ホルムアルデヒド

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ホルムアルデヒド
ホルムアルデヒドの構造式 分子模型
識別情報
CAS登録番号 50-00-0
KEGG D00017
特性
化学式 CH2O
モル質量 30.03
外観 無色気体
密度 0.8153 g/mL 液体
相対蒸気密度 1.08
融点

−92

沸点

−19.3

への溶解度 非常によく溶ける
危険性
MSDS MSDS
EU分類 有毒 T
EU Index 605-001-00-5
Rフレーズ R23/24/25 R34 R40 R43
Sフレーズ (S1/2) S26 S36/37/39 S45 S51
引火点 64 °C (147 °F)
発火点 430 °C (806 °F)
爆発限界 7–73%
半数致死量 LD50 100 mg/kg (oral, rat)
出典
ICSC
NIST webbook
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ホルムアルデヒド (Formaldehyde) は有機化合物の一種で、最も簡単なアルデヒド。毒性は強い。分子式は CH2O。酸化メチレンとも呼ばれ、IUPAC命名法では メタナール (methanal) と表される。CAS登録番号は [50-00-0]。フォーマルダハイドとも呼ばれる。

製法・性質[編集]

触媒存在下にメタノールを空気酸化して得られる。さらに酸化が進むとギ酸となる。融点 −92 ℃、沸点 −19.3 ℃、分子量 30.03である。刺激臭を持つ無色の気体である。

などの極性溶媒に可溶で、37% 以上の水溶液はホルマリンと呼ばれる。ホルムアルデヒド及びホルマリンを含むホルムアルデヒド水溶液は、毒物及び劇物取締法により医薬用外劇物に指定されている。簡単に重合し、無水のものはトリオキサン (CH2O)3、水溶液からはパラホルムアルデヒド HO(CH2O)nH を生ずる。

フェノール樹脂メラミン樹脂尿素樹脂などの原料としても広く用いられる。

ホルマリンの2008年度日本国内生産量は 1,128,801 t、工業消費量は575,633 t である[1]

人体への影響[編集]

ホルムアルデヒドはアミノ酸や生体異物を代謝する際、内因的に生成し(Hutson, 1970)、ホルムアルデヒドに暴露されていない人でも、血液中ホルムアルデヒド濃度が2.61±0.14μg/g(ほぼ2.6ppm)との報告がある (Heck et al., 1985) [2]

人体へは、濃度によって粘膜への刺激性を中心とした急性毒性があり、蒸気は呼吸器系、目、のどなどの炎症を引き起こす。皮膚や目などが水溶液に接触した場合は、激しい刺激を受け、炎症を生ずる。 ホルムアルデヒドはWHOの下部機関である国際がん研究機関によりグループ1の化学物質に指定され、発癌性があると警告されている。

いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質のうちの一つとして知られる。建材、家具などから空気中に放出されることがあり、濃度によって人体に悪影響を及ぼす。

用途[編集]

接着剤塗料防腐剤などの成分であり、安価なため建材に広く用いられている。 エンバーミングにおいてもこの希釈液が用いられる事が多い。

1948年10月30日から1990年11月22日まで農薬登録を受け、殺菌剤として稲のいもち病やジャガイモの黒あざ病防除に種子消毒の形で使用された[3]

食品[編集]

水道水にはホルムアルデヒドの水質基準値が存在する。また、食品衛生法でもホルムアルデヒドが規制されている。しかし、一部の魚類[4][5]や椎茸(乾燥椎茸と一部の生鮮椎茸[6])など、(健康に影響の無い範囲であるものの)ホルムアルデヒドが含まれている天然食材が存在する。

規制[編集]

いわゆる「シックハウス症候群」の対策として現在、建築基準法によりホルムアルデヒドを放散する建築材料の使用制限が設けられている。建築材料には、放散量によって制限を受けない低放散量のF☆☆☆☆から内装への使用制限を受けるF☆☆までのランクがあり、ランク外の物は内装仕上げには使用できない。また、天井裏等にはF☆☆以下は使用できない。

居室内の気中濃度としてWHO厚生労働省により 0.08 ppm の指針値が設けられている。しかし、現在のところ、性能規定や指針値を超えた場合の罰則等はない。

化粧品においては、DMDMヒダントインやイミダゾリジニル尿素を含んでるものは、薬事法及び薬事法施行規則で「ホルムアルデヒドに過敏な方および乳幼児のご使用はおさけください。」と記載することが義務付けられている[7]

利根川水系の浄水場におけるホルムアルデヒド検出事故[編集]

2012年5月、利根川水系の浄水場で、水質基準値1リットルあたり0.08mgを上回る最大0.168mgのホルムアルデヒドが検出される事故が発生した[8]。原因は、埼玉県の化学メーカーが委託した高崎市産業廃棄物処理業者が利根川に処理水を廃棄した際に、廃液に含まれるヘキサメチレンテトラミン(HMT)が塩素と反応してホルムアルデヒドが生成されたと特定された(ホルムアルデヒドが直接流出したわけではない)[8][9]。この産廃業者は化学メーカーから廃液65.91トンを受託し、中間処理をほどこしたうえで放流した。このうち廃液にはHMTが国の調査の0.6~4トン[10]、埼玉県・群馬県・高崎市の調査で6トンが流入したと推計された[9]

脚注[編集]

  1. ^ 化学工業統計月報 - 経済産業省
  2. ^ [化学物質の初期リスク評価書 - 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター
  3. ^ 植村振作・河村宏・辻万千子・冨田重行・前田静夫著 『農薬毒性の事典 改訂版』 三省堂、2002年ISBN 978-4385356044
  4. ^ 天然魚類中のホルムアルデヒドについて 長崎県衛生公害研究所報 2003年
  5. ^ 食品安全総合情報システム 食品安全関係情報詳細 syu03410940369 台湾行政院衛生署食品薬物管理局、輸入食品の検査で不合格となった食品を公表 内閣府食品安全委員会 2011年8月16日
  6. ^ しいたけのホルムアルデヒド含有量に関する調査結果について 厚生労働省食品安全部基準審査課 2009年6月19日
  7. ^ 医薬発第九九〇号 化粧品規制緩和に係る薬事法施行規則の一部改正等について (各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省医薬安全局長通知) 宮城県保健福祉部薬務課 2000年9月29日
  8. ^ a b [1] 群馬県「利根川水系の浄水場におけるホルムアルデヒド検出事案への対応状況について」
  9. ^ a b [2]「利根川水系の浄水場におけるホルムアルデヒド検出事故」リスクマネジメント最前線、東京海上日動リスクコンサルティング
  10. ^ 「利根川水系におけるホルムアルデヒドによる水道の影響について」厚生労働省平成24年5月24日

関連項目[編集]