買ってはいけない

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買ってはいけない』(かってはいけない) は、雑誌「週刊金曜日」連載の「商品の安全性」に関するコラム、およびそれをまとめた通俗本。

目次

[編集] 概要

パート1は、1999年5月発行。世間で広く流通している食品日用品、家電製品など身近な商品を取り上げ、それに含まれる食品添加物その他の化学物質などの毒性や危険性、家電製品の構造・性能上の問題点などを誇張し、企業名と商品名を名指しし「買ってはいけない」としていたことで話題になり、約200万部を売り上げた。著者によれば、発刊に当たっては『暮しの手帖』の影響を受けたとしている。

本書刊行後、『借りてはいけない』『乗ってはいけない』など多数の類似する本が刊行された。また、『買ってはいけない』著者の一人である船瀬俊介による『買ってもいい 食卓編』(光文社、1999年11月。ISBN 4-334-00663-9)という書籍も刊行された。

『週刊金曜日』は、2000年、『買ってはいけない』の収益を元に「買ってはいけない基金」を設立。食品の安全性を高めるための調査・研究を行なう基金で、これまでにトウモロコシから日本で未承認の遺伝子組み換え体を検出する等している。

2002年にパート2が出版され、その後「新・買ってはいけない」の連載がスタートし2005年には「新・買ってはいけない2006」の連載が単行本化されているが、「買ってはいけない」の売り上げには及んでいない。

『買ってはいけない』の収益で、週刊金曜日は当時の売れ行き不振を解消したとする声がある(発刊当初5万部、現在は3万部といわれている)が、実際には『週刊金曜日』本体の売り上げには結びつかず、書籍の売り上げは一時的な収益であるため利益の多くは基金に回された。

[編集] シリーズ

2009年11月現在、シリーズで全6冊発行されている。

[編集] 問題点

他のマスコミは広告で収入を得ているがゆえにスポンサーに遠慮して批判しにくい論点とされる点に関し、本書では広告がないため遠慮なく批判しているという肯定的な評価もあるものの、多くは内容に対して批判的である。

特に、執筆者が「取り扱い説明や品質表示の内容」などを知識不足から正しく理解せずに執筆していることから、本書自体に欠陥・欠点・問題点が露呈することとなった。また、書籍となったことで「誤った知識」を広めてしまった責任は大きい。

[編集] 科学的な見識不足

内容に科学的な見識の不足から生じる事実誤認、著しく正確性・妥当性を欠く誤りが散見される。

例えば「正露丸」の批判の際、その成分日局クレオソートを、名称の類似する「工業用クレオソート油」と混同し、工業用クレオソート油のもつ毒性で「正露丸」批判を行った。両者は異なる物質であり、正露丸に工業用クレオソート油は含まれていないため、これは事実誤認である。また、初期の版では正露丸を漢方薬とみなして、その副作用に対する批判を展開していたが、正露丸は生薬であって漢方薬ではない(後の版で漢方薬についての記述は削除)。

また、パンの保存料として使用されているソルビン酸カリウムについての批判を、「ソルビン酸」という別の食品添加物の毒性を根拠に行っている。この点を批判された筆者は「ソルビン酸カリウムの毒性はソルビン酸にカリウムの毒性が加わったもの」と反論しているが、物性・毒性学の観点からは完全に議論に値しない内容である(これは「食塩つまり塩化ナトリウムの毒性は塩素ナトリウムの毒性が加わったもの」という荒唐無稽な批判にほぼ等しい。そもそもナトリウムの塩化物と塩素+ナトリウムの混合物は全く別物)。

『新・買ってはいけない4』において発ガン性があるとして法規制(飲料中に10ppb以下)されているベンゼン混入の疑いありと一部清涼飲料水が写真入りで掲載された件について、佐藤健太郎著『化学物質はなぜ嫌われるのか』で「ベンゼン発生原因とされた安息香酸ビタミンCを含む飲料は他にもたくさんあり、一部だけを取り上げられたメーカーはたまらないだろう」としている。また1ppbのベンゼンを含む飲料を500ミリリットル飲むと0.5マイクログラム(μg)のベンゼンを摂取することになるが、大気中には車の排気ガスなどの微量のベンゼンが含まれているため、1立方メートルあたり3マイクログラム程度のベンゼンを含んでいる。またそうした空気や水のもとで製造される飲料内のベンゼンは非常なコストを要しなければ絶無にすることは難しく、そのコストを消費者のフトコロに跳ね返したところで発ガンのリスクはほとんど下がらない(有機物の不完全燃焼でも生じるので絶無になることはない)と書いている。

同書ではまた『買ってはいけない』において赤色2号青色1号黄色4号などいわゆる合成着色料を「タール色素」と呼び"当初発ガン物質のコールタールを原料として作られていたためこの名がついた"としている件について、コールタールは多くの化合物混合物で発ガン性があるのはそのごく一部であり、また原料と色素は全く別の化合物なので原料に毒性があろうが発ガン性があろうが何の関係もなく、現在はタールから合成しているわけでもないので、これは健康商法のような詐術に類する文章だとしている。また「ベンゼン環を含む化学構造から、発癌性や催奇形性、環境ホルモン作用などが疑われる」という記述についても、「ベンゼン環を含む化合物はタンパク質やビタミン、ホルモンなどにいくらでも例があり、これを疑っていたら我々は食べる物がありません。構造だけからその物質がどのような活性を持つか予測をするなどは不可能なことで、大きな分子のほんの一ヵ所が変化しただけでがらりと生理活性が変化するのはざらにあることです。このため安全性の検査には一つひとつの物質について、厳密な試験を行なう必要があるのです。」として、「化学を少しでも知っている者からすればちょっと信じがたいほど雑な物言いです。」と述べている[1]。 (ちなみに「天然色素」であるアカネ色素は発ガン性物質の疑いがあるとして食品添加物としての利用は禁止された。ただし、この点についても本書では疑義をもって著述されている)

また、無農薬栽培の作物を強く勧め、農薬栽培の野菜を批判している記述が度々見られるが、無農薬栽培の作物は数代にわたって無農薬で栽培されている場合、作物の自己防衛本能が強まり(虫食いの頻度が必然的に増えるため)、生体毒(主に発がん性物質)が多くなるため、どちらが健康に良いということはできない。このような著者の基本的な知識がないと見受けられる記述が多い。

[編集] 動物実験の意義に関する無知

取り上げられている物質の毒性を検証する際に、動物実験の結果のみを挙げ、ヒト(人体)に対する量論的な考察をほとんど行わず批判を行っているが、ヒトと他の哺乳類では体の構造や毒の耐性も全く異なるため、このような検証方法は薬学、生理生化学的に有効ではない(例えば「買ってはいけない」文中では、マウスに何mg投与したというような形で提示されることが多いが、これを人間にあてはめると、通常摂取する量を大きく超えた量を摂取させていることになるうえ、有用な栄養素も大量に摂取すれば有毒になる。毒性学を参照)

[編集] 根拠の不明な情報や個人的感情と主観への依拠

味の素」や「マクドナルド」のなど、根拠の不明な情報や都市伝説に依拠した記述が存在する。

ある製品をあげて、買ってはいけない理由として「私はこの匂い(含有されている香料)をかぐだけで気分が悪くなる」など、一個人の感情的・主観的な批評も目立ち、正当な根拠で批評しているものは皆無に等しいのみならず、「アトピーの方は純石鹸を使うべき」との記述に関しては、個人差があり純石鹸で悪化したという事例も少なくないため、正しくない(石鹸は弱塩基性(弱アルカリ性)であるため)。このような著者の感情や主観による記述が多く見られるため、信憑性は疑わしい。

[編集] 特定の会社に対する一方的非難

特定の会社(A社)の商品を批判する際に、「同業者(B社)による、同等の競合する商品も同じような原料で作られている」という記述が少ないか、記述されていないことが多い。

例えば、あるメーカー製のインスタントラーメンに含まれる「かんすいは安全性が不明なうえに、ハプテンになりうる」として取り上げているが、かんすいはほとんどのラーメンで使用されている(生ラーメンでも同じ)ため、「特定メーカーのインスタントラーメン」ではなく、「ラーメン」自体の問題のはずである。

ワインの項目では、酸化防止剤として使われている亜硫酸塩(二酸化硫黄)の害を取り上げているが、それに関して「日本の特定メーカー」だけしか名前を挙げていない。しかし、亜硫酸塩は世界中のワインで使用される物質であり、例えばフランスのワイン法では亜硫酸塩を添加することが義務化されている。亜硫酸塩は四日市ぜんそくなどの原因物質であるが、ワインに含まれる程度の少量であれば何ら問題はなく、悪酔いをするのであればシャンブレ(コルクを抜いたらしばらく放置)やデキャンタ(瓶から専用容器に移し替える)をして亜硫酸塩の成分を飛ばせばよい。

あるメーカーのウインナーソーセージの項目では、その商品名が文中に一切登場せず、「ソーセージ全般の害」について語っており、特定の商品名を挙げる必要性は皆無である。

[編集] 法の無知

化粧品・医薬品などにおいて、効能が記されていると薬事法第66条違反(誇大広告の禁止)だとする記述がたびたび登場する。しかし、日本国内において販売されている化粧品・医薬品などは同法第14条に基づき、厚生労働省に成分・効能・分析結果などの詳細を提出し承認申請を行なって認可を受けたものである。つまり、商品に記載されている効能は「国が認可したもの」であるため、それが不当だとするなら薬事法そのものが不当となってしまう。

また、具体的な商品を不当な根拠で健康を害する恐れがあると批判しており、営業妨害にあたる。

[編集] その他

  • 本書では何の断りもなく、『週刊金曜日』本誌で告知しただけで、後の版で内容が改訂・修正されている。
  • アルコール飲料に含まれる添加物の害を謳いながら、「アルコールそのものの害」については触れていないことは公正を欠く行為である。
  • 記事内容について一貫性がなく、著者によってばらつきがある。
    • 例えばアルカリイオン水の項目では「アルカリ性や酸性のものを食べたり飲んだりしても、血液が簡単にどちらかに簡単に偏ったりはしない」と書かれているが、ハンバーガーの項目では「血液が酸性に偏る食事をしていると骨からカルシウムが流出する」としており、一貫性を欠いている。
  • 著者の一人・三好基晴アトピービジネス民間療法を展開する「日本オムバス」、及び「全国アトピー友の会」顧問医であり、この本が謳うように“特定の企業に阿ることなく企業を批判している”とは言いがたい。

このように、誤った情報をさも正当であるかのように伝えることは、ジャーナリズムの倫理に反することになる。

[編集] 参考文献

  • 『「買ってはいけない」は買ってはいけない』 夏目書房編集部編、夏目書房〈夏目BOOKLET 3〉、1999年10月。ISBN 4-931391-65-6
    タイトルも装丁も、内容の体裁も『買ってはいけない』にそっくり合わせ、その不正確さを批判している。
  • 日垣隆 『「買ってはいけない」は嘘である』 文藝春秋、1999年10月。ISBN 4-16-355770-9
    最も注目された批判書。
  • 『「買ってはいけない」大論争――ほめる人、けなす人』 鹿砦社編・『買ってはいけない』特別研究班編、鹿砦社、1999年11月。ISBN 4-8463-0362-4
    当事者である『週刊金曜日』編集長や夏目書房編集部代表を含む様々な人々の寄稿をまとめたもの。
  • 『本当に「買ってはいけない」か!? 決定版! これにて落着!!』 ビジネス社〈One plus book 11〉、1999年11月。ISBN 4-8284-0843-6
  • 『「買ってはいけない」喧嘩 週刊金曜日対月刊文藝春秋』 KIBA BOOK編集部編、Kiba Book、1999年11月。ISBN 4-916158-35-0
    『「買ってはいけない」は嘘である』 との比較検討。
  • 『「買ってはいけない」論争解決篇』 中川晶監修、データハウス、1999年12月。ISBN 4-88718-556-1
    『「買ってはいけない」は買ってはいけない』 との比較検討。
  • と学会 『トンデモ本の世界R』 太田出版、2001年10月。ISBN 4-87233-608-9
    と学会会長山本弘が社会派トンデモ本としてシリーズ1作目を取り上げている。
  • 松永和紀 『メディア・バイアス――あやしい健康情報とニセ科学』 光文社〈光文社新書 298〉、2007年4月。ISBN 978-4-334-03398-9
    『買ってはいけない』の科学論理の誤りや統計データの取り扱い方の不備などを指摘。
  • 佐藤健太郎 『化学物質はなぜ嫌われるのか ~「化学物質」のニュースを読み解く』 技術評論社〈知りたい!サイエンス 33〉、2008年6月。ISBN 978-4-774-13517-5

[編集] 脚注

  1. ^ 化学物質はなぜ嫌われるのか

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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