすぐ戸棚に向かっていたことを考えると、国璽の片割れが戸棚に隠されていることまでは掴んだが、二重底のトリックを見破るには至らなかったようだ。
  • 後始末
Cプロジェクトの崩壊を知り、刑務所に身を隠した源三郎だが、御堂は刑務所に火を放ち、源三郎の殺害を図る。シリアからの情報で襲撃を事前に察知していた源三郎は、逃げ延びると、トンネル会社「サンプラス生命保険」の調査員・鈴木源三郎として生まれ変わる。桂木源三郎は戸籍上、死んだわけである。
アメリカ発の航空便がハイジャックに巻き込まれた際は、たまたま乗り合わせたまりなと共に事件を解決するが、渡米していた理由は不明。
小次郎には、後始末のために動いていると語る。Cプロジェクトの発案者として、真弥子の即位を阻止するつもりなのだろう。それは、ストールマンと連絡をとっていたことからもわかる。真弥子を殺す必要はない。前国王の人格はすでに崩壊し始めているとストールマンから聞かされているのだから、即位を妨害する程度でよいはずだ。
  • もうひとりの娘
シリアに格闘サバイバル技術を仕込んだ源三郎は、エルディアを去る際、彼女を二重スパイとして情報部に残す。御堂やディーブの動きを探るためだろう。
公安のデータベースによると、エール外国人学校の教師に就任したのはちょうど一年前。ストールマンの紹介による。この時期、エルディアではμ-101が生まれていた。日本で普通の女学生として暮らし始めた真弥子の身辺を調査するために、同校に潜り込んだと思われる。そして、源三郎、ストールマンと連携する一方、ディーブのもとでスパイ活動を行い、プリシアの即位を支援していくのである。
  • シルクスクリーンをめぐって
エルディア唯一の官印たる国璽の実態は、シルクスクリーンの原版である。原版は絵画の下に貼り付けられるのが常であるから、国璽と絵画はセットになっているはずだった。ストールマンの自宅に眠る絵画をどうしても見つけられないディーブは、ストールマンに成りすますと、絵画を紛失したと偽って、桂木探偵事務所に絵画の捜索を依頼する。原版の存在を第三者に知られてはまずいので、原版についてはもちろん一言も触れなかった。調査を開始する二階堂。
他方、ディーブとは異なる思惑で動く御堂も、二階堂を雇ってストールマン宅の国璽を手に入れようとしていた(この、御堂とディーブのすれ違いについては、後で詳しく述べる)。ディーブの依頼はあくまでも絵画の捜索だが、御堂の依頼は原版の捜索である。二階堂にしてみれば、発見した絵画をディーブに、原版を御堂に渡すことで、両者から報酬が得られる。
しかし二階堂は、たとえ原版の発見に成功しても、御堂にこれをやすやすと渡す気はなかった。シルクスクリーンの原版を法外な料金で買い取ろうとする御堂に不審を感じ、原版には重大な秘密が隠されていると推測したからだ。
二階堂は、茜に協力を持ちかける。ひとりで絵画を見つけ出すのは困難だと判断したのだろう。某党書記長のスキャンダルをすっぱ抜いたことが原因で業界から干されていた彼女は、これを受け入れる。原版に秘められた謎を暴けば特ダネになると信じて。
二階堂はまず、小次郎をこの件に引き込むよう、茜に指示する。小次郎の持つ非凡な推理力を利用するためだ。茜は絵画の捜索を小次郎に持ち込む。
小次郎は灰色の脳細胞を駆使し、二重底に隠された絵画の発見に成功する。しかし、居合わせた二階堂に原版を盗み取られてしまう。原版の存在など露も知らない小次郎は、二階堂の行動に気付かなかった。他方、本命の原版が見つからず、内心あせるディーブだが、原版については一言も触れなかった手前、笑顔をとりつくろうしかなかった。
  • 二階堂と茜
なんとかディーブを出し抜くことに成功した二階堂だが、原版をすぐに手放すつもりはもちろんなかった。原版の秘密を暴くため、二階堂と茜は共同で調査に当たる。しかし、深入りが過ぎてしまい、やがて悲劇に巻き込まれるのであった。
  • 侍女として
何事もなければ、プリンは、偽の国璽を作り終えたストールマンから本物の国璽を受け取るはずだった。しかし、彼がディーブに捕らわれてしまった為、波止場で待ちぼうけを食う。行き場を失ったプリンは小次郎の事務所に転がり込み、家事をするかたわらストールマンの動向を調べることになる。なお、国璽を手渡す場所を波止場とするよう勧めたのは源三郎である。なにか事が起こった時は、小次郎のちからが役に立つだろうと考えたからだ。
  • 内閣調査室の動き
米国から帰国したまりなは、真弥子の護衛を命じられる。エルディアの急速な西洋化に反発するイスラム原理主義勢力が、彼女を付け狙っているのだという。まりなは、真弥子の命をおびやかす襲撃者を次々と撃退することになるが、襲撃者を裏で操るのは、護衛の依頼主である御堂だった。真弥子へのテロをプリシア一派の陰謀に見せかけることで、プリシアを貶め、世論を味方につけようとしたのだ。日本の政府が護衛を引き受けたのも、真弥子の即位をにらんでのことだった。
  • 国璽の入手ルート
エール外国人学校の校長を勤めるストールマンは、一千万円もの公金横領していた。この問題を調査するのが教育監視機構の氷室恭子であり、彼女によれば、同校の名誉理事を拝命する御堂が横領を見過ごすはずはないという。つまりストールマンは着服した公金で国璽を購入するが、御堂に気付かれ、ディーブに捕らわれてしまったという推測が成り立つ。実際、氷室から助言を求められたまりなは、公金がイスラム文様絵画の購入に当てられた可能性を指摘する。国璽をエルディアから持ち出した協力者に、報酬として公金を与えたといったところか。
  • 第一の殺人
絵画の捜索を終えた小次郎のもとに、深夜、一本の電話が入る。受話器を取ると、相手はストールマンだった。彼は小次郎になにかを伝えようとするが、電話はすぐに切れてしまう。不審に思った小次郎は、ストールマンの自宅に向かう。呼び鈴を押すが、応答はない。電気が通っていないのだ。玄関のドアをノックしようとすると、玄関の奥から二階堂が現れる。彼はなぜか動揺しており、すぐに姿を消す。
意を決し、ストールマンの自宅に踏み込む。応接間のソファに座っていたのは、首を真一文字に切り裂かれたストールマンだった。凶器と見られる血染めのサバイバル・ナイフは、ソファの後ろに転がっていた。遺体はまだ温かい。殺されて間もないようだ。小次郎が知っているストールマン(すなわちディーブ)と違い、体型はスリムだった。
戸惑いながらも現場の検証を続けていると、応接間に氷室が現れる。ストールマンの公金横領疑惑を追う彼女は、この家の様子を不審に思い、小次郎と同様、無断で踏み込んだのだ。ふたりはお互いが犯人でないことを確認し、別れる。
  • 事件の真相(第一の殺人)
御堂によると、実行犯はディーブである。動機は二通り考えられる。
A…この日の昼、小次郎は絵画を発見するが、肝心の原版を二階堂にまんまと盗まれてしまう。二階堂の行為に気付かなかったディーブは、ストールマンが嘘をついていると判断した。つまり、自白剤を使っても正しい証言が得られないなら殺してしまおうと考えたのだ。
B…これとは逆に、ストールマンの自白が正しかったからこそ犯行に及んだ可能性もある。二階堂が原版を盗んだことに気付いたディーブは、ストールマンの証言が正しいことを知り、用済みとなったストールマンをこの世から葬った。エール外国人学校の国璽にはまだ手をつけていないが、自宅に隠したという証言が事実なら、学校に隠したという証言も事実となるはずだった。
さて、どちらの説が真実により近いのだろうか。問題となるのは、二階堂が国璽を盗んだことにディーブがいつ気付いたか、である。絵画を見つけた時なら、国璽を返せと迫るはずだ。それをしなかったのは、二階堂の動きを見逃していたからに違いない。
小次郎を捕縛した際(12月6日の夜)、ディーブは、二階堂がストールマン宅の国璽を盗んだと語る。小次郎と同じくディーブに拉致され、拷問を受けた茜が吐いたのだろうか。しかし、ディーブは、小次郎と二階堂が共謀していたとも語る。これは明らかに事実に反する。そして茜が二階堂の犯行を暴露したのなら、二階堂と共謀していたのは自分ひとりだと説明するはずだ。つまりディーブは、二階堂と茜が共謀して国璽を盗んだことを独自に調べ上げ、茜を拉致したと考えられる。
ディーブが二階堂に目星をつけたのはいつだろうか。それは、二階堂が殺害された時(12月5日)だと思われる。二階堂は原版を使って御堂を揺すろうとするが、逆に殺されてしまう。この時、原版を持っていたのは茜なので、原版が御堂の手に渡ることはなかった(二階堂の殺害についての詳細は後述)。そこで御堂は原版を奪うため、二階堂が原版を盗んでいたことをディーブに知らせたと思われる。盗ませたのは他ならぬ御堂なのだが、二階堂が死んだ今、秘密がもれる恐れはない。ディーブは二階堂の身辺を捜査し、茜と共謀していたことを突きとめる。小次郎も共犯だと考えたのは、二階堂および茜とよく行動していたからだろう。
以上の推理から、二階堂が国璽を盗んだことにディーブが気付いたのは、12月5日であると考えられる。すなわち、犯行の動機はAである。
これを裏付ける事実として、ディーブに捕らわれていたはずのストールマンが自宅に戻っていたことが挙げられる。絵画に付属するはずの原版が見つからず、苛立つディーブは、ストールマンが嘘を言っていると考え、彼を責めた。これを受け、国璽はまだ無事だと判断したストールマンは、ディーブのもとから脱出し、国璽を保護するため自宅に向かう。放っておいたら、いつディーブの手に落ちるかわかったものではない。逆に、ディーブがこの段階で二階堂の犯行に気付いていたとすると、ストールマンが帰宅する理由がなくなってしまう。
予想に反し、自宅に国璽はなかった。ストールマンは、国璽の次に気掛かりだったプリンの安否を確かめるため、小次郎のもとに電話をかける。なにかあったら小次郎の事務所を訪ねろと、源三郎がプリシアに指示していたことを思い出したのだ。しかし、用件を伝える前に、通話は途切れてしまう。追ってきたディーブが電気の供給を遮断したのだ。こうしてストールマンは殺されるのだった。
  • サバイバル・ゲーム
シリアは、エール外国人学校の屋上にまりなを呼び出し、対決を要求する。シリアが勝てば、まりなはシリアの要求を飲む。まりなが勝てば、シリアはまりなの質問に答える。シリアの狙いはなんだろうか。対決の最中、学校にたまたま現れた真弥子を捕まえ、戴冠式が終わるまで失踪してもらうと言ったことから、シリアは真弥子の誘拐を計画していたと考えられる。対決を通じてまりなを追い詰め、真弥子の護衛から手を引かせることに成功すれば、誘拐は容易になる。シリアはプリシアの命を受けて動いているわけだが、プリシアが誘拐を指示したかどうかは不明である。
12月5日
  • 第二の殺人
氷室の通報によりストールマン殺害が発覚する。現場に指紋を残してしまった二階堂は、容疑者として指名手配される。逃亡する二階堂だが、ストールマンが殺されたことにより、国璽に対する関心をさらに強める。
他方、ストールマン殺害の知らせを受け、彼の自宅に駆けつけたまりなは、警官と話し込む源三郎を発見。不審に思い、プリンセス・ホテルまで尾行するが、手違いから二階堂の部屋に侵入してしまう。二階堂と茜の気配を感じ、クローゼットに隠れる。しばらくすると二階堂が何者かと口論を始める。音楽が大音量で流されているため、会話の内容までは聞き取れない。静かになったのでクローゼットから出る。ベッドのシーツをはぐと、首を切り裂かれた二階堂があお向けになっていた。
  • 事件の真相(第二の殺人)
二階堂は御堂が大使であることを知っていた。これは、茜をエルディア大使館に向かわせていることからわかる。そして小次郎に対しては、グローバルな見地から絵画の捜索にあたっていると自慢する。原版の捜索は御堂の個人的な依頼でないことをよく理解していたのだ。
これを利用し、御堂から大金をせしめようとするが、交渉は不調に終わり、前国王に殺害される。前国王が音楽CDをわざわざ持参し、大音量でかけたのは、盗聴を恐れてのことである。なお、この時、二階堂の部屋には茜もいたが、シャワーを浴びていた為、事件には巻き込まれなかった。
警察の捜査を撹乱するため、二階堂の遺体に金髪を握らせると、前国王は二階堂のかばんを持ち帰り、中身を物色する。国璽は見つからなかった。二階堂が茜に手渡し、隠すよう命じていたからだ。御堂と交渉する時、国璽が手元にあっては危険だろう。御堂はディーブを呼び寄せ、二階堂の身辺を洗うよう命じる。ディーブは、二階堂と茜が共謀していた事実を掴み、彼女を誘拐するのだった(この辺の事情は「第一の殺人」でも述べている)。
さて、二階堂は御堂を揺すろうとしていたと述べたが、果たして御堂は現場にいたのだろうか。二階堂の部屋を訪れた人物の組み合わせは以下の四通りである。
A…真弥子 B…真弥子+御堂 C…前国王 D…前国王+御堂
A…真弥子がひとりで二階堂との交渉に臨むはずはないので、誤り。
B…前国王の意識が眠った状態で二階堂の部屋に赴いたのだとしたら、王位を忌み嫌う真弥子が、御堂と二階堂のやり取りを日記に残すはずである。しかし、それらしき記述は彼女の日記に存在しない。また、真弥子はこの日、夕方まで授業を受ける予定であり、授業を放棄してまで御堂に同行する理由がない(二階堂が殺されたのは昼過ぎ)。よって、誤り。
CもしくはDが正解となる。
ちなみに、「EVE burst error オフィシャルガイド」(アスキー発行)によると、二階堂は御堂とディーブを天秤にかけた為に殺されたことになっているが、同誌は、脚本を担当した「剣乃ゆきひろ」がエルフに移籍した後に発行されたものであり、信憑性に乏しい。実際、同誌の記述には明らかな誤りがある(μ-101は完成してから二年で崩壊した、という部分)。
12月6日
  • 廃墟にて
一度はストールマンの自白を偽りと決め付けたディーブだが、御堂からの連絡を受け、二階堂が国璽を盗んでいたことを知ると(第一の殺人を参照)、茜を捕らえ、国璽のありかを吐かせる。国璽を収めたカメラは、小次郎の事務所にあった。ディーブは小次郎のもとに電話をかけ、プリンセス・ホテルにおびき出すと、事務所へ行きカメラを盗み出した。これにより、ストールマンの供述が真実であることを知り、エール外国人学校へ向かう。一方の国璽を自宅に隠したという証言が事実なら、もう一方を学校に隠したという証言も事実となるからだ。しかし、学校のディレクタールームに国璽はなかった。
小次郎が二階堂や茜と共謀していたと信じるディーブは、グレンを利用して小次郎を捕縛すると、ディレクタールームに隠されていた国璽の行方を尋ねる。心当たりなどかけらもない小次郎だったが、茜を助けるため、二階堂が御堂に雇われていたことを教える。
  • プリンセス・ホテルの攻防
御堂に不信感を抱いたディーブは、プリンセス・ホテルに御堂を呼び出すと、小次郎から得た情報を突きつける。劣勢に立たされた御堂は弁明を試みる。笑って許すディーブだが、部屋のガラスが何者かに割られる。驚愕したディーブは銃を撃ち、護衛を呼び寄せる。隣の部屋で盗聴していたまりなが現場に踏み込む。護衛ふたりは銃を抜く暇もなく殺されていた。他にひとはいない。電話が鳴り、受話器を取ると、何者かに後頭部を殴られ気絶する。
  • 事件の真相(プリンセス・ホテルの攻防)
護衛を殺害したのは前国王だが、彼は、いつ、どのようにして現場に現れたのだろうか。ガラスが割られた後にディーブが護衛を呼び寄せていることを考えると、御堂とディーブが会話している最中に、外から侵入したという推測が成り立つ。しかし、これは誤りである。部屋のガラスは内側から割られていた。前国王は初めから部屋にいたのだ。実際ディーブは、御堂になにかを勧めたあと、御堂に付き添っている人物にもそれを勧めている(おそらく飲み物)。しかし、この人物はディーブの勧めを断る。御堂とディーブの間に漂う異様な雰囲気に緊張していたのだろう。つまり、この時、前国王の意識はまだ眠っていたのだ。
そして、前国王が目覚める。ディーブが驚愕したのは、前国王の指令を受けてはいても、真弥子=前国王であることまでは知らなかったからだと推測される。この辺の事情については「第三の殺人」で詳しく述べる。
目覚めた前国王は、ディーブにナイフをちらつかせ、危害を加える意思を見せる。恐れをなしたディーブは銃を撃ち、護衛を呼ぶと、自分はどこかに隠れる。前国王が護衛だけを殺して逃走したのは、ディーブをトリスタン号に追い込むためだ。この日の昼、前国王がトリスタン号でディーブを殺害するつもりであることを、御堂がアクアに伝えている。なぜトリスタン号なのか。詳細は不明である。
護衛を殺す前にガラスを割ったのは、殺したあと、現場から素早く立ち去るためだろう。脱出に手間取っていたら、銃を持ったディーブに背後から撃たれてしまう。あるいは、御堂だけが現場からいち早く逃げたのかもしれない。
こうしてもぬけの殻になった部屋にまりなが踏み込むわけだが、隠れていたディーブに襲われ、気絶するのであった。
  • 第三の殺人
トリスタン号の一室に監禁されたまりなの前に、ディーブが現れる。御堂に裏切られたことを知ったディーブは、まりなを人質に取って逃亡するつもりだった。ディーブと入れ替わる形でまりなの部屋にやって来たアクアは、まりなの拘束を解くと、トリスタン号から逃げるよう忠告し、どこかへと去る。自由の身となったまりながある船室で発見したのは、首を切り裂かれ絶命したディーブだった。
  • 事件の真相(第三の殺人)
国璽が手元にあるうちは安全だと信じていたディーブだが、前国王の手によって処刑される。ストールマン宅に隠されていた国璽は、この時、前国王の物となる。
前国王は、自分の配下であるディーブをなぜ殺したのだろうか。御堂がディーブとは別に二階堂を雇い、ディーブの裏をかこうとしたことから、ディーブは前国王の信頼を得ていなかったことがわかる。御堂と違い、前国王に対する信仰心を持たないためだ。仮に持っていたら、前国王に対して発砲するはずがない。
プリンセス・ホテルで覚醒した前国王を見てディーブが驚くのも、上記の事情と関連する。前国王が再び即位するにあたって最も重要なのは、「真弥子=前国王」を反王権派に悟られないことである。いつ裏切るかわからない者に、真弥子の秘密を教えられるはずがない。つまりディーブは、「真弥子を即位させ、エルディアを影から操る」ことが前国王の狙いであると信じていたのだ。
こう考えると、ディーブの目的も自然と見えてくる。国璽を集め、真弥子の即位を実現させたのち、前国王と御堂を切り捨てることで、ディーブはエルディアの影の支配者になろうとしたのだ。御堂とディーブの思惑が異なっていることは、トリスタン号におけるディーブの台詞から容易に察せられる。
しかし、前国王に先手を打たれてしまい、他界することになった。
  • 覚醒
ストールマンがプリシアにかけた暗示は、あるの一節を彼女に読み聞かせることで解除される。元々はストールマンがこれを行う予定だったと思われるが、彼は保険として、詩を書き写した紙をシリアに保管させた。また、プリンセス・ホテルの1420号室にも同様のプレートを残し、不測の事態に備えた。
次期女王「プリシア」の侍女である「プリン」は、旧エルディア情報部に懸賞金をかけられていた。「プリシア」に関する情報を握っていると見なされた為だ。御堂は「プリン」を発見すると、保護という名目で大使館に置きとめる。御堂が「プリン=プリシア」に気付いていなかったことは、「プリシア」と連絡を取るよう「プリン」に指示していることからわかる。
12月6日の夕方、大使館で騒ぎが起こる。守衛によると、男女ふたり組の賊が侵入したのだという。「プリン」はこれに乗じて大使館から脱出し、小次郎のもとへ帰る。男女ふたり組の賊とは、もちろん源三郎とシリアである。シリアは前日、「プリン」が失踪したことを小次郎から聞かされている。源三郎と共同で捜索にあたっていたのだろう。
ストールマンが殺害されたことにより行き場を失った「プリン」は、小次郎と共にプリンセス・ホテルの1420号室へ向かうことになる。この部屋にはエルディアの次期女王が滞在しているはずだった。といっても、「プリン」にはいまだ懸賞金が掛けられている。彼女の身の安全を確保するため、なんらかの手を打つ必要があった。小次郎はグレンに電話をかけ、自分が「プリン」を保護したことを伝えると、「プリン」はもう捕まったという偽の情報を賞金稼ぎの間に流すよう指示する。
プレートに書かれた詩をプリンセス・ホテルで読み、目覚めるプリシアだが、ディーブの襲撃を受けてしまう。ディーブからも雇われていたグレンが、小次郎と「プリン」の動向をディーブに伝えていた為だ。プリシアは現場から脱出し、弥生に保護を求める。襲撃の詳しい事情は「廃墟にて」を参照。
  • 再会
源三郎の尽力によりディーブの魔手から救われた小次郎は、源三郎から国璽の片割れを受け取る。ディーブが捜し求めていた、ディレクタールームの国璽だ。12月4日の夜に入手したとみられる。ストールマンは万が一に備え、国璽の隠し場所を源三郎に伝えていたのだろう。Cプロジェクトの後始末をつけると言い残し、源三郎は去る。
  • 幻覚
ディーブに捕らわれた際に打たれた自白剤を中和するため、源三郎からもらった解毒剤を飲む小次郎だが、解毒剤には強烈な副作用があり、数時間に渡って幻覚を見ることになる。死んだはずのストールマンや二階堂が目の前に現れ、一連の事件について語る。彼らの「証言」は信用に値するのだろうか。正しい部分もあれば間違っている部分もある、というのが答えである。二階堂の証言を例に取ると、「テラーに殺された」というくだりは真実だが、「御堂に国璽を買い取ってもらった」というのは明らかな誤りである。よって、この時に得られた「証言」を考察の対象にすることはためらわれる。
12月7日
  • 戴冠式
源三郎から託された国璽をプリシアに渡すため、小次郎は、戴冠式が行われるトリスタン号に乗り込む。しかし、油断した隙に、国璽を真弥子に盗まれてしまう。ストールマンの手によってふたつに割られた国璽は、こうして、真弥子のもとでひとつになった。
他方、自分の部屋でプリシアとの会談に臨んだアクアは、プリシアが緩やかな民主化を望んでいることを知り、驚く。そして、王制を廃止することを条件に、プリシアの即位を承認する。御堂と手を組んだのは、「王制の信奉者プリシア」の即位を阻むためだった。プリシアが民主化に反対でないとわかれば、前国王と御堂の野望に手を貸す理由はなくなる。
戴冠式が始まる。新たな国王の誕生を承認するのは首相のアクアだが、なぜか会場に姿を現さない。プリシアが、次期女王として紹介される。続いて、重大な発表があるとして、真弥子が紹介される。前国王の野望は、この瞬間に成就するはずだった。しかし、真弥子は国璽をプリシアに渡すと、小次郎との結婚を宣言する。驚いた御堂は、真弥子を連れて会場を去る。
晴れて新たな王となったプリシアは、御堂の逮捕をまりなに依頼する。前国王の忠臣である御堂を政治から排除することが目的だが、表向きの容疑は殺人および殺人教唆。日本の政府は、御堂が旧エルディア情報部の実行部隊テラーを指揮し、ストールマンらを殺害したと考えていた。外交関係に関するウィーン条約により、外交官には不逮捕特権が認められているが、プリシアは大使の任を解くことでこれに対抗するつもりだった。
  • プロポーズの真意
真弥子が、国璽をプリシアに譲ったのはなぜだろうか。彼女は、母の命を奪った王制に復讐するため、一度は即位を決意した。しかし、憎しみはなにも生まないことに気付き、考えを改める。真弥子は日常を望んだ。些細なことで友と笑いあえる、平凡だが幸福に満ちた日常を。戴冠式の直前、好意を寄せる小次郎に船尾で求婚するのも、幸せを掴むためだった。
  • プリシアの計画
エルディアの将来を真剣に案じるプリシアは、まぎれもなく愛国者である。しかし、彼女に対する周囲の評価は厳しい。御堂がプリシアの行為を「国家への反逆」と断じた時、源三郎は一理あると認めているし、アクアも、プリシアに信頼を置いていなかった。なぜだろうか。
プリシアが王位を必要とするのは、ある「計画」を実現するためだった。詳細は不明だが、アクアとの会談から以下のことがわかる。
A…前国王の生存中に「計画」を思い立つ。
B…成功すれば政治は国民のものになる。
C…アクアは「計画」の真の狙いを知らなかった。
また、プリシアをめぐる事実として以下の五点が挙げられる。
D…緩やかな民主化を望んでいた。
E…アクアを筆頭とする改革派を売国奴と決め付けていた。
F…自分を利用しようとする者(王権派)に対しては責務を感じていない。
G…御堂に「偽善者」「人殺し」「反逆者」と罵られる。
H…アクアからは王制の信奉者と見なされていた。
A、B、Dから、計画の目的はエルディアの民主化であることがわかる。つまり、プリシアとアクアは同じ志を抱いており、本来なら対立するはずがなかった。しかし、手段が問題だった。プリシアは緩やかな民主化を実現するため、布石として王権派の一部を粛清する(F、G)。プリシアの真意を知らないアクアは、これを、独裁者になるための粛清と思い込み、プリシアに猜疑心を抱く(C、H)。プリシアが「計画」の狙いをアクアに伝えなかったのは、改革派を信用していなかった為だ(E)。両者の対立はこうして生じるが、戴冠式の直前に行われた会談により、誤解は解消される。
  • 第四の殺人
小次郎は、戴冠式が終わっても姿を見せないアクアを不審に思い、彼女の部屋を訪ねる。バスルームで小次郎を待っていたのは、喉をナイフで突かれ絶命したアクアだった。彼女がもたれ掛かる壁には「d」という血文字が残されていた。たまたま現場に現れた真弥子は、変わり果てたアクアの姿を認めると、悲鳴をあげて逃げ出す。
  • 事件の真相(第四の殺人)
アクアは殺害される直前、プリシアと会談を行い、プリシアの即位を承認した。前国王は、ふたりの会話を盗み聞きしていた真弥子を通じてアクアの裏切りを知り、処断を決意する。二階堂やディーブと違い、首を真一文字に切り裂かれなかったのは、ナイフを振りまわすスペースがバスルームに存在しなかった為である。
血文字を現場に残したのは誰だろうか。壁にもたれ掛かった状態で壁に「p」と書こうとすると「d」になることから、血文字がプリシアを暗示していることは明白である。プリシアに罪をなすりつけるため、前国王が書いたのだ。
アクアが書き残した可能性は低い。真弥子の回想を見る限り、アクアは即死であるし、現場を検証した小次郎も即死だろうと判断している。それに、プリシアとの和解はすでに済んでいる。アクアが前国王とプリシアを間違えるはずがない。
  • 第五の殺人
御堂を逮捕するため、第二機関室へ向かうまりな。追い詰められた御堂はプリシアを人質にとって逃走。ある船室に立てこもる。まりなは、ドアを叩き鍵を開けるよう命じる。内部から女の悲鳴と銃声が響く。鍵を銃で破壊し、船室に踏み込むと、首を切り裂かれ絶命した御堂と、なにかにおびえるプリシアがいた。直後、轟音が響き渡り、トリスタン号が沈み始める。トリスタン号の船底には爆弾が仕掛けられており、御堂の心臓が停止した瞬間、起爆する手はずになっていた。
  • 事件の真相(第五の殺人)
プリシアとアクアの会談を盗み聞きした真弥子は、アイデンティティの危機にさらされる。プリシアが真弥子を「悪しき亡霊」と表現し、即位した場合は暴君になるだろうと語ったからだ。自分の出生に疑問を抱き、プリシアが去ったあと、アクアを問い詰める。アクアは言う。前国王には妾がおり、前国王の子を孕んだが、堕胎を拒否して逃亡、女児を生む、女児は順調に成長し、エルディアの首相になった、と。真弥子は錯乱し、強烈なめまいを催す。正気を取り戻した時、部屋にアクアの姿はなかった。
戴冠式を終え、再びアクアの部屋を訪ねると、彼女はすでに絶命していた。真弥子の混乱はピークに達する。御堂を発見すると、人質となっていたプリシアを気絶させ、真実を求める。御堂は、出生の秘密を隠しきれないと判断し、すべてを暴露する。自分が信じてきたものを突き崩されショックを受ける真弥子。強烈なめまいが、再び彼女を襲う。肉体と精神の崩壊が始まったのだ。ドールマンが御堂にあてた報告書によると、前国王の記憶を脳に定着させる薬品は、過剰に摂取すると自律神経の崩壊を招くという。計画の頓挫を予知していたのか、もがき苦しむ真弥子を見ても、御堂は微動だにしない。真弥子の脳裏に、二階堂、ディーブ、アクアを殺した時の光景がよみがえる。御堂の気配が消えたことを不審に思い、目を開けると、御堂はすでに絶命していた。真弥子の手に握られているのは、血染めのナイフ。精神の崩壊を間近に控え、発狂した前国王が、御堂を手にかけたのだ(あるいは、前国王の野望を叶えられなかった御堂への怒りから犯行に及んだのかもしれない)。信じざるを得なかった。
  • 銃声(第五の殺人)
部屋の外にいるまりなはこの時、銃声を聞いているが、発砲したのは誰なのだろうか。前国王の武器がナイフであること、忠臣の御堂が前国王に危害を加えるとは考えられないことから、消去法でプリシアとなる。御堂の変わり果てた姿を目の当たりにした真弥子は、頭痛にさいなまれるが、この直後に前国王の意識が再び出現したと考えると、発砲の動機も見えてくる。すなわち、気絶から覚めると、部屋には前国王がおり、恐怖のあまり突発的に撃ったのだ。誰の銃を使ったかは不明である。
  • 真弥子の行方(第五の殺人)
前国王は、銃声に驚いたまりながドアを開ける前に船室から消えている。他方、アクアの遺体を最初に発見したことにより、殺人の容疑をかけられた小次郎は、同時期、機関室に身を潜めていた。遠くで銃声が響いたかと思うと、機関室に真弥子が現れる。まりなの追跡をかわすため、前国王は、抜け道を使って船室から機関室に移動したのだろう。
  • 沈没(12月7日~9日)
乗客の大部分は沈みゆくトリスタン号から脱出したが、小次郎、まりな、プリシア、真弥子は船倉に取り残されてしまう。海溝の縁に沈んだトリスタン号。気圧の関係で、浸水だけは免れた。自力での脱出は困難と判断し、救助隊の到着を待つ。万が一の場合は、非常用の酸素ボンベを使って海面に出るつもりだった。
三十時間ほど待っても助けは来ない。あせりを感じた一行は、泳いで脱出する決心を固める。しかし、四つあったボンベのうち、ひとつが何者かによって破壊されていた。全員での脱出は不可能となり、協議の結果、真弥子が救助を求めに行くことになる。彼女は服を脱ぐと、泳いで海面に向かった。
救助隊との接触に成功した真弥子が帰還する。直後、トリスタン号は海溝の底に向かって沈み始めた。壁が壊れ、船倉が海水で満たされてゆく。小次郎は、まりなとプリシアがボンベを持ったことを確認すると、残りのひとつを真弥子に手渡そうとする。しかし彼女はそれを拒んだ。小次郎とまりなが戸惑っていると、真弥子の容姿がプリシアそっくりになった。小次郎、まりな、プリシアの叫びが、船倉にこだまする。
  • 最後の謎(沈没)
一行の命綱である酸素ボンベは、誰の手によって破壊されたのだろうか。小次郎たちが調べたところによれば、船倉に第三者が侵入した形跡はない。
真弥子を「悪しき亡霊」と表現するプリシアには、動機があるかも知れない。しかしそれならば、もっと早い時期に真弥子を殺害しているはずである。真弥子の講師を務めるのは、プリシアの指令を受けて動くシリア。チャンスはいくらでもあったはずだ。それをしなかったのは、真弥子の命を大切に思っていたからに違いない。事実プリシアは、真弥子に危害を加えないよう、シリアに厳命している。
再び覚醒した前国王が、プリシアを亡き者とするために壊したのだろうか。これもおそらく誤りである。船倉の壁が壊れた時、真弥子の容姿はプリシアとうりふたつになるが、真弥子は自我を保っている。前国王の意識は、すでに消失していたのだ。
肉体と精神の崩壊が間近に迫っていることを悟った真弥子が、トリスタン号を自分の墓場とするために壊したと考えられる。
  • 事件の回想
ストールマン、二階堂、ディーブ、アクア、御堂を殺害した人物を、プレイヤーが推理する。不正解の場合は、真弥子の日記を読んだ後、再び推理することになる。
エンディング
  • 真弥子の日記
12月2日~7日までの出来事を記した日記を読む。何事にも消極的だった真弥子が、小次郎やまりなとの出会いを通じて前向きになっていく過程が描かれている。また、一度は即位を決意しながら国璽をプリシアに渡した理由、プロポーズの真意なども赤裸々に記録されている。
前国王の野望を知り、真弥子のアイデンティティは危機にひんするが、小次郎やまりなと過ごした、短くとも充実した日々だけは確かなものだった。海溝の底に沈みゆくトリスタン号に残ることを決めた真弥子は、視覚聴覚を失いながらも、小次郎たちに呼びかける。自分のことを忘れないで欲しい、みんなが笑ってくれたら私も幸せになれる、と。憎しみ、怒り、恐れをすべて捨て去った彼女は、この時、ようやく幸せを掴んだのだった。
  • 女王の想い
エルディアに戻ったプリシアは、真弥子の日記を読み、真弥子の生涯に心を痛める。平凡な生活を望んでいたに過ぎない彼女が、なぜ、かくも残酷な運命の餌食になってしまったのか。真実を知る者に課せられた責務を果たすため、プリシアは、前国王の野望を国民に知らしめることを決意する。
  • 後日談
トリスタン号で小次郎たちに別れを告げ、海に帰ったはずの真弥子だが、彼女の身体はエルディアの王宮に保存されていた。王宮に集まった小次郎、まりな、プリシアが、真弥子に呼びかける。意識の奥底で温かい声を聞いた真弥子は、永い眠りから覚め、小次郎たちとの友情を取り戻すのであった。

以上で物語・作品・登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。


[編集] 製作スタッフ

[編集] PC98版

  • Gamedesign & Scenario:剣乃ゆきひろ
  • Program:菅野洋之(剣乃ゆきひろの本名)
  • CharacterDesign:田島直
  • MusicCompose:梅本竜、高見龍
  • CGDesign & ArtConti.:高岡佳史
  • C.GDirect:野口征恒
  • SubCharacterDesign:松本慶、薄克久
  • CGDesign:北谷恵美、斎藤論薫

[編集] 参考文献

  • 『EVE burst error 原画&設定資料集』 発行所:ソフトバンク株式会社出版事業部 初版発行:1996年12月25日 ISBN 4-7973-0173-2 定価:1748円(税別)
  • 『EVE burst error オフィシャルガイド』 発行所:株式会社アスキー 初版発行:1997年3月7日 ISBN 4-89366-677-0 定価:1200円
  • 『EVE burst error PLUS オフィシャルガイド』 発行所:株式会社エンターブレイン 初版発行:2003年07月26日 ISBN 4-7577-1558-7 定価:1300円(税別)
  • 『ファウスト 2004 MAR Vol.2』 発行所:株式会社講談社 初版発行:2004年3月19日 ISBN 4-06-179554-6 定価:1048円(税別)

[編集] 関連商品

  • CDドラマ
    • 『EVE burst error 小次郎編』 販売元:キングレコード株式会社 品番:KICA-1210 発売日:1998年4月24日 価格:2913円(税別)
    • 『EVE burst error まりな編』 販売元:キングレコード株式会社 品番:KICA-1213 発売日:1998年6月26日 価格:2913円(税別)
    • 『EVE burst error エルディア秘録編』 販売元:キングレコード株式会社 品番:KICA-1218 発売日:1998年10月23日 価格:2913円(税別)
    • 『EVE burst error EXTRA』 販売元:キングレコード株式会社 品番:KICA-1225 発売日:1999年05月28日 価格:2913円(税別)
  • サウンドトラック
    • 『EVE burst error ORIGINAL SOUNDTRACK』 販売元:キングレコード株式会社 品番:KICA-1219 発売日:1998年11月27日 価格:2913円(税別)
    • 『EVE ORIGINAL SOUNDTRACK』 販売元:ホビレコーズ 品番:HBMC-006 発売日:2003年11月28日 価格:2800円(税別)
    • 『EVE burst error "THE PERFECT"』 販売元:EGG MUSIC RECORDS(D4エンタープライズ株式会社) 品番:EMCA-0009 発売日:2009年1月9日 価格:3500円(税込) ※2枚組
    • 『EVE burst error "THE ORIGIN"』 非売品。コミックマーケット75やAC-MALL(EGG MUSIC直販サイト)で『EVE burst error "THE PERFECT"』を購入した先着1000名に配られたもの。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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