行列

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数学において、行列(ぎょうれつ、matrix)とは、ある固定されたの元を矩形(長方形)状に並べたものである。特に、すべての成分が実数の行列を実行列、すべての成分が複素数の行列を複素行列という。

同じサイズの行列の集合はアーベル群の構造を持ち、更に同じサイズの正方行列全体はひとつの環をなすので、行列の集合それ自体が代数学の対象である。また、行列は線形写像の表示手段として数学の様々な場面で現れ、数学を道具とする自然科学や工学の各分野でも基本的な道具としての位置を占める。

行列の起源は連立一次方程式の解法にある。例えば、加減法とも呼ばれる方程式の解法を定式化したものとして行列の基本変形や、それによるガウスの消去法などのアルゴリズムが挙げられる。これは三角化対角化逆行列の計算などに広範に適用できる。

目次

[編集] 用語

次のような行列 A を考える。


A = 
\begin{pmatrix}
 a_{11} & a_{12} & a_{13} & a_{14}\\
 a_{21} & a_{22} & a_{23} & a_{24}\\
 a_{31} & a_{32} & a_{33} & a_{34}\\
\end{pmatrix}

行列 A に並ぶ量 a11a12a21、...を行列の成分あるいは要素 (element) と呼ぶ。(係数と呼ぶこともある。) 行列の横方向に並んだ要素を (row) と呼び、縦方向に並んだ要素を (column) と呼ぶ。行列の i 行目、j 列目の要素を特に行列の (i, j) 要素と呼ぶ。例えば上記行列 A の (1,2) 要素は a12 である。

行列に含まれる行の数が m、列の数が n である時に、その行列を mn 列行列や m×n 行列と呼ぶ。行列を構成する行の数と列の数を合わせてという。したがってmn 列行列のことを (m, n) 型行列などと呼ぶこともある。 要素を環 R に持つ行列のことを R 上の行列という。

行列 Ai 行目の成分だけを並べたベクトル(第 i 行ベクトル)を ai = ( ai1, ai2, ai3,ai4) とすれば、行列 A は、


A = 
\begin{pmatrix}
 \mathbf{a}_1\\
 \mathbf{a}_2\\
 \mathbf{a}_3\\
\end{pmatrix}

と表現できるので、行列はベクトルを並べたものと考えることもできる。同様に第 j 列成分のみを並べてできるベクトル(第 j 列ベクトルbj を並べて

A = (\mathbf{b}_1, \mathbf{b}_2, \mathbf{b}_3, \mathbf{b}_4)

と書くこともできる。

[編集] 行列の和・差

mn 列の行列同士の和(差)を、各要素同士の和(差)と定める。

[編集] 和・差の計算例


A = 
\begin{pmatrix}
5 & 6 \\
7 & 8 \\
\end{pmatrix}
\quad
B = 
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4 \\
\end{pmatrix}

の時に、A + BA - B は、


A + B = 
\begin{pmatrix}
5 + 1 & 6 + 2 \\
7 + 3 & 8 + 4 \\
\end{pmatrix}
= 
\begin{pmatrix}
6 & 8 \\
10 & 12 \\
\end{pmatrix}

A - B = 
\begin{pmatrix}
5 - 1 & 6 - 2 \\
7 - 3 & 8 - 4 \\
\end{pmatrix}
= 
\begin{pmatrix}
4 & 4 \\
4 & 4 \\
\end{pmatrix}

[編集] 行列の積

行列の積を初めて定義したのはアーサー・ケーリーである。

l × m 行列 Am × n 行列 B の積は l × n 行列となり、C = AB の (i, j) 成分 cij は、

c_{ij} = \sum_{k=1}^{m}a_{ik}b_{kj}

で与えられる。

n が 1 より大きな時には、n × n 行列 AB に対して要素同士が可換であっても、一般に ABBA は等しくならない。

[編集] 積の計算例


A = 
\begin{pmatrix}
5 & 6 \\
7 & 8 \\
\end{pmatrix}
\quad
B = 
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4 \\
\end{pmatrix}

先ほどの例において、AB は、


AB = 
\begin{pmatrix}
5 \times 1 + 6 \times 3 & 5 \times 2 + 6 \times 4 \\
7 \times 1 + 8 \times 3 & 7 \times 2 + 8 \times 4 \\
\end{pmatrix}
= 
\begin{pmatrix}
23 & 34 \\
31 & 46 \\
\end{pmatrix}

同様に BA は、


BA = 
\begin{pmatrix}
1 \times 5 + 2 \times 7 & 1 \times 6 + 2 \times 8 \\
3 \times 5 + 4 \times 7 & 3 \times 6 + 4 \times 8 \\
\end{pmatrix}
= 
\begin{pmatrix}
19 & 22 \\
43 & 50 \\
\end{pmatrix}

となり、ABBAが等しくないことが見て取れる。

[編集] 計算の効率

[編集] 行列と線型写像

上の m × n 行列は n 次元数ベクトル空間から m 次元数ベクトル空間への線型写像になっている。逆に有限次元のベクトル空間の間の任意の線型写像は、基底の行き先を見ることで有限のサイズの行列として表すことができる。線型写像としてみると、行列の積は写像の合成になっている。行列の階数は線型写像の像の次元に対応し、転置行列は双対写像に対応している(双対空間を参照)。

もっと一般に、環上の行列を有限生成加群の間の準同型として見ることもできる。

[編集] 種々の行列

[編集] 簡単な分類

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク