現像

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白黒写真の現像。画像が顕現する瞬間。

現像(げんぞう)とは、銀塩写真において、露光することによって撮影された写真映画の感光材料(フィルム乾板印画紙)を薬品現像液)で処理して、画像映像潜像)を出現・可視化(顕像)させることである[1][2][3]。この定義は、英語等でいう developing [4]であって、日本語では、英語でいう processing の指す範囲、つまり、 developing から fixing定着)まで(現像を開始したフィルムが感光性を失い安定するまで)の一連の行程を指す[5][6]。したがって、広義の「現像」を日本語でもプロセスとも呼ぶ[5]

さらには、印画紙へ拡大して焼きつける引き伸ばしまで、暗室操作を含めていう場合もある[要出典]

デジタルカメラの場合、RAW画像で撮影したデータをソフトウェアでレタッチしてJPEGTIFFなどのデータファイルとして出力する処理・過程を現像という[1][2]前述の流れで撮影した画像データの引き延ばしまでも「現像」と呼ぶ場合もある[要出典](⇒ 現像#RAW現像)。⇒ RAW現像

半導体素子等の分野のフォトリソグラフィでも、現像の語を用いるが[6]、本項では扱わない。⇒ フォトリソグラフィ#現像・リンス

本項ではおもに、デジタルな現像ではなく、フィルム等の感光材料を化学的に処理するものを扱う。

概要[編集]

現像[編集]

フィルムの感光剤には、主に臭化銀が使われている。臭化銀にがあたる(感光)と、その一部が分解してになる。感光したフィルム上には、像の形になるように、銀を含む臭化銀の結晶ができている。これを潜像という。感光した臭化銀中に含まれている銀を潜像核という。潜像核(潜像に含まれている銀)は極微量であり、肉眼で見ることは不可能である。これを目に見える量まで増やしてやるのが、フィルム現像である。

現像から定着までの工程は、フィルムにまだ感光する能力が残っているため暗室で行う必要がある。

感光したフィルムを還元剤(現像主薬メトールハイドロキノンが用いられる)を含む薬品に浸すことによって、臭化銀を銀に変化させる。このとき、ハロゲン化銀粒子の還元速度は速いため、潜像核の銀から還元反応が進行し、潜像核を含む臭化銀の結晶だけが還元されてすべて銀となり、黒化する[3]。いっぽう、光が当たらなかった潜像核を含まない臭化銀の結晶はそのまま残る。このようにして目に見える量まで銀の量が増幅される。現像主薬の還元力は、アルカリ性で強くなり、酸性で弱くなる。そのため現像液の助剤には、アルカリ性の塩が添加されている。

現像の進行は現像薬の量(濃度)、配合と温度によって影響される。従って適切な現像を行うためには、現像薬と温度の厳格な管理が必要となる。

なかでも、発色現像、つまり、カラー写真の場合は現像主薬として芳香族ジアミンなどが用いられる。この芳香族ジアミンが臭化銀を銀に還元すると同時に酸化される。酸化された現像主薬は、カプラーと呼ばれる化合物と反応し各色の色素を形成する。このカプラーがフィルムに乳剤に含まれ塗布されている方式を内式(うちしき)という。カプラーを現像液に含ませる場合を外式(そとしき)と言う。

現像停止[編集]

長時間現像液にフィルムを漬けていると、ついには光が当たらなかった臭化銀までもが還元反応をはじめてしまう。そこで、化学変化を止めるための処理を行う。通常は弱酸性の現像停止液に漬けることで現像主薬の還元力を落とすことで行う。現像停止液には通常は酢酸を薄めて使うが、臭気が強く嫌われる。クエン酸を使用する方法もあり、また1分ほどの流水水洗でも十分である。一般に、定着液にも酢酸を加えて現像停止効果を持たせた酸性定着液が主流であり、現像停止浴は省略することが可能であるが、定着液の疲労を極力減らすためにも、専用の現像停止処理を間に挟んだほうが良い。

定着[編集]

現像しただけでは感光しなかった部分に感光剤がそのまま残っている。この部分は光を当てるとまた感光してしまう。そこで、感光しなかった部分の感光剤を除く処理が定着である。感光剤の臭化銀は水にほとんど溶けないが、チオ硫酸塩の水溶液には錯イオンを形成して溶解する。そこでこれを定着液として用いフィルムを浸漬することによってフィルム上から未反応の臭化銀が除去される。しかし、数十分以上も浸漬したままにしておくと、定着処理された黒化銀部分まで溶け出すので注意が必要である。なお定着液に溶解した銀はDPE店などではフィルムメーカーが回収してフィルムに再利用されている。廃液(特に定着液)は銀が多量に溶解しており、下水と混ざると不溶性の硫化銀になり、泥滓(スラッジ)となる。硫化銀の泥滓はリサイクル使用が困難であるので、資源価値がなくなり、また下水処理施設によっては泥滓は処理が困難な場合があるが、それ以上の害はないと思われる[要出典]

なかでも、発色現像、つまり、カラー写真の場合には、漂白・定着の工程が必要である。必要なのは現像主薬とカプラーが反応して生成した色素だけであり、還元で生成した銀が残っているとモノクロ写真のようになってしまう。そこで現像で生成した銀も未反応の臭化銀も両方とも溶解させてしまう。漂白と定着を一浴で済ませる Blix (Bleach + Fix) 処理には、漂白剤としてFe (III) EDTA (エチレンジアミン四酢酸鉄)を含むポリカルボン酸アミン類錯体を、定着剤としてチオ硫酸塩(ハイポなど)をそれぞれ用いた水溶液を漂白定着液として用いる。(かつては漂白剤としてフェリシアン酸塩(赤血塩)が使われた。しかし、赤血塩はチオ硫酸塩と混ぜると保存性が著しく悪く、漂白のあとで定着を別個に行なわなければいけなかった。また、シアン公害の問題もあった。そのため、現在では Fe (III) EDTA 等が使われている。)

現像(developing)から定着(fixing)、そして、水洗(定着が終わったフィルムから薬品を取り除く。この時、薬品を取り除くことを促進する薬品を使う場合がある)と乾燥(水分を取り除く)までが、現像工程(プロセス、processing)である。

行程[編集]

白黒ネガ現像[編集]

  1. ゼラチン層を膨らませるためにフィルムを水に浸す。
  2. 現像液 (developer)で、潜像を銀像に変換する[7]
  3. 停止浴 (stop bath)、酢酸クエン酸の希薄溶液を用いて現像液の活動を停める。清水での洗浄で代用できる。
  4. 定着液 (fixer)で、残留するハロゲン化銀を溶かして除き、画像に永続性と光耐性をもたせる。
  5. 水洗して残留した定着液をすべて洗い流す。定着液の後にハイポ・クリーニング液(亜硫酸ナトリウム)を用いれば、水洗時間が削減され、定着液がよりよく落ちる。
  6. 非イオン系の界面活性剤の希釈溶液で洗浄すると、硬水による乾燥染み斑を除去でできる。
  7. ハウスダストのない環境でフィルムを乾燥させる

白黒リバーサル現像[編集]

ネガの行程に以下の行程が加わる。

  1. 停止浴(3.)の次に、フィルムを漂白し、現像されたネガ像を除去する。感光せず現像されていないハロゲン化銀から形成された、潜像のポジ像がフィルムに含まれている状態にする。
  2. fogging(カブリのこと)。感光させるか、あるいは化学的に、反転像を得る。
  3. 残っているハロゲン化銀を「第二現像液」で現像し、ポジ像に変換する。
  4. 最後に、定着、洗浄、乾燥を行う[8]

カラーネガ現像[編集]

  1. 発色現像液でネガ銀像を現像し、副産物として、染料結合英語版がフィルムの乳液層それぞれの染料を活性化する。
  2. 漂白液(再ハロゲン化漂白液)で、現像された銀像をハロゲン化銀に変換する。
  3. 定着液で、銀塩を除去する。
  4. 最後に、洗浄、安定化、乾燥を行う[9]

RA-4現像英語版現像では、漂白と定着が結合して漂白定着として行うので、上記の行程が1つ減る[10]

カラーリバーサル現像[編集]

(内式カラーリバーサル)

  1. 白黒と同じ現像液で、フィルムの各層にある銀を現像する。
  2. 洗浄あるいは停止浴で、現像を停める。
  3. fogging(カブリのこと)。感光させるか、あるいは化学的に、反転像を得る。
  4. ハロゲン化銀を現像し、現像液をつかいきりフィルムの各層にある染料を結合させる。
  5. 最後に、漂白、定着、安定化、乾燥を上記同様に行う[9]

現像薬[編集]

現像に使う薬品にはいろいろあるが、ここでは白黒フィルム現像(developing)用の代表的な薬品を説明する。

単体の薬品[編集]

メトール英語版 (MetolN-methyl-p-aminopenol hemisulphate)
現像主薬。ほとんどの白黒現像に使われている薬品である。この量が多いと軟調に仕上がる。メトールとヒドロキノンを組み合わせた現像液はMQ現像液と称される。
ヒドロキノン(ハイドロキノン)
補助現像剤として使われる。メトールと組み合わせ量を変化させることによって、感度や粒子状態を変化させることができる。ヒドロキノンの量が多いと硬調に仕上がる。
フェニドン英語版 (Phenidone1-phenyl-3-pyrazolidone)
現像主薬として使われる。通常はヒドロキノンと組み合わせて使う。増感性能がある。若干軟調に仕上がるがメトールよりも微粒子で粒状性が良い傾向がある。フェニドンとヒドロキノンを組み合わせた現像液はPQ現像液と称される。
ダイメゾン類 (DimezoneDimezone SPhenidone B)
フェニドンにはアルカリ性溶液中で加水分解する欠点があるが、これを改良したもの。ピラゾリドン環の4位置がメチル基やヒドロキシルメチル基で置換されている。
アスコルビン酸塩(ビタミンC)とその異性体
メトールやフェニドンと組み合わせて白黒現像液に使用する例が出てきている。ネガの微細な描写に優れ、環境に対する負荷もハイドロキノンより優れるが保存性に劣り、性能の安定した現像液の処方は難しい。
亜硫酸ナトリウム
現像主薬の酸化を防止するため現像液に大量に添加される。微粒子効果、若干の増感効果や、エッジ効果による画像シャープネス向上作用もある重要な薬品である。また酸性定着液調合において、酢酸によるハイポの分解を防ぐ目的で添加される。その他、定着処理を終えて最終水洗する前のフィルムを亜硫酸ナトリウム2 - 5%液に1分ほど漬けてやると、フィルムに残存するチオ硫酸銀錯塩をより水溶性の高い亜硫酸塩に置換できるので、水洗時間を大幅に短縮できる(水洗促進浴)。
硼砂 (ホウ砂
pH9前後で優れた緩衝作用のあるアルカリ剤で、微粒子のフィルム現像液で現像促進剤に用いられることが多い。7水塩や10水塩など、結晶水の数によって効果が上下するので、添加量には注意が必要である。
炭酸ナトリウム
現像主薬に加えて現像を促進する。pH 10 前後で緩衝作用があるため、主に高コントラストフィルム現像液やプリント現像液に用いられる。
アミン
二級アミンと三級アミン(特にアミノアルコール類)は、特にフィルム現像液の高濃縮度の製品中で、アルカリ剤、溶剤などと多機能に活用される。一級アミンはハロゲン化銀の溶解作用が強く、適さない。
臭化カリウム
カブリ防止に使われる。
ベンゾトリアゾール英語版 (Benzotriazole)
カブリ防止に使われる。印画紙現像液に用いると、現像銀の色調が冷黒調になる傾向がある。
チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)
定着液の主要薬品である。
チオ硫酸アンモニウム
迅速定着液の主要薬品である。チオ硫酸ナトリウムよりも定着作用が強力で、定着処理時間を大幅に短くすることができる。
酢酸
現像停止液の主要薬品である。現像液のアルカリ性を酢酸の酸性で中和させて現像能力を停止させる。
ホルムアルデヒドホルマリン
強い定着作用を示すので、写真用定着液に用いられることがある。しかし、一般には現像停止効果を持たせた酸性定着液が主流であるため、酸性では定着効果を示さないホルムアルデヒドの使用例は極めて少ない。

処方[編集]

単体の薬品を組み合わせ、色々な現像液が作られている。以下はその例で、コダックイルフォード富士フイルム、アグファ(ゲバルト社と合併、現在のアグフア・ゲバルト)、小西六写真工業(のちのコニカ、現在のコニカミノルタホールディングス)、オリエンタル写真工業(現在のサイバーグラフィックス)、三菱化学その他、フィルムの会社により処方が異なる。 処方のあるものは、いずれも「水を足して1000ml」として完成する処方を持つ現像液である。

処方
社名 型番 特徴 水 (50℃) 水 (40℃) メトール英語版 無水亜硫酸ナトリウム ハイドロキノン 亜硫酸水素ナトリウム 炭酸ナトリウム 水酸化ナトリウム 臭化カリウム ホウ砂 ホウ酸 メタホウ酸ナトリウム チオシアン酸カリウム フェニドン英語版 備考
コダック D-8 超硬調現像液 90g 4.5g 37.5g 30g 酸化しやすく保存性が悪い。使用の度に要新調
D-11 硬調現像液 1g 75g 9g 1水塩30g or 無水25.5g 5g 原液のまま使用。硬調すぎた場合は1:1希釈
D-23 750ml 7.5g 100g
D-25 超微粒子軟調現像液 750ml 7.5g 100g 15g
D-52 750ml 1.5g 22.5g 6.2g 無水15g 1.5g
D-72 印画紙用 750ml 3g 45g 12g 1水塩80g or 無水67.5g 2g 10-20倍に希釈することでフィルムにも使用可
D-76 一般微粒子現像液 750ml 2g 100g 5g 2g レシピが公開されているので自前で混合可。1927年以来長らく銀塩写真フィルムの世界標準。現在のコダック製パッケージ版D-76は改良で微妙に成分が違う
D-76d 750ml 2g 100g 5g 8g 8.8g
D-96 750ml 1.5g 75g 1.5g 0.4g 4.5g
DK-20 750ml 5g 100g 0.5g 2g 1g
DK-50 750ml 2.5g 30g 2.5g 0.5g 10g
T-Maxデベロッパー コダックT-Max専用として市販。富士フイルムのモノクロフィルムには、同液の処理時間が書かれているものあり
イルフォード ID-11 コダックD-76の完全互換品
富士フイルム FD-3 750ml 2g 40g 4g 無水24g 1g
FD-4 750ml 2g 50g 4g 無水12g 2g
FD-5A 750ml 2g 24g 6g 無水20g 3g
FD-6 750ml 3g 25g 8g 無水30g 2g
FD-7 750ml 2g 40g 6g 無水30g 2g
FD-8 750ml 1g 24g 8g 無水20g 2g
FD-21 750ml 3g 90g 2g 0.5g 5g
FD-31 750ml 1g 80g 8g 無水24g 4g ミニコピーフィルムをISO25とし、線画や文字の複写をする場合の指定処方。原液のまま20℃4-6分
FD-104 500ml 3g 30g 2.5g 無水12g 0.5g ミニコピーフィルムをISO6とし、写真や像画の複写をする場合の指定処方
FD-105 印画紙用 500ml 3g 30g 7g 1水塩53g 1.5g
FD-122 500ml 2.5g 100g 2.5g 0.5g 無水2g
フジドール コダックD-76の相当品、2007年生産終了
スーパープロドール フジドールの高速化タイプ。日本国内で入手できる中で唯一D-76に近い処理特性を持つ高速現像液。コダックやアグフアのフィルムにも汎用可
ミクロファイン メトール単液系処方、市販
アグファ アグフア17 750ml 1,5g 80g 3g 0.5g 3g
ロジナール 希釈タイプの市販現像液。1892年 - 2007年の115年間販売されたロングセラー
小西六 SDM-1 コニマイクロ用指定処方 750ml 1g 75g 9g 1水塩27g 5g
SD-5 コダックD-72に近い処方
SD-20 やや軟調の普通微粒子現像液 750ml 1.5g 100g 3g 0.5g 無水2g
SD-21 普通微粒子現像液 750ml 4g 80g 0.5g 無水2g
オリエンタル OD-100 普通微粒子現像液 750ml 2.5g 100g 5g 3g 2g
三菱 MD-51 印画紙用 750ml 2g 30g 8g 無水45g 1.5g
POTA 超軟調現像液 750ml 30g 1.52g コピーフィルムで一般撮影し超微粒子フィルムとして使う。軟調すぎる場合はハイドロキノン1gを加える

現像方法[編集]

現像は、現像を専門に行なっている現像所で行うのが通常である。カラー写真のネガフィルムの現像はC-41現像、リバーサルフィルム(スライド)の現像はE-6現像を行うのが標準であるが、フィルムの製造会社・フィルム製品によって、現像の方法、薬品等は指定されている。コダック等が公開している現像方法、現像液等の薬品のキットが製造販売されており、自家現像を行うことも可能である。

白黒フィルムの現像は、現像に使う薬品もさほど多くはなく、処方も公開され、工程管理も比較的楽であるため、自家現像も行なわれている。大きなカメラ専門店に行けば、個人レベルで行う現像器具や薬品を購入することができる。 またカラーフィルムも内式の製品であればそれ程難しくなく自家現像が可能である。カラーの場合は色バランス等への影響を考えると標準処理に出来るだけ忠実に処理するのが好ましく、その意味では処理系に創作性が入り込む余地は少ない。白黒の場合は意図的な制御によって様々な効果が得られるため、芸術写真家などにおいてはこの過程を創作的に利用する場合がある。この場合当然ながら白黒でも工程管理を厳しく行なわなければ意味はない。

小型タンク現像[編集]

現像用タンク
リールにフィルムを渦巻状にセットし、タンクに納めて蓋をしてから現像液を注ぐ。
小型タンクでの現像のイメージ図。

個人レベルで一番よく行われている方法である。専用のタンクを使って現像する。プラスチック製の物とステンレス製の物がある。複数本同時に処理できる物もある。

タンク内には渦巻き状をしたリールが入っていて、そのリールにフィルムを巻き込んで現像する。一般的な現像タンクにはリールへの巻き込み方に数方式あり、プラスチックのベルトと共に巻き込んでいくベルト式、片側のフィルム端を引っ掛けていく片溝式、フィルム両端を沿わせる両溝式、などがある。また、処理時の撹拌では、容器全体を反転させるタイプと、撹拌ノブを廻しこみ液流を生じるタイプがある。リールへの巻き取りとタンクへの組み込みは暗室、又は光が入らないようにした専用の箱や袋の中で行うが、それ以降の作業は通常の室内環境で行える。

現像タンクはふたを開け閉めしないでも中の液体を出し入れするための特殊な機構や、中のリールを回して攪拌効果を起こさせるための回転軸などが備わっている。

処理中は温度管理が重要であるが、プラスチック製のタンクは保温性に優れるため初心者でも扱いやすいことが特徴である。しかしステンレス製タンクでは熱の伝わりやすさから全体を保温バットなどに漬けて温度をコントロールすることが容易なため、特殊な処方を用いたり、より緻密な処理を行うのに向いている。

パトローネを直接使う現像方法[編集]

富士写真フイルムは以前に、ダークレスという商品名で簡易現像器を市販していた。(ネオパンSSの終了と時を同じくして2013/03に出荷終了)これは、パトローネが入るくらいの簡易現像器に撮影済みフィルムの入ったパトローネをそのまま入れて、専用の現像液で現像と定着を行うものである。遮光ケースであるパトローネに入ったまま処理できるため暗室が不要であるが、処理中に薬品をパトローネ内部で循環させるためハンドルを常に回転させ続ける必要があり、薬液の循環がうまくいかなくなると現像ムラが出やすい。また、回転方向を間違えたまま無理に回すとフィルムが内部で折れ曲がってしまう、などの欠点がある。しかし、使用する薬液の量が通常のタンク現像より少なくて済み、暗室を持たない初心者や、暗室のない場所で現像を要求される場合にも対応できるという点で、手軽な簡易現像器であった。本来はネオパンSS専用のモノクロ現像キットであるが、薬液を入れ替えることでカラー現像に応用するアマチュアもいる。なお、以前から「割りばしとドンブリ法」と名付けられた、ドンブリ鉢に現像液を入れ、パトローネを沈めて割り箸で回転させながら現像を行う方法は書籍で紹介されていた。フィルムを完全に巻き取ってパトローネに入れてしまうのではなく、端を少し残してテープで固定しておくことや、現像前にパトローネごと水洗いしておくといった工夫も知られており、これはダークレス現像キットにおいても有効な方法である。現在ダークレスの入手は困難であるが、富士写真フィルムのフィルムケースを加工して同様のことを行う方法がある。

皿現像[編集]

大型シートフィルムや印画紙を現像する場合に使われる。プラスチックやホーロー製の、やや厚みのある平皿に現像液などを入れ、現像する。

大型シートフィルムの場合は、全暗黒中でないと出来ないが、印画紙の現像の場合は安全光(感光しない赤い光、セーフライト)下で作業することが出来る。

写真用現像機[編集]

大型現像所、プロラボ等で使われている現像機。

シネ現像機[編集]

ロール状のフイルムを135の場合だと50本 - 70本を1ロールにつなぎ合わせまとめて現像するときに使う現像機。110も流せるが10本程度繋いで流す。

  • 大量処理できると言う利点がある、高速でローラーをフィルムが通るため傷になりやすい。 
  • 現像事故に備えて現像機そのものを設置する部屋自体が暗室になるようにする必要がある。
  • 現像事故が起きた場合に多くのフィルムに増感処理されてしまうなど影響が及ぶ事がある。

吊り型現像機[編集]

120220ブローニーフィルム、4×5、8×10、11×14等の大型シートフィルムを現像する場合に用いる。

  • 増減感を行う際にも用いる現像機、ロールフィルムの場合ハンガーに掛けている状態が上下に長く吊らされるので上部と下部で厳密に言えば現像時間が異なるが、さほど影響はない。

映画用フィルム[編集]

現像場英語版」を参照。

映画用フィルムの現像は、原理的には、写真用フィルムの現像と同様である。現像される映画用フィルムの種類には、ネガフィルムで撮影される35mmフィルム16mmフィルム、おもにリバーサルフィルムで撮影される8mmフィルムスタンダード8mmフィルムスーパー8シングル8)等がある。

映画用フィルムのうち、16mmフィルムや8mmフィルムといった小型映画用のカラーフィルムは、ネガフィルムの場合にはECN-2現像、リバーサルフィルムの場合はVNF-1 E-6現像が行なわれており[11]、コダックのトライ-X等の白黒リバーサルフィルムも、白黒スライドフィルム用の現像を行うことが可能であり、白黒8mmフィルムの現像サービスではネガに現像されている[11]。原理的にはいずれも自家現像も可能である。

RAW現像[編集]

プロフェッショナル、ハイアマチュア用デジタルカメラでは、撮像素子で得られた情報をそのまま出力したRAW画像データを扱うことがある。このRAW画像データを処理し、普通に扱える画像形式に変換する行程をRAW現像、または単に現像と呼ぶ。この処理は、カメラ本体で再処理(カメラ内現像)したり、メーカーの専用ソフトやRAW画像を扱える画像処理ソフトで行うが、画像形式の変換だけではなく、コントラストホワイトバランスなどの補正を加えることができる。

フォトリソグラフィ[編集]

印刷原板、半導体や電子回路におけるフォトリソグラフィは、印刷用の原板製作やその応用技術である[6]半導体プリント基板の製造工程で、形成したい形状に露光させたレジストから必要な部分以外を除去する行程を指して、「現像」と呼ぶ[6]

脚注[編集]

  1. ^ a b デジタル大辞泉『現像』 - コトバンク、2011年11月30日閲覧。
  2. ^ a b カメラマン写真用語辞典『現像』 - コトバンク、2011年11月30日閲覧。
  3. ^ a b 百科事典マイペディア『現像』 - コトバンク、2011年11月30日閲覧。
  4. ^ プログレッシブ和英中辞典(第3版)『現像』 - コトバンク、2011年12月3日閲覧。
  5. ^ a b デジタル大辞泉『C-41現像』 - コトバンク、2011年11月30日閲覧。
  6. ^ a b c d 『図解入門よくわかる最新半導体プロセスの基本と仕組み』、佐藤淳一、秀和システム、2010年2月 ISBN 4798025232 、p.100.
  7. ^ Wall, 1890, p.30–63.
  8. ^ Photographic Almanac, 1956, p. 149–155
  9. ^ a b Langford, Michael (2000). Basic Photography. Oxford: Focal Press. pp. 210; 215–216. ISBN 0 240 51592 7. 
  10. ^ Photographic Almanac, 1956, p. 429–423
  11. ^ a b 自社現像レトロエンタープライズ、2011年12月2日閲覧。

参考文献[編集]

  • Wall, E.J. (1890). Dictionary of Photography. London: Hassel, Watson and Viney Ltd. 
  • The British Journal (1956). Photographic Almanac. London: Henry Greenwood and Co Ltd. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]