木酢液

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木酢液(もくさくえき)とは、木材を乾留した際に生じる乾留液の上澄分のこと。代表的な例としては、炭焼き時に副産物として木酢液が製造される。外見は赤褐~暗褐色の液体。ほとんどが水分であるが、木材由来の有機酸(酢酸など)が含まれ弱酸性を示す。それ以外の成分として 、アルコール類カルボニル化合物、あるいはフェノール類フラン類といった芳香族化合物などが含まれる[1][2]。原材料や乾留の条件により成分にばらつきがある[3][4][5]

メタノールの別名である「木精」は、かつて木酢液の蒸留により得られていたことに由来する。フェノール類は主に木材の成分であるリグニンから生じる。

木材乾留工業

イギリスでは1820年ごろより、木酢液の蒸留により得られた酢酸から媒染剤として酢酸ナトリウムを製造する事業が始まっている[6]

用途

かつて木酢液は酢酸やメタノールを製造するために利用されていたが、それらの化学物質の供給源は化学合成あるいは醸造に取って代わられた。 現在は農薬的な使用、もしくは民間療法、厚生目的での利用がある。食品加工法のひとつである液体燻製では、木酢液から得られた燻液(スモークフレーバーとも)が用いられる。

過去に木酢液は農薬として登録されていたが、登録が失効しているので現在は失効農薬である(農薬登録番号: 12850、農薬の種類: 木酢液、農薬の名称: 井筒屋松根木酢液、申請者: 井筒屋、 農薬登録日: 1973年2月28日、失効日: 1979年2月28日)[1][2]。ただし、「販売禁止農薬」ではない。そのため、使用者が農薬的に使えると信じて使う場合は取締の対象ではないが、国としてその安全性を保証したものではない。千葉大学園芸学部の本山直樹教授によると、木酢液の成分にはバラつきがあり、中には微生物の遺伝子を損傷する変異原性のものもあったと日本環境動物昆虫学会学会誌に発表している[7]。また、木酢液の販売については、農薬取締法により現在も農薬の効果をうたった販売は禁止されている[3][8]。そのため、農薬としての使用ではなく農薬的な使用として以下に記した。

  • 農薬的な使用
    • 動物の回避
    • 害虫対策
    • 土壌改良
  • 厚生
    • 入浴
    • 消臭
    • 殺菌

炭窯

炭窯には、白炭、黒炭があり各地域で今も継承されている伝統窯である。入浴剤などの厚生目的には、それらの炭窯で得られた木酢液が用いられる。

脚注

  1. ^ 含有成分に関する資料
  2. ^ 薬効・薬害・安全性に関する試験結果の概要
  3. ^ 松井、松下、菅本、角石「木質系バイオマスの炭化生成物の調製と分析 : スギ樹皮およびスギ葉の酢液・タールの分析」宮崎大学工学部紀要、37巻、57-64 ページ - オンライン版(本論文で分析されている木酢液はスギのサンプルを 400 ℃ で炭化して得られたもの)
  4. ^ 松井 らによると、スギ材から得られた木酢液のサンプル 1 kg 中に 1 g 以上含まれていた4種類の有機化合物として、酢酸アセトールメタノールピロカテコールが挙げられている。
  5. ^ 農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会及び中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会第6回合同会合 配布資料 - 農林水産省 2005年8月31日(本資料で挙げられている成分は 80~150 ℃ の範囲で調製したサンプルによる)
  6. ^ D. C. McClure, Kilkerran Pyroligneous Acid Works 1845 to 1945 - Ayrshire History
  7. ^ 駒形 修. 本山 直樹「各種市販および自家製木酢液・竹酢液の変異原性」 ("http://kandoukon.org/paper/paperlong/volume15issue4.pdf") 、『環動昆』第15巻第4号、日本環境動物昆虫学会、2004年、 231-238頁、 ISSN 0915-4698無農薬栽培で自由に使える特定農薬、問われる効果と安全性
  8. ^ 農薬取締法の一部を改正する法律の施行について(通知), 14生産第10052号, 平成1 5 年3 月1 3 日, 農林水産省生産局長発

関連項目