Foveon X3

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Foveon X3は、アメリカのFoveon社(株式会社シグマの孫会社)によって設計されたデジタルカメラ用の撮像素子。製造はアメリカのナショナル セミコンダクターや、韓国の東部電子(Dongbu Electronics)が受注している。

概要[編集]

Foveon X3はCMOSイメージセンサの一種である。光の三原色である赤 (R)・緑 (G)・青 (B)がシリコンを透過する特性が異なることを利用して、素子の厚み方向 (光が入射する方向) に3層にセンサを配置している。カラーフィルム(各層の間に色フィルタがある)と同様に、同一位置の異なる色の情報を分離できる。

3層のセンサのうち第1層(最上層)はRGBのすべての光の強さに反応する。第2層以深には波長が短いBの光は到達しないため、Bの要素を除くRGの光の強さに反応する。同様に第3層(最下層)では第2層までで吸収されたBGを除くRの光の強さに反応する。画像処理エンジンでは、最下層で取り込んだRの値を中層で取り込んだRGの値から引いてGの値を求め、最上層の値からRとGの値を引いてBの値を求める。[1][2]

Foveon X3撮像素子のシリコンウエハーのそれぞれの3層の厚みは5μm以下なのでピントのずれや色収差はごく僅かである。赤色の受光層が最も深い部分にあるので他のCmos撮像素子やCCD撮像素子と比較した場合、長波長の光ではいくつかの電子が拡散してシャープさが失われる。[3]

特徴[編集]

Foveon X3以外の半導体イメージセンサ (CCDイメージセンサなど) を1枚だけ用いた(単板の)デジタルカメラでは、2×2画素に配置された (ベイヤ配列) カラーフィルタを用いて、3原色の内の1色のみを各ピクセルで取り込んだ後、演算によって他の色の値を求める (演繹補完)。これに対してFoveon X3では、単板であるにも関わらず原理的には光の三原色をそのまま取り入れた画像を生成することができる。ベイヤ配列のイメージセンサでは演繹補完による画像生成を行なうため、偽色とよばれる実際には存在しない色が発生するが、Foveon X3 イメージセンサでは、3原色それぞれのセンサが同じ位置に配置されているため、原理的に偽色は発生しない。

搭載デジタルカメラ[編集]

Foveon X3を搭載した(する予定の)デジタルカメラは以下の通り。

有効画素数 撮像素子サイズ 機種
約2900万画素 (トップ 5,424×3,616、ミドル 2,712×1,808、ボトム 2,712×1,808) 23.5×15.7mm シグマ dp1 Quattro(未発売)、dp2 Quattro、dp3 Quattro(未発売)
約4,608万画素 (4,800×3,200×3層) 23.5×15.7mm シグマ SD1、SD1 Merrill、DP1 Merrill、DP2 Merrill、DP3 Merrill
約1,406万画素 (2,652×1,768×3層) 20.7×13.8mm シグマ SD14、SD15、DP1、DP1s、DP1x、DP2、DP2s、DP2x
約1,029万画素 (2,268×1,512×3層) 20.7×13.8mm シグマ SD9、SD10
約446万画素 (1,408×1,056×3層) 1/1.8型 ポラロイド x530

SD9、SD10はRAW画像専用となっていたが、それ以外はJPEGでも記録できる。

FOVEONを搭載しているデジタルカメラでは、ベイヤ配列の素子を用いるデジタルカメラの1画素にあたる面積(以下ドットとよぶ)で3画素分の情報を生成できるので、縦横の画素数を3倍した値が総画素数として表示されることがある。たとえばシグマのSD9(Foveon X3 F7)、SD10(Foveon X3 F7N)によって生成される画像は2268x1512の約350万ドットであるが、1ドットで3画素分の情報を生成できるとして1030万画素と表記されている。SD14(Foveon Fx17)では2640x1760 ( = 4,646,400 ) ドットなので1400万 ( 4,646,400×3 = 13,939,200 ) 画素という表示である[4]。 ジェネレーションネーム"Quattro"となった第4世代品では、3層の内トップ層のみ画素数が多い構造となっている。

低照度下における特性[編集]

Foveon X3の撮像素子に捕らえられる光子はモザイク撮像素子より多い。これはモザイク撮像素子の場合三原色の中の1色だけが撮像素子に到達し、他の2色の光子はカラーフィルタによって遮断されるからである。 Foveon X3は集光力が大きいが個々の層はそれぞれの色に反応しない。 低照度下では色ノイズが増えるので標準色空間の色データを作成する為に撮像素子のRAWデータ内の色情報は積極的なマトリクス化が必要である(本質的にはコモンモード信号を除去する)[5]

弱点[編集]

FOVEONでは、色の分離にシリコンの透過特性を利用しているために、色フィルターと比べて色の分離が悪く、正確な色を再現することが難しい。また、画像処理エンジンはベイヤ型センサを使用したものと異なる、専用設計したものが必要である。

ローパスフィルタ必要論[編集]

近年、FUJIFILM X-Pro1、PENTAX K-5IIs、ニコン D7100等、ローパスフィルタを搭載しないデジタルカメラが続けて登場し、その解像感の高さから高い評価を受けつつある。 Foveon X3センサ及び、それを使用したシグマのシリーズは、こうした流れに先鞭を付けたものと言えよう。Foveon X3センサは原理上ローパスフィルタを必要としない仕様であるが、一部にはベイヤ型センサと同様に、Foveon X3センサにもローパスフィルタが必要であると主張する者が存在する。


Foveon X3を使用する撮影機器にローパスフィルタが必要かどうかについては複数の見解がある。

通常、ベイヤ型センサを搭載したカメラでは、色モアレを防ぐためにローパスフィルタが必要とされる。ベイヤ型カラーフィルタはR,G,G,Bをタイル状に配置するため、緑とその他の色の分解能が方向によって異なる。このため、モアレが発生した際に輝度むらだけでなく色むらが生じる。Foveon X3の場合、R,G,B各色の分解能は等しいので色モアレは発生しない。

なお、Foveon社はFoveon型センサは原理上偽色や偽解像がなく、ローパスフィルタは不要であると主張している。(以下の記述にあるように、この主張は正確ではない。)

ローパスフィルタは必要とする見解[編集]

  • モアレ現象などに代表される偽解像は、画素ピッチの2倍以下の周期の明暗模様が入力された場合に発生するものであり (ナイキストサンプリング定理)、ローパスフィルタは必要である。一度混入した折り返り成分は後処理で除去することができないので、光学的に対処する必要がある。
    • ただし、高い空間周波数の信号が入力されないことが保証できる場合、水晶等を用いた光学ローパスフィルタ素子は必ずしも必要ではない。光学系が一定以上ブロードなPSF(point spread function)点拡がり関数を持つ場合は、光学系がボケフィルターの役割を果たし、LPFとして働く。実装に即して言い換えれば、光学系が離散型撮像素子のサンプリングピッチに対して十分な量のボケを持つ場合、センサー手前に光学LPF素子を挿入する必要はない。

実際にモアレのでる作例を http://dc.watch.impress.co.jp/img/dcw/docs/655/138/html/041.jpg.html などで確認できる。

ローパスフィルタは不要とする見解[編集]

  • 画素ピッチの2倍以下の周期の明暗模様が入力された場合はFoveon X3では、偽色ではなく輝度ノイズのモアレとなって現れる。
    • べイヤー配列をもつカラーセンサーと異なり、三原色ごとの解像度の違いがないため、モアレが発生しても色がずれることがないので目立たない。すなわち、撮影結果への影響が顕著ではないために問題ではない。

注釈[編集]

  1. ^ Rush and Hubel, supra, pp. 3-5.
  2. ^ Paul M. Hubel, Foveon Technology and the Changing Landscape of Digital Cameras; Richard F. Lyon and Paul M. Hubel, Eyeing the Camera: into the Next Century (Santa Clara, California: Foveon, Inc., X3 Technology - Technology Papers). Retrieved May 20, 2010.
  3. ^ Ji Soo Lee, "Photoresponse of CMOS Image Sensors," Ph.D. dissertation, University of Waterloo, 2003
  4. ^ なおCIPAの規定では、光学素子の純総数(カラーフィルタ分割の有無によらない)を物理的な画素数と定めており、多板式の場合は板数倍してよいとされている。FOVEONは実質的には多板式と同等なので、この表記自体は規定違反にならない。
  5. ^ Brian Griffith (2007年7月5日). “Know raw? Part 2”. Photostream on auspiciousdragon.net. 2007年8月15日閲覧。[リンク切れ]