S&W M29

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S&W M29
S&W Model 29 comparison.jpg
S&W M29(8⅜インチモデルと4インチモデル)
概要
種類 回転式拳銃
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計・製造 スミス&ウェッソン社
性能
口径 .44口径(約11.2mm)
銃身長 4インチ
6インチ
6.5インチ(165mm)
8.375インチ
10.625インチ
ライフリング 6条右回り 
使用弾薬 .44マグナム弾
.44スペシャル弾
装弾数 6発
作動方式 ダブルアクション
シングルアクション
全長 306mm(6.5インチモデル)
重量 1396g(6.5インチモデル)
発射速度  
銃口初速 448m/s 

S&W M29とは、アメリカスミス&ウェッソン社が開発した回転式拳銃(リボルバー)である。

特徴[編集]

使用弾薬は、.44マグナム弾。.44スペシャル弾を使用する「M1950」を原型としている。1955年11月に発売された初期モデルでは、フレームのサイド・プレートを固定するスクリューが4本使用されていた。しかし、砲底面近くにあるスクリューが発射の衝撃で折れることがあり、1956年にその部分が組合せ式に改められた。1960年後半、銃身長が4インチ、6.5インチの2モデルに8.375インチ銃身モデルが追加された(後年6.5インチ銃身モデルは、6インチ銃身付に改められた)。ワイドハンマー、ワイドトリガー付き。照準器は、照門(リアサイト)は通称Kサイトと呼ばれる上下左右に微調整可能なマイクロ・クロック型、照星(フロントサイト)はレッド・ランプ付きが標準仕様である。 材質は、ブルーイング仕上げとニッケルメッキ仕上げのクロムモリブデン鋼製基本モデルの「M29」の他、ステンレス製の「M629」、スカンジウム合金製のフレームとチタン製のシリンダーを組み合わせた軽量モデル「M329」がある。その他、S&Wパフォーマンス・センター製のカスタムモデルなどが存在する。発売当初は、S&W社の最高級モデルであり、マホガニー製の化粧箱に入れられて販売されていた。

.44マグナム弾とM29[編集]

.44マグナム弾は、レミントン・アームズ社とスミス&ウェッソン社が共同開発した狩猟用弾薬で、既存の.44スペシャル弾のケース長を0.125インチ延長し、装薬容量を増加させたものである。.357マグナム弾が、158グレイン弾頭付きで銃口初速1,200fps加速するのに対して、240グレイン弾頭を1,400〜1,600fpsで撃ち出す性能を有する。これは、.357マグナムの2倍、.45ACP弾の3倍の威力に相当する。北米では、大口径拳銃を使用したハンドガン・ハンティングが盛んであり、中型獣から大型獣までをカバーできる性能を発揮できることを想定して開発された。従って「対人用」として使用するには威力が大きすぎるため、米国では公的機関の執行官が携帯する武器としては、禁止されていることが多い。M29は、.357マグナム、.44スペシャル、.45ACP(COLT)弾用の大型フレーム(Nフレーム)をベースに、.44マグナムの発射プレッシャーに対応できるよう熱処理が加えられた専用フレームを使用する。

映画の中のM29[編集]

M29は、使用弾薬が狩猟専用であったために、一部のハンターなどだけに知られる特殊用途拳銃であった。ところが、1971年にクリント・イーストウッド主演の映画『ダーティハリー』が公開されると、一躍世界中に知られる存在となった。撮影に使用されたM29は、ハリウッド近隣の銃砲店で入手することができなかったので、プロデューサーが製造メーカーであるS&W社へ製品提供の要請を行った特別モデルであった。 この映画で特に有名な台詞として"this is a 44 magnum, the most poweful handgun in the world, and would blow your head clean off."(この銃は、世界一強力な44マグナムだ。お前の頭なんかきれいに吹き飛ばせる)があり、「世界最強の拳銃」=「S&W M29」であることを印象付けた。

映画『ダーティハリー』は、M29と.44マグナム弾を有名にしたと同時に、視聴者に多くの誤解も与えた。ハリー刑事が銀行強盗を制圧するために、犯人が逃走する自動車に発砲して止めるシーンがある。このシーンをよく見るとフロントガラスを撃って止めているのだが、これが拡大解釈され、.44マグナム弾は、クルマのエンジンブロックを撃ち抜くと信じられた。しかし実際には不可能である。映画『ビッグ・マグナム77(原題:Blazing Magnum,1976年カナダ)』のラストシーンでは、飛んでいるヘリコプターを撃ち落としている。これも映画の過剰演出である。また、『ダーティハリー2』では、同僚の警官に.44マグナム弾は反動が大きく扱いにくいのではないか、と訪ねられたときに、ハリー刑事が、(自分が使っているのは)軽装弾だから.357マグナム弾より扱いやすい、と答えるシーンがある。実際にそのようにするには、装薬量を大幅に減らす必要があり、.44スペシャル弾を使うのと変わらなくなるので、「世界最強の拳銃(the most poweful handgun in the world)」ではなくなるという矛盾が生じる。

スミス&ウェッソン M629 8⅜銃身モデル


「.44マグナム」の威力[編集]

.44マグナム弾

近年、454カスールや.50AE、.500S&Wマグナムの登場により、威力の面でワンランク下の弾薬であるとの見方をされているが、拳銃としては常識はずれの威力である。また、映画『ダーティハリー』で大柄なクリント・イーストウッドがしっかりと踏ん張って撃つシーンも、反動の強さを印象付けるのに一役買った。

「自動車のエンジンを撃ち抜くことができる」など、実際の性能を誇張した風聞が広まったが、これは.50BMG弾(12.7mm重機関銃M2バレットM82の使用弾)などと同等のエネルギーを有する弾薬でなければ不可能である。『ダーティハリー』の劇中でも、車そのものではなく乗員を狙って撃っている。

近年ではデザートイーグルの.50AE弾、スタームルガー・スーパーレッドホークトーラス・レイジングブルの.454カスール弾、2003年にはS&W M500の.500S&Wマグナム弾が登場し、世界最強の座を奪われている。なお、2007年1月現在、世界最強の拳銃用弾薬は.500S&Wマグナム弾、自動拳銃弾に限れば.50AE弾である[1]

S&W M29が登場する作品[編集]

※発表年順

脚注[編集]

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  1. ^ 単純に威力だけを問うのであれば、Pfeifer Zeliskaに使用される.600NE、Maadi-Griffin .50BMGやThunder .50BMGに使用される.50BMGも存在するが、これらは狩猟・軍用ライフル弾薬の転用であり、拳銃用弾薬には分類されない。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]