軍人将棋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

軍人将棋盤の一例。手前(オレンジ)は駒の種類がわかるように表向けに配置しているが、対局するときには奥(黄色)のように裏向けに配置する

軍人将棋(ぐんじんしょうぎ)とは、通常3人で行うボードゲームの一種。行軍将棋(こうぐんしょうぎ)とも呼ばれる。軍隊階級や兵種をモチーフとしたを用いて盤上にて競う。

駒を盤上の自分の陣地に好きなように並べ、交互に駒を動かしていく。駒には強弱があり、駒の種類を対戦相手に明かさないことが特徴、裏返して配置する。このため、両陣の駒の種類を知ることの出来る審判役をおき、同じ升目で駒がぶつかった場合の勝ち負けを決める。ゲームは、敵の司令部を占領するか、相手を全滅させた方が勝ち。

駒は、スパイから大将までの各階級の軍人、および戦車飛行機地雷などがあり、種類によって勝てる相手が決まっている。基本的には位が上の軍人の方が強いが、地雷には飛行機工兵しか勝てないなど細かい規則があり、軍人将棋のセットには、このルールを一覧表にしたものが付属している。審判役は、この一覧表を見ながら勝ち負けを判定する。

審判役を必要としない、勝敗判定機を備え付けたものが一時期市販された。また、ファミコン用のソフトやWindows用ソフト、最近ではNintendoDS用のソフトなどのコンピュータゲームも存在する。

目次

[編集] ゲームの目的

一般的には敵の総司令部マスを大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐のいずれかの駒で占拠する(駒を総司令部マスに置く)か、動かせる駒を全滅させることが目的である。

[編集] 形態

軍人将棋は駒、盤からなり、三人で遊ぶ。これは実際に勝負する人二人、審判一人という内訳であるが、審判を用いずに駒を当てた際にひっくり返して勝負する場合もある(ラタック、後述)。

  • 駒は先攻、後攻の駒が識別できるように赤(オレンジ)と黄色とに色分けされている。駒の形状は一般の将棋と同じ変形五角形。しかし種類別に大きさの違いはなく、全て同じ大きさである。以前はその多くが木製であったが、現在販売されているものの大半はプラスチック製である。
  • 盤は以下に表す駒の種類によって、また突入口の種類によって数多くの種類がある。共通して言えるのは自陣と敵陣が分かれており、その間を行き来するためには突入口を通らなければならない。それぞれの陣地には総司令部(種類によっては総司令部と大本営)がある。

[編集] 種類

軍人将棋には、突入口のバリエーションと駒の種類の組み合わせにより、数多くの種類が存在する。また、大軍人将棋という、普通の軍人将棋よりも駒数の多いものも存在する。

[編集] 駒数の種類

31枚型
種類 種類 種類 種類
大将 1 大佐 2 大尉 2 工兵 3
中将 1 中佐 2 中尉 2 地雷 3
少将 2 少佐 2 少尉 2 飛行機 2
軍旗 1 騎兵 2 タンク 3 スパイ 1

盤は変形8×8を使う。

23枚型
種類 種類 種類 種類
大将 1 大佐 1 大尉 2 工兵 2
中将 1 中佐 1 中尉 2 地雷 2
少将 1 少佐 1 少尉 2 飛行機 2
軍旗 1 騎兵 1 タンク 2 スパイ 1

短時間で終わらせることができ、盤は変形8×6を使う。

以上がもっともポピュラーなものであるが、それ以外に原爆、ジェット機が入る50枚型、尉官などを省く15枚型などがある。

[編集] 突入口の種類

  • 突入口が自陣に四つあるX型
  • 突入口が自陣に三つあるY型
  • 突入口が自陣に二つあるI型
  • またそれぞれに浮島(X型、Y型の、道が交わるところにあるマス)のあるなし

以上六種類がある。

[編集] 駒の配置

このゲームの要となるのが駒の配置である。一般の将棋のようにスタート時の隊形が決まっているのではなく、自分の陣地内であれば、以下の禁止事項を除き、好きな位置に好きな駒を置くことが出来る。

  • 突入口に地雷を置く
  • 自陣最後尾列に軍旗を置く
  • 総司令部に地雷を置く(特に明記されない事が多いので禁止されない場合もある)

[編集] 駒の動かし方

将官、佐官、尉官、スパイ
前後左右の1ますに動ける。
タンク、騎兵
前後左右の1ます、または2ます前に動ける。途中に駒があった場合に飛び越えて2ます前に進むことはできない。
飛行機
前または後ろに何ますでも動ける。左右は1ます動ける。この駒のみ、駒を飛び越えられ、突入口を無視して敵陣に攻め込むことが出来る。
工兵
前後左右に何ますでも動ける。将棋の飛車の動き。
軍旗、地雷
動かせない。

[編集] 駒の勝敗

基本駒
大将>中将>少将>大佐>中佐>少佐>大尉>中尉>少尉
の順に強い。例えば、少将と中佐が戦うと、少将が勝つ。
特殊駒
  • 飛行機は将官以外には全て勝つ。将官には負ける。
  • タンクは将官、飛行機、工兵、地雷以外には全て勝つ。
  • 地雷は飛行機と工兵に負け、その他の駒に勝つ。
  • 工兵は地雷とスパイ、タンクに勝つ。
  • 騎兵はスパイと工兵だけに勝つ。
  • スパイは大将だけに勝つ。
  • 軍旗はすぐ後ろの駒と同じ威力となる。たとえば軍旗とタンクが戦うとき、軍旗のすぐ後ろが少将だった場合、軍旗が勝つ。また、軍旗のすぐ後ろが敵の駒の場合や何もない場合、あるいは軍旗が盤の一番後ろにある場合は、どの駒と戦っても負ける。

同じ駒どうしの戦い(大将対大将、飛行機対飛行機など)は相打ちとみなしてどちらも盤上から撤去する。撤去した駒は再び使うことが出来ず、また撤去した駒は、自分の駒しか見ることが出来ない。地雷が勝った場合、爆発したとみなし撤去されるのが一般的である。

[編集] 勝敗表

○は勝ち、×は負け、-は引き分けを意味する。

大将 中将 少将 大佐 中佐 少佐 大尉 中尉 少尉 飛行機 タンク 騎兵 工兵 スパイ 地雷
大将 - × -
中将 × - -
少将 × × - -
大佐 × × × - × × -
中佐 × × × × - × × -
少佐 × × × × × - × × -
大尉 × × × × × × - × × -
中尉 × × × × × × × - × × -
少尉 × × × × × × × × - × × -
飛行機 × × × -
タンク × × × × - × -
騎兵 × × × × × × × × × × × - -
工兵 × × × × × × × × × × × -
スパイ × × × × × × × × × × × × - -
地雷 - - - - - - - - - × - - × -

[編集] 戦術

駒を動かしていき、相手の駒がある場所に自分の駒を進める場合、一般の将棋では駒の種類にかかわらず、新しくそのマスに駒を動かした方が、前からいた相手の駒を取ることが出来る。しかし軍人将棋では、新しく動かした駒と前からいた相手の駒とを、一度審判に見せ、審判は上記の規則に基いて駒の勝敗を判断する。プレイヤー二人は自分の負けた駒、または勝った駒によって相手の駒を推理していく。

推理の一方法として、中将に勝つのは大将だけであることを利用する方法がある。動いた駒の大部分は、中将かそれ以下の位の駒と見なし、中将を積極的に動いた駒にぶつける。勝てばそれでよし、負けたのなら相手の駒は大将であり、中将どうしならば相打ちとなる。 相手の駒が大将と判明した場合、スパイをぶつけて相手の大将を排除することができれば、かなり有利に展開できる。 しかし、常に中将の近くにスパイを置いておくと、そのことを相手に読まれやすく、スパイが相手の飛行機やタンクに狙われるという危険もある。

中将を大将のように、少将を中将のように、飛行機を少将のように1ランク上であるかのように動かして相手をだます戦略もある。この作戦が成功している間、敵の駒数を減少させ動く駒と動かない駒がはっきりしてくると、勝負が決まることが多い。 即ち、地雷を不用意に踏むと著しく不利になるため、多数の動かない駒を持っており地雷とその他の駒が解らない状態を維持していくことが鍵となる。

また、敵陣の司令部に乗り込む前に飛行機か工兵を使い、司令部に設置された地雷の除去を試みる場合もある。地雷は司令部を占領できる駒には勝てるため、司令部に設置した場合、1回に限り占領を阻止できるが、飛行機と工兵には、占領されない代わりに負けてしまう。この点から、敵司令部に地雷が設置されている可能性を考慮し、将官や佐官が敵司令部に乗り込む前に飛行機と工兵が入り、地雷の除去を行う。

[編集] ローカルルール

軍人将棋には数々のローカルルールがある。

  • 地雷が勝った場合撤去しない。
  • 軍旗も動くことができる。
  • 工兵・タンク・騎兵は前後左右1ますしか動けない。
  • 騎兵の強さを地雷の強さを同じとする。
  • 飛行機は地雷に負ける。
  • 飛行機は工兵に負ける。
  • 飛行機は横に動けない。
  • 飛行機は横にも何ますでも動ける。
  • 飛行機は任意のますに移動できる。
  • 突入口の前のますには軍旗と地雷は置けない。
  • 総司令部に地雷を置ける。

[編集] ラタックとの違い

ラタックでは軍人将棋と違い、審判を必要とせず、コマと敵のコマとがぶつかった時に両コマを表にして勝敗を決め、以後それらのコマは表を向けたままにする。

[編集] 歴史

中国のボードゲームである軍棋(zh:軍棋)、および欧米のボードゲームであるStratego(en:Stratego)には盤の形や駒の種類、勝敗で類似点が見られる。闘獣棋(en:Jungle (board game)zh:鬥獸棋)もよく似た中国のボードゲームである。いずれも盤には河に相当する部分があり、将棋チェスよりもシャンチーに似ている。

また、シャンチーの駒を裏返して行う中国のボードゲームとして暗棋(zh:中國象棋變體#暗棋)がある。駒の動かし方や勝敗は軍人将棋などと似かよっており、これらのボードゲームの起源となっている可能性が考えられる。

[編集] 外部リンク