レンズ付きフィルム

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レンズ付きフィルム

レンズ付きフィルム(レンズつきフィルム)は、フィルム交換をしない事を前提とした軽便なカメラである。

目次

[編集] 概要

フィルムをプラスチックなどの簡素なカメラにあらかじめ装填された状態で販売され、撮影終了後は分解することなく現像所に現像を委託するシステムである。カメラ本体は組立式で、使用後は現像所経由でメーカーに回収され、分解してリユースおよびリサイクルされている。ユーザーには現像後、ネガフィルムおよびプリントされた写真だけが返却されるようになっている。

発売当初や一般的には「使い捨てカメラ」と呼ばれていたが、カメラとしてではなく、あくまでレンズのついたフィルムとして販売していること[1]、また使用済み筐体の再生利用が図られている事情から、メーカー側では「レンズ付きフィルム」と呼んでいる[2]

時折インスタントカメラと呼ばれることがあるが、これは「インスタント」を「即席」ではなく「簡易」と解釈をしたことによる誤用である。本来はポラロイドカメラや富士フイルムの「フォトラマ」、「チェキ」等その場で紙焼写真が出来上がるカメラ方式のことを指す。

カメラとしてはごく簡易な固定焦点式がほとんどで、シャッタースピードも固定されている。フィルムの巻き上げは手動で、使いきり式であるためフィルムの巻き戻しや交換はできず、裏蓋もない。露出調整は高感度でラティチュードの広いネガフィルムに頼り、絞りもあらかじめ絞られて(F11~16程度)パンフォーカスによりピント調節を省略している。このため、ユーザーは最小限のカメラ操作で簡単に写真を撮影することができる。近年はフィルムの著しい高性能化とともに、モード切替でピント・絞り・シャッター速度などを変更できる製品が多く登場している。

[編集] 歴史

1986年に富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)が「写ルンです」(うつるんです)を発売したのが最初である。初期モデルは110カートリッジフィルム規格を採用、ISO100の24枚撮り一種類だったが、のちに画質の向上を狙って現在の主流である35ミリフィルムのISO400に仕様変更される。後には小型で撮影枚数が多く、画面フレームの形状などに自由度が多いIX240カートリッジフィルムを内蔵した製品も普及した。

ISO400以上の高感度フィルムは、従来ポピュラーだったISO100クラスのフィルムに比べ、シャッタースピードを速くできるが、画質が粗い傾向があった。しかし1980年代には技術・品質の向上により、画質のザラツキ感がさほど感じられないようになった。これによって、焦点固定・シャッター速度固定のカメラでも、手ぶれや露光不足などの問題を伴わずに満足しうる質の写真を撮影できるようになった。また、同じ頃プラスチックレンズの品質が向上し、低コストで量産できるようになった。またコニカ製品の中には、レンズの低収差による描写力低下を補う為にフランジバック(フィルム面)を意図的に湾曲させ、非球面レンズと同様の効果を狙って画質の向上を狙った機種もあった。

「写ルンです」は、これらの技術向上に着目して発案された一種のニッチ商品であったが、観光地など出先で買い求め即座に撮影できる手軽さが、消費者に好評を得てヒット作となり、急速に普及していった。

その成功に伴い、

  • コニカ(後のコニカフォトイメージング→コニカミノルタフォトイメージング)
    • 「よく撮れぞうくん」シリーズ
    • 「撮りっきりコニカ NICE SHOT」シリーズ
    • コニカミノルタ 撮りっきりMiNi」シリーズ
  • コダック
    • 「スナップキッズ」シリーズ
  • アグフア
  • 三菱製紙
    • 「三菱カラー フィルム入りカメラ パシャリコ」(フィルム以外はコニカのOEM)

などの競合フィルムメーカーがこの分野に参入し、他にも

  • 松下電器産業(現・パナソニック)
    • 「パナ撮る」(OEM。初期はコニカ「よく撮れぞうくん」、後に富士写真フイルム「写ルンです」がベースとなった。内蔵乾電池は自社製品。なお、松下電器はフィルムカメラを発売していた時代もある)
  • イオン
  • ダイエー
    • 「セービング撮りっきりカメラ」(コニカOEM)

など家電メーカー等の参入が見られたが、2008年時点では富士フイルム、コダック、コニカミノルタからフィルム販売部門を譲受したDNPフォトマーケティング(現DNPフォトルシオ)の「torikkiri」(OEM)などフィルムメーカーの製品がほとんどである。

その後、望遠、フラッシュ付き、パノラマ撮影仕様、セピア調撮影仕様、キャラクターもの、防水タイプなど、付加機能が付いたものが続々と発売された。特にフラッシュ装置は、固定焦点カメラが不得意な光量不足の状況において非常に有効な対策となったことから、レンズ付きフィルムにおける標準的な装備品となった。

その手軽さから、1990年代にかけては高校生を中心に自分撮りが流行り、超広角レンズと前面にミラーを配置して自分撮りのしやすいものも登場した。

近年では、より高感度(ISO800~1600)なフィルムを使用して夜景を綺麗に写せるもの、光センサーを搭載して自動で絞りを調節するものなどが登場している。

2000年代始めからのデジタルカメラの急速な普及や、携帯電話に付属するカメラの撮影機能が格段に充実してきたこともあり、市場の需要も減少の一途をたどっている。

[編集] 使用時の注意点

レンズ付きフィルムは、特別に写真についての知識のないユーザーでも気軽に使える用に設計されているが、操作の簡略化を実現するためにカメラの性能は限定的なものとなっており、撮影時の失敗も多いので注意されたい。

レンズ付きフィルムの大部分は、日中の屋外での一般的な被写体を撮影することを想定しており、フラッシュは日陰や逆光時の補助光源として内蔵してある、ごく低出力のものである。また、ネガフィルムは露光過剰には強いが露光不足には弱い。このため、レンズ付きフィルムで本格的な夜景を撮影することは難しい。屋内での撮影も露光不足を起こしやすい[3]

その他にも、次のような失敗が多い。

  • 被写体がカメラに近すぎてピントが合わない
  • 小レンズがボディに埋没した特有の形状ゆえに、撮影時に撮影者の握り込んだ指が写真の片隅に写り込んでしまう
  • フラッシュの焚き忘れ、またはフラッシュ光到達範囲外の撮影による露光不足[4]

また、フラッシュ内蔵の商品には電子回路が内蔵されているため、不用意に分解すると感電の恐れがある。

フィルムはパトローネから引き出された状態で装填されており、撮影が進むにつれてパトローネに巻き込まれるようになっている。従ってネガ上のナンバーと画像の撮影順が逆になる(小さいナンバーの画像ほど新しい画像になる)ため、焼き増しなどの際に注意が必要。

[編集] リサイクル

ほとんどの部品は分解のうえ、点検して再利用、破砕して原料として用いるなどの手法でリサイクルされる。

1990年代前半頃から、メーカーとは無関係の企業によって、使用後の製品にフィルムを再装填した商品がディスカウント店などで市販されていたこともあるが、メーカー側が構造部品に再充填を防止する対策を施したため、最近はほとんど見られなくなった。

また、フラッシュの電源として内蔵されているアルカリ乾電池についても、フラッシュの使用回数に対して消耗度が少ない(最大枚数の39枚に全てフラッシュを使用したとしても電池の余力は十分に残っている)ため再利用が図られ、店舗によっては電池をもらうことができるほか、障害者支援の一環として梱包を委託したものを、リサイクル乾電池として販売しているケースもある。

[編集] 名称

日本での製品第1号となった「写ルンです」の知名度があまりにも高いため特に製造会社を問わず同様の製品を全てそう呼ぶ傾向が強い[5]

[編集] 注釈

  1. ^ 「カメラ」とした場合、現像後にユーザーから返却を求められる可能性があるため。また、仮に物品税が復活した場合に課税対象となる可能性が高いためである。
  2. ^ 初期の製品は「フィルム」として販売していることを強調するため、フィルムのパッケージと同様の厚紙製の外装をレンズ付きフィルム本体に施していたものが多かった。
  3. ^ 近年の製品では露光不足対策が進んで露光不足を起こしにくくなった。
  4. ^ 特に記念写真などで大人数を写す場合、全員をフレームに収めようとするとどうしても撮影者は後ろへ下がる必要があり、フラッシュ光が届かなくなりやすい。
  5. ^ これは「宅急便」や「ウォークマン」、「カップヌードル」についても言える現象である(その他の事例は普通名称化した商標一覧を参照のこと)。