人間将棋

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2006年の人間将棋(4月22日、千葉涼子女流王将 対 甲斐智美女流初段)
舞鶴山山頂の王将碑(2008年4月20日撮影)。「王将」の文字(揮毫)は大山康晴十五世名人によるものである。

人間将棋にんげんしょうぎは、人間が将棋となって行われる将棋のイベントである[1]。山形県天童市の「天童桜まつり」で毎年4月に催される人間将棋が起源であり最も有名だが、近年では他の地域でも開催されている。

概要[編集]

将棋戦国時代の戦に見立て、戦国時代の兵士や腰元に扮した人間が巨大な将棋の駒となり、将棋盤を模した「戦場」で相手の軍と戦うものである。

戦の指揮はゲストとして招待されたプロ棋士女流棋士が務める。ルールは通常の将棋と違いがないが、人間将棋ではすべての駒を1度は動かすことが暗黙の了解となっている[注 1][注 2]。駒となる人間は一般から公募されている[注 3]。先手・後手で衣装が色分けされており[注 4]歩兵は女性しかつとめることが出来ない。

天童市では1972年以降、舞鶴山山頂に整備された会場で対局が行われている。天候不良の場合は会場を天童市市民文化会館に代替して開催される。

歴史[編集]

人間を駒に見立てて将棋を指すというアイデアは、豊臣秀吉伏見城で小姓や腰元を将棋の駒に見立て、「将棋野試合」を行ったという故事がきっかけとなっている[2][3]

天童は江戸時代(天童藩織田家2万石)から将棋駒の生産で知られ、織田信美文政年間に財政再建に成功した米沢藩上杉家から駒師を招き、家老である吉田大八の指揮のもと藩士に学ばせた[4]。近年でも将棋駒の約95%がこの地域で生産されている[5][6][7][8][9]

1956年から天童市で桜まつりが開催されるようになり、その目玉イベントとして人間将棋が行われるようになった。開催当初は地元の名士や市長などが指揮をとって対局していたが、イベントが有名になるにつれて1972年からはプロ棋士をゲストとして招待するようになり、1992年からは実際にプロ棋士が対局者として指揮をとるようになった。

2018年4月22日の第63回天童人間将棋では山崎隆之屋敷伸之が戦い、山崎の勝利。ゲストは加藤一二三[10][11][12]

イタリアマロースティカ市では人間チェスのイベントが1923年より行われており、この縁で1989年に天童市とマロースティカ姉妹都市の提携を結んだ。

2011年東日本大震災2020年及び2021年新型コロナウイルスの感染拡大を受け中止[13][14][15]

藤井聡太五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖)が対局者として出演した2022年の第67回天童人間将棋は、観覧者600人の応募枠に1万人超の応募が殺到した[16]

他地域での開催[編集]

2015年11月28日、兵庫県姫路市姫路城)で行われた人間将棋。村田智穂 対 長谷川優貴

人間将棋を扱った作品[編集]

  • テレビアニメ『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』 第67回「ルパンの大西遊記」駒が重なった場合、実際に人間が戦って勝敗を決めるという軍人将棋に近いルール。(日本テレビ1979年1月22日初回放映)
  • 漫画『3月のライオン』第5巻Chapter.43「桜の花の咲く頃」(羽海野チカ著、白泉社、2010年、ISBN 978-4-592-14515-8。初出はヤングアニマル白泉社、2010年8号。テレビアニメ版はNHK総合2017年3月11日初回放映)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 一般的な将棋の対局では、採用される戦法や戦型、手数などによって終局まで一度も動かさない駒がある場合も少なくない。
  2. ^ なお、一回も動いていない駒が敵に取られた場合でも、一回動かされたとみなす。
  3. ^ 天童市では二日目の対局のみ。なお、一日目の対局では、山形県立天童高等学校及び創学館高等学校の生徒が担当する。
  4. ^ 相手の持ち駒となっても衣装の色はそのままである。

出典[編集]

  1. ^ 人間将棋の「ひとコマ」 at the Wayback Machine (archived 2013年4月24日)
  2. ^ 60回目の「人間将棋」山形・天童市 - 日テレNEWS24(2015年4月25日付)
  3. ^ 春の風物詩「人間将棋」の駒武者を募集中 at the Wayback Machine (archived 2009年3月30日) - 天童商工会議所
  4. ^ 「天童藩史」、「御家建て直し」など。
  5. ^ 天童市将棋資料館
  6. ^ 天童と将棋駒
  7. ^ 全国の生産量の大部分を占める天童の将棋駒づくりは、藩士の内職が起源(山形県ふるさと工芸品 > 特集記事) - 山形県
  8. ^ 伝統の将棋駒が結ぶ東北の絆 -山形県天童市-(『ふるさと発 元気プロジェクト』番組サイト) - BSジャパン
  9. ^ 天童と将棋駒 at the Wayback Machine (archived 2015年12月22日) - 天童市
  10. ^ 第63回天童桜まつり人間将棋《2018年4月21日・22日》開催! - 天童市観光物産協会 / 天童市観光情報センター
  11. ^ 「ひふみん」が爆笑トーク 天童・人間将棋会場 - 山形新聞(2018年04月22日)] at the Wayback Machine (archived 2018年7月26日)
  12. ^ 天童市で「人間将棋」 2日間で12万人来場 - 観光経済新聞(2018年5月5日)
  13. ^ “感染拡大で観光イベントに影響 天童・人間将棋は中止 米沢・上杉まつりは延期へ”. さくらんぼテレビ Live News (さくらんぼテレビジョン). (2020年3月16日). https://www.sakuranbo.co.jp/sp/news/2020/03/16/post-3902.html 2020年6月26日閲覧。 
  14. ^ “4月の山形・天童「人間将棋」中止決定 「観光客訪れる前に」 - 毎日新聞”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2020年3月18日). https://mainichi.jp/articles/20200318/k00/00m/040/029000c 2020年6月26日閲覧。 
  15. ^ “天童の人間将棋、今年も中止”. 山形新聞 (株式会社山形新聞社). (2021年2月20日). https://www.yamagata-np.jp/news/202102/20/kj_2021022000475.php 2021年2月20日閲覧。 
  16. ^ “藤井聡太五冠の人間将棋見たい! 観覧者に応募殺到、倍率17.7倍”. 河北新報 (株式会社河北新報社). (2022年4月10日). https://kahoku.news/articles/20220410khn000005.html 2022年4月30日閲覧。 
  17. ^ 甲子園球場で記念対局 藤井八冠と羽生九段 12月8日開催 - 産経新聞(2024年1月13日)
  18. ^ 姫路城で「人間将棋」 白亜の大天守を背景に熱戦 平成の大修理終了記念 - 産経WEST(2015年11月28日付)
  19. ^ 姫路城グランドオープン記念!祝賀・人間将棋 姫路の陣 - 日本将棋連盟(2015年11月9日更新)
  20. ^ 姫路城で「人間将棋」 平成の大修理完了
  21. ^ a b 姫路城グランドオープン記念!「祝賀・人間将棋 姫路の陣」開催結果のお知らせ at the Wayback Machine (archived 2015年12月5日) - 姫路市
  22. ^ 盤上で“戦国合戦” 姫路城で「人間将棋」 西日本初 at the Wayback Machine (archived 2015年12月29日) - 神戸新聞
  23. ^ 「『天下分け目の関ケ原』東西人間将棋」の開催 at the Wayback Machine (archived 2017年5月22日) - 岐阜県
  24. ^ 岐阜・関ケ原:人間将棋、結果は「歴史通り」 - 毎日新聞(2017年10月15日付)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]