モックルカールヴィ

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モックルカールヴィメックルカルフィとも)(Mökkurkalfe)は、北欧神話に登場する、粘土で作られた人間である。身長は9ロスト(1ロストは4~5マイル。約57.9km~72.4km)で、脇の下が3ロスト(約19.3km~24.1km)であったとされている。別名としてミストカーフ[1](MistCalf)があるとされる。

スノッリのエッダ』第二部『詩語法』において、次のような物語が伝えられている。

アース神トール巨人フルングニルが、国境であるグリョートトゥーナガルザル(Grjóttúnagarðar)で決闘をすることになった。仲間の巨人たちは最強のフルングニルがトールに斃されることを心配し、グリョートトゥーナガルザルにおいてこのモックルカールヴィを作ったが、体格に見合う大きな心臓として雌馬の心臓を持ってきた。しかしこの心臓はトールが現れると恐怖に震えた。モックルカールヴィ自身も、フルングニルの隣にいながら、トールを見ると失禁してしまった。

トールとフルングニルの戦いはトールの勝利に終わったが、トールはフルングニルの死体の下敷きとなって動けなくなった(詳細はフルングニルの項目を参照)。その間にシャールヴィがモックルカールヴィを襲い、あっさりと斃してしまった。

このモックルカールヴィ破壊のエピソードについては、『北欧の神話 神々と巨人のたたかい』(山室静筑摩書房、1982年)66-67頁において、次のような推論があることが紹介されている。すなわち、神話はしばしばとして上演されることがあり、この物語を上演する際にはフルングニルに見立てた土の人形をトールに扮した神官が破壊する場面があって、それが神話をまとめる過程でシャールヴィの活躍として神話に入り込んだのではないか、という解釈である。

脚注[編集]

  1. ^ この名前は、たとえばH.R.エリス・デイヴィッドソン『北欧神話』(米原まり子、一井知子訳、青土社、1992年)118-119頁にみられる。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 谷口幸男「スノリ『エッダ』『詩語法』」『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、25-26頁、1983年。