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「海上自衛隊のC4Iシステム」の版間の差分

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自衛艦隊指揮支援システムおよび海上作戦部隊指揮管制支援システム(いずれも最新版)からの転記を含めて加筆。『海上自衛隊50年史』に準じて構成を整理。
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本項では、[[海上自衛隊]]が配備している[[C4Iシステム]]について述べる。
本項では、[[海上自衛隊]]が配備している[[C4Iシステム]]について述べる。


== システム化に至る経緯 ==
== 概要 ==
海上自衛隊の指揮管制のシステム化の試みは、[[1963年]]11月の海上自衛隊演習(38海演)に遡る{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。このときには、[[海上自衛隊補給本部|需給統制隊]]が[[陸上自衛隊|陸自]]・[[航空自衛隊|空自]]と共同使用していた電子計算機を利用して、船舶の運航データの処理が行われた{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。また当時、[[海上幕僚監部]]総務部勤務であった平松良次1佐が、海上幕僚監部において「指揮通信組織の進歩について」という講話を実施しており、海上自衛隊においても、列国の指揮管制システム(CCS)の状況や指揮管制機能近代化の必要性が注目され始めていた{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。
自衛隊のC4Iシステムは、指揮統制に使用される指揮システムと、補給・人事など後方支援に使用される業務系システムの2つの系統がある。


このような気運を背景に、[[海上自衛隊幹部学校|幹部学校]]が主宰する[[1965年]]12月の防衛術研究会においてCCS導入の問題が討議され、[[1966年]]8月には海上幕僚監部内にCCS準備室が設置された{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。そして海上幕僚長の諮問機関としてCCS開発及び整備の方向を策定するため、[[1967年]]7月には海上幕僚副長を委員長として海上幕僚監部内に「海上自衛隊CCS開発推進委員会」、またその事務局として防衛部に「CCS開発推進委員会幹事室」(CCS幹事室)が設置され、CCS準備室はこれらに吸収合併された{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。[[1970年]]3月には、従来の検討を踏まえて、ソフトウエアの整備体制(土台)の確立と、陸上システム、艦艇システム及び航空機システム(3本の柱)の整備という基本構想が確立された{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。
指揮システムのうち海上自衛隊の各階梯で運用されるものでは、戦略階梯で運用される[[自衛隊のC4Iシステム#防衛省|'''海幕システム''']]、作戦階梯で運用される'''[[海上作戦部隊指揮管制支援システム]]'''、戦術階梯で運用される各種[[戦術情報処理装置]]や[[戦術データ・リンク]]がある。


この結果、まず46DDG「[[たちかぜ (護衛艦)|たちかぜ]]」用の[[WES]]の導入が重点事項とされた{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。ただしこれは指揮管制というよりは[[目標指示装置]]としての性格が強く、指揮管制に重点を置いた艦艇システムはDDH用の[[OYQ-3|TDPS]]として結実した{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。また陸上システムとしては、佐世保地方総監部用の米国製システムの導入は撤回されて、[[自衛艦隊]]司令部の作戦[[情報処理システム]]を国産により開発することとなった{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。一方、航空機システムは次期対潜機がらみとされてこの時点では見送られ{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=§6}}、後にP-3Cの導入とともに整備が進められていった{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.3 §8}}。
== 作戦級システム ==
{{Multiple image|direction=vertical|width=350
|image1=海上自衛隊 海上作戦センター.jpg
|caption1=海上作戦センターがある自衛艦隊司令部
|image2=JMSDF-yokosuka.jpg
|caption2=方面部隊センターの一つがある横須賀地方隊
|image3=JMSDF Fleet Air Wing 1 Head 2015.JPG
|caption3=対潜水艦戦作戦センターの一つがある鹿屋航空基地
|image4=Foremast of DD-109 (with captions).jpg
|caption4=[[ありあけ (護衛艦・2代)|「ありあけ」]]。NORA-1のアンテナはレドームに収容され、艦橋両脇に設置されている。
|image5=Hyuuga 07.JPG
|caption5=[[ひゅうが (護衛艦)|「ひゅうが」]]。上部構造物前方にNORA-7、後部煙突前面にNORQ-1C、側面にNORQ-1のレドームが設置されている。
}}
海上自衛隊は、戦術級C4Iシステムを先行して導入する一方で、[[艦隊]]の指揮・統制に重点を置いた作戦級システム(CCS: Command and Control System)の研究を進めていた。ここで構想されたCCSは、[[意思決定支援システム]]としての要素が強く、情報の記憶・整理と、情勢認識の支援を担当して、[[自衛艦隊]]司令部での部隊指揮を効率化するためのものであり、その名のとおりに、C4IシステムというよりはC2システムで、コンピュータや通信・情報といった概念は含まれていなかった。


== 陸上システム ==
この「CCS」は、[[アメリカ海軍]]の艦隊指揮支援センター(FCC: Fleet Command Center)を参考にして、'''[[自衛艦隊指揮支援システム]] (SFシステム)''' として開発され、1972年より建設開始、1975年より運用を開始した。このSFシステムは、「作戦推移の迅速化、情報量の増大および処理の複雑化に対処し、自衛艦隊司令官およびその他の主要作戦部隊指揮官が必要とする信頼性のある情報をタイムリーに収集・処理・配布して、作戦指揮や業務の効率的な計画と実施を可能にすることである」と説明されていた。
上記の経緯により、陸上システムとしては、まず[[自衛艦隊]]司令部の作戦[[情報処理システム]]として'''[[自衛艦隊指揮支援システム]]'''(SFシステム)が開発されて、昭和50年([[1975年]])度より運用を開始した{{Sfn|海上幕僚監部|1980|loc=ch.7 §6}}。しかし技術進歩の進展が速いコンピュータ分野においては既に陳腐化の問題が生じていたほか、機能・体制面の課題もあって、[[中期業務見積り#五六中業|56中業]]と[[中期防衛力整備計画 (1991)|03中防]]でシステムの更新・近代化が図られた{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.4 §5}}{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.6 §2}}。


このうち、56中業でのシステム更新の際には、[[航空集団]](空団)と佐世保・[[大湊地方総監部]]のためのシステムもそれぞれあわせて整備された{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.4 §5}}。空団のためのシステムは、SFシステムのAF端末機能と、各ASWOCからの諸情報を収集・処理・表示し、空団司令官の作戦指揮の実施に寄与する指揮管制機能を併せ持ったシステムとして位置付けられており、当初はAFシステムと仮称されていたが、後に'''ASWOC管制ターミナル'''({{Lang|en|ASWOC Control Terminal, ACT}})と称されるようになった{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.4 §5}}。一方、佐世保・大湊地方総監部のためのシステムは、主として通峡阻止・対機雷戦を行う海峡防備に関して方面部隊指揮官の作戦指揮管制を支援するものとされた{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.4 §5}}。
このSFシステムの後継として1999年より運用が始まったのが'''[[海上作戦部隊指揮管制支援システム]](Maritime Operation Force System:MOFシステム)'''である。MOFシステムは[[ダウンサイジング]]とオープンシステム、分散構造を採用しており、各階梯の部隊指揮官の間で[[共通作戦状況図]](COP)を作成することを最大の目的としている。COPとは、地形・気象・海象など戦闘空間の状況とともに、そこに存在するすべての勢力についての、位置・兵力・状況・意図・脆弱点・戦闘力の要衝を表示したものであり、[[大熊康之]]は、「C4I全体の中で、COPの重要性は最上位である」と述べている。また[[:en:Modeling and simulation|M&S]]による意思決定支援機能等も拡充されている。


その後、[[中期防衛力整備計画 (1996)|08中防]]において、従来のSFシステムを基幹としてこれらの指揮管制支援システムを統合して、総合的なC4Iシステムが開発されることになった{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.7 &sect;5}}。これが'''[[海上作戦部隊指揮管制支援システム]]'''(MOFシステム)であり、1999年3月1日より運用を開始した{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.7 &sect;5}}。その後、2002年から2006年にかけて再構築が行われており、これに応じて名称も'''海上作戦部隊指揮統制支援システム'''に変更された(英名・略称には変更無し)<ref>{{Cite web|author=[[防衛省]]|url=https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_suishin/h24/pdf/r-sheet/0237.pdf|title=平成23年度 行政事業レビューシート 237 海上作戦部隊指揮統制支援システム用器材(借上)|format=PDF|accessdate=2014-03-11|archiveurl=https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11533346/www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_suishin/h24/pdf/r-sheet/0237.pdf|archivedate=2020-08-13}}</ref><ref>{{Cite web|author=[[防衛省]]|url=https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2004/gaiyou.pdf|title=平成16年度防衛力整備と予算の概要(案)|format=PDF|accessdate=2014-03-11|archiveurl= https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11520309/www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2004/gaiyou.pdf|archivedate=2020-07-23}}</ref>。また平成26年(2014年)度末には'''海上自衛隊指揮統制・共通基盤システム'''({{Lang|en|Maritime Self Defense Force Command, Control and Common Service Foundation System}}:MARSシステム)に発展しており、各艦の端末としては洋上ターミナル(Mobile MARS terminal:MMT)が配される{{Sfn|海人社|2016}}。これは海上自衛隊のみならず、他自衛隊や[[海上保安庁]]などの各種情報をネットワークを介して統合・共有する機能を備えている<ref>{{Cite web|author=[[開発隊群]]|url=http://www.mod.go.jp/msdf/frdc/whatsnew/csc/mars.html|title=海上自衛隊の指揮通信システムの整備 |accessdate= 2016-04-20}}</ref>。
MOFシステムの中核となるのが、[[横須賀基地 (海上自衛隊)|横須賀基地]]の[[自衛艦隊]]司令部内に設置された海上作戦センターであり、その他の拠点として方面部隊センターが各[[地方隊]]に設置されている。また、特に洋上航空作戦を統括するものとして、海上作戦センターの直轄下に海上航空作戦センターが設置されており、その隷下には対潜水艦戦作戦センター(ASWOC)がある。ASWOCは[[P-3 (航空機)|P-3C哨戒機]]が配備された航空基地に設置されており、[[八戸航空基地]]、[[厚木海軍飛行場|厚木航空基地]]、[[鹿屋航空基地]]、[[那覇空港#海上自衛隊那覇航空基地|那覇航空基地]]の4ヶ所に所在する。
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File:海上自衛隊 海上作戦センター.jpg|海上作戦センターがある自衛艦隊司令部
なお海上作戦センターは2020年(令和2年)10月1日から自衛艦隊司令部をはじめ、隷下部隊の護衛艦隊、潜水艦隊、掃海隊群、海洋業務・対潜支援群、艦隊情報群の司令部が集約された新庁舎を指す名称になるが、これ以前の自衛艦隊司令部内の指揮施設を指す名称が変更された否かは不明である。
File:JMSDF-yokosuka.jpg|方面部隊センターの一つがある横須賀地方隊

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[[P-1 (哨戒機)|P-1哨戒機]]が配備された基地には、海上航空作戦指揮統制システム(MACCS: Maritime Air-Operation Command and Control System)が装備されている<ref>{{Cite web|author=[[防衛省]]|url=https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_suishin/h25_res/r-sheet/0072.pdf|title=平成25年度業政事業レビュー|format=PDF|accessdate=2017年5月10日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200723170503/http://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_suishin/h25_res/r-sheet/0072.pdf|archivedate=2020-07-23}}</ref><ref>{{Cite web|title=海上・航空作戦部隊の指揮統制システム(MACCS)の整備について|url=https://www.mod.go.jp/msdf/frdc/whatsnew/apc/maccs.html|website=www.mod.go.jp|accessdate=2021-12-21}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku/soubiseisakugijutu/introduction2020_en.pdf|title=Introduction to the Equipment of
the Japan Self-Defense Forces|accessdate=2021-12-21|publisher=防衛省|page=38|language=英語}}</ref>。MACCSは、ASWOCと同様の機能を有するシステムで、可搬化し、機材を分解して哨戒機数機で空輸したのち、外国の飛行場などに設置して運用することで、作戦基盤のない海外に展開する哨戒機部隊に対して、運用、指揮、統制、戦術支援を効果的に実施することも可能である<ref>[http://www.asyura2.com/15/warb15/msg/244.html まもなく実務に就く国産哨戒機P-1の全貌 世界で日米だけが持つ高度技術を生かし、中国の海洋進出を阻止へ 2015年03月03日 高橋 亨]</ref>。

このようにMOFシステムは[[情報処理システム]]、意思決定支援システムとしての要素が強いが、各級部隊指揮官を連絡するための通信システムとしての機能も含有している。また各艦艇に専用端末としてOYQ-31 指揮管制支援ターミナル(Command and Control Terminal、'''C2T'''; 潜水艦用はZYQ-31)が配備された事により、陸上の各指揮官が現場の艦艇と連接することが出来るようになっている。これらは、現代アメリカ海軍で言えば[[アメリカ海軍のC4Iシステム|GCCS-M]]、あるいはかつての[[JOTS]]の機能を有するものである。

さらに、[[2009年]]に就役した[[ひゅうが (護衛艦)|「ひゅうが」(16DDH)]]では、[[ビデオ会議]]や[[チャット]]機能を導入するなど性能を強化したOYQ-51 洋上ターミナル('''MTA''')が採用され、艦全体で30台以上が搭載された。またアメリカ海軍との協同作戦を考慮してGCCS-Mも搭載されている。

なお、MOFシステムは2002年から2006年にかけて再構築が行われており、これに応じて名称も'''海上作戦部隊指揮統制支援システム'''に変更された(英名・略称には変更無し)<ref>{{Cite web|author=[[防衛省]]|url=https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_suishin/h24/pdf/r-sheet/0237.pdf|title=平成23年度 行政事業レビューシート 237 海上作戦部隊指揮統制支援システム用器材(借上)|format=PDF|accessdate=2014-03-11|archiveurl=https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11533346/www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_suishin/h24/pdf/r-sheet/0237.pdf|archivedate=2020-08-13}}</ref><ref>{{Cite web|author=[[防衛省]]|url=https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2004/gaiyou.pdf|title=平成16年度防衛力整備と予算の概要(案)|format=PDF|accessdate=2014-03-11|archiveurl= https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11520309/www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2004/gaiyou.pdf|archivedate=2020-07-23}}</ref>。その後、平成26年(2014年)度末に、'''海上自衛隊指揮統制・共通基盤システム'''({{Lang|en|Maritime Self Defense Force Command, Control and Common Service Foundation System}}:MARSシステム)に発展しており、各艦の端末としては洋上ターミナル(Mobile MARS terminal:MMT)が配される{{Sfn|海人社|2016}}。これは海上自衛隊のみならず、他自衛隊や[[海上保安庁]]などの各種情報をネットワークを介して統合・共有する機能を備えている<ref>{{Cite web|author=[[開発隊群]]|url=http://www.mod.go.jp/msdf/frdc/whatsnew/csc/mars.html|title=海上自衛隊の指揮通信システムの整備 |accessdate= 2016-04-20}}</ref>。


=== 衛星通信 ===
=== 衛星通信 ===
海上自衛隊では、[[1990年]]より衛星洋上データ通信を艦隊配備した<ref name="大熊2006">{{Cite book|和書|author=[[大熊康之]]|year=2006|title=軍事システム エンジニアリング|publisher=かや書房|isbn=4-906124-63-1}}</ref>。これは[[SUPERBIRD]] B2通信衛星を使用して、使用周波数はXバンド、通信速度は数十キロ[[ビット毎秒]](kbps)とされている。艦上の衛星通信空中線装置としては'''NORA-1'''が採用され、あさぎり型後期建造艦([[はまぎり (護衛艦)|60DD]])より搭載されたほか、それ以前に建造された護衛艦にも順次バックフィットされた。この衛星通信機能は、[[2000年]]よりMOFシステムとも連接された。
海上自衛隊では、[[1990年]]より衛星洋上データ通信の運用開始した{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.5 &sect;8}}。これは[[SUPERBIRD]] B2通信衛星を使用して、使用周波数はXバンド、通信速度は数十キロ[[ビット毎秒]](kbps)とされている。艦上の衛星通信空中線装置としては'''NORA-1'''が採用され、あさぎり型後期建造艦([[はまぎり (護衛艦)|60DD]])より搭載されたほか、それ以前に建造された護衛艦にも順次バックフィットされた。この衛星通信機能は、[[2000年]]よりMOFシステムとも連接された。


また、大容量[[データ通信]]へのニーズの激増に対処するため、Kuバンドを使用する衛星通信空中線装置として'''NORQ-1'''も順次に導入されつつある。ただしKuバンドはXバンドよりも通信帯域を大容量化しやすい一方で、天候に左右されやすいという欠点があり、骨幹的通信回線としては信頼性に欠けるとも指摘されている。このこともあり、ひゅうが型では、[[N-SAT-110|SUPERBIRD D]]衛星を利用したXバンドの高速大容量通信(数Mbps)に対応する衛星通信空中線装置として、'''NORA-7'''が導入された{{Sfn|東郷|2009}}。
また、大容量[[データ通信]]へのニーズの激増に対処するため、Kuバンドを使用する衛星通信空中線装置として'''NORQ-1'''も順次に導入されつつある。ただしKuバンドはXバンドよりも通信帯域を大容量化しやすい一方で、天候に左右されやすいという欠点があり、骨幹的通信回線としては信頼性に欠けるとも指摘されている。このこともあり、ひゅうが型では、[[N-SAT-110|SUPERBIRD D]]衛星を利用したXバンドの高速大容量通信(数Mbps)に対応する衛星通信空中線装置として、'''NORA-7'''が導入された{{Sfn|東郷|2009}}。
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これらの自衛隊専用衛星通信のほか、民間の[[インマルサット]]衛星通信用の衛星通信装置として'''NORC-4'''も各艦に搭載されており、また[[アメリカ軍の衛星通信]]システムに参加するための''対米通信装置''として、一部艦(DDG, DDHなど)にはAN/WSC-3(OE-82C)やAN/USC-42 Mini-DAMAが搭載されている。
これらの自衛隊専用衛星通信のほか、民間の[[インマルサット]]衛星通信用の衛星通信装置として'''NORC-4'''も各艦に搭載されており、また[[アメリカ軍の衛星通信]]システムに参加するための''対米通信装置''として、一部艦(DDG, DDHなど)にはAN/WSC-3(OE-82C)やAN/USC-42 Mini-DAMAが搭載されている。
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File:Foremast of DD-109 (with captions).jpg|[[ありあけ (護衛艦・2代)|「ありあけ」]]。NORA-1のアンテナはレドームに収容され、艦橋両脇に設置されている。

File:Hyuuga 07.JPG|[[ひゅうが (護衛艦)|「ひゅうが」]]。上部構造物前方にNORA-7、後部煙突前面にNORQ-1C、側面にNORQ-1のレドームが設置されている。
== 戦術級システム ==
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{{See also|海軍戦術情報システム}}
海上自衛隊の戦術級C4Iシステムは、アメリカ海軍の[[海軍戦術情報システム]](NTDS)に準拠したものとなっており、戦術情報処理装置と、これらを結ぶ戦術データ・リンクによって構成されている。戦術情報処理装置は、各艦の戦闘の統制を目的とした情報処理システムで、戦術データ・リンクは、これら各艦の戦術情報処理装置を連接するための[[コンピュータネットワーク|ネットワーク・システム]]である。

戦術情報処理装置としては、[[イージス艦]]では'''[[イージスシステム]]'''が、その他の護衛艦では'''OYQシリーズ'''が搭載されており、各艦の[[戦闘指揮所]](CIC)に設置されている。戦術情報処理装置はおおむねNTDSに準拠して開発されており、OYQ-1からOYQ-4までは、NTDSの開発を行ったアメリカの[[UNIVAC]]社によって開発されているほか、初の国産となったOYQ-5の開発についても同社の協力を得ている。当初は、武器管制機能をもつものをTDS(Target Designation System: 目標指示装置)、もたないものをTDPS(Tactical Data Processing System: 目標指示処理装置)と称していたが、武器管制機能が一般化した現在では、CDS(Combat Direction System: 戦闘指揮装置)と総称されるようになっている。

戦術データ・リンクとしては、当初は[[戦術データ・リンク#リンク 11 (TADIL-A/B)|'''リンク 11''']]が使用されていたが、1990年代後半より、順次新型の'''[[リンク 16]]'''への移行が始まっている。また、[[はつゆき型護衛艦|はつゆき型]]のように戦術情報処理装置の能力が低かったり、あるいは搭載していない艦に作戦情報を伝達するための[[戦術データ・リンク#リンク 14|'''リンク 14''']]も使用されている。また、当初は搭載する[[戦術データ・リンク]]の種類によって[[海軍戦術情報システム|NTDS]]艦 (リンク11を装備)と非NTDS艦 (リンク14を装備)に区別されていたが{{Sfn|森|1989|pp=276-281}}{{Sfn|森|1989|pp=294-303}}{{Sfn|森|1991|pp=58-135}}、現在では、ミサイル艇を含めて新造艦艇のすべてがリンク11を装備していることから、この種の区別はほぼ消滅している。


== 艦艇システム ==
=== 護衛艦 ===
{| class="wikitable" style="text-align:center"
{| class="wikitable" style="text-align:center"
|+ 日本の艦載戦術情報処理装置の変遷{{Sfn|海人社|2002}}{{Sfn|藤木|2003}}{{Sfn|山崎|2011}}
|+ 日本の艦載戦術情報処理装置の変遷{{Sfn|海人社|2002}}{{Sfn|藤木|2003}}{{Sfn|山崎|2011}}
64行目: 42行目:
|-
|-
|NYYA-1
|NYYA-1
|-
|TDPS
| colspan="3" rowspan="3" |-||-|| rowspan="3" |-
| colspan="3" rowspan="3" |-||-|| rowspan="3" |-
|[[たかつき (護衛艦)|「たかつき」(38DDA)]]
|[[たかつき (護衛艦)|「たかつき」(38DDA)]]
161行目: 139行目:
|[[あさひ型護衛艦 (2代)|あさひ型(25/26DD)]]
|[[あさひ型護衛艦 (2代)|あさひ型(25/26DD)]]
|}
|}
また[[FCS-1]]搭載艦には、目標情報の管理を目的とした[[アナログコンピュータ]]・システムとしてTDS-1が搭載された。これはアメリカの[[武器管制システム]]と同様の機能を有するものであった。


=== 第一世代 ===
==== 第一世代 ====
海上自衛隊が初めて導入した戦術情報処理装置は、アメリカ合衆国の[[リング・テムコ・ボート]](LTV)社が[[アメリカ沿岸警備隊]]向けのTACNAVシステム({{Lang|en|Tactical Navigation System}})として開発したもので、海自でのシステム区分は[[NYYA-1]]とされて{{Sfn|小滝|2014}}、昭和45年([[1970年]])度の[[たかつき (護衛艦)|「たかつき」(38DDA)]]の第1回特別修理の際に搭載された{{Sfn|香田|2015|p=89}}。しかし海自の要求に合致せず、性能的な制約もあって、搭載は同艦1隻のみに留まった{{Sfn|塚原|2014}}。
海上自衛隊の戦術級C4Iシステムの開発は[[1960年代]]より着手され、[[武器管制システム|武器管制機能]]および[[戦術データ・リンク]]のいずれも持たない[[#NYYA-1|NYYA-1]]を端緒として、武器管制機能を備えた[[#OYQ-1/2|OYQ-1/2]]、戦術データ・リンクを備えた[[#OYQ-3|OYQ-3]]が順次に実用化された。


一方、昭和46年([[1971年]])度計画では海自2隻目の[[ミサイル駆逐艦|ミサイル護衛艦]](46DDG; 後の「[[たちかぜ (護衛艦)|たちかぜ]]」)が建造されることになっていたが、1隻目の[[あまつかぜ (護衛艦)|「あまつかぜ」(35DDG)]]で搭載された[[武器管制システム#アナログコンピュータ世代|目標指示装置(WDS Mk.4)]]が既に陳腐化していたことから、そのかわりに[[海軍戦術情報システム]](NTDS)の技術を導入し、[[AN/USQ-20|CP-642B電子計算機]]1基を中核とした[[WES|WES({{Lang|en|Weapon Entry System}})]]が採用された<ref name="海自のシステム艦第1号(1)">{{Cite web|date=2020/03/01|url=http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/AAW_TMD/AAW_arekore/AAW_arekore_04a.html|author=堤明夫|title=海自のシステム艦第1号-アナログからディジタルへ|accessdate=2022/01/30}}</ref>。46DDG搭載システムのシステム区分は'''OYQ-1'''、また2番艦「[[あさかぜ (護衛艦)|あさかぜ]]」(48DDG)に搭載された小改正型は'''OYQ-2'''とされた{{Sfn|香田|2015|pp=112-117}}。これらは[[戦術データ・リンク]]を備えておらず、フルスペックのNTDSとは言えなかったが{{Sfn|加藤|2014}}、導入とともに整備されたCDSソフトウェアの維持管理体制やこれを担う人材は、海自全体のシステム化に大きく貢献した{{Sfn|水野|2010}}。
==== NYYA-1 ====
{{main|NYYA-1}}
海上自衛隊が最初に導入した戦術情報処理装置は、アメリカ合衆国の[[リング・テムコ・ボート]](LTV)社が[[アメリカ沿岸警備隊]]向けのTACNAVシステム({{Lang|en|Tactical Navigation System}})として開発したもので、海上自衛隊でのシステム区分は'''NYYA-1'''とされて{{Sfn|小滝|2014}}、昭和45年度の[[たかつき (護衛艦)|「たかつき」(38DDA)]]の第1回特別修理の際に搭載された{{Sfn|香田|2015|p=89}}。


またこれとほぼ並行して、昭和50年([[1975年]])度計画の[[護衛艦#DDH|ヘリコプター護衛艦]](50DDH; 後の[[しらね型護衛艦|しらね型]])のための[[OYQ-3|TDPS({{Lang|en|Tactical Data Processing System}})]]も開発されており、システム区分は'''OYQ-3'''とされた<ref name="海自のシステム艦第1号(2)">{{Cite web|date=2020年03月01日|url=http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/AAW_TMD/AAW_arekore/AAW_arekore_04b.html|author=堤明夫|title=海自のシステム艦第1号-WES (Weapon Entry System) とは|accessdate=2022/01/30}}</ref>。こちらはアメリカ海軍の[[スプルーアンス級駆逐艦]]のシステムを参考としており、CP-642B電子計算機を2基に増備して、[[リンク 11]]にも対応した<ref name="海自のシステム艦第1号(2)"/>。ただし[[対空兵器]]システムについては、TDPSとは別に搭載された[[目標指示装置#TDS-2|目標指示装置(TDS-2)]]が担当していた{{Sfn|香田|2015|pp=134-140}}。
これは、基本的には従来のCICにあった対空作図盤および水上作図盤を代替する状況表示装置であった。しかし、もともと個艦用に設計され、CICオペレーションの合理化・能率化を主目的としたもので、海上自衛隊の求めるものとは異なっており、またスクリーン上のシンボルを個々に動かすのではなくスクリーン全体の情報を一気に更新しなければならないなどの制約もあった{{Sfn|小滝|2014}}。このこともあり、当初は「たかつき」に続いて同型艦[[きくづき (護衛艦)|「きくづき」(39DDA)]]への搭載も予定されていたものの、これは行われず、アメリカ海軍の[[海軍戦術情報システム]](NTDS)をベースとしたOYQシリーズへと移行していくことになった{{Sfn|塚原|2014}}。


==== OYQ-1/2 ====
==== 第二世代 ====
46・48DDGに続く[[たちかぜ型護衛艦|たちかぜ型]]の3番艦は、当初は先行する2隻と同様にWESを搭載する予定だったが、予算の関係で建造計画が昭和53年([[1978年]])度に先送りされたこともあって、アメリカ海軍の[[チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦#C4ISR|JPTDS]]の技術を利用した新しいシステムを搭載することになり、システム区分は'''OYQ-4'''となった<ref name="海自のシステム艦第1号(3)">{{Cite web|date=2020年03月01日|url=http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/AAW_TMD/AAW_arekore/AAW_arekore_04c.html|author=堤明夫|title=海自のシステム艦第1号-WES導入の本質|accessdate=2022/01/30}}</ref>。電子計算機は新世代の[[AN/UYK-7]]に更新され{{Sfn|香田|2015|pp=112-117}}、海自で初めて、DDGとしての武器管制機能と戦術データ・リンクによる部隊戦術情報処理機能をあわせもつ本格的コンバット・システム(CDS)となった{{Sfn|山崎|2011}}。続く[[はたかぜ型護衛艦|はたかぜ型]](56/58DDG)でも小改正型のOYQ-4-1が搭載されたほか{{Sfn|香田|2015|pp=210-213}}、46・48DDGのWESも、後にほぼ同等の機能を有するように改修された{{Sfn|香田|2015|pp=112-117}}。
{{main|WES}}
「たかつき」から8年後、海上自衛隊の次世代[[ミサイル駆逐艦|ミサイル護衛艦]]として計画された[[たちかぜ型護衛艦|たちかぜ型]](46DDG)は、主な武器システムとして[[ターター・システム|ターターD・システム]]を搭載することとされた。これは従来のターター・システムをもとに海軍戦術情報システムとのシステム統合を重視して開発された改良型であり、従って、たちかぜ型護衛艦においても海軍戦術情報システムに準じた戦術情報処理装置が搭載されることとなった{{Sfn|大熊|2006}}{{Sfn|香田|2015|pp=112-117}}。


一方、昭和52年([[1977年]])度計画で建造に着手する[[護衛艦#汎用護衛艦(DD)|汎用護衛艦]](52DD; 後の[[はつゆき型護衛艦|はつゆき型]])では、当初はTDS-2を発展させた[[目標指示装置#TDS-3|目標指示装置(TDS-3)]]を搭載する予定だったが、経空脅威の深刻化を受けてWESと同一思想の戦術情報処理装置が必要と考えられるようになり、国内開発の'''[[OYQ-5]]'''が搭載されることになった{{Sfn|香田|2015|pp=188-207}}。ただし処理能力やコストの面からリンク 11への対応は断念されており{{Efn2|[[テレタイプ端末]]での受信用である[[リンク 14]]を通じて受信した情報を入力することは可能とされる{{Sfn|山崎|2011}}{{Sfn|香田|2015|pp=188-207}}。}}、実質的には目標指示装置の域を出るものではなかった<ref name="海自のシステム艦第1号(4)">{{Cite web|date=2020年03月01日|url=http://navgunschl2.sakura.ne.jp/Modern_Warfare/AAW_TMD/AAW_arekore/AAW_arekore_04d.html|author=堤明夫|title=海自のシステム艦第1号-OYQ シリーズへ|accessdate=2022/01/30}}</ref>。その後順次にアップデートを繰り返し、[[あさぎり型護衛艦|あさぎり型]](58DD)で搭載された'''[[OYQ-5#OYQ-6/7|OYQ-6]]'''ではリンク11や対空レーダーとの連接が実現し{{Sfn|山崎|2011}}{{Sfn|香田|2015|pp=188-207}}、「full destroyer CDS」とも称される{{Sfn|Friedman|1997|p=90}}。その後、同型の[[うみぎり (護衛艦)|最終艦(61DD)]]では、[[#対潜情報処理装置|OYQ-101 対潜情報処理装置(ASWDS)]]の搭載に伴って、これとの連接に対応した'''OYQ-7'''に発展した{{Sfn|山崎|2011}}{{Sfn|香田|2015|pp=214-219}}。
1番艦には米[[UNIVAC]]社により開発された'''OYQ-1 WES'''が、2番艦にはその小改正型である'''OYQ-2'''が搭載された。{{要検証|=おおむね、[[#NYYA-1|NYYA-1]]を中核としてこれに武器管制機能を統合したものとなっている。|date=2022年2月}}システム構成はアメリカ海軍の[[チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦]]の一部が後日装備した[[チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦#C4ISR|JPTDS(Junior Participating Tactical Data System)]]に準じたものとされた。これらは、[[戦術データ・リンク]]こそ備えていなかったが、戦術情報処理(NTDS)と[[武器管制システム|武器管制(WDS Mk.13)]]を一元的に統合し、艦の戦闘システムの中核となっている。なお、当初はコンピュータは旧式の [[AN/USQ-20|AN/USQ-20B(CP-642B)]]で、[[戦術データ・リンク]]にも対応していなかったが、[[1989年]]から[[1990年]]にかけて、[[海上自衛隊のC4Iシステム#OYQ-4|OYQ-4]]に準じてアップグレード改修されている{{Sfn|香田|2015|pp=112-117}}。


また[[1号型ミサイル艇|ミサイル艇1号型(02PG)]]では、OYQ-5〜7と同様にUYK-20を用いた'''[[OYQ-5#OYQ-8|OYQ-8]]'''が搭載されており<ref>{{Cite web|author=[[海上自衛隊]][[大湊地方隊|大湊地方総監部]]|date=2008年2月28日|url=https://www.mod.go.jp/msdf/bukei/d0/nyuusatsu/K-19-2610-0106.pdf|title=平成20年度におけるミサイル艇1、2号の除籍作業の役務に係る契約希望者募集要項|format=PDF|accessdate=2012年7月31日}}</ref>、続く[[はやぶさ型ミサイル艇]](11PG)のOYQ-8Bおよび改良型のOYQ-8Cでは[[AN/UYK-44]]に更新された。これらのOYQ-8は、いずれもリンク 11への接続能力を備えている{{Sfn|石井|2002}}。
==== OYQ-3 ====
{{main|OYQ-3}}
一方、[[しらね型護衛艦|しらね型(50DDH)]]の[[護衛艦#ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)|ヘリコプター護衛艦]]向けに開発された'''OYQ-3'''は、対潜戦闘に重きを置いていた点で先行のOYQシリーズとは異なっており、部隊対潜戦指揮支援機能が組み込まれている。また、アメリカ政府の輸出制限が解除されたことにより、海上自衛隊では初めて、[[戦術データ・リンク]]としてリンク11の運用に対応した。ただし武器管制機能とは連接されておらず、砲システムと[[艦対空ミサイル#個艦防空ミサイル|短SAM]]システムは国産のTDS-2 目標指示装置による武器管制を受けている{{Sfn|山崎|2011}}{{Sfn|香田|2015|pp=134-143}}。


==== 第三世代 ====
その後、[[1990年代]]後半に入って、機器の老朽化と性能の陳腐化を受けて近代化改修が計画された。これは、電子計算機を新世代のAN/UYK-44に更新するとともに、TDSの機能をTDPSに統合、ASWDSとTDPSを連接するものであり、これに伴い名称もOYQ-3 TDPSから'''OYQ-3B CDS'''({{Lang|en|Combat Direction System}})に変更された。「[[しらね (護衛艦)|しらね]]」は[[1997年]]12月から[[1998年]]4月にかけて、また「[[くらま (護衛艦)|くらま]]」は[[1999年]]3月から8月にかけて改修を受けた{{Sfn|香田|2015|pp=134-143}}。ただし「しらね」のOYQ-3Bは[[2007年]]12月の[[しらね_(護衛艦)#火災事故|火災事故]]で全損したため、退役予定であった「[[はるな (護衛艦)|はるな]]」搭載の[[OYQ-5#OYQ-6/7|OYQ-6-2]]を移植して搭載している{{Sfn|山崎|2011}}。
海上自衛隊は、[[こんごう型護衛艦|こんごう型(63DDG)]]の搭載システムとして[[イージスシステム]]を選定したが、その戦術情報処理装置 (C&D, WCS)はアメリカより完成品を輸入する形となった。また[[むらさめ型護衛艦|むらさめ型(03DD)]]の'''[[OYQ-9]]'''も[[イージスシステム]]に範をとったシステム構成となっており、全武器システムとのデジタル連接化が実現した{{Sfn|山崎|2011}}。ハードウェア的にも、UYK-7の後継として[[AN/UYK-43]]、UYK-20の後継としてUYK-44が採用され、さらに、ワークステーションもOJ-663/UYQ-21に更新された{{Sfn|海人社|2003}}。また[[戦闘指揮所]]には、[[イージスシステム#情報処理システム|イージス・ディスプレイ・システム(ADS Mk.2)]]に類似した大画面[[液晶ディスプレイ]](LCD)2面構成の情報表示プロジェクタが設置され、戦術情報の表示を効率化している{{Sfn|山崎|2011}}。


さらに、[[たかなみ型護衛艦|たかなみ型]][[さざなみ (護衛艦)|4番艦(12DD)]]搭載の'''OYQ-9D'''型では、イージスシステムのベースライン7と同じく[[AN/UYQ-70]]による分散処理が導入され、[[すずなみ (護衛艦)|5番艦(13DD)]]搭載の'''OYQ-9E'''型では[[リンク 16]]に対応した{{Sfn|山崎|2011}}。
=== 第二世代 ===
ポスト[[第4次防衛力整備計画|4次防]]期([[1977年]](昭和52年)~[[1979年]](昭和54年)度)より就役を開始した第二世代のOYQシリーズにおいては、コンピュータを高性能な[[AN/UYK-7]]、[[AN/UYK-20]]に更新しており、これによって戦術データ・リンク機能および武器管制機能の双方との連接を実現した。


==== 第四世代 ====
また国産によって汎用護衛艦向けの[[#OYQ-5|OYQ-5]]、さらに[[#OYQ-6/7|OYQ-6/7]]が開発された。これらは、日本が新しく開発した射撃指揮装置であるFCS-2との連接に対応した。

==== OYQ-4 ====
[[たちかぜ型護衛艦|たちかぜ型]]の3番艦[[さわかぜ (護衛艦)|「さわかぜ」(53DDG)]]、およびこれに続く[[はたかぜ型護衛艦|はたかぜ型]](56DDG)2隻の計3隻が搭載する'''OYQ-4'''は「full CDS」と呼称され、JPTDSにほぼ匹敵するものであった{{Sfn|Friedman|1997|p=90}}。

AN/UYK-7、 AN/UYK-20を各1基備えており、対空センサーの情報はすべてコンピュータに入力され、ソナーのデータのみ水中攻撃指揮装置(SFCS-6A)に直接入力されていた。またOYQ-3と同様にリンク11、リンク14を備えており、これによりOYQ-4は、海上自衛隊で初めて、DDGとしての武器管制機能と戦術データ・リンクによる部隊戦術情報処理機能をあわせもつ本格的コンバット・システムとなった{{Sfn|山崎|2011}}。はたかぜ型のOYQ-4-1では、電子計算機としてはAN/UYK-7 2基、TDSコンソールとしては、大型の[[AN/UYA-4|OJ-197/UYA-4]] 1基および標準の[[AN/UYA-4|OJ-194B/UYA-4]] 9基が配された{{Sfn|香田|2015|pp=210-213}}。

==== OYQ-5 ====
{{main|OYQ-5}}
[[はつゆき型護衛艦|はつゆき型]](52DD)向けの'''OYQ-5'''(''TDS-3''とも)は、海上自衛隊のワークホースたる汎用護衛艦に戦術情報処理装置を搭載したという点で、極めてエポックメイキングな機種であった。

スペース的な制約から、1基のUYK-20のみを使用しており、これと4基または5基のOJ-194B/UYA-4ワークステーションを組み合わせていた。さらに、データリンクとしては、処理能力やコストの面からリンク11の搭載を断念し、本来は[[テレタイプ端末]]での受信用であるリンク14を通じて受信した情報を入力するという変則的な方式を採用している{{Sfn|山崎|2011}}{{Sfn|香田|2015|pp=188-207}}。

なおOYQ-5は、はつゆき型のほか、FRAM改修を受けた[[たかつき型護衛艦|たかつき型]]([[たかつき (護衛艦)|「たかつき」]]、[[きくづき (護衛艦)|「きくづき」]])にも搭載された{{Sfn|山崎|2011}}{{Sfn|香田|2015|pp=214-219}}。

==== OYQ-6/7 ====
{{main|OYQ-5#OYQ-6/7}}
[[あさぎり型護衛艦|あさぎり型]](58DD)は、様々な面ではつゆき型の強化型であるが、戦術情報処理装置についても同様であった。

58DDで搭載された'''OYQ-6'''は、はつゆき型のOYQ-5をもとに、リンク11送受信機能の付加や対空レーダーとの連接などの改良を加えたものとなっており{{Sfn|山崎|2011}}{{Sfn|香田|2015|pp=188-207}}、「full destroyer CDS」とも称される{{Sfn|Friedman|1997|p=90}}。

その後、同型の[[うみぎり (護衛艦)|最終艦(61DD)]]において[[#対潜情報処理装置|OYQ-101 対潜情報処理装置(ASWDS)]]の搭載に伴い、これとの連接に対応した'''OYQ-7'''に発展した。これはのちに、あさぎり型の他艦にもバックフィットされたほか、FRAM改修に伴い「[[ひえい (護衛艦)|ひえい]]」にも搭載された{{Sfn|山崎|2011}}{{Sfn|香田|2015|pp=214-219}}。

=== 第三世代 ===
海上自衛隊は、新世代のミサイル護衛艦の搭載システムとして[[イージスシステム]]を選定したが、その戦術情報処理装置 (C&D, WCS)はアメリカより完成品を輸入する形となった。また汎用護衛艦向けの[[#OYQ-9|OYQ-9]]においても、イージスシステムに範を取って設計が抜本的に見直されている。

==== OYQ-8 ====
小型のミサイル艇に搭載される'''OYQ-8'''シリーズでは、小型コンピュータのみが使用されている。[[1号型ミサイル艇|ミサイル艇1号型(02PG)]]で搭載されたOYQ-8では、OYQ-5〜7と同様にUYK-20が採用された<ref>{{Cite web|author=[[海上自衛隊]][[大湊地方隊|大湊地方総監部]]|date=2008年2月28日|url=https://www.mod.go.jp/msdf/bukei/d0/nyuusatsu/K-19-2610-0106.pdf|title=平成20年度におけるミサイル艇1、2号の除籍作業の役務に係る契約希望者募集要項|format=PDF|accessdate=2012年7月31日}}</ref>。続く[[はやぶさ型ミサイル艇]](11PG)で搭載されたOYQ-8Bおよび改良型のOYQ-8Cでは[[AN/UYK-44]]に更新された。これらのOYQ-8は、いずれもリンク 11への接続能力を備えている{{Sfn|石井|2002}}。

==== OYQ-9 ====
{{main|OYQ-9}}
はつゆき型・あさぎり型は、搭載するOYQ-5〜7戦術情報処理装置を含めて、技術的には共通点が多かったが、まったく新設計の汎用護衛艦である[[むらさめ型護衛艦|むらさめ型(03DD)]]の'''OYQ-9'''では、[[こんごう型護衛艦|こんごう型(63DDG)]]搭載の[[イージスシステム]]に範をとったシステム構成となっており、全武器システムとのデジタル連接化が実現した{{Sfn|山崎|2011}}。

ハードウェア的にも、UYK-7の後継として[[AN/UYK-43]]、UYK-20の後継としてUYK-44が採用され、さらに、ワークステーションもOJ-663/UYQ-21に更新された{{Sfn|海人社|2003}}。また[[戦闘指揮所]]には、[[イージスシステム#情報処理システム|イージス・ディスプレイ・システム(ADS Mk.2)]]に類似した大画面[[液晶ディスプレイ]](LCD)2面構成の情報表示プロジェクタが設置され、戦術情報の表示を効率化している{{Sfn|山崎|2011}}。

さらに、[[たかなみ型護衛艦|たかなみ型]][[さざなみ (護衛艦)|4番艦(12DD)]]搭載の'''OYQ-9D'''型では、[[艦艇自衛システム|SSDS]]やイージスシステムのベースライン7と同じく、AN/UYQ-70による分散処理が導入され、[[すずなみ (護衛艦)|5番艦(13DD)]]搭載の'''OYQ-9E'''型では[[リンク 16]]に対応した{{Sfn|山崎|2011}}。

=== 第四世代 ===
{{節スタブ|1=<nowiki />
* OYQ-12
* もがみ型のOYQ-1
|date=2022年1月}}
{{See also|FCS-3}}
{{See also|FCS-3}}
日本国産第1世代の[[OYQ-5]]においては、レーダー情報の入力と射撃指揮装置への出力の両方が手動であり、これが[[応答時間]]の短縮において制約となっていた{{Sfn|石井|2003}}{{Sfn|多田|2003}}ほか、対潜戦機能との連接もまったく為されていなかった。以後、順次に改良・強化が重ねられ、OYQ-6で対空レーダーとの連接、OYQ-7で対潜情報処理装置との連接、そしてOYQ-9で全武器システムとのデジタル連接化が実現した{{Sfn|山崎|2011}}。しかしOYQ-9においても、戦術状況の判断なども多くをオペレーターに依存しており、同時多目標対処能力も制限された。
日本国産第1世代のOYQ-5においては、レーダー情報の入力と射撃指揮装置への出力の両方が手動であり、これが[[応答時間]]の短縮において制約となっていた{{Sfn|石井|2003}}{{Sfn|多田|2003}}ほか、対潜戦機能との連接もまったく為されていなかった。以後、順次に改良・強化が重ねられ、OYQ-6で対空レーダーとの連接、OYQ-7で対潜情報処理装置との連接、そしてOYQ-9で全武器システムとのデジタル連接化が実現した{{Sfn|山崎|2011}}。しかしOYQ-9においても、戦術状況の判断なども多くをオペレーターに依存しており、同時多目標対処能力も制限された。


これを改善するために開発されたのが、新戦闘指揮システムACDS (Advanced CDS)を中核として、SWAN (Ship Wide Area Network)によって各戦闘システムを連接した'''新戦術情報処理装置ATECS (Advanced Technology Combat System)'''である{{Sfn|技術研究本部|2002|loc=3.技術担当官(船舶担当)}}。ATECSを構成するのは以下のシステムである{{Sfn|石井|2003}}。
これを改善するために開発されたのが、新戦闘指揮システムACDS (Advanced CDS)を中核として、SWAN (Ship Wide Area Network)によって各戦闘システムを連接した'''新戦術情報処理装置ATECS (Advanced Technology Combat System)'''である{{Sfn|技術研究本部|2002|loc=3.技術担当官(船舶担当)}}。ATECSを構成するのは以下のシステムである{{Sfn|石井|2003}}。
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またあきづき型(19DD)でも、同様にATECSの系譜に属する'''OYQ-11'''が採用されているが、魚雷防御システムなどサブシステムが多くなっている{{Sfn|東郷|2012}}。
またあきづき型(19DD)でも、同様にATECSの系譜に属する'''OYQ-11'''が採用されているが、魚雷防御システムなどサブシステムが多くなっている{{Sfn|東郷|2012}}。


いずも型においては、武器管制機能を省いた'''OYQ-12'''が搭載され、端末がUYQ-70から国産の情報処理サブシステムOYX-1に更新されている。
いずも型においては、OYQ-10をもとに武器管制機能を省いた'''OYQ-12'''が搭載され、端末が国産の情報処理サブシステムOYX-1に更新されている{{Sfn|海人社|2015|pages=98-101}}


あさひ型では'''OYQ-13'''となり、OYQ-11を基にして僚艦防空機能を省き、端末をOYX-1に更新している。このOYQ-13に連接されるOPY-1多機能レーダーやOQQ-24対潜システム等にもOYX-1を採用し、操作の標準化を進めている。
あさひ型では'''OYQ-13'''となり、OYQ-11を基にして僚艦防空機能を省き、端末をOYX-1に更新している{{Sfn|徳丸|2018}}。このOYQ-13に連接されるOPY-1多機能レーダーやOQQ-24対潜システム等にもOYX-1を採用し、操作の標準化を進めている{{Sfn|徳丸|2018}}


[[もがみ型護衛艦|もがみ型(30FFM)]]でもOYX-1が引き続き採用されているが、戦術情報処理装置は他のシステムとともに[[オープンアーキテクチャ]](OA)化が進められ、標準化されたネットワーク・システムに組み込まれるかたちで構成されており{{Sfn|内嶋|2018}}、システム区分は'''OYQ-1'''とされる{{Sfn|内嶋|2019}}。
=== 対潜情報処理装置 ===

==== 対潜情報処理装置 ====
対潜戦闘は人力に頼る部分が大きく、自動化が困難であることから、ソナーで目標を探知してから戦術状況を判断し、[[水中攻撃指揮装置]](SFCS)の管制によって実際に攻撃が行なわれるまでの流れの大部分がオペレーターによって行なわれていた。その後、艦装備のレーダーなどの情報は戦術情報処理装置を経由して水中攻撃管制装置に入力されるようになったが、情報処理は依然として人力への依存が大きかった。
対潜戦闘は人力に頼る部分が大きく、自動化が困難であることから、ソナーで目標を探知してから戦術状況を判断し、[[水中攻撃指揮装置]](SFCS)の管制によって実際に攻撃が行なわれるまでの流れの大部分がオペレーターによって行なわれていた。その後、艦装備のレーダーなどの情報は戦術情報処理装置を経由して水中攻撃管制装置に入力されるようになったが、情報処理は依然として人力への依存が大きかった。


259行目: 192行目:
その後、平成16年度計画より建造に着手した[[ひゅうが型護衛艦|ひゅうが型(16DDH)]]において、艦の戦術情報システムが分散システム化された[[#第四世代|ATECS]]となったのに伴い、対潜情報処理装置も、米国のAN/SQQ-89(v)15を参考とした統合ソナー・システムに移行した。これは同様のシステム構成を採用した[[あきづき型護衛艦 (2代)|あきづき型(19DD)]]においても踏襲されている{{Sfn|東郷|2012}}。
その後、平成16年度計画より建造に着手した[[ひゅうが型護衛艦|ひゅうが型(16DDH)]]において、艦の戦術情報システムが分散システム化された[[#第四世代|ATECS]]となったのに伴い、対潜情報処理装置も、米国のAN/SQQ-89(v)15を参考とした統合ソナー・システムに移行した。これは同様のシステム構成を採用した[[あきづき型護衛艦 (2代)|あきづき型(19DD)]]においても踏襲されている{{Sfn|東郷|2012}}。


=== 潜水艦指揮管制装置/情報処理装置 ===
=== <span id="潜水艦指揮管制装置/情報処理装置">潜水艦</span> ===
海上自衛隊の潜水艦は、[[うずしお型潜水艦|うずしお型(42SS)]]において、涙滴型船型・1軸推進方式の採用によって運動性能を大きく向上させ、またソナーもZQQ-1として統合化したことで索敵能力も向上した。しかし目標運動の解析や魚雷の命中計算を行う指揮装置は一つの目標しか扱えなかったことから、対艦用としての魚雷の性能不足も相まって、攻撃能力には課題を残した{{Sfn|小林|2019}}。
海上自衛隊の潜水艦は、[[うずしお型潜水艦|うずしお型(42SS)]]において、涙滴型船型・1軸推進方式の採用によって運動性能を大きく向上させ、またソナーもZQQ-1として統合化したことで索敵能力も向上した。しかし目標運動の解析や魚雷の命中計算を行う指揮装置は一つの目標しか扱えなかったことから、対艦用としての魚雷の性能不足も相まって、攻撃能力には課題を残した{{Sfn|小林|2019}}。


266行目: 199行目:
そして、[[そうりゅう型潜水艦|そうりゅう型(16SS)]]では[[分散システム]]化が図られており、情報を集中処理する情報処理装置は消滅して、各サブシステムを[[光ファイバー]]による[[Local Area Network|LAN]]で連接して、[[分散コンピューティング]]が行われている。各サブシステムの情報処理部は共通の[[データベース]]({{Lang|en|Target Data Base Server, TDBS}})に接続されて情報の共有を図っており、共通サービスを用いることでシステムの柔軟性は大幅に向上した。[[マンマシンインタフェース]]として、[[戦闘指揮所|発令所]]には戦術状況表示装置({{Lang|en|Tactical Display System, TDS}})が設置されており、センサ情報だけでなく海図等の航海情報やC2Tを介して得られるノンリアルタイムの艦外情報等の全ての情報を表示して、艦長の意思決定を支援する。コンソールとして、水冷式の潜水艦情報表示装置({{Lang|en|Multi Function Intelligence Control Console, MFICC}})6基が設置されており{{Sfn|幸島|2009}}、どのコンソールでも、必要なセンサないし武器の表示・制御プログラムを起動すれば、ただちのその機能を使用できるようになっている{{Sfn|東郷|2009}}。
そして、[[そうりゅう型潜水艦|そうりゅう型(16SS)]]では[[分散システム]]化が図られており、情報を集中処理する情報処理装置は消滅して、各サブシステムを[[光ファイバー]]による[[Local Area Network|LAN]]で連接して、[[分散コンピューティング]]が行われている。各サブシステムの情報処理部は共通の[[データベース]]({{Lang|en|Target Data Base Server, TDBS}})に接続されて情報の共有を図っており、共通サービスを用いることでシステムの柔軟性は大幅に向上した。[[マンマシンインタフェース]]として、[[戦闘指揮所|発令所]]には戦術状況表示装置({{Lang|en|Tactical Display System, TDS}})が設置されており、センサ情報だけでなく海図等の航海情報やC2Tを介して得られるノンリアルタイムの艦外情報等の全ての情報を表示して、艦長の意思決定を支援する。コンソールとして、水冷式の潜水艦情報表示装置({{Lang|en|Multi Function Intelligence Control Console, MFICC}})6基が設置されており{{Sfn|幸島|2009}}、どのコンソールでも、必要なセンサないし武器の表示・制御プログラムを起動すれば、ただちのその機能を使用できるようになっている{{Sfn|東郷|2009}}。


=== 掃海艇情報処理装置 ===
=== <span id="掃海艇情報処理装置">掃海艇</span> ===
海上自衛隊の[[掃海艇|掃海艦艇]]は、[[やえやま型掃海艦|やえやま型(01MSO)]]よりシステム化に着手した。当初はアメリカ海軍の深々度掃討装置の一環として、AN/SSN-2(V)精密統合航法システム({{Lang|en|precision-integrated navigation system, PINS}})の導入が検討されていたが、開発の遅延と予算との絡みもあって、国産の掃討用戦闘指揮システム({{Lang|en|Mine Countermeasures Direction System, M-CDS}})を導入することになった{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.5 &sect;10}}。日立造船では、日立製作所と共同で、海幕研究室{{Efn2|日立造船特機部武器設計主任であった赤尾利雄は、装備体系課 河村研究班長と推測している{{Sfn|赤尾|2011}}。}}の指導のもと、イギリス海軍の[[ハント型掃海艇]]の情報処理装置({{Lang|en|Central Control System}})を参考にして日本版の中央管制システムの研究を開始し、[[1984年]]には官民による新掃海システム・スタディー委員会が発足して、掃海艦に求められるシステムの検討が開始された{{Sfn|赤尾|2011}}。その成果を踏まえたシステムは、01MSOにおいて、指揮支援装置として装備された{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.5 &sect;10}}。
海上自衛隊の[[掃海艇|掃海艦艇]]は、[[やえやま型掃海艦|やえやま型(01MSO)]]よりシステム化に着手した。当初はアメリカ海軍の深々度掃討装置の一環として、AN/SSN-2(V)精密統合航法システム({{Lang|en|precision-integrated navigation system, PINS}})の導入が検討されていたが、開発の遅延と予算との絡みもあって、国産の掃討用戦闘指揮システム({{Lang|en|Mine Countermeasures Direction System, M-CDS}})を導入することになった{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.5 &sect;10}}。日立造船では、日立製作所と共同で、海幕研究室{{Efn2|日立造船特機部武器設計主任であった赤尾利雄は、装備体系課 河村研究班長と推測している{{Sfn|赤尾|2011}}。}}の指導のもと、イギリス海軍の[[ハント型掃海艇]]の情報処理装置({{Lang|en|Central Control System}})を参考にして日本版の中央管制システムの研究を開始し、[[1984年]]には官民による新掃海システム・スタディー委員会が発足して、掃海艦に求められるシステムの検討が開始された{{Sfn|赤尾|2011}}。その成果を踏まえたシステムは、01MSOにおいて、指揮支援装置として装備された{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.5 &sect;10}}。


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これと並行して、平成6年(1994年)度からは、NAUTIS-Mに範をとって、一部を除き国産化した'''OYQ-201'''掃海艇情報処理装置の開発が開始された{{Sfn|赤尾|2011}}。これは[[ひらしま型掃海艇|ひらしま型(16MSC)]]より装備化されており、[[S-10 (水中航走式機雷掃討具)|S-10]]操作用コンソール、機雷探知機用コンソール、CIC指揮官用コンソール、艦橋コンソール、および司令部CICコンソールにより構成されている。S-10等の武器管制機能のほか、航海情報管理、また対機雷戦計画・評価支援機能を備えている{{Sfn|髙橋|2013}}。
これと並行して、平成6年(1994年)度からは、NAUTIS-Mに範をとって、一部を除き国産化した'''OYQ-201'''掃海艇情報処理装置の開発が開始された{{Sfn|赤尾|2011}}。これは[[ひらしま型掃海艇|ひらしま型(16MSC)]]より装備化されており、[[S-10 (水中航走式機雷掃討具)|S-10]]操作用コンソール、機雷探知機用コンソール、CIC指揮官用コンソール、艦橋コンソール、および司令部CICコンソールにより構成されている。S-10等の武器管制機能のほか、航海情報管理、また対機雷戦計画・評価支援機能を備えている{{Sfn|髙橋|2013}}。


=== 戦術情報処理表示装置 (航空機用) ===
== 航空機システム ==
=== 大型哨戒機 (VP) ===
[[File:JMSDF Fleet Air Wing 1 Head 2015.JPG|thumb|250px|対潜水艦戦作戦センターの一つがある鹿屋航空基地]]
アメリカ海軍では、[[P-3 (航空機)|P-3C哨戒機]]において地上のGSCC({{Lang|en|Ground Support Computer Complex}})及びASWOC({{Lang|en|Anti-Submarine Warfare Operation Center}})施設と連携してのシステム構築を行っており、同機の導入とともに、海自でもこれに倣ったシステムが構築されていった{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.3 &sect;8}}。1982年3月31日には最初の航空対潜水艦作戦センター (ASWOC) が[[厚木海軍飛行場|厚木航空基地]]に配備された{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.3 &sect;8}}。これは地上に据え付けるコンテナ・タイプであったが、それ以降のASWOCは地下に作られ、抗堪性が高められた{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.3 &sect;8}}。また昭和63年度には、最初のASWOCは厚木から鹿屋航空基地に移転された{{Sfn|海上幕僚監部|2003|loc=ch.3 &sect;8}}。

その後、[[P-1 (哨戒機)|P-1哨戒機]]への更新とあわせて、海上航空作戦指揮統制システム({{Lang|en|Maritime Air-Operation Command and Control System, MACCS}})の配備が進められた<ref>{{Cite web|author=[[防衛省]]|url=https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_suishin/h25_res/r-sheet/0072.pdf|title=平成25年度業政事業レビュー|format=PDF|accessdate=2017年5月10日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200723170503/http://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_suishin/h25_res/r-sheet/0072.pdf|archivedate=2020-07-23}}</ref><ref>{{Cite web|title=海上・航空作戦部隊の指揮統制システム(MACCS)の整備について|url=https://www.mod.go.jp/msdf/frdc/whatsnew/apc/maccs.html|website=www.mod.go.jp|accessdate=2021-12-21}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku/soubiseisakugijutu/introduction2020_en.pdf|title=Introduction to the Equipment of the Japan Self-Defense Forces|accessdate=2021-12-21|publisher=防衛省|page=38|language=英語}}</ref>。MACCSは、ASWOCと同様の機能を有するシステムで、可搬化し、機材を分解して哨戒機数機で空輸したのち、外国の飛行場などに設置して運用することで、作戦基盤のない海外に展開する哨戒機部隊に対して、運用、指揮、統制、戦術支援を効果的に実施することも可能である<ref>{{Cite news|url=https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43055|title=まもなく実務に就く国産哨戒機P-1の全貌 世界で日米だけが持つ高度技術を生かし、中国の海洋進出を阻止へ|date=2015年03月03日|author=高橋亨|publisher=[[日本ビジネスプレス]]|newspaper=JBpress}}</ref>。

=== <span id="戦術情報処理表示装置 (航空機用)">哨戒ヘリコプター (HS)</span> ===
[[三菱-シコルスキー S-61#HSS-2B|HSS-2B]]は、機体設計は従来の[[三菱-シコルスキー S-61#HSS-2/2A|HSS-2/2A]]を踏襲しつつ、装備は全て近代化し、必要と考えられる機能は全て搭載する方針で開発された{{Sfn|藤田|2012}}。このように装備を充実させた結果、特に[[副操縦士]]の負担激増が懸念されたことから、戦術情報処理表示装置('''TDDS''')が開発・搭載されることになった{{Sfn|藤田|2012}}。これはおおむね[[P-2J (航空機)|P-2J]]のHSA-116に相当するものであった{{Sfn|助川|2012}}。
[[三菱-シコルスキー S-61#HSS-2B|HSS-2B]]は、機体設計は従来の[[三菱-シコルスキー S-61#HSS-2/2A|HSS-2/2A]]を踏襲しつつ、装備は全て近代化し、必要と考えられる機能は全て搭載する方針で開発された{{Sfn|藤田|2012}}。このように装備を充実させた結果、特に[[副操縦士]]の負担激増が懸念されたことから、戦術情報処理表示装置('''TDDS''')が開発・搭載されることになった{{Sfn|藤田|2012}}。これはおおむね[[P-2J (航空機)|P-2J]]のHSA-116に相当するものであった{{Sfn|助川|2012}}。


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* {{Citation|和書|last=石井|first=幸祐|year=2003|month=2|title=海上自衛隊の新型射撃指揮装置『FCS-3』|journal=世界の艦船|issue=607|pages=92-93|publisher=海人社|naid=40005630580|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=石井|first=幸祐|year=2003|month=2|title=海上自衛隊の新型射撃指揮装置『FCS-3』|journal=世界の艦船|issue=607|pages=92-93|publisher=海人社|naid=40005630580|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=岩村|first=直樹|year=2012|chapter=SH-60Kプロジェクトについて|title=第3巻 回転翼機|series=海上自衛隊 苦心の足跡|publisher=水交会|pages=344-348|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=岩村|first=直樹|year=2012|chapter=SH-60Kプロジェクトについて|title=第3巻 回転翼機|series=海上自衛隊 苦心の足跡|publisher=水交会|pages=344-348|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=内嶋|first=修|year=2018|month=5|title=ウエポン・システム (特集 どうなる? 30DX)|journal=世界の艦船|issue=879|pages=84-89|publisher=海人社|naid=40021519062|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=内嶋|first=修|year=2019|month=1|title=注目の新型艦艇 (特集 新時代の海上自衛隊)|journal=世界の艦船|issue=891|pages=128-137|publisher=海人社|naid=40021731689|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海上幕僚監部|year=2003|title=海上自衛隊50年史|chapter=第5章 61中防時代|ncid=BA67335381|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海上幕僚監部|year=2003|title=海上自衛隊50年史|chapter=第5章 61中防時代|ncid=BA67335381|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海人社|year=2002|month=4|title=海上自衛隊のシステム艦隊化はどこまで進んでいるか|journal=世界の艦船|issue=第594集|pages=94-99頁|publisher=海人社|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海人社|year=2002|month=4|title=海上自衛隊のシステム艦隊化はどこまで進んでいるか|journal=世界の艦船|issue=第594集|pages=94-99頁|publisher=海人社|ref=harv}}
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* {{Citation|和書|editor=海人社|year=2006|month=10|title=海上自衛隊潜水艦史|journal=世界の艦船|issue=665|pages=1-140|publisher=海人社|naid=40007466930|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海人社|year=2006|month=10|title=海上自衛隊潜水艦史|journal=世界の艦船|issue=665|pages=1-140|publisher=海人社|naid=40007466930|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海人社|year=2009|month=11|title=写真特集 海上自衛隊潜水艦の発達--「くろしお」から「そうりゅう」型まで|journal=世界の艦船|issue=713|pages=21-39|publisher=海人社|naid=40016812480|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海人社|year=2009|month=11|title=写真特集 海上自衛隊潜水艦の発達--「くろしお」から「そうりゅう」型まで|journal=世界の艦船|issue=713|pages=21-39|publisher=海人社|naid=40016812480|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|editor=海人社|year=2015|month=8|title=DDH「いずも」の技術的特徴|journal=世界の艦船|issue=820|pages=86-101|publisher=海人社|naid=40020516434|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海人社|year=2016|month=1|title=5,000トン型護衛艦 (特集 近未来の自衛艦) -- (近未来の海上防衛を担う自衛艦たち)|journal=世界の艦船|issue=828|pages=132-137|publisher=海人社|naid=40020658884|ref=harv}}
* {{Citation|和書|editor=海人社|year=2016|month=1|title=5,000トン型護衛艦 (特集 近未来の自衛艦) -- (近未来の海上防衛を担う自衛艦たち)|journal=世界の艦船|issue=828|pages=132-137|publisher=海人社|naid=40020658884|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=柏谷|first=達男|author2=吉岡勇治郎|author3=佐藤晴彦|year=2007|month=5|title=16DDHに見る自衛艦の研究開発プロセス (特集・自衛艦の研究開発プロセス)|journal=世界の艦船|issue=674|pages=75-83|publisher=海人社|naid=40015404745|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=柏谷|first=達男|author2=吉岡勇治郎|author3=佐藤晴彦|year=2007|month=5|title=16DDHに見る自衛艦の研究開発プロセス (特集・自衛艦の研究開発プロセス)|journal=世界の艦船|issue=674|pages=75-83|publisher=海人社|naid=40015404745|ref=harv}}
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* {{Citation|和書|last=東郷|first=行紀|year=2009|month=11|title=「そうりゅう」に見る最新潜水艦のネットワーク化 (特集 新型SS「そうりゅう」のすべて)|journal=世界の艦船|issue=713|pages=100-103|publisher=海人社|naid=40016812493}}
* {{Citation|和書|last=東郷|first=行紀|year=2009|month=11|title=「そうりゅう」に見る最新潜水艦のネットワーク化 (特集 新型SS「そうりゅう」のすべて)|journal=世界の艦船|issue=713|pages=100-103|publisher=海人社|naid=40016812493}}
* {{Citation|和書|last=東郷|first=行紀|year=2012|month=8|title=ウエポン・システム (特集 新型護衛艦「あきづき」) - (徹底解説 最新鋭DD「あきづき」のハードウェア)|journal=世界の艦船|issue=764|pages=110-117|publisher=海人社|naid=40019366523|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=東郷|first=行紀|year=2012|month=8|title=ウエポン・システム (特集 新型護衛艦「あきづき」) - (徹底解説 最新鋭DD「あきづき」のハードウェア)|journal=世界の艦船|issue=764|pages=110-117|publisher=海人社|naid=40019366523|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=徳丸|first=伸一|year=2018|month=9|title=「あさひ」の船体と兵装 (特集 新型護衛艦「あさひ」のすべて)|journal=世界の艦船|issue=884|pages=84-97|publisher=海人社|naid=40021642480|ref=harv}}
* {{Citation|和書|authorlink=長田博|last=長田|first=博||year=2001||month=7||title=海上自衛隊DDH運用思想の変遷 (特集 海上自衛隊のDDHとその将来)||journal=世界の艦船||issue=584||pages=70-75||publisher=海人社|naid=40002156107|ref=harv}}
* {{Citation|和書|authorlink=長田博|last=長田|first=博||year=2001||month=7||title=海上自衛隊DDH運用思想の変遷 (特集 海上自衛隊のDDHとその将来)||journal=世界の艦船||issue=584||pages=70-75||publisher=海人社|naid=40002156107|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=中川|first=利春|year=2012|chapter=SH-60J用戦闘指揮システムHCDSの開発について|title=第3巻 回転翼機|series=海上自衛隊 苦心の足跡|publisher=水交会|pages=305-307|ref=harv}}
* {{Citation|和書|last=中川|first=利春|year=2012|chapter=SH-60J用戦闘指揮システムHCDSの開発について|title=第3巻 回転翼機|series=海上自衛隊 苦心の足跡|publisher=水交会|pages=305-307|ref=harv}}

2022年2月10日 (木) 15:07時点における版

本項では、海上自衛隊が配備しているC4Iシステムについて述べる。

システム化に至る経緯

海上自衛隊の指揮管制のシステム化の試みは、1963年11月の海上自衛隊演習(38海演)に遡る[1]。このときには、需給統制隊陸自空自と共同使用していた電子計算機を利用して、船舶の運航データの処理が行われた[1]。また当時、海上幕僚監部総務部勤務であった平松良次1佐が、海上幕僚監部において「指揮通信組織の進歩について」という講話を実施しており、海上自衛隊においても、列国の指揮管制システム(CCS)の状況や指揮管制機能近代化の必要性が注目され始めていた[1]

このような気運を背景に、幹部学校が主宰する1965年12月の防衛術研究会においてCCS導入の問題が討議され、1966年8月には海上幕僚監部内にCCS準備室が設置された[1]。そして海上幕僚長の諮問機関としてCCS開発及び整備の方向を策定するため、1967年7月には海上幕僚副長を委員長として海上幕僚監部内に「海上自衛隊CCS開発推進委員会」、またその事務局として防衛部に「CCS開発推進委員会幹事室」(CCS幹事室)が設置され、CCS準備室はこれらに吸収合併された[1]1970年3月には、従来の検討を踏まえて、ソフトウエアの整備体制(土台)の確立と、陸上システム、艦艇システム及び航空機システム(3本の柱)の整備という基本構想が確立された[1]

この結果、まず46DDG「たちかぜ」用のWESの導入が重点事項とされた[1]。ただしこれは指揮管制というよりは目標指示装置としての性格が強く、指揮管制に重点を置いた艦艇システムはDDH用のTDPSとして結実した[1]。また陸上システムとしては、佐世保地方総監部用の米国製システムの導入は撤回されて、自衛艦隊司令部の作戦情報処理システムを国産により開発することとなった[1]。一方、航空機システムは次期対潜機がらみとされてこの時点では見送られ[2]、後にP-3Cの導入とともに整備が進められていった[3]

陸上システム

上記の経緯により、陸上システムとしては、まず自衛艦隊司令部の作戦情報処理システムとして自衛艦隊指揮支援システム(SFシステム)が開発されて、昭和50年(1975年)度より運用を開始した[1]。しかし技術進歩の進展が速いコンピュータ分野においては既に陳腐化の問題が生じていたほか、機能・体制面の課題もあって、56中業03中防でシステムの更新・近代化が図られた[4][5]

このうち、56中業でのシステム更新の際には、航空集団(空団)と佐世保・大湊地方総監部のためのシステムもそれぞれあわせて整備された[4]。空団のためのシステムは、SFシステムのAF端末機能と、各ASWOCからの諸情報を収集・処理・表示し、空団司令官の作戦指揮の実施に寄与する指揮管制機能を併せ持ったシステムとして位置付けられており、当初はAFシステムと仮称されていたが、後にASWOC管制ターミナルASWOC Control Terminal, ACT)と称されるようになった[4]。一方、佐世保・大湊地方総監部のためのシステムは、主として通峡阻止・対機雷戦を行う海峡防備に関して方面部隊指揮官の作戦指揮管制を支援するものとされた[4]

その後、08中防において、従来のSFシステムを基幹としてこれらの指揮管制支援システムを統合して、総合的なC4Iシステムが開発されることになった[6]。これが海上作戦部隊指揮管制支援システム(MOFシステム)であり、1999年3月1日より運用を開始した[6]。その後、2002年から2006年にかけて再構築が行われており、これに応じて名称も海上作戦部隊指揮統制支援システムに変更された(英名・略称には変更無し)[7][8]。また平成26年(2014年)度末には海上自衛隊指揮統制・共通基盤システムMaritime Self Defense Force Command, Control and Common Service Foundation System:MARSシステム)に発展しており、各艦の端末としては洋上ターミナル(Mobile MARS terminal:MMT)が配される[9]。これは海上自衛隊のみならず、他自衛隊や海上保安庁などの各種情報をネットワークを介して統合・共有する機能を備えている[10]

衛星通信

海上自衛隊では、1990年より衛星洋上データ通信の運用を開始した[11]。これはSUPERBIRD B2通信衛星を使用して、使用周波数はXバンド、通信速度は数十キロビット毎秒(kbps)とされている。艦上の衛星通信空中線装置としてはNORA-1が採用され、あさぎり型後期建造艦(60DD)より搭載されたほか、それ以前に建造された護衛艦にも順次バックフィットされた。この衛星通信機能は、2000年よりMOFシステムとも連接された。

また、大容量データ通信へのニーズの激増に対処するため、Kuバンドを使用する衛星通信空中線装置としてNORQ-1も順次に導入されつつある。ただしKuバンドはXバンドよりも通信帯域を大容量化しやすい一方で、天候に左右されやすいという欠点があり、骨幹的通信回線としては信頼性に欠けるとも指摘されている。このこともあり、ひゅうが型では、SUPERBIRD D衛星を利用したXバンドの高速大容量通信(数Mbps)に対応する衛星通信空中線装置として、NORA-7が導入された[12]

なお防衛省では、SUPERBIRD B2/D/C2衛星の設定運用寿命の到達に伴い、Xバンド防衛通信衛星の運用を2017年(平成29年)度から開始する。Xバンド防衛通信衛星は防衛省がPFI方式で独自に保有・運用する衛星で、2017年に2号機(きらめき2号)が打ち上げられ、2018年に1号機が、2021年に3号機が打ち上げられる予定である。これにより従前より飛躍的に高速・大容量でのデータ伝送が可能となる。

これらの自衛隊専用衛星通信のほか、民間のインマルサット衛星通信用の衛星通信装置としてNORC-4も各艦に搭載されており、またアメリカ軍の衛星通信システムに参加するための対米通信装置として、一部艦(DDG, DDHなど)にはAN/WSC-3(OE-82C)やAN/USC-42 Mini-DAMAが搭載されている。

艦艇システム

護衛艦

日本の艦載戦術情報処理装置の変遷[13][14][15]
型番 名称/サブタイプ 戦術データ・リンク 武器管制
機能
対潜戦
機能連接
搭載艦艇
11 14 16
NYYA-1 「たかつき」(38DDA)
OYQ-1 TDS 「たちかぜ」(46DDG)
OYQ-2 「あさかぜ」(48DDG)
OYQ-3 OYQ-3 TDPS しらね型(50/51DDH)
OYQ-3B CDS
OYQ-4 OYQ-4 CDS 「さわかぜ」(53DDG)
OYQ-4-1 TDS はたかぜ型(56/58DDG)
OYQ-5 OYQ-5〜5C-1
TDS-3
はつゆき型(52〜57DD)
「いしかり」(52DE)
ゆうばり型(54/55DE)
TDS-3-2 たかつきFRAM型(56FRAM)
(「たかつき」, 「きくづき」)
OYQ-6 OYQ-6〜6B CDS あさぎり型(58〜60DD)
OYQ-6C CDS 「かしま」(04TV)
OYQ-6-2 CDS 「はるな」(58FRAM)
OYQ-7 OYQ-7〜7B-1 CDS 「うみぎり」(61DD)
など あさぎり型の一部艦
OYQ-7B-2 「ひえい」(59FRAM)
OYQ-8 OYQ-8 CDS 1号型(02PG)
OYQ-8B CDS 「はやぶさ」(11PG)
OYQ-8C CDS 「おおたか」(12PG)
OYQ-9 OYQ-9 CDS むらさめ型(03〜07DD)
OYQ-9B CDS 「いかづち」(08DD)
OYQ-9C/C-1 CDS たかなみ型(10/11DD)
OYQ-9D 「さざなみ」(12DD)
OYQ-9E 「すずなみ」(13DD)
OYQ-10 ACDS
(Advanced CDS)
ひゅうが型(16/18DDH)
OYQ-11 あきづき型(19〜21DD)
OYQ-12 いずも型(22/24DDH)
OYQ-13 あさひ型(25/26DD)

第一世代

海上自衛隊が初めて導入した戦術情報処理装置は、アメリカ合衆国のリング・テムコ・ボート(LTV)社がアメリカ沿岸警備隊向けのTACNAVシステム(Tactical Navigation System)として開発したもので、海自でのシステム区分はNYYA-1とされて[16]、昭和45年(1970年)度の「たかつき」(38DDA)の第1回特別修理の際に搭載された[17]。しかし海自の要求に合致せず、性能的な制約もあって、搭載は同艦1隻のみに留まった[18]

一方、昭和46年(1971年)度計画では海自2隻目のミサイル護衛艦(46DDG; 後の「たちかぜ」)が建造されることになっていたが、1隻目の「あまつかぜ」(35DDG)で搭載された目標指示装置(WDS Mk.4)が既に陳腐化していたことから、そのかわりに海軍戦術情報システム(NTDS)の技術を導入し、CP-642B電子計算機1基を中核としたWES(Weapon Entry Systemが採用された[19]。46DDG搭載システムのシステム区分はOYQ-1、また2番艦「あさかぜ」(48DDG)に搭載された小改正型はOYQ-2とされた[20]。これらは戦術データ・リンクを備えておらず、フルスペックのNTDSとは言えなかったが[21]、導入とともに整備されたCDSソフトウェアの維持管理体制やこれを担う人材は、海自全体のシステム化に大きく貢献した[22]

またこれとほぼ並行して、昭和50年(1975年)度計画のヘリコプター護衛艦(50DDH; 後のしらね型)のためのTDPS(Tactical Data Processing Systemも開発されており、システム区分はOYQ-3とされた[23]。こちらはアメリカ海軍のスプルーアンス級駆逐艦のシステムを参考としており、CP-642B電子計算機を2基に増備して、リンク 11にも対応した[23]。ただし対空兵器システムについては、TDPSとは別に搭載された目標指示装置(TDS-2)が担当していた[24]

第二世代

46・48DDGに続くたちかぜ型の3番艦は、当初は先行する2隻と同様にWESを搭載する予定だったが、予算の関係で建造計画が昭和53年(1978年)度に先送りされたこともあって、アメリカ海軍のJPTDSの技術を利用した新しいシステムを搭載することになり、システム区分はOYQ-4となった[25]。電子計算機は新世代のAN/UYK-7に更新され[20]、海自で初めて、DDGとしての武器管制機能と戦術データ・リンクによる部隊戦術情報処理機能をあわせもつ本格的コンバット・システム(CDS)となった[15]。続くはたかぜ型(56/58DDG)でも小改正型のOYQ-4-1が搭載されたほか[26]、46・48DDGのWESも、後にほぼ同等の機能を有するように改修された[20]

一方、昭和52年(1977年)度計画で建造に着手する汎用護衛艦(52DD; 後のはつゆき型)では、当初はTDS-2を発展させた目標指示装置(TDS-3)を搭載する予定だったが、経空脅威の深刻化を受けてWESと同一思想の戦術情報処理装置が必要と考えられるようになり、国内開発のOYQ-5が搭載されることになった[27]。ただし処理能力やコストの面からリンク 11への対応は断念されており[注 1]、実質的には目標指示装置の域を出るものではなかった[28]。その後順次にアップデートを繰り返し、あさぎり型(58DD)で搭載されたOYQ-6ではリンク11や対空レーダーとの連接が実現し[15][27]、「full destroyer CDS」とも称される[29]。その後、同型の最終艦(61DD)では、OYQ-101 対潜情報処理装置(ASWDS)の搭載に伴って、これとの連接に対応したOYQ-7に発展した[15][30]

またミサイル艇1号型(02PG)では、OYQ-5〜7と同様にUYK-20を用いたOYQ-8が搭載されており[31]、続くはやぶさ型ミサイル艇(11PG)のOYQ-8Bおよび改良型のOYQ-8CではAN/UYK-44に更新された。これらのOYQ-8は、いずれもリンク 11への接続能力を備えている[32]

第三世代

海上自衛隊は、こんごう型(63DDG)の搭載システムとしてイージスシステムを選定したが、その戦術情報処理装置 (C&D, WCS)はアメリカより完成品を輸入する形となった。またむらさめ型(03DD)OYQ-9イージスシステムに範をとったシステム構成となっており、全武器システムとのデジタル連接化が実現した[15]。ハードウェア的にも、UYK-7の後継としてAN/UYK-43、UYK-20の後継としてUYK-44が採用され、さらに、ワークステーションもOJ-663/UYQ-21に更新された[33]。また戦闘指揮所には、イージス・ディスプレイ・システム(ADS Mk.2)に類似した大画面液晶ディスプレイ(LCD)2面構成の情報表示プロジェクタが設置され、戦術情報の表示を効率化している[15]

さらに、たかなみ型4番艦(12DD)搭載のOYQ-9D型では、イージスシステムのベースライン7と同じくAN/UYQ-70による分散処理が導入され、5番艦(13DD)搭載のOYQ-9E型ではリンク 16に対応した[15]

第四世代

日本国産第1世代のOYQ-5においては、レーダー情報の入力と射撃指揮装置への出力の両方が手動であり、これが応答時間の短縮において制約となっていた[34][35]ほか、対潜戦機能との連接もまったく為されていなかった。以後、順次に改良・強化が重ねられ、OYQ-6で対空レーダーとの連接、OYQ-7で対潜情報処理装置との連接、そしてOYQ-9で全武器システムとのデジタル連接化が実現した[15]。しかしOYQ-9においても、戦術状況の判断なども多くをオペレーターに依存しており、同時多目標対処能力も制限された。

これを改善するために開発されたのが、新戦闘指揮システムACDS (Advanced CDS)を中核として、SWAN (Ship Wide Area Network)によって各戦闘システムを連接した新戦術情報処理装置ATECS (Advanced Technology Combat System)である[36]。ATECSを構成するのは以下のシステムである[34]

  • 新戦闘指揮システム ACDS (Advanced Combat Direction System; OYQ-10)
  • 艦載用新射撃指揮装置(00式射撃指揮装置3型 FCS-3
  • 新対潜情報処理装置 ASWCS (Anti Submarine Warfare Control System)
  • 水上艦用EW管制システム EWCS

ACDSはOYQ-10として制式化され、ひゅうが型護衛艦に搭載された。OYQ-10の特徴は、オペレーターの判断支援および操作支援のため、予想される戦術状況に対応して、IF-THENルールを用いて形式化されたデータベースに基くドクトリン管制を採用している点にある。これによって、OYQ-10はエキスパートシステムとなり、オペレーターの関与は必要最小限に抑えられ、意思決定は飛躍的に迅速化される。端末にはAN/UYQ-70シリーズが採用され、ACDSを含めATECSは全体にCOTS化されており、総合的に開発が行われている。これによって、対空・対水上・対潜の各戦闘機能が高度に統合され、戦闘能力は飛躍的に向上した[37][38]

またあきづき型(19DD)でも、同様にATECSの系譜に属するOYQ-11が採用されているが、魚雷防御システムなどサブシステムが多くなっている[39]

いずも型においては、OYQ-10をもとに武器管制機能を省いたOYQ-12が搭載され、端末が国産の情報処理サブシステムOYX-1に更新されている[40]

あさひ型ではOYQ-13となり、OYQ-11を基にして僚艦防空機能を省き、端末をOYX-1に更新している[41]。このOYQ-13に連接されるOPY-1多機能レーダーやOQQ-24対潜システム等にもOYX-1を採用し、操作の標準化を進めている[41]

もがみ型(30FFM)でもOYX-1が引き続き採用されているが、戦術情報処理装置は他のシステムとともにオープンアーキテクチャ(OA)化が進められ、標準化されたネットワーク・システムに組み込まれるかたちで構成されており[42]、システム区分はOYQ-1とされる[43]

対潜情報処理装置

対潜戦闘は人力に頼る部分が大きく、自動化が困難であることから、ソナーで目標を探知してから戦術状況を判断し、水中攻撃指揮装置(SFCS)の管制によって実際に攻撃が行なわれるまでの流れの大部分がオペレーターによって行なわれていた。その後、艦装備のレーダーなどの情報は戦術情報処理装置を経由して水中攻撃管制装置に入力されるようになったが、情報処理は依然として人力への依存が大きかった。

1980年代HSS-2B哨戒ヘリコプターソノブイ、個艦装備の曳航式パッシブ・ソナー(TACTASS)が相次いで艦隊配備されたことから、対潜戦のパッシブ・オペレーション化が志向され、処理するべき情報が飛躍的に増大したことから、このような対潜戦闘を自動化する試みが開始された。まず艦体装備のソナーとTACTASS、ソノブイの入力を統合するためのOYQ-101 ASWDS(ASW Direction System)が国内開発され、1991年就役のあさぎり型の最終艦(61DD)で装備化された。これにより、艦のソナー(艦首装備ソナーと曳航ソナー)、ヘリ装備のソナー(ディッピングソナーソノブイ)の目標探知状況・識別結果、攻撃状況、探知を失った場合の目標推定位置などを統合処理・管制できるようになった[15][44][27][45]。その後、平成2年(1990年)度から平成6年(1994年)度にかけて、他の汎用護衛艦やはるな型・しらね型の各護衛艦、計23隻にバックフィットされた[15][44][27]。ただしこれらの後日装備艦では、SDPSと連接していないという点が、61DDの構成と異なっていた[46]

一方これと前後して、技術研究本部第5研究所では、昭和53年(1978年)度から57年度にかけてアクティブソナー目標類別装置の研究を行なうなどの要素研究が重ねられていた。これを踏まえて、ソナーそのものに情報融合機能を持たせて、アクティブソナーやTACTASSなど複数のソナーを統合して海洋条件および用途に応じた信号処理を行なうことで運用の適正化を可能とするソナー・システムとして、OQS-Xの開発が着手された。OQS-Xは昭和59年(1984年)度から昭和61年(1986年)度にかけて試作、昭和61年度から62年度にかけて技術試験が行なわれ、昭和63年(1988年)度から平成元年(1989年)度にかけて特務艦「あきづき」に搭載されての実用試験が行なわれた。最終的に実用化はされなかったものの、信号処理・類別技術や信号処理の共通化技術等はOQS-102およびOQS-5ソナーに採用されたとされている[36]

そしてOQS-Xの技術を生かして開発されたOQS-102ソナーを搭載したこんごう型護衛艦(63DDG)においては、米国のAN/SQQ-89の構成に範をとって、よりシステム統合を進展させたOYQ-102 ASWCS(ASW Control System)が装備された[15]。水中攻撃指揮装置の機能を包括しており、イージスシステムのC&DシステムおよびVLSと連接するとともに、曳航具4形Bの管制機能も付与された。なお1番艦ではHSS-2Bを管制の対象としたが、2番艦以降ではSH-60Jに変更され、OYQ-102Bとなった[46]

汎用護衛艦においても、平成3年度計画より建造に着手したむらさめ型では、同様にOQS-Xを踏まえて開発されたOQS-5ソナーを搭載するとともに、OYQ-102の経験を生かしたOYQ-103 ASWCSが装備された。これらはOYQ-9 CDSと連接されるとともに、ソナーなどと連接されている[15]。また「きりさめ」(06DD)からは曳航具4形の管制機能が追加されてOYQ-103B、そして「いかづち」(08DD)からはSDPSの2コンソール化やセンサ待受け周波数指示機能の追加および位置極限機能の改善が加えられてOYQ-103Cとなった[46]。そして発展型のたかなみ型(10DD)では、VLAと短SAMの発射競合を避けるための管制機能が付加されて、OYQ-103Dとなった[46]

その後、平成16年度計画より建造に着手したひゅうが型(16DDH)において、艦の戦術情報システムが分散システム化されたATECSとなったのに伴い、対潜情報処理装置も、米国のAN/SQQ-89(v)15を参考とした統合ソナー・システムに移行した。これは同様のシステム構成を採用したあきづき型(19DD)においても踏襲されている[39]

潜水艦

海上自衛隊の潜水艦は、うずしお型(42SS)において、涙滴型船型・1軸推進方式の採用によって運動性能を大きく向上させ、またソナーもZQQ-1として統合化したことで索敵能力も向上した。しかし目標運動の解析や魚雷の命中計算を行う指揮装置は一つの目標しか扱えなかったことから、対艦用としての魚雷の性能不足も相まって、攻撃能力には課題を残した[47]

このことから、うずしお型6番艦(47SS)から採用された魚雷発射指揮装置のディスプレイ機能を発展させて[48]ゆうしお型(50SS)ではZYQ-1潜水艦指揮管制装置(SCDS)が搭載された[49]。これはAN/UYK-20電子計算機を採用しており、複数目標への対処を実現した[47]。測的機器や航海計器からのデータを受信して目標の運動解析を行い、戦術情報の提供、攻撃兵器の発射と航法の支援、有線誘導魚雷の管制などの機能を備えている。また7番艦(57SS)以降では、電子計算機をAN/UYK-20 2基に増備したZYQ-2となり[49]、大船団を相手にしても十分に対応できる同時目標運動解析数となった[47]。続くはるしお型(61SS)ではZYQ-2Bを搭載したのち、おやしお型(05SS)では魚雷6本の同時誘導が可能なZYQ-3が搭載された[50]

そして、そうりゅう型(16SS)では分散システム化が図られており、情報を集中処理する情報処理装置は消滅して、各サブシステムを光ファイバーによるLANで連接して、分散コンピューティングが行われている。各サブシステムの情報処理部は共通のデータベースTarget Data Base Server, TDBS)に接続されて情報の共有を図っており、共通サービスを用いることでシステムの柔軟性は大幅に向上した。マンマシンインタフェースとして、発令所には戦術状況表示装置(Tactical Display System, TDS)が設置されており、センサ情報だけでなく海図等の航海情報やC2Tを介して得られるノンリアルタイムの艦外情報等の全ての情報を表示して、艦長の意思決定を支援する。コンソールとして、水冷式の潜水艦情報表示装置(Multi Function Intelligence Control Console, MFICC)6基が設置されており[51]、どのコンソールでも、必要なセンサないし武器の表示・制御プログラムを起動すれば、ただちのその機能を使用できるようになっている[12]

掃海艇

海上自衛隊の掃海艦艇は、やえやま型(01MSO)よりシステム化に着手した。当初はアメリカ海軍の深々度掃討装置の一環として、AN/SSN-2(V)精密統合航法システム(precision-integrated navigation system, PINS)の導入が検討されていたが、開発の遅延と予算との絡みもあって、国産の掃討用戦闘指揮システム(Mine Countermeasures Direction System, M-CDS)を導入することになった[52]。日立造船では、日立製作所と共同で、海幕研究室[注 2]の指導のもと、イギリス海軍のハント型掃海艇の情報処理装置(Central Control System)を参考にして日本版の中央管制システムの研究を開始し、1984年には官民による新掃海システム・スタディー委員会が発足して、掃海艦に求められるシステムの検討が開始された[53]。その成果を踏まえたシステムは、01MSOにおいて、指揮支援装置として装備された[52]

また1980年代後半からは[注 3]、海幕装備体系課の指導の元、M-CDS勉強会が発足し、次世代の掃海艇での情報処理装置についての検討が重ねられた。このとき、イギリス海軍のNAUTIS情報処理装置が俎上に載せられたが、同機はブリテン諸島周辺海域の対機雷戦環境に対応したものであり、日本では必ずしも合致しないと判断されたことから、勉強会の成果は保留され、情報収集というかたちで中断されていた[53]

しかし1991年自衛隊ペルシャ湾派遣を受けて、状況は一変した。この時点の海自の対機雷戦能力ではMANTA機雷への対処能力が不足しており、また同世代の欧米諸国軍と比して、艇の安全性や処分作業の自動化・省力化にも大きな立ち遅れがあると判断されたことから、M-CDSの新型化も焦眉の急となった。1992年より海幕において、平成6年(1994年)度計画で建造する掃海艇(06MSC)における対機雷戦システムの研究が着手された。研究にあたっては、当時の欧米諸国掃海艇のなかでは最新であったイギリス海軍のサンダウン級機雷掃討艇がモデルとして採択され、1995年3月には2番艇「インバネス」への乗艦研修を含むイギリスでの現地調査が行われた[54]

この成果を踏まえて、すがしま型(07MSC)では、イギリス海軍サンダウン級機雷掃討艇のシステムが導入されたことから、情報処理装置も、同級と同じく、英GECマルコーニ社のNAUTIS-Mが搭載された[54]。これはサンダウン級用に開発されたもので、iAPX-286マイクロプロセッサと4~16メガバイトのRAMを備えた3台のコンソールからなっており、レーダーや機雷探知機などと連接されて、航海情報管理、また対機雷戦計画・評価支援機能を備えていた[55]

これと並行して、平成6年(1994年)度からは、NAUTIS-Mに範をとって、一部を除き国産化したOYQ-201掃海艇情報処理装置の開発が開始された[53]。これはひらしま型(16MSC)より装備化されており、S-10操作用コンソール、機雷探知機用コンソール、CIC指揮官用コンソール、艦橋コンソール、および司令部CICコンソールにより構成されている。S-10等の武器管制機能のほか、航海情報管理、また対機雷戦計画・評価支援機能を備えている[56]

航空機システム

大型哨戒機 (VP)

対潜水艦戦作戦センターの一つがある鹿屋航空基地

アメリカ海軍では、P-3C哨戒機において地上のGSCC(Ground Support Computer Complex)及びASWOC(Anti-Submarine Warfare Operation Center)施設と連携してのシステム構築を行っており、同機の導入とともに、海自でもこれに倣ったシステムが構築されていった[3]。1982年3月31日には最初の航空対潜水艦作戦センター (ASWOC) が厚木航空基地に配備された[3]。これは地上に据え付けるコンテナ・タイプであったが、それ以降のASWOCは地下に作られ、抗堪性が高められた[3]。また昭和63年度には、最初のASWOCは厚木から鹿屋航空基地に移転された[3]

その後、P-1哨戒機への更新とあわせて、海上航空作戦指揮統制システム(Maritime Air-Operation Command and Control System, MACCS)の配備が進められた[57][58][59]。MACCSは、ASWOCと同様の機能を有するシステムで、可搬化し、機材を分解して哨戒機数機で空輸したのち、外国の飛行場などに設置して運用することで、作戦基盤のない海外に展開する哨戒機部隊に対して、運用、指揮、統制、戦術支援を効果的に実施することも可能である[60]

哨戒ヘリコプター (HS)

HSS-2Bは、機体設計は従来のHSS-2/2Aを踏襲しつつ、装備は全て近代化し、必要と考えられる機能は全て搭載する方針で開発された[61]。このように装備を充実させた結果、特に副操縦士の負担激増が懸念されたことから、戦術情報処理表示装置(TDDS)が開発・搭載されることになった[61]。これはおおむねP-2JのHSA-116に相当するものであった[62]

TDDSの開発は東芝小向工場で行われた[61]。試作時に多数の操縦士が協力して機能や操作性の確認、アイデアを出しての修正が行われたことから、評判はまずまずであった[61]。ただし開発段階では、特にソフトウェア上のトラブルが頻発しており、開発が機体の領収開始に間に合わず、TDDSを搭載したのは昭和52年度調達機4機のうち初号機のみであった[61]。また艦の戦術情報処理装置(CDS)とのシステム的な連接がなされているわけではなく、ソノブイ信号の伝送以外は無線電話で連絡しているのみであった[62]

HSS-2Bの後継となるSH-60Jは更にシステム化を進めており、国内で初めてMIL-STD-1553Bデータバスで個々のセンサ・制御系を連接し、戦術情報処理表示装置(Helicopter Combat Direction System, HCDS)および自動飛行制御装置(AFMS)に組まれたソフトウェアで航空機を制御するシステムとなった[62]。これらのシステム開発にあたっては、HSS-2Bというよりは、むしろ当時導入が進められていたP-3CおよびE-2Cのソフトウェア資産が影響を与えたとされる[62]

HCDSの電子計算機としては富士通のF-3コンピュータ(16ビット)が使用されたが、これはSH-60Bで搭載されていたAN/AYK-14コンピュータをもとに国産化したもので、記憶媒体を磁気記録からCMOSに変更して小型軽量化するなどの変更が加えられている。プログラミング言語は、P-3Cや艦艇システムと同系統のCMS-2Mが用いられていた[63]。またHCDSでは、LAMPS Mk.IIIと同様に、艦上のCDSと多重データリンクで連接する方式が採用されており[62]、データリンクのプロトコルはリンク 11を参考に策定された[64]

発展型のSH-60Kでは、HCDSを発展させたAHCDSAdvanced HCDS)戦術情報処理表示装置が搭載された[65]。AHCDSではニューロコンピュータ方式の採用も検討されたものの、リスクが大きいと評価されて、エキスパートシステム方式での構築となった[65][66]。フィールドデータが肝要であることから、部隊側は第51航空隊が主体となり、技術研究本部第2研究所と三菱重工ヘリ技術部も加わって、官・民、運用と技術が一体となった開発が進められた[65]。ただしオペレーションプログラムはHCDSの10倍以上の規模となり、日本初の戦術判断支援アルゴリズムの開発が求められたこともあって、開発期間は予定の2倍以上となった[67]

業務系システム

海上自衛隊の業務系システムは、海自造修整備補給システムとして統合されている。これらはいずれも、防衛情報通信基盤(DII)を通信システムとして利用する[68] [69]

従来、海上自衛隊の後方支援体制は、補給本部艦船補給処航空補給処の3つの需給統制機関を中心として運営されており、業務系システムとしては、下記の3系列のシステムが独立して運用されていた。

需給統制システム
需給統制隊(現在の補給本部)により、昭和30年度より整備されたものである。補給本部を中心に、艦船補給処・航空補給処に配備された、いわば作戦級のシステムである。
艦船補給システム
昭和40年度より整備されたもので、艦船補給処を中心にして各地方総監部補給所(現在の造修補給所)に配備された、いわば戦術級のシステムである。
航空補給システム
木更津航空補給所(現在の航空補給処)により、昭和36年度より整備されたもので、航空補給処を中心にして各航空部隊補給隊に配備された、いわば戦術級のシステムである。

海上自衛隊では、2007年よりこれら3システムの総合的な性能向上計画として「海幕補給3システムの業務・システム最適化計画」を策定したが、2008年にはこれをさらに拡大したシステムの統合計画として、「海自造修整備補給システムの業務・システム最適化計画」が策定された。この計画に基づき、3システムは高度に連接され、合理化されている[70]

脚注

注釈

  1. ^ テレタイプ端末での受信用であるリンク 14を通じて受信した情報を入力することは可能とされる[15][27]
  2. ^ 日立造船特機部武器設計主任であった赤尾利雄は、装備体系課 河村研究班長と推測している[53]
  3. ^ すがしま型(07MSC)の運用開始の約10年前、とされている[53]

出典

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  • 徳丸伸一「「あさひ」の船体と兵装 (特集 新型護衛艦「あさひ」のすべて)」『世界の艦船』第884号、海人社、84-97頁、2018年9月。 NAID 40021642480 
  • 長田博「海上自衛隊DDH運用思想の変遷 (特集 海上自衛隊のDDHとその将来)」『世界の艦船』第584号、海人社、70-75頁、2001年7月。 NAID 40002156107 
  • 中川利春「SH-60J用戦闘指揮システムHCDSの開発について」『第3巻 回転翼機』水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2012年、305-307頁。 
  • 藤木平八郎「海上自衛隊「八八艦隊」汎用DDの系譜 「はつゆき」型から「たかなみ」型まで (特集 新DD「たかなみ」型のすべて)」『世界の艦船』第614号、海人社、94-99頁、2003年8月。 NAID 40005855328 
  • 藤田幸生「HSS-2Bの導入から除籍完了まで」『第3巻 回転翼機』水交会〈海上自衛隊 苦心の足跡〉、2012年、174-185頁。 
  • 森恒英『艦船メカニズム図鑑』グランプリ出版、1989年。ISBN 978-4906189878 
  • 森恒英『続 艦船メカニズム図鑑』グランプリ出版、1991年。ISBN 978-4876871131 
  • 山崎眞「わが国現有護衛艦のコンバット・システム (特集 現代軍艦のコンバット・システム)」『世界の艦船』第748号、海人社、98-107頁、2011年10月。 NAID 40018965310 
  • 山下尚之; 矢崎忠; 福川慎一; 松田剛; 佐藤隆「SH-60K哨戒ヘリコプタの開発」『三菱重工技報』第42巻、第5号、三菱重工業、208-211頁、2005年。 NAID 40007112366 

関連項目