デジタル写真

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Canon EOS 40D
Canon IXUS 430

デジタル写真(デジタルしゃしん)は、フィルムを用いた写真銀塩写真)とは異なり、電子機器を使って画像をデジタルデータとして記録するものである。画像をパーソナルコンピュータなどに保存し編集することができる。カメラ自体でも画像を確認できるものが多く、失敗した画像を即座に消去できる。

デジタルカメラはフィルム式カメラ以上のシェアを獲得し、ビデオ撮影や録音などの従来にはなかった機能も備えている場合もある。携帯電話などの機器にもデジタル写真機能が付属しているものがある。

デジタルカメラ[編集]

センサとメモリ[編集]

センサは輝度といった入力された光情報を読み取り、デジタルメモリ媒体デジタル画像情報を格納する。センサには次の2種類がある:

現在ではほとんど全てのデジタルカメラが半導体フラッシュメモリを採用しているが、かつてはソニーDigital Mavicaのようにフロッピーディスクを使ったカメラもあった。

センサの大きさと視野角[編集]

35mm判(24mm×36mm)よりも小さいセンサ領域のデジタルカメラでは、レンズの焦点距離が同じなら視野角が小さくなる。視野角は焦点距離とセンサやフィルム部のサイズで決定される。

小さいセンサ(例えばAPS-Cサイズのセンサ)を用いたデジタルカメラに、35mm判サイズのセンサを持つデジタル一眼レフカメラと同じレンズを使ったとすると、視野角が35mm判の場合よりも狭くなり、より望遠のレンズを使っているかのように見える。

CCDの感光部の画素密度が35mm判と同程度と仮定すれば、35mm判で撮影した写真の中央部分を拡大したものと小さなセンサを持つカメラによるデジタル写真が、だいたい等価であることになる。APS-Cサイズのセンサではこの比率が面積にして約50%である。一眼レフでない安価なデジタルカメラはもっと小さいセンサを使っており、この比率はもっと小さくなる。このため、35mm判カメラを使った場合にどれだけの焦点距離のレンズを使ったのと同等の画角が得られるかを示すために、カタログなどでは35mm判換算焦点距離という概念が使われる。

画素密度が変われば、得られる情報量もそれに対応して変わる。解像度は単位領域当たりの画素数に関連するが、実際には1画素は1色を記録するだけだったり、フィルム側もタイプによって実質的な解像度が異なるなど、比較は単純ではない。また、画素密度の高い大きなセンサは高価であり、大きなセンサは大きなレンズを必要とし、小画面で画素密度の高いセンサはノイズレベルが高くなるという問題もある。

以上のようなことから、小さなデジタルカメラでも、画素密度の高いセンサー(および性能のよいレンズ)を用いれば高解像度の画像を生み出せる。通常そのようなカメラには、35mm判のカメラであれば広角レンズとされる焦点距離のレンズが装着されている。例えば、 1/1.8" センサの視野角は35mm判カメラの 5分の1であり、焦点距離5–50mm のズームレンズで撮影される画像は 35mm判カメラで 25–250mm レンズで撮影されたものとほぼ同等の視野角となる。そして、センサが小さいとイメージサークルも小さくてすむのでレンズも小さくなる。このため、望遠撮影が必要な場合、同等の画角ではフィルム式カメラよりもデジタルカメラの方がレンズが小さくて済むという利点が生まれる。広角撮影ではデジタルカメラではより短い焦点距離のレンズを用いることになる。また、魚眼レンズを使って、後処理で補正するなどの手法も用いることができる。

センサの大きさ
タイプ 1/3.6" 1/3.2" 1/3" 1/2.7" 1/2.5" 1/2" 1/1.8" 1/1.7" 2/3" 1" 4/3" APS-C 135 Back
幅 (mm) 4.00 4.54 4.80 5.37 5.76 6.40 7.18 7.60 8.80 12.8 18.0 25.1 36 48
高さ (mm) 3.00 3.42 3.60 4.04 4.29 4.80 5.32 5.70 6.60 9.6 13.5 16.7 24 36
サイズ (mm²) 12.0 15.5 17.3 21.7 24.7 30.7 38.2 43.3 58.1 123 243 419 864 1728

出典 : DPreview

多機能性と接続性[編集]

ハイエンドのカメラや低価格なWebカメラを除けば、何らかのデジタルメモリが画像の記録に使われ、後でそれをコンピュータに転送する。

デジタルカメラは写真を撮るだけでなく、サウンドやビデオも記録できる場合がある。Webカメラとして使用できるものもあるし、PictBridge規格でプリンタに直接接続できるものもあり、テレビに接続して写真を映し出すことができるものもある。同様にカムコーダも静止画を撮影でき、それをビデオテープフラッシュメモリに格納する。

デジタルカメラはコンピュータと直接接続できるのがほとんどで、写真をコンピュータに転送したり、Webカメラとして使用したりできる。接続には USBFireWire などが使われる。

カメラによってはムービーを記録できるものもあるが、容量が限られている。最近のカメラでは640×480の解像度で30フレーム毎秒で映画並みの記録が可能なものもある。コンピュータに直接接続してムービーをコンピュータのハードディスクやDVDに記録できるものもある。

性能指標[編集]

デジタル画像の画質(品質)はフィルム式カメラと同様様々な要因で決定される。画素数は主な要因のひとつでしかないが、マーケティング上強調されることが多い。しかし、デジタルカメラの画質を決定づける要因は他にもある。生データをバランス調整するカメラ内部の処理機構が最も重要であり、場合によっては比較的低画素のカメラが高画素のカメラよりも画質が良いこともある。以下にフィルム式カメラとの類似性のある要因を挙げる:

  • レンズ: 分解能、歪み、分散(レンズ参照)
  • 撮像機構: CMOS、CCD、ネガフィルム、リバーサルフィルムなど
  • 記録フォーマット: 画素数、ファイル形式(RAW画像TIFFJPEG)、フィルム形式(135 film、120 film、5x4、10x8)。
  • 処理: デジタル処理とフィルムの化学処理

また、画素数が多いほど画質がよい、という考えが一般的のようであるが、受光センサーの1画素あたりの受光面積が同一フォーマットでは画素数を増やすと小さくなり、情報量が低下するため、同一設計で比較すると画像信号に電気的なノイズや歪みが多くなる、ダイナミックレンジが縮小するなどの問題もあり、高画素化と総合的な画質の両立はある意味難しい面もある。

問題点[編集]

デジタルカメラの感光部は画素の集合体であるため、非常に細かいパターンを撮影したときにモアレと呼ばれる現象が発生する。例えば、織物、幾何学模様、コンピュータやテレビのディスプレイなどの撮影で発生する。

「ハイライト焼きつき; Highlight Burn-out」もある。被写体のコントラストによっては、最も明るい部分が真っ白になってしまう、あるいは最も暗い部分が真っ黒になってしまう現象である。カメラのセンサが扱えるコントラストの範囲を超えている場合に発生する。カメラによってはこれが発生したことを撮影者に知らせるものもあり、その場合、露出を変えて再度撮影できる。別の方式として暗い部分だけ選択的に長く露光して全体のコントラストを調整するカメラもある。

応用と考慮すべき点[編集]

画質が向上するにつれ、他のデジタル写真の利点もあいまって、プロの報道写真家はデジタルカメラを使用する割合が大きくなってきている。特に報道では現像が不要、配送(送信)が早いというスピーディさも重要視されている。

デジタル写真は多くの素人スナップショット撮影者にも受け入れられてきている。電子メールで画像を送る際やWorld Wide Webでの便利さが理由の1つである。デジタルカメラは携帯電話にも組み込まれている場合があるが、一般に専用機より画質は落ちる場合が多い(「画質」と「画素」は全く異なる要素であることに注意)。

商業写真家や芸術的写真を趣味とする人々(美術、芸術の分野では、「生活費を稼げるのがプロ」という考えは通用しないこともある。これは一例に過ぎないが、経済性に関して他の多くの分野と異なるところがある。プロの作家であっても銀塩写真を使用する人は存在している。)の中にはデジタルカメラよりもフィルム式を好む者もいる。彼らはデジタル写真の画質はフィルム写真の画質に及ばないと考えている。実際、フィルム写真の分解能はデジタル写真を上回っている。技術の進歩によって現在のデジタル写真が将来使えなくなる可能性を危惧する向きもある。編集が容易であることから、特殊な用途における問題として、法廷でのデジタル写真の証拠能力というものもある。

大多数の写真家や素人はデジタル写真の柔軟性と低コストが欠点に勝ると考えている。デジタル写真のコストのほとんどはカメラやパソコンなどの機器をそろえる初期投資であり、ランニングコストはほとんどかからない。フィルム式写真ではランニングコストがかかるものの、機器が陳腐化する速度は遅く、長期にわたって使えるという利点がある。商業写真家の中にはデジタル写真のコンピュータによる編集の容易性から移行を決断する者もいる。暗室では不可能だったカラーバランスの調整などの画像編集が容易となっている。もっとも、フィルム写真であってもフィルムスキャナーを使って取り込めば同じような編集が可能である。カメラ/ディスプレイ/プリンタを含めた完全なカラーバランスシステムでは、ディスプレイ上で最終印刷物のカラーバランスを確認できる。

デジタルカメラの欠点としてバッテリーの交換または充電が比較的頻繁に必要になるという点があげられる。従って写真家などは常に電源の確保に気を配らなければならない。結露や気温が低いとバッテリの能力が低下して駆動時間が大幅に減ってしまうため寒さにも注意が必要である。外で活動することの多い写真家は、圧倒的にフィルム式の一眼レフカメラを好む。写真中心の雑誌などでは高分解能が求められるため、大きなフィルムを使ったカメラが好まれる。

天文学では、一般よりも早くからデジタル写真が使われ、1980年代初めにはフィルム写真はほとんど使われなくなった。撮像素子の感度の良さだけでなく、特性が一定である点、コンピュータに取り込んでの解析しやすさが理由である。天文学で使われる撮像素子は一般に使われているものと似ているが、白黒が普通であり、液体窒素で冷却して熱によるノイズを低減させている。天文機器では多数の撮像素子を並べて場合によっては億単位以上の画素数を実現している。天体観測を趣味とする人々もデジタルカメラを使うのが一般化しており、Webカメラを利用したいわゆる「ビデオ天文学; video astronomy」もある。

市場への影響[編集]

2002年後半、アメリカでは200万画素のカメラが100ドル以下、百万画素のカメラが60ドル以下で売られていた。同時期にDPE店でフィルムと同様の印画紙に焼き付けるサービスが広まっており、プリントの値段はフィルムの場合と同程度である。デジタルカメラとフィルムではアスペクト比(縦横の比率)が異なるため、同じ印画紙に焼き付けると一部がはみ出す。DPE店によってはデジタルカメラのアスペクト比に合わせた印画紙を用意している。

2003年6月、Ritz Dakota Digital 社は使い切りデジタルカメラをリリースした。120万画素(1280×960)CMOSセンサを使ったデジタルカメラで、価格は11ドルである。レンズ付きフィルムのビジネスモデルを踏襲し、同社はこのカメラを使い切りで使用することを想定して販売した。25枚を撮影したら店にもって行き、プリントとCD-ROMを受け取る。カメラは再生されて販売される。この手法を真似た企業がいくつかこの市場に参入している。各社のカメラの仕様はほぼ似たようなものだが、一部には高解像度や液晶ディスプレイ付きで差別化を図っているものもある。販売時の価格にはDPE料金は含まれない。この種のデジタルカメラは価格競争に対応するため原価を極限まで抑える必要があり、結果として製品寿命が短く、故障の苦情も多い。中には動作保証期間を90日に限定しているものもある。

35mmコンパクトカメラの価格は中国などへのアウトソーシングによって極限まで低下している。コダック社は2004年1月、フィルム式カメラを先進国で今後販売しない方針を表明した[1]。2006年1月、ニコンも同様の方針を打ち出したが、F6 と FM10 の二機種だけは現在も販売し続けている[2]。同じころコニカミノルタレンズ付きフィルム以外のカメラ事業からの撤退を表明した[3]。デジタル写真への転換は市場でも進んでいるが、開発途上国ではフィルム式が優勢である[4]。フィルム式カメラの衰退はフィルム自体の衰退につながる。2004年11月、アグフア・ゲバルトのフィルム部門はアグフアフォト社として分離されたが、6か月後に倒産した。コニカミノルタは2007年3月末でフィルムおよび印画紙の生産を終了した。また、コダックの従業員数(2005年現在)は20年前の3分の1となっている。フィルム業界の雇用喪失がデジタル画像産業での雇用増で相殺されているかどうかは定かではない。

デジタル写真による影響は悪い点ばかりではない。デジタルフォトフレームキャンバスプリントといった製品やサービスの登場は、デジタル写真が定着してきた証拠でもある。

デジタル写真の例。この写真は撮影されてから5分でプリントされた。

社会的影響[編集]

写真の歴史を見てみれば、光学/カメラの製造技術/写真技術の進歩は人々の画像の見方を変えてきた。1970年代までアメリカ合衆国ではスライドが主流で、スライドプロジェクターで画像を見ることが多かった。その後、カラー写真の登場によってカラープリントが行われるようになった。インターネットと電子メールの普及に伴い、比較的安価なコンピュータとデジタルカメラによって大量のデジタル形式の画像が生み出されるようになった。

21世紀に入ると、静止画像を見る手段の主流は印刷物も健在であるがコンピュータや携帯電話に移りつつある。このため、フィルムやフィルム式カメラの市場は減退し、コダック、富士写真フイルムアグフア・ゲバルトといった企業は劇的な変革を迫られた。

同様にフィルムの現像・プリントサービスによって利益をあげてきたDPE店も大きな影響を受けている。フィルム現像サービスという利益性の高いサービスの需要が激減したこと、デジタル写真のプリントサービスに対応するためのシステム導入の設備投資が非常に高額(デジタル対応のミニラボシステムで1,000万円程度)であること、ネットプリントのような新たな形態の競合サービスの出現などにより、町のDPE店は減少傾向にあり、大手チェーン店の統廃合も進んでいる。

写真は、プリントやネガの不適切な保管や太陽光に長時間当てることによって退色するという問題を抱えていた。デジタル画像はデータとしてコンピュータに格納されるため、画質が低下することはない。 画像ファイルを消去/上書きするか、格納していた記憶装置が壊れたとき、何らかの原因により画像ファイルの一部が壊れた時など、デジタル写真が失われるのは一瞬である。コンピュータのデータ一般に言えることだが、デジタル画像を保存し続けるにはバックアップを採っておくことが大事である。

歴史や記録保管の立場から、デジタル画像の非永続性に関する懸念が大きくなってきている。実体があって触れられるフィルムやプリントと異なり、デジタル画像は格納している媒体やそのフォーマットが古くなってしまうとアクセスできなくなる危険性がある。歴史家の中には、遠い将来、この数十年の画像が失われて歴史的空白を作ってしまうのではないかと心配する者もいる。

最近の研究と発明[編集]

  • 3次元モデルを画像を集積して構築することができる。例えば、マイクロソフトの Photosynth がある[5]。モデル構築には多量の計算が必要であり、現状では任意の画像から3次元モデルを構築するというわけにはいかない。
  • HDRI技術はすでに商品化されている。120デシベル以上のセンサが開発中である。様々に露光した通常の画像群からHDRIを合成することもできる。
  • モーションブラーを劇的に低減させる方式が開発中である[6]
  • 鏡面反射を取り除く技術も開発されている[7]。絵画の撮影などで重要であり、商品化はされていないが一部の美術館では既に活用されている。

他にも色の再現性を強化する手法などで研究が進んでいる。

デジグラフィ[編集]

一部には、デジタル写真のことを「デジグラフィ」(digigraphy)という和製英語で呼ぶ者もいる。この行為に対しては、批判もある。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ http://www.theregister.co.uk/2004/01/20/kodak_to_drop_35mm_cameras/
  2. ^ http://www.nikon-image.com/jpn/news/info/info060111.htm
  3. ^ http://konicaminolta.jp/about/release/kmhd/2006/0119_04_01.html
  4. ^ http://cio.co.nz/cio.nsf/0/7FAAE94969D13C78CC256F18007D9C8F?OpenDocument
  5. ^ Microsoft Photosynth
  6. ^ [1]
  7. ^ [2]

外部リンク[編集]