ヤン・ゴームズ

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ヤン・ゴームズ
Yan Gomes
シカゴ・カブス #15
ワシントン・ナショナルズ時代
(2020年9月12日)
基本情報
国籍 ブラジルの旗 ブラジル
出身地 サンパウロ州サンパウロ
生年月日 (1987-07-19) 1987年7月19日(36歳)
身長
体重
6' 2" =約188 cm
215 lb =約97.5 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 捕手
プロ入り 2009年 MLBドラフト10巡目(全体310位)
初出場 2012年5月17日
年俸 $6,000,000(2023年)[1]
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム ブラジルの旗 ブラジル
WBC 2013年予選

ヤン・ダ・シルバ・ゴームズYan da Silva Gomes, ポルトガル語発音: [ˈɐ̃w̃ ˈɡõmiʃ], 英語発音: /jæn goʊmz/; 1987年7月19日 - )は、ブラジルサンパウロ州サンパウロ出身のプロ野球選手捕手)。右投右打。MLBシカゴ・カブス所属。ブラジル出身で初のMLB選手である[2]

経歴[編集]

プロ入り前[編集]

1987年ブラジルサンパウロで生まれ、12歳の時に家族と共にアメリカ合衆国へ移住する[3]フロリダ州マイアミマイアミ・サウスリッジ高等学校英語版を卒業後、テネシー大学に進学した。

2008年MLBドラフト39巡目(全体1192位)でボストン・レッドソックスから指名を受けるが、契約には至らなかった。

プロ入りとブルージェイズ時代[編集]

トロント・ブルージェイズ時代
(2012年8月19日)

2009年MLBドラフト10巡目(全体310位)でトロント・ブルージェイズから指名を受け入団[3]

2012年5月17日、アダム・リンドに代わってAAA級ラスベガス・フィフティワンズから昇格した。同日のヤンキース戦でブラジル人として初のデビューを果たし、フィル・ヒューズから安打も記録した[4]

インディアンス時代[編集]

クリーブランド・インディアンス時代
(2017年8月27日)

2012年11月3日にエスミル・ロジャースとのトレードで、マイク・アビレスと共にクリーブランド・インディアンスへ移籍した[5]。また、パナマで開催された第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)予選のブラジル代表に選出された。パナマ代表との本大会進出決定戦では決勝適時打を記録し、予選突破に大きく貢献した[6]。本戦への出場も期待されたがシーズンに専念するため辞退した。

2013年3月11日にインディアンスと1年契約に合意。3月25日にAAA級コロンバス・クリッパーズへ異動[7]。4月9日にメジャーへ昇格した[8]。4月24日にAAA級コロンバスへ降格したが、28日に再昇格した[9]。この年は88試合に出場して打率.294、11本塁打、38打点、2盗塁を記録した。守備ではDRS11を残した。また、7月30日にはMLB史上初のブラジル人投手であるアンドレ・リエンゾと初のブラジル人対決をした。

2014年3月10日にインディアンスと1年契約に合意した。3月31日にインディアンスと総額2300万ドルの6年契約(2020年・900万ドル、2021年・1100万ドルの球団オプション付き)に合意した[10][11]。シーズンでは初めて規定打席に到達し、打率.278、21本塁打、74打点などと活躍した。ブラジル人として初めてシルバースラッガー賞を獲得した。

2015年は離脱もあり、95試合の出場に留まった。打撃では打率.231、出場試合数を超える104三振を記録したが、3シーズン連続2桁本塁打となる12本塁打を記録した。

2016年7月に右肩を故障して故障者リスト入りした[12]。更に、復帰直前にマイナーリーグの試合で右手首に死球を受けて骨折し、引き続き戦線離脱する羽目になった[13]。最終的には74試合に出場したが、打率.167、9本塁打、34打点という成績に留まり、全体的に低調だった。守備では73試合でマスクを被り、3失策、守備率.995、DRS0、盗塁阻止率37%という安定した成績だったがフレーミングは初めてマイナスに転じた。シカゴ・カブスとの2016年のワールドシリーズに出場したが、ロベルト・ペレスに先発を奪われ、チームも3勝4敗で敗退した。

2017年1月20日に背番号を7に変更した[14]。この年は105試合に出場し、打率.232、14本塁打、56打点という成績で、打率はあまり高くないものの出塁率と長打率が大きく上がり、OPSは.708になった。守備では103試合で盗塁阻止率42%などを記録した。

2018年は前半戦に打率.247、10本塁打、32打点を記録し、オールスターに代替で初選出された[15]。オールスターゲームにブラジル人選手が選出されるのは史上初のことである[16]。最終成績は112試合に出場し打率.266、16本塁打、48打点、OPS.762であった。守備では111試合で捕手を務め、DRS4で4年ぶりにプラスに転じた。

ナショナルズ時代[編集]

2018年11月30日にジェフリー・ロドリゲスダニエル・ジョンソンとのトレードで、ワシントン・ナショナルズへ移籍した[17]。翌年からインディアンスの正捕手はロベルト・ペレスとなった。

2019年カート・スズキと出場機会を分け合う形で97試合に出場し、打率.223、12本塁打、43打点だった[18]。守備では盗塁阻止率30%、DRSはプラスだったが、フレーミングはマイナスだった[19]。ポストシーズン、NLCSで計3打点を記録した。ヒューストン・アストロズとの2019年のワールドシリーズでは第3戦でスズキが負傷したため、第4戦以降はフル出場し[20]、球団史上初のワールドシリーズ優勝に貢献した。最後の打者のマイケル・ブラントリーに対してダニエル・ハドソンが空振り三振を奪い、優勝の瞬間のボールを捕球してシーズンを終えた。11月2日に球団側がオプションを破棄したため、FAとなった[21]。オフの10月31日にFAとなった[22]が、11月27日にナショナルズと2年1000万ドルで再契約したと報道され[23]、12月10日に正式公示された[14]

2020年は打率.284、出塁率.319、長打率.468で4本塁打、13打点を記録した。8月21日のマイアミ・マーリンズ戦で通算100本塁打に到達した[24]

アスレチックス時代[編集]

2021年7月30日にドリュー・ミラスリチャード・ガッシュセス・シューマンとのトレードで、ジョシュ・ハリソンと共にオークランド・アスレチックスへ移籍した[25]。オフの11月3日にFAとなった。

カブス時代[編集]

2021年12月1日にシカゴ・カブスと2年総額1300万ドルの契約を結んだ[26]

選手としての特徴[編集]

パワーのある打撃が魅力の攻撃型捕手で、通算の長打率やOPS・二塁打数・本塁打数などの打撃指標はインディアンス時代、アメリカンリーグの捕手の中でも有数であった[27]。また、守備も高いレベルにあり、「Baseball Prospectus」でフレーミング、送球、ブロッキングなどすべての測定可能なプレーで強いポジティブな結果が出ており、高い評価をつけられている[28][19]

ブラジルの野球は日本野球の影響を大きく受けていることもあり、幼少期は日本プロ野球の選手になることを夢見ていた[29]

人物[編集]

詳細情報[編集]

年度別打撃成績[編集]

















































O
P
S
2012 TOR 43 111 98 9 20 4 0 4 36 13 0 0 1 3 6 0 3 32 3 .204 .264 .367 .631
2013 CLE 88 322 293 45 86 18 2 11 141 38 2 0 0 4 18 0 7 67 12 .294 .345 .481 .826
2014 135 518 485 61 135 25 3 21 229 74 0 0 0 6 24 3 3 120 13 .278 .313 .472 .785
2015 95 389 363 38 84 22 0 12 142 45 0 0 0 6 13 1 7 104 11 .231 .267 .391 .659
2016 74 264 251 22 42 11 1 9 82 34 0 0 0 2 9 0 2 69 7 .167 .201 .327 .527
2017 105 383 341 43 79 15 0 14 136 56 0 0 1 2 31 0 8 99 9 .232 .309 .399 .708
2018 112 435 403 52 107 26 0 16 181 48 0 0 0 3 21 2 8 119 4 .266 .313 .449 .762
2019 WSH 97 358 314 36 70 16 0 12 122 43 2 0 0 1 38 6 5 84 7 .223 .316 .389 .704
2020 30 119 109 14 31 6 1 4 51 13 1 0 0 3 6 0 1 22 1 .284 .319 .468 .787
2021 63 235 218 30 59 11 1 9 99 35 0 0 0 0 13 3 4 47 12 .271 .323 .454 .778
OAK 40 140 131 19 29 4 0 5 48 17 0 0 0 1 6 0 2 31 3 .221 .264 .366 .631
'21計 103 375 349 49 88 15 1 14 147 52 0 0 0 1 19 3 6 78 15 .252 .301 .421 .722
2022 CHC 86 293 277 23 65 12 0 8 101 31 2 0 1 4 8 0 3 47 15 .235 .260 .365 .625
2023 116 419 382 44 102 20 2 10 156 63 1 0 0 7 21 1 9 81 9 .267 .315 .408 .723
MLB:12年 1084 3986 3665 436 909 190 10 135 1524 510 8 0 3 42 214 16 62 922 106 .248 .298 .416 .713
  • 2023年度シーズン終了時

年度別守備成績[編集]



捕手(C) 一塁(1B) 三塁(3B) 左翼(LF)
























































2012 TOR 9 35 0 0 0 1.000 0 0 0 --- 20 106 7 1 7 .991 8 7 12 0 2 1.000 4 0 0 0 0 ---
2013 CLE 85 663 65 3 1 .996 4 29 20 .408 1 6 0 0 0 1.000 - -
2014 126 1052 73 14 9 .988 6 66 31 .320 - - -
2015 91 746 56 3 8 .996 6 39 19 .328 - - -
2016 73 539 32 3 3 .995 4 19 11 .367 - - -
2017 103 938 60 9 5 .991 4 33 24 .421 - - -
2018 111 994 49 9 6 .991 6 49 20 .290 - - -
2019 WSH 93 842 41 4 3 .995 10 41 18 .305 1 1 0 0 0 1.000 - -
2020 30 229 15 2 0 .992 2 18 4 .182 - - -
2021 61 494 37 6 3 .989 2 29 16 .356 - - -
OAK 31 236 7 2 0 .992 1 14 3 .177 - - -
'21計 92 730 44 8 3 .990 3 43 19 .307 - - -
2022 CHC 69 576 35 7 5 .989 2 37 18 .327 - - -
2023 103 789 54 6 7 .993 4 60 25 .294 - - -
MLB 985 8133 526 68 50 .992 51 434 209 .325 22 113 7 1 7 .992 8 7 12 0 2 1.000 4 0 0 0 0 ---
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

表彰[編集]

記録[編集]

背番号[編集]

  • 68 (2012年)
  • 10 (2013年 - 2016年、2019年 - 2021年途中)
  • 7 (2017年 - 2018年、2022年)
  • 23 (2021年途中 - 同年終了)
  • 15 (2023年 - )

代表歴[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Yan Gomes Contract Details, Salaries, & Earnings” (英語). Spotrac. 2023年5月5日閲覧。
  2. ^ http://toronto.bluejays.mlb.com/news/article.jsp?ymd=20120517&content_id=31545568
  3. ^ a b The Brazilian Bomber- Interview With Yan Gomes
  4. ^ http://mlb.mlb.com/mlb/gameday/index.jsp?gid=2012_05_17_nyamlb_tormlb_1
  5. ^ Blue Jays acquire Esmil Rogers in trade with Cleveland Indians ESPN
  6. ^ ブラジルが初の本大会進出/WBC予選 nikkansports.com
  7. ^ "Indians announce roster reductions & Opening Day roster structure" (Press release). MLB.com (Cleveland Indians). 25 March 2013. 2014年3月16日閲覧
  8. ^ "Indians Make a Series of Roster Moves; Gomes & Santos Promoted, Marson on DL" (Press release). MLB.com (Cleveland Indians). 9 April 2013. 2014年3月16日閲覧
  9. ^ "Indians recall LHP Scott Barnes and CA Yan Gomes; Lou Marson placed on the 15-Day DL" (Press release). MLB.com (Cleveland Indians). 28 April 2013. 2014年3月16日閲覧
  10. ^ "Indians, catcher Yan Gomes agree to long-term contract" (Press release). MLB.com (Cleveland Indians). 31 March 2014. 2014年4月1日閲覧
  11. ^ Yan Gomes signs six-year deal”. ESPN MLB (2014年3月31日). 2014年4月1日閲覧。
  12. ^ Jordan Bastian (2016年7月17日). “Gomes exits with right shoulder injury” (英語). MLB.com. 2016年10月23日閲覧。
  13. ^ 【MLB】インディアンス、Y.ゴームズが戦列復帰直前で右手首骨折”. iSM (2016年9月17日). 2016年10月23日閲覧。
  14. ^ a b MLB公式プロフィール参照。2019年12月11日閲覧。
  15. ^ レイズのラモスがオールスター辞退!ブラジル出身ゴームズが初出場へ”. www.sportingnews.com. 2019年10月21日閲覧。
  16. ^ Yan Gomes announced as an American League All-Star before before ninth-inning at-bat Saturday” (英語). Cleveland.com (2018年7月15日). 2018年12月1日閲覧。
  17. ^ Nationals acquire catcher Yan Gomes” (英語). MLB.com (2018年12月1日). 2018年12月1日閲覧。
  18. ^ ナショナルズ、ゴームズとスズキ両捕手を併用へ”. nikkansports.com. 2019年10月21日閲覧。
  19. ^ a b Brady, Todd. “Yan Gomes”. Baseball Prospectus. 2019年10月21日閲覧。
  20. ^ ナショナルズのスズキ、WS最終戦直前にスタメン外れる”. nikkansports.com. 2019年11月2日閲覧。
  21. ^ Doolitte and Eaton are coming back, expect Zimmerman to join them”. NBC Sports Washington. 2019年11月4日閲覧。
  22. ^ Thomas Harrigan, Manny Randhawa and Paul Casella (2019年11月8日). “Here are every team's free agents this winter” (英語). MLB.com. 2020年1月6日閲覧。
  23. ^ 王者ナショナルズがゴームズと再契約 2年11億で残留、FA捕手市場はさらに加速”. ベースボールチャンネル. 2019年11月28日閲覧。
  24. ^ Yan Gomes reaches milestone with 100th MLB home run”. Federal Baseball. SBネーション英語版 (2020年8月22日). 2021年9月18日閲覧。
  25. ^ Athletics To Acquire Yan Gomes, Josh Harrison” (英語). MLB Trade Rumors. 2021年7月30日閲覧。
  26. ^ Cubs, Gomes agree to 2-year deal” (英語). MLB.com. 2021年12月1日閲覧。
  27. ^ Nationals acquire catcher Yan Gomes” (英語). MLB.com. 2018年12月1日閲覧。
  28. ^ Nationals Acquire Yan Gomes” (英語). MLB Trade Rumors. 2018年12月1日閲覧。
  29. ^ ブラジル初のメジャーリーガー「ずっと日本のプロ野球選手になりたかった」”. 東スポWeb. 2019年10月21日閲覧。
  30. ^ Explaining Indians Players Weekend names MLB.com (英語) (2017年8月26日) 2017年9月15日閲覧
  31. ^ 元局アナ 青池奈津子「メジャー通信」ブラジル初のメジャーリーガーは日本的”. exciteニュース (2018年5月19日). 2019年10月10日閲覧。
  32. ^ Patrick Corbin and Yan Gomes' success was written in the stars”. NBCスポーツ (2019年7月20日). 2021年9月18日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]