アスパルテーム

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アスパルテーム[1]
IUPAC名 N-(L-α-アスパルチル)-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル
識別情報
CAS 22839-47-0
SMILES [NH3+] [C@@H](CC([O-])=O)C(N[C@@H]
(CC1=CC=CC=C1)C(OC)=O)=O
特性
化学式 C14H18N2O5
融点

246–247 °C

沸点

分解

危険性
NFPA 704
1
1
0
特記なき場合、データは常温(25 ℃)・常圧(100 kPa)におけるものである。

アスパルテーム(aspartame)[2]とは、アミノ酸由来の人工甘味料の一つである。フェニルアラニンのメチルエステルと、アスパラギン酸とがペプチド結合した構造を持つジペプチドのメチルエステルである。甘味砂糖の約200倍。常温では白い結晶性の粉末である。CAS登録番号は[22839-47-0]。

目次

[編集] 概要

アスパルテームは1965年アメリカ合衆国のサール薬品が開発した。味の素が製法を開発し、世界的に製法特許を有している。日本やアメリカでは1983年に使用が認可されている。

主にローカロリーもしくはノンカロリーの飲料 (コーラなど) や食品に添加される。味は甘いが特有の後味がある。そのため、砂糖やアセスルファムカリウムソルビトールなど他の甘味料とあわせて使用されることも多い。

人工甘味料であるため、その安全性については使用が認可される前から多くの研究や議論があった。使用が認可され需要が定着した今でも意見が分かれている。しかし、現在に至るまで人の健康への実害は指摘されていない。

日本では前述のとおり、1983年食品添加物として認可された。旧厚生省は天然に存在しない添加物に分類している[3]パルスイート™などの商品に含まれている。アスパルテームを使用した食品や添加物には「L-フェニルアラニン化合物である旨又はこれを含む旨の表示」義務がある。

日本生活協同組合連合会などは安全性への懸念などからアスパルテームを含む食品の取り扱いを行ってこなかったが、2002年3月に留意使用添加物から除外することに決め、取り扱い制限を解除した。

現在は、ペプシコのペプシNEX、コカ・コーラカンパニーコカ・コーラ ゼロ等の人気商品に使われるようになっている。

[編集] 安全性

米国食品医薬品局(FDA)の審査では、経口摂取されたアスパルテームの大部分が分解も代謝をも受けずに体外に排泄されるという結果が出ている。したがって生理的熱量は極めて小さく、また調味料として普通に使う量では急性毒性や慢性毒性の問題が起こらないと解釈されている。

しかし、それとは逆に、サルやヒトの腸においてメタノールアスパラギン酸フェニルアラニンに代謝され、吸収された後に体内たんぱく質に併合されたり二酸化炭素として排出されることが報告されている[4][5]。この場合の代謝物のひとつであるアスパラギン酸はアスパラガスに多く含まれるアミノ酸であり、一部のスポーツドリンクなどにも配合される物質である。フェニルアラニンについては、FDAが後年になってから「健常人ではアスパルテームにはアレルギー性はないが、フェニルケトン尿症患者では危険性があるかもしれない」という見解を示している[6]。これは、フェニルアラニンが同患者に悪影響を与えるためであるが、フェニルアラニン自体は他の食品にも含まれる必須アミノ酸である。メタノールは失明や致死などの人体への毒性が知られているが、果物や野菜や酒類にも含まれており、アスパルテームの代謝で摂取することになるメタノールはアスパルテームの重量の10%程度であり、酒類から摂取する量と比較すれば過剰に摂取しなければ問題にならない量である[7]

脳腫瘍との関連を指摘する報告はあったものの、再試験では否定されている[8]。また、科学的に有効性が確認されている発がん性試験ガイドラインに沿った試験法では、アスパルテームに発がん性は認められていない[9]ため、IARCはアスパルテームを発癌性物質として区分していない。

しかし、2007年のCBS NEWSの報道によると、Ramazzini財団委託のマウントサイナイ医科大学Morando Soffritti博士は、ラットに対して胎児の段階から死ぬまでの間FDAの一日許容消費量(約2g;ダイエットソーダで7.5缶/日)の二倍のアスパルテームを投与し続けた結果、癌の発病率の上昇が統計的に認められるという研究結果を出した[10]。ヨーロッパ食品安全審査局(EFSA)はこの報告について検討し、用量反応性が無いこと、対照群と死亡率に差が無いことなどを挙げ、データとして不適当で再考するための根拠としては不十分であると結論付けた。またFDAはRamazzini財団の結果について、「われわれの結論(アスパルテーム承認)は百例を超える毒性試験あるいは臨床試験に基づいたものである」とコメントしている[11]。また、イタリアで7000人以上を対象に行われた2007年の症例対照研究でも、アスパルテームを含む人工甘味料に、発がん性は認められなかった[12]。これらの反論や反証について、Morando Soffrittiらはコメントしていない[13]

[編集] 承認に関する疑惑

FDAによる承認において最初にアスパルテームを承認しなかったJere E. Goyan(FDA長官在任期間1979/10/21 - 1981/1/20)はロナルド・レーガン大統領が就任した直後にFDA長官を解雇され、後に内定されたアーサー・ヘイズ(FDA長官在任期間1981/4/13 - 1983/9/11)[14]が翌年にアスパルテームを承認している。その直後1983年にヘイズは辞任し、人工甘味料製造会社「G. D. Searle & Company」に就職。アスパルテームをNeutraSweetと改名し、同社CEOのドナルド・ラムズフェルドと共に莫大な利益を得た。このため、利益のために人体への悪影響を無視し承認に踏み込んだのではないかという批判がある[15][16]

[編集] 他の人工甘味料との比較

サッカリンナトリウムはアスパルテームに比べ、ショ糖に似た甘みを持つ。キシリトールなどの糖アルコールと同じ用途であるが、構造は全く異なる。なおエステルであり加水分解されるため、水分のある状態での長期安定性に劣る点が食品添加物としての欠点である。

最近ではアスパルテームよりもさらにショ糖に似た味を持つとされる、スクラロース(スプレンダ、Splenda)も徐々に普及し始めている。たとえば、アメリカコカ・コーラ社のダイエットコーク(Diet Coke)はアスパルテームが甘味料であるが、ダイエットコーク with スプレンダ(Diet Coke Sweetened with Splenda)はスプレンダが甘味料である。当然、これらの味は異なる。

[編集] 脚注

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  1. ^ Merck Index, 11th Edition, 861.
  2. ^ 「アステルパーム」はよくある誤称である。
  3. ^ 厚生省「表5 食品添加物の年齢別摂取量」マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 (平成12年12月14日 厚生省) (日本食品化学研究振興財団)
  4. ^ Opperman JA et al; J NUTR 103 (10): 1460-6 (1973)
  5. ^ Trefz F et al; Human Genetics 93 (4): 369-74 (1994)
  6. ^ FOOD ALLERGIES RARE BUT RISKY
  7. ^ FDAが定めるアルコール飲料中のメタノール含有基準値は体積比で0.1%。日本の食品衛生法でのアルコール飲料中のメタノール含有基準値は1cm³ (1mℓ) 当たり1mg以下。メタノール含有量は銘柄にもよるが、日本で仮に100mℓの酒を飲んだとして基準の1/10としても10mg程度の摂取。一方仮に砂糖12g (4gの角砂糖3個) の代用として同等の甘味のアスパルテーム75mgを使用するとメタノールは7.5mg程度の摂取となる。
  8. ^ FDA Statement on Aspartame, November 18, 1996.; —FDAによるアスパルテームと腫瘍に関する声明では、'70年代の脳腫瘍と関連を指摘した報告についてはPBOIのラットでの再試験では再現しなかったこと、それとともに日本での追加試験でも再現しなかったことを踏まえて承認したと説明している。またアスパルテームが上市されてからアメリカにおける脳腫瘍の疫学調査に有意な変化が見られないことも説明している。
  9. ^ BRYAN,GT; ARTIFICIAL SWEETENERS AND BLADDER CANCER: ASSESSMENT OF POTENTIAL URINARY BLADDER CARCINOGENICITY OF ASPARTAME AND IS DIKETOPIPERAZINE DERIVATIVE IN MICE; FOOD SCI. TECHNOL. 12(ASPARTAME):321-348, 1984
  10. ^ Aspartame's Safety Questioned Again
  11. ^ [1]
  12. ^ S Gallus, Artificial sweeteners and cancer risk in a network of case–control studies; Annals of Oncology 2007 18(1):40-44; doi:10.1093/annonc/mdl346
  13. ^ Environ Health Perspect. doi:10.1289/ehp.10881
  14. ^ FDA長官在任期間の平均は3.5年である。
  15. ^ Sound and Fury - Sick From Aspartame? Meet Donald Rumsfeld(英語)
  16. ^ aspartamekills.com(英語)

[編集] 参考文献