WES

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UYA-4(OJ-194B)ワークステーション
(※写真は米艦搭載の同型機)

目標指示装置英語: Weapon Entry SystemWES)は、アメリカ海軍海上自衛隊UNIVAC社が開発した艦載用戦術情報処理装置。海上自衛隊でOYQ-1として採用されて「たちかぜ」(46DDG)に搭載され、小改正型のOYQ-2は「あさかぜ」(48DDG)に搭載された。また全面的に強化されたOYQ-4は「さわかぜ」(53DDG)およびはたかぜ型(56DDG)に搭載され、後にOYQ-1, 2もこれと同等程度まで強化されてOYQ-1B, 2Bと改称された[1]

来歴[編集]

海上自衛隊では、ミサイル護衛艦「あまつかぜ」(35DDG)ターター・システムを導入した。同艦搭載のシステムはアナログ式であり、武器管制機能を担当するWDS Mk.4を備えていたものの、戦術情報処理装置は持たなかった。その3年後に計画された多用途護衛艦「たかつき」(38DDA)では、初の戦術情報処理装置としてNYYA-1が搭載されたものの、こちらは逆に目標情報管理・脅威評価機能しか備えておらず、武器管制機能とは連接されなかった[2][3]

「たかつき」から8年後、海上自衛隊は次世代ミサイル護衛艦としてたちかぜ型(46DDG)を計画したものの、既にWDS Mk.4は陳腐化しており、アメリカ海軍でもその代替を模索している状況であった。このことから、海上自衛隊では、アメリカ側の打診に応じて、海軍戦術情報システム(NTDS)のハードウェア・ソフトウェアの技術を応用したシステムを採用することとした。アメリカ海軍の監督の下、主契約会社としてシステム全体をRCA社が、デジタル・コンピューターのソフトウェアをスペリーUNIVAC社が担当することになった。これによって開発されたのが本機である[4]。プログラムに関しては、1970年よりアメリカ海軍艦船技術センター(NAVSEC)からの打診を受けたUNIVAC社により開発が行われ、1974年にNAVSECに受領されたのち、対外有償軍事援助(FMS)で海自が購入するかたちとなっている[5]

構成[編集]

上記の経緯より、本機は、基本的にはアナログコンピュータを用いていたWDSをもとに、NTDSの技術を応用したデジタルコンピュータを使用するように再設計したものとなっている[6][注 1]。コンピュータとしては、コスト低減の観点から、防衛庁内局(装備局)は国産品の採用を提案したが、当時、所要の性能を備えたコンピュータは国内に存在しなかったことから新規開発が必要であり、研究開発期間と性能面のリスクを考慮し、参事官会議を経て米軍採用品の採用が決定された[1]

OYQ-1の当初の主な構成機器は下記の通りであった[1]

  • 電子計算機 - AN/USQ-20B(CP-642B)×1基
  • TDSコンソール - AN/UYA-4(OJ-194B)×6基
    • 追尾員用×3基
      • 対空目標追尾員(Air Detection and Tracker: ADT)
      • 水上目標追尾員(Surface Detection and Tracker: SDT)
      • 追尾監理員(Track Supervisor: Track-SUP)
    • 管制官用×3基
      • 武器管制官(Ship Weapon Coordinator: SWC)
      • 射撃指揮装置管制官(Director Assignment Controller: DAC)
      • ミサイル・ランチャー管制官(Weapon Assignment Controller: WAC)

また48DDG「あさかぜ」 では、司令部用として大型のAN/UYA-4(OJ-197)1基が追加されたほか、三次元レーダー用のHT/SZ(Height/Size)コンソールが汎用のOJ-194に変更され、システム区分はOYQ-2となった[6]

運用においては、目標探知から攻撃に至るまで、下記のような段階を踏んで行われる[1]

  1. 脅威評価(Threat evaluation)
    まずAN/SPS-52 3次元レーダーの情報がWESに取り込まれるとともに、各追尾員がOPS-11対空捜索レーダーやOPS-16/18対水上捜索レーダーの目標情報を入力する。WESが各目標の脅威度を算出し、これをもとに、武器管制官(SWC)が脅威の最終評価およびそれぞれに対する攻撃可否の判定を行う。
  2. 武器管制(Weapons assignment)
    武器管制官(SWC)の指示に従い、脅威度の高い目標から攻撃を開始する。射撃指揮装置管制官(DAC)が射撃指揮装置(FCS)を目標に指向・捕捉して、ミサイル・ランチャー管制官(WAC)がMk.13ミサイル発射機あるいは54口径5インチ単装速射砲をFCSに割り当てる。目標が射程内に入った時点で射撃開始、攻撃結果を判定して、再攻撃または攻撃終了・次の目標への攻撃に移行することになる。

配備[編集]

上記の通り、OYQ-1は1番艦「たちかぜ」(46DDG)に、また小改正型のOYQ-2は2番艦「あさかぜ」(48DDG)に搭載された[1]。またアメリカ海軍では、WESや西ドイツ海軍向けのSATIR-Iの成功を受けて、自国のチャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦向けにJPTDS(Junior Participating Tactical Data System)を開発していた[7][8]

海上自衛隊では、3番艦「さわかぜ」(53DDG)でも引き続きWESを搭載する予定としていたが、アメリカ海軍からの助言を受け、JPTDSの技術を利用して電子計算機をAN/UYK-7に更新、プログラムもNTDS mod.4に準じて更新、リンク11にも対応した発展型に変更し、システム区分をOYQ-4に変更して「戦闘指揮システム」(CDS)と称するようになった[7]。またOYQ-1・2についてもこれと同等の性能を備えるようにアップグレードが行われており、「たちかぜ」のOYQ-1は1989年2月から9月、「あさかぜ」のOYQ-2は1989年12月から1990年6月に改修を受けて、それぞれ形式名はOYQ-1BOYQ-2Bに変更された[1]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ アメリカ海軍のJPTDSに準じた、より総合的な戦術情報処理装置であったという説もあるが[1]、実態は新型の武器管制装置の一種であった[7]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g 香田 2015, pp. 112-117.
  2. ^ Friedman 1997, p. 90.
  3. ^ 香田 2015, pp. 84-89.
  4. ^ 堤明夫 (2019年4月1日). “海自のシステム艦第1号 (2)”. 2019年7月10日閲覧。
  5. ^ vipclubmn.org. “Systems, International”. 2014年1月30日閲覧。
  6. ^ a b 堤明夫 (2019年4月2日). “海自のシステム艦第1号 (3)”. 2019年7月10日閲覧。
  7. ^ a b c 堤明夫 (2019年4月3日). “海自のシステム艦第1号 (4)”. 2019年7月10日閲覧。
  8. ^ Friedman 1997, p. 84.

参考文献[編集]

  • Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 978-1557502681. 
  • 大熊, 康之『軍事システム エンジニアリング』かや書房、2006年。ISBN 4-906124-63-1
  • 香田, 洋二「国産護衛艦建造の歩み」『世界の艦船』第827号、海人社、2015年12月、 NAID 40020655404

関連項目[編集]