王手

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

王手(おうて)とは、チャトランガ系統のボードゲームの用語のひとつ。相手の王将キング)に、自分の(王将以外の)駒を利かせる手を指す。チェスの場合はチェックと呼ばれている。本稿では、将棋チェスの「王手」について解説する。

目次

[編集] 概説

  • 「王手」は相手の王将に迫る手である。自分の駒を動かす(または将棋の場合は駒を打つ)事により、相手の王将に自分の駒の働きを利かせる手を指す。「次の手で王将を取るぞ。」という脅迫の意味があり、その脅迫を受けた側は「王手された」「王手がかかった」状態となる。
  • 王手をされた側は、その状態から絶対に抜け出さなければならない。王手は強制手であり、いかなる場合でも無視や放置は許されない。

[編集] 将棋の「王手」

[編集] 「王手」の解消方法

図1
王手の解消方法の例
画像:shogi_zhor_22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
画像:shogi_zver_22.png
▲持ち駒 歩1
△6二飛まで

王手の対処(王手の解消方法)としては、次の3点があげられる。

王将を逃がす
相手駒の利きのないマスへ玉を移動させること。図1では、玉を7九、7八、5九、5八のいずれかに動かすことで、王手から逃れることができる。
合駒をする
走り駒(飛車角行香車竜王竜馬)によって1マス以上離れた場所から王手された場合に、その駒の利きを遮る位置に駒を配置すること。図1では▲6八歩(持ち駒による合駒)や▲6八角(移動合い)など。
王手している駒を取る
図1では▲6二角成。

王手をされていて、しかも上記のいずれの対処も不可能な場合は「詰み」となる。「詰み」となれば詰まされた側が投了して対局は終了となり、詰ませた方の勝ち(詰まされた方の負け)となる。(→ 詳細は詰みを参照。)

[編集] 厳密な「王手」の定義

日本将棋連盟『将棋ガイドブック』より引用。以下、句読点を含め全て原文のまま。)

一方の側が玉以外の駒の利きを敵玉の存在するマス目に合わせるような指し手、つまり玉に取りをかけることを“王手”といい、かけた側から見れば“王手をかける”という。

[編集] 「王手」の発声について

指導対局や縁台将棋、初心者同士の対局などでは、王手をかけた側が慣習的に口頭でも「王手」と言う場合がある。ただしあくまで慣習であり、「王手」と発声しなければならないという規定はない[1]

[編集] 「王手」に関する反則

王手に直接関わる反則としては、打ち歩詰め、自玉を相手駒の利きにさらす手、連続王手の千日手がある(→ 詳細は将棋#反則または禁じ手を参照)。

[編集] 特殊な王手

空き王手(あきおうて)、開き王手(あきおうて)
走り駒(飛車、角行、香車、龍王、龍馬)の利きにある自分の駒を動かしてかける王手のこと。図2から▲2四桂とした図3では、香車によって王手がかかっている。
図2
△持ち駒 なし
画像:shogi_zhor_22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
画像:shogi_zver_22.png
▲持ち駒 なし
 
図3
△持ち駒 なし
画像:shogi_zhor_22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
画像:shogi_zver_22.png
▲持ち駒 なし
▲2四桂まで


両王手(りょうおうて)
空き王手の一種。2枚の駒で同時にかける王手のことで、上記の図4から図5では角と香車の双方が王手をかけている。合駒がきかないので、後手としては王将を逃がすしか手はない。
図4
△持ち駒 なし
画像:shogi_zhor_22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
画像:shogi_zver_22.png
▲持ち駒なし
 
図5
△持ち駒 なし
画像:shogi_zhor_22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
画像:shogi_zver_22.png
▲持ち駒なし
▲7五角まで


逆王手(ぎゃくおうて)
王手を解消すると同時に、相手に王手をかける手のこと。図6で後手の王将に王手がかかったが、図7では合駒の桂馬によって逆に先手の王将に王手がかかっている。図7の例以外にも、王手をかけている相手の駒を取ることで逆王手をかけたり、玉将を逃げる手が開き王手の逆王手になる場合もある。詳しくは双玉詰将棋#逆王手も参照のこと。
図6
△持ち駒 桂
画像:shogi_zhor_22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
画像:shogi_zver_22.png
▲持ち駒 なし
▲9四香まで
図7
△持ち駒 なし
画像:shogi_zhor_22.png
91 81 71 61 51 41 31 21 11
92 82 72 62 52 42 32 22 12
93 83 73 63 53 43 33 23 13
94 84 74 64 54 44 34 24 14
95 85 75 65 55 45 35 25 15
96 86 76 66 56 46 36 26 16
97 87 77 67 57 47 37 27 17
98 88 78 68 58 48 38 28 18
99 89 79 69 59 49 39 29 19
画像:shogi_zver_22.png
▲持ち駒 なし
△9二桂まで


王手○取り(おうて○とり)
両取り(2つ以上の駒を同時に狙う手)の一種で、王手をかけつつ別の敵駒の位置するマスに自駒を利かせる手のこと。○の部分には、王将との両取りになっている駒の略称が入る。「王手飛車取り」「王手角取り」のように、価値の高い駒に関して使われることが多い。「王手飛車取り」は、特に「王手飛車」(おうてびしゃ)と略される。


[編集] チェスの「王手」

[編集] チェックの基本

  • チェスでは将棋の王手にあたる手をチェックと呼ぶ。自分の駒の効き筋を、相手のキングに効かせる手を指す。
  • チェックをされた側は、キングを取られないように必ず対処しなければならない。
  • チェックの状態は、「check」あるいは「+」(プラス)で表現する。
  • キングでキングをチェックすることはできない。そのため、キングとキングを隣り合ったマスに置くこともできない。
  • チェックをした側は、慣習的に口頭でも「チェック」と言うことになっている。ただしあくまで慣習であり、口頭での「チェック」は強制ではない。

[編集] チェックの解消方法

チェックをされた側は、その状態から絶対に抜け出さなければならない。チェックは強制手であり、いかなる場合でも無視や放置は許されない。その対処法(チェックの解消方法)としては、次の3点があげられる。

チェス図1
ファイル:chess_zhor_26.png
ファイル:chess_zver_26.png
ファイル:chess_zver_26.png
ファイル:chess_zhor_26.png
Rb8+ 黒がルークでチェックしたところ。
白のキングには3通りの対処法がある。
  1. 自分のキングを安全な場所に逃がす
    右図で白のキングを、a1・a2・c1・c2のいずれかに避難させる。
  2. 防御する(味方の駒でキングを守る)
    d1のナイトをb2に移動させて防御する。
  3. 現在チェックしている駒を取る
    d6のビショップで、黒のルークを取る。


チェックをされていて、しかも上記1、2、3いずれの対処も不可能な場合は チェックメイト(メイト)となる。チェックメイトとなれば対局は終了となり、メイトさせた方の勝ち・メイトされた方の負けとなる。(→ 詳細は詰み・チェックメイトを参照。)

[編集] チェックのマナーと決まり

  • チェックをした側は、慣習的に口頭でも「チェック」と言うことになっている。ただしあくまで慣習であり、口頭での「チェック」は強制ではない。
  • チェックをされているにも関わらずチェックを放置する手を指した場合、その手は無効となり指し直しとなる。(この場合、例外的にタッチアンドムーブ[2]の原則は適用されない。)たとえチェックをされた側のミスによるものであったとしても、チェックした側は相手のキングを取ることはできない。
  • 自分からチェックを受けるような手を指した場合も、その手は無効となる。あらためて別の手を指し直さなければならない。

[編集] 特殊なチェック

チェス図2
ファイル:chess_zhor_26.png
ファイル:chess_zver_26.png
ファイル:chess_zver_26.png
ファイル:chess_zhor_26.png
ディスカバード・チェックの例
ディスカバード・チェック (Discovered check)
味方の駒を動かし、その後ろの駒で相手のキングをチェックする手を指す。
白が次にRe2+またはRd4+とすれば、次に黒のクイーンを取ることができる。


チェス図3
ファイル:chess_zhor_26.png
ファイル:chess_zver_26.png
ファイル:chess_zver_26.png
ファイル:chess_zhor_26.png
Bg5++ ダブル・チェックの例
ダブル・チェック (Double check)
ディスカバード・チェックのひとつ。背後の駒だけでなく、動かした駒自体でもチェックする手を指す。
チェス図3は、白のルークとビショップによるダブル・チェックとなっている。
ダブル・チェックの記号は「++」となる。


ダブル・チェックの場合は攻撃が双方向のため、味方の駒で防御することができない。そのためチェックを受けた側は、キングが逃げる以外に対処方法はない。



チェス図4
ファイル:chess_zhor_26.png
ファイル:chess_zver_26.png
ファイル:chess_zver_26.png
ファイル:chess_zhor_26.png
Qd4+ クロス・チェックの例
クロス・チェック (Cross-check)
将棋の「逆王手」にあたる手。相手のチェックを防ぐ駒で、同時に相手のキングへのチェックする手を指す。終盤戦でクイーンが使用されるケースが多い。


[編集] その他のチャトランガ系ゲームの「王手」

中国の将棋(象棋)の「王手」 → シャンチーを参照。
韓国・北朝鮮の将棋の「王手」 →チャンギを参照。
タイ(東南アジア)の将棋の「王手」 →マークルックを参照。

[編集] 注釈

  1. ^ 日本将棋連盟ウェブサイト「よくあるご質問とお答え」参照。
  2. ^ 「touch and move」の事。触れた駒は必ず動かさなければならないという、チェスの厳格なマナーのひとつ。

[編集] 参考文献

日本将棋連盟開発課 『将棋ガイドブック』 日本将棋連盟、2003年11月 ISBN 978-4819700801

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキブックス
ウィキブックス将棋関連の教科書や解説書があります。
ウィキメディア・コモンズ