アメリカ合衆国下院121号決議

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アメリカ合衆国下院121号決議(アメリカがっしゅうこく かいん ひゃくにじゅういちごうけつぎ、"United States House of Representatives proposed House Resolution 121")とは、慰安婦に対する日本政府の謝罪を求めるアメリカ合衆国下院決議案である。「従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議」などとも呼ばれる。

2007年6月26日にアメリカ合衆国下院外交委員会において賛成39票対反対2票で可決された(反対したのはロン・ポール下院議員(共和党、テキサス州選出)とトム・タンクレード下院議員(共和党、コロラド州選出))[1]。最終的に日本時間7月31日未明に下院本会議で議事進行簡潔化の為に議論が40分以下に制限されるサスペンション・オブ・ザ・ルール動議が適用された(通常、議論の必要のない議案をすばやく可決するのに用いられる手法である)。10人程度の議員が出席して投票ではなく声による反対意見無しが確認された上で、満場一致で採択された[2]

この決議は法的に非拘束のものであり、行政府に政策を取るように求めるものではなく、上院に送られる性質のものではない。

目次

[編集] 決議内容(日本語による全文)

121号決議 アメリカ下院  2007年7月30日

 1930年代から第2次世界大戦までの間、日本政府は、「慰安婦」と呼ばれる若い女性たちを日本軍に性的サービスを提供する目的で動員させた。日本政府による強制的な軍隊売春制度「慰安婦」は、「集団強姦」や「強制流産」「恥辱」「身体切断」「死亡」「自殺を招いた性的暴行」など、残虐性と規模において前例のない20世紀最大規模の人身売買のひとつである。

 日本の学校で使われている新しい教科書は、こうした慰安婦の悲劇や太平洋戦争中の 日本の戦争犯罪を矮小化している。また、最近日本には、慰安婦の苦痛に対する政府の真摯(しんし)な謝罪を含む河野洋平官房長官による1993年の「慰安婦関連談話」を弱めようとしたり、撤回させようとしている者がいる。

 日本政府は1921年に「婦人および児童の売買禁止に関する際条約」に署名し、2000年には武力紛争が女性に及ぼす影響についての国連安保理決議「女性、平和及び安全保障に関する決議第1325号」も支持した。下院は、人間の安全と人権・民主的価値・法の統治および安保理決議第1325号に対する支持など、日本の努力を称える。米日同盟はアジア太平洋地域での米国の安保利益のいしずえで、地域安定と繁栄の根本だ。冷戦後、戦略的な環境は変化したが、米日同盟はアジア太平洋地域で政治経済的な自由、人権と民主的制度に対する支持、両国国民と国際社会の繁栄確保をはじめ共同の核心利益と価値に根ざす。下院は日本の官僚や民間人らの努力により1995年、民間レベルの「女性のためのアジア平和国民基金」が設立されたことを称える。同基金は570万ドル(約7億円)を集め、日本人たちのしょく罪の意識を慰安婦に伝えた後、2007年3月31日に活動を終了した。

 以下は米下院の共通した意見である。

1、日本政府は1930年代から第2次世界大戦終戦に至るまでアジア諸国と太平洋諸島を植民地化したり戦時占領する過程で、日本軍が強制的に若い女性を「慰安婦」と呼ばれる性の奴隷にした事実を、明確な態度で公式に認めて謝罪し、歴史的な責任を負わなければならない。

2、日本の首相が公式声明によって謝罪するなら、これまで発表した声明の真実性と水準に対し繰り返されている疑惑を解消するのに役立つだろう。

3、日本政府は「日本軍が慰安婦を性の奴隷にし、人身売買した事実は絶対にない」といういかなる主張に対しても、明確かつ公式に反論しなければならない。

4、日本政府は、国際社会が提示した慰安婦に関する勧告に従い、現世代と未来世代を対象に残酷な犯罪について教育をしなければならない。

[編集] 背景

慰安婦問題は、吉田証言などにより、最初に慰安婦の強制連行があったという報道がなされたが、その全てが事実とは限らないことが証拠で明らかになっていった。ところが、海外、特に韓国では、『朝日新聞』などの慰安婦と女子挺身隊を混同させる報道が訂正されないまま伝わり、それに基づいた慰安婦問題に対する反発が固定化していった[3]。徴用を強制連行と同視する韓国の視点からすると、女子挺身隊は女性に対する勤労動員のことであり、いわゆる徴用の一種であるから、この報道は慰安婦強制連行そのものこととなる。韓国では、この報道の内容が正しくないとの認識が広まりつつあるが、慰安婦として動員された女性を、挺身隊として動員されたものとして認識していたため、この混同は整理されていない。

このような慰安婦に関する報道に危機感を抱いた、日本保守政治家や同種論壇において、軍組織による直接的な強制ではなく、もろもろの理由(その主なものは経済的事情)で慰安婦になった人はいるが政府による強制連行は行われていないと言う反論が繰り返しなされた。もろもろの理由の中には、業者による詐欺的な勧誘があったのであろう、家族などによる身売りのケースなどがあったのだろう、という説明がなされている。この主張は『読売新聞』や、新保守主義を標榜する政治家や知識層に多く見られるもので、産経新聞社発行の『正論』のほか、『諸君!』や『WiLL』、『Voice』といった保守系論壇雑誌に慰安婦強制連行否定論が度々掲載されている。

この動きに対して日本国内の慰安婦問題批判派から、慰安婦強制連行の真偽が問題なのでは無く、「経済行為者としての慰安婦」は平和時なら兎も角、戦時に於いては軍の威嚇強制行為が無い事はありえない、という指摘が行われた。つまり、そういった歴史的事実を資料をもとに反論する行為自身が戦後日本の体制を脅かす右傾化であるという批判点の転換を行ったのである。

一方で、慰安婦と挺身隊とを混同した『朝日新聞』の誤報や、政府による強制連行があったという誤報に基づいて、アジア各地の慰安婦と支援団体、及び慰安婦の出身地域の政府がある朝鮮半島ではそれに基づいた批判が拡大していった。 また、中華民国台湾では、台湾の中華民国外交部(外務省)[4]が、「従軍慰安婦を集めるために旧日本軍が直接、強制した具体的な証拠はない」とした安倍晋三首相の発言(後述)について「深く遺憾に思い、厳に抗議する」との声明を発表した。 また、中華人民共和国フィリピンインドネシアなどのアジア諸国やかつてインドネシアの宗主国で自国民が慰安婦として従事させられたオランダ(軍人が慰安婦狩りを行いながら処罰されず、戦後に戦争犯罪として裁かれた白馬事件。事実関係は後記参照)など欧米から過去の日本軍による戦争犯罪を否定する歴史修正主義であるとして批判がみられる[3]

このように、海外では慰安婦行為の強制性を重視して、それにもとづいた主張が行われ、その一方で、日本では強制連行が無かった事を重視して、強制性の問題を矮小化するという、批判派の論点のねじれが生じている。また海外では、日本政府や保守派の反論が、強制連行が無かったことなど、具体的な争点に対しての反論であることがよく伝わっていないか隠蔽され、歴史修正主義一般としてとらえられている傾向がある。保守派の広報はこの点をただすものであったが、国内における論点のすり替えと、国外の論点の認識不足の板挟みにあっている。この点をとらえて、広義の謀略であるとする人もいる。

そうしたなか、日系アメリカ人でカリフォルニア州シリコンバレー選出のマイク・ホンダ下院議員は、日本政府への慰安婦に対する謝罪要求決議案を2007年1月に下院に提出した(直接の請願者はマイアミで慰安婦救済活動に取り組んでいるEvelina Galangである)。なお、ホンダ議員はカリフォルニア州議会議員であった1999年にも日本政府は犠牲者に対して明確に謝罪し、賠償を行うべきとするAGR-27決議を可決させたことがある。なお、ホンダ議員の選挙資金には中国系の資金が多いことが報道されている。

こうした動きに対し、『朝日新聞』などは自らの過去の報道の修正を行うことに消極的なまま反論をすることを差し控えるべきと言う報道を繰り返した。一方、『読売新聞』などは、名指しは避けたものの、『朝日新聞』などの一連の新聞社の誤報が慰安婦問題の誤解の原因となったことを指摘し、誤解を解く努力の必要性を訴えた。

日本政府に謝罪を求める同様の一連の決議案は、過去5回提出されていずれも廃案になっており、2006年のアメリカ下院759号決議案などの5回は否決されていたが、6回目は今までになく注目を集めていた。これは、2006年の中間選挙でアメリカ共和党が大敗し、アメリカ上下両院で民主党が多数を占め、従軍慰安婦問題のような政治問題を民主党は重要視するようになったためである。また背景には、中国・韓国系アメリカ移民がカリフォルニアを中心に人口、経済力ともに増大し、政治的発言権が拡大したこともある。

この動きに対して、『朝日新聞』では、日本側の保守論壇が試みた米国紙への慰安婦問題の広告掲載が開き直りととらえられて米議員の反発を呼んだという報道がなされた。しかし実際には、決議後に下院が対日友好決議をあえて行い、ホンダ議員が中国の献金を受けていたことが報道され、また、議会の最終的な報告書では前回のものと異なり、慰安婦の強制連行の有無については日本政府の立場を支持し、政府としての強制連行は無かっただろうと結論づけており、また決議案もかなりトーンダウンしており、日本政府による強制連行などについては言及が無くなっているなど、保守派や日本政府の反論がアメリカ下院にも一定程度伝わっていると考えられている。

[編集] アメリカ世論の動向

日本の野党第一党の民主党の有志によって、「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」が2007年3月に設立されたが、これは、旧日本軍・政府の強制連行とされるような関与はなかったという立場から、いわゆる河野官房長官談話(軍による従軍慰安婦強制を認めたとされる)の見直しを安倍晋三首相に提言するため立ち上げられた議員連盟である。かつて一議員であった時代に河野談話を否定・批判する発言をした安倍首相が、同会の要請に応じる形で3月に「(従軍慰安婦に)強制性はなかった」と国会答弁した。この答弁に対して韓国・中国・台湾・フィリピンなどからも批判を受けたが、アメリカ合衆国のメディアは注目した。

アメリカの有力新聞社ワシントン・ポスト紙の社説は、「北朝鮮による日本人拉致問題に熱心なのと対照的に日本自身の戦争犯罪には目をつぶっている」として、この態度を「二枚舌」として批判し、また、ノリミツ・オオニシ、ニューヨーク・タイムズ東京支局長などが、日本政府の動きを批判するなど、アメリカの主要各紙が日本政府のこの問題に対する態度が不正実であるとして批判した。またアメリカ院外交委員会には、慰安婦問題で日本政府に謝罪を求める決議案をマイク・ホンダ議員らが提出していたことが大きく報道されたため、この決議案に注目が集まるようになった。

この決議案可決を阻止するため、日米関係を重要視する安倍首相は4月末の訪米時に、ブッシュ大統領や議会関係者らに、「おわび」を表明することで、5月に予定されていた採決は見送られていた。しかしベラルーシ中華人民共和国の人権問題と同様に、女性を「性の奴隷」にした大きな「人権問題」とされたため下院のこの動きを封じるまでには至らなかった。また4月に安倍晋三首相の訪米に合わせて韓国系市民を中心とする団体が同紙に「従軍慰安婦の真実」と題した全面広告を出していた。

安倍晋三首相はもともと河野談話に否定的だったが(詳しくは河野談話を参照)、2007年3月には、国内、国際世論の動向を見つつ、当初の強硬姿勢を修正し、国会答弁で慰安婦への「同情とおわび」に言及した。また4月には月末の訪米を控え、米誌ニューズウィーク等の取材に答えて、従軍慰安婦問題について「人間として心から同情する。首相として大変申し訳なく思っている」と改めて陳謝したうえで、「彼女たちが慰安婦として存在しなければならなかった状況につき、我々は責任がある」と述べ、日本側に責任があるとの認識を示した。4月の訪米時にも、慰安婦問題について謝罪と釈明を繰り返すこととなった。これにより、米国政府からの謝罪圧力は沈静化したが、米国議会では日本政府の慰安婦問題に関する対応への不満がなお存在した。一方日本の保守派・右派の中には慰安婦動員の強制性、女性に対する性的搾取などは存在しないという主張から安倍政権の対応を『弱腰』として批判する意見も噴出し、後述する抗議活動を展開してゆくことになった。

[編集] 2007年6月ワシントン・ポストへの全面広告

強制連行の証拠はないとする一部の日本人は、屋山太郎櫻井よしこ花岡信昭すぎやまこういち西村幸祐の保守論壇5人からなる「歴史事実委員会」の名で、『ワシントン・ポスト』(2007年6月14日付)に全面広告を出し、慰安婦募集に日本政府や軍の強制はなかった、進駐したGHQは日本側に慰安所の設置を要請した(実際には日本政府が自主的に設置したもの、詳しくは「特殊慰安施設協会」を参照)、などと主張した(ただしこれらの主張の内容が事実かどうかには論争がある。詳しくは慰安婦の項を参照)。この意見広告島村宜伸河村たかしら自民、民主両党の超党派の国会議員ら計44人と、保守論客らの連名[5]で「慰安婦はセックス・スレーブ(性奴隷)ではなかった」という主張の下、「従軍慰安婦の事実」と題され、全面広告の画像THE FACTS(事実)」という見出しで、旧日本軍の強制を示す文書がないとしたうえで、慰安婦は公娼制度であったと主張した。また動機として「事実無根の中傷に謝罪すれば、人々に間違った印象を残し、日米の友好にも悪影響を与えかねない」としていた。

この意見広告について、雑誌『AERA』では、日本政府や軍の強制はなかったと書きつつ、オランダ人女性について強制があったが関係者は日本軍により処罰されたと書くなど、内容に矛盾があること(実際には日本軍による処罰はなく、終戦後に連合国の裁判により処罰、白馬事件を参照)、朝鮮半島における女性への強制が裁判の判決で認められていること[要出典]朝鮮総督府が、終戦時に大量の書類を焼却し証拠隠滅を図った事実[要出典]などにまったく触れておらず、内容は杜撰でアメリカの知識人の嘲笑を買う結果になった、などと主張した[6]。一方で、保守派・右派はこれを「慰安所での慰安婦への性的虐待」「慰安婦の強制連行」などという「特定亜細亜」の「反日プロパガンダ」に対する明快な反論であると高く評価した。

[編集] アメリカ側の反応

日本の右派・保守派は、この「歴史事実委員会」による「アメリカ思い」の広告によって、日米同盟の重要性が再認識され、決議案可決の流れが止まることを期待していた[7]という。しかし、日本側の動きがニューヨーク・タイムズなどにより報道され注目が集まったために、かえって決議案に対する共同提案者が増え、共和党議員や下院外交委員会のトム・ラントス委員長も含め下院定数の3分の1を占めることとなってしまった。そこで、「かえって藪蛇になったのではないか」など、全面広告が逆効果になった可能性があると報道[8]された。また、アメリカ合衆国海軍は、戦後の日本に作られた特殊慰安施設協会に関する広告の主張に対し反論を行うと表明した[要出典]ディック・チェイニー合衆国副大統領も「このような意見広告が何故掲載されたのか」と不快感を示した、と報道された[9]。一方でブッシュ政権は、4月の安倍首相の発言を「謝罪」とみることで沈静化を図ったが、この意見広告が火を付けた形となり、議会の動きを制止することは出来なかったとされている。

6月26日の下院外交委員会の採決では、「賛成39、反対2」で決議案は可決された。なお、決議案は原案から修正され、「日本国首相の公式の声明としての謝罪」を「首相が公式な声明として謝罪すれば、これまでの声明の誠意に関して繰り返される疑問を晴らすのに役立つだろう」に修正して、日米同盟の重要性を指摘する文章も追加された[10]。またナンシー・ペロシ下院議長が「本会議でも採択し、強いメッセージを発したい」とする声明を出し、下院本会議で数人による満場一致で採択された(下院議員総数435人のうち共同提案者は168名に達したがその大半は出席していない[2])。これに加えて、中国におけるウイグル人の人権問題、ベラルーシの人権問題に関する決議もなされた。


[編集] 日本側の反応

[編集] 否定的反応

決議案について塩崎恭久官房長官は「外国の議会が決議したことであり、コメントすべきことではない」として発言を避け、公式な見解は行わなかった。安倍首相も同様の姿勢を示し、決議を黙殺する構えを明確化した。これは、泥仕合になることで予想される日米関係の悪化と、拉致問題などの懸案への悪影響を避けたいため、そして非拘束の実効性のない決議であるためアメリカ世論を刺激するのは得策ではないとの判断があったとされる[要出典]

一方、従軍慰安婦問題の存在に否定的な「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」といった有志の保守政治家、および主にネット上の「河野談話の白紙撤回を求める市民の会」を中心とした右派民族系市民団体は反発し、平沼赳夫などの、広告に連名した超党派の国会議員達が27日に記者会見[11]し、「事実に基づかない決議は日米両国に重大な亀裂を生じさせる」と批判したうえ、決議案の根拠となった河野洋平官房長官談話の再検証を改めて提案した。「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、委員会可決を公式に非難し、「慰安婦は性奴隷などではなく、自発的に性サービスを提供した売春婦に過ぎず、虐待などの事実もない」として、決議案への反論を米国下院に送致することを決定し、2007年6月29日の記者会見でその旨を発表した[12]

日本文化チャンネル桜と国会議員・地方議員や文化人等の有志はこれを「歴史的事実と全く異なる事実誤認に基づく決議案」だとして、7月13日に米国大使館に対して当決議案の全面撤回を求める要望書を提出して記者会見を行い、14日に同抗議書を米下院議員全員に送致した。[13][14][15]また維新政党新風を初めとするその他の民族系右派の政治団体も同様の行動を行った。ブログなどネット上では、反『特定亜細亜』的色彩の濃い西村幸祐やそれに同調する者も同様の意見を主張していた。

加藤良三駐米大使は、決議の採択は「日米関係にとって有害だ」との認識を示しており、「正確な事実の説明は手広く行ってきたし、引き続き努力する」と述べ、米議会に対し、日本政府のこれまでの謝罪の経緯を説明することを継続する考えを示した。実際に加藤氏は決議案の委員会採決直前に、米下院の有力者に決議案全面撤回を求める書簡を送っている。この文書で加藤氏は「仮に決議案が可決された場合、日本政府はイラク復興や対テロ戦争でのアメリカへの支援の見直しなども含めた対策を取らざるを得ないだろう。日米の友好関係に長期にわたって悪影響を与える」と主張し、決議案の全面撤回を求めた[16]。また日本の主要紙は社説などで「事実誤認」「おろかな選択」「有害である」などと批判を展開したが、『朝日新聞』社説のみ「日本に謝罪するよう要求」する論評をおこなった[17]

これらの動きに対し、米国の韓国系市民で構成される慰安婦支援団体は、米領グアムで日本軍将校が米国籍のチャモロ人女性を性的に搾取したとする米海軍の裁判記録を提出した[18]。これに対して日本の右派・保守派は「個人的な犯罪であり、慰安婦に対する組織的な性的搾取・虐待の証拠にはならない」と反論している。また日本の右派、保守派の中には、中央大学教授の吉見義明が述べているように、慰安婦は日本国内の農村部で食い詰めた日本人女性のほうが大多数占めていた事実[19]をもとに、植民地・占領地からの慰安婦は寧ろ少数派だったと主張する者もいる。一方では、慰安婦問題に対し日本政府が無過失であることを実証するのは論理学上の「悪魔の証明」という困難な命題であり、歴史学者が論じるのは適当であっても政治的問題として取り扱うと、一方的に日本側が不利であるため、アメリカによるイラク戦争や拘束したアルカイーダの捕虜虐待も含め総合的な人権問題として議論するほかないという主張[20]もある。

ただしこれらの動きに対して、安倍首相らが事態を静観する姿勢を示した[21]ため、河野談話の見直しや撤回等の何らかの対応は行われる見込みはない、という意見も強い。一方、前述のようにアメリカ合衆国の大統領サイドが4月の日米首脳会談における安倍首相の発言を事実上「慰安婦問題に対する日本国首相の謝罪」とすることで事態を収拾しようとしていた経緯があり、これらの抗議活動はかえって決議案可決推進派の勢いに力を貸す結果となった。またアメリカ側の親日派には、日本側が過激な行動に走るならば事態のさらなる悪化を招くだけであり、特に日本政府が反応すべきでないとの主張もあった[22]という。

以上のことから、慰安婦問題に対する日本政府の責任を軽減・もしくは否定しようとする抗議活動が、かえってアメリカ議会の反発を生じさせ、決議案に一連の慰安婦問題否定論者による動きに対する批判が決議に盛り込まれるなど、日米間の意思疎通の溝が埋まらなかったと、一部で指摘[23]されている。。また水面下で安倍内閣がロビイストを雇用してアメリカ側に採択回避を働き掛けてきたにもかかわらず、最終的には可決されたため日米同盟を最重要視する安倍政権にとって手痛い失点となったとの指摘もある[要出典]

[編集] 肯定的反応

安倍首相訪米前の2007年4月18日、日本の戦争責任資料センター吉見義明林博史女たちの戦争と平和資料館館長の西野瑠美子らは、日本外国特派員協会で従軍慰安婦問題に関する記者会見を開き、海外の記者に向けて、日本国の加害者責任を強く宣伝した[24]

決議案が成立すると、戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案の成立を目指す民主党岡崎トミ子千葉景子らは決議の可決に感謝の意を示し、決議に反対する安倍内閣を強く非難した。また、兵庫宝塚市、東京清瀬市、北海道札幌市の各市議会で日本政府に誠実な対応を求める意見書が採択された。

2008年11月23日に開催された第9回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議では、決議可決を受けて「謝罪と補償のための法律を制定するよう、あらゆる方法を駆使して日本政府に働きかける」「国際連帯をいっそう強化する」「歴史認識を育て、記憶を継承し、女性に対するいかなる暴力も人権侵害も許さない運動を推進する」などの綱領を採択した。

[編集] 韓国側の反応

[編集] 否定的反応

2007年04月、韓国世宗大学校日本文学科の朴裕河教授は、アジア女性基金の解散に伴い東京の日本外国特派員協会で講演し、その中で、韓国側の理解、主張をそのまま受け取っての日本への一方的な批判、意見が行われていることを憂慮して、「日本軍とそのようにした父親とどっちが憎いのか?」とのある元慰安婦への質問に「お父さんだ」と答えたといった話も交えながら、慰安婦動員には韓国人も関わっており、その加害性への責任についての言及し、さらに朝鮮戦争時に韓国軍も特殊慰安隊を運営したという最近の研究を紹介し、韓国や他の国もそういった慰安婦制度を持っていたことがあるのに、慰安婦問題を日本だけのことにしてしまっては問題の本質を考える機会が失われる、との懸念を表明した。また、2007年3月、安倍晋三首相が「広い意味での強制性はあったけれども、狭い意味での強制性はなかった」と答弁したことに対し、動因過程における韓国人の関与を交えながらその発言の背景と誤解について解説を加え、謝罪を受け入れる韓国側の問題にも言及し、日本がやったことの実態を正しく知ることが今後の目指すべき方向であるとの見解を示した[25](韓国のニューライト安秉直李栄薫も同様な趣旨の見解を述べている)上で、「日本はお詫びも補償もしてこなかった」という韓国での認識は事実とは非常に異なっており、そのような認識では決して問題は解決しないと付け加えた。さらに、安倍首相が河野談話を継承する理由も、それが一部右翼を除いた日本人大部分の考えだからであり、また、アジア女性基金もただの民間団体ではなく、元慰安婦の方々に対する日本国内閣総理大臣の手紙が添えられるなど、その設立、運営には日本政府が深く関与する日本国民大多数による償いのための団体であり、これらの点を考慮することが日韓の間の関係修復の糸口となると述べた。その一方で、アジア女性基金設立にもっとも反対した人々は保守右派や右翼ではなく「法に基づかないお詫び方式は不完全だ」と批判した進歩的知識人とメディアであったと指摘した。加えて韓国においても日本政府と政治家の「良心」を信じられず、基金のお金を受け取った人々を中心に元慰安婦が分裂し、償い金の受け取りに反対した韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)に排斥された人々が現在この団体と対立している状態を指摘して、挺対協関係者たちは元慰安婦に対するサポート活動を足場にして国会議員や政府長官になったものの、その後彼女らに対する関心を無くしただけでなく、むしろ排斥しており、元慰安婦の中には彼女たちに真心をつくして手伝ってくれるのは日本人たちだという者もいる、といった挺対協に対する批判も紹介した。その上で、アメリカが「世界の警察」役を演じることを批判しながら、自分たちの問題をアメリカへ行って解決してくれと訴える姿は決して美しいものではなく、たとえ決裂だけが続くとしても日韓の間の問題は日韓が解決するという姿勢を見たいとする希望を述べた[26][27]

これらアジア女性基金と償い金を受け取った元慰安婦に対する韓国政府および挺対協等のNGOによる批難や妨害、および朝鮮半島における慰安婦動員に関する韓国人の関与については、ラリー・ニクシュによる2007年4月3日の米国議会報告書でも指摘されている[28]

[編集] 肯定的反応

この法案を成立させるために奔走した在米韓国大使館の金殷石大使は日本軍の従軍慰安婦問題に関する謝罪要求決議案を採択する上での功労が認められ、勤政褒章を受け取った。また、この法案の成立は「米議会を動かす新たな外交モデルを示した」と評された[29]

[編集] 下院本会議可決

最終的に決議案は下院本会議で採決にかけられ、現地時間7月30日(日本時間7月31日)に賛成多数で採択された。アメリカ側が日本の参議院選挙後に可決したことについて、一定の配慮があった[30]とされる。提案者であるマイク・ホンダ議員は「日本国民を責めるものでなく友人としての言葉である」として反日を意図した決議案でないと強調した。また下院では「日米同盟の重要性やテロとの戦いへの日本の貢献を評価する決議」が決議も可決[31]されており、これに対して共同提案者にホンダ議員も入っておりバランスを取っているとしている。

この決議案に対する日本側の反応は、委員会可決の時と同様になかった。また決議に対するアメリカ合衆国の行政府の対応であるが、[32]ケーシー国務省副報道官が「ブッシュ大統領と安倍首相はこの慰安婦問題を話し合い、大統領は日本側の対応に満足の意を表明している」と述べ、下院の謝罪要求決議を支持せず一定の距離を置く姿勢を示した。

保守論客で構成されている新しい歴史教科書をつくる会はこの決議について、「慰安婦の証言は嘘であると明確に証明されているにもかかわらず、このような決議が米国下院で採択されたのは残念だ。」と抗議した。[33]同様に、右派言論人で組織された史実を世界に発信する会はこの決議に対して、「歴史事実を極度に歪曲し、存在しないものを捏造した前提の上で成り立っているもの」と強く批判し、7月31日に下院議員全員に抗議書を送致した。[34]産経新聞読売新聞は「誤った歴史認識に基づく根拠のない対日非難」とこの決議を厳しく批判した。また毎日新聞の社説は、イラク戦争におけるアメリカ軍による人権侵害や、アメリカに存在する、広島・長崎に対する原子爆弾投下を正当化する歴史認識も含め、米国には自らの過ちを反省する謙虚さを求めたいと批判した。一方で朝日新聞の社説は、決議は首相に謝罪を求めており、河野談話に沿った内容の談話を安倍首相が出すべきだと、米国の決議に沿った主張をしたため、主要新聞の中で「朝日社説だけが『孤立』」と報じられた[35]。地方紙の中には[36]安倍首相が日米間に生じた溝を埋めるための説明責任を果たす必要があるとする主張も見られた。

海外メディアとしては、2007年7月4日アラブ諸国大手のマスメディア、アルジャジーラが「アメリカは日本・中国・朝鮮半島間で問題を発生させた」という記事を掲載した。その中でアルジャジーラは「アメリカは、何故日本だけに対し従軍慰安婦決議案を出したのか?アメリカはベトナム戦争で罪もない何千人以上の人々を化学兵器で殺戮をしたのに謝罪は無く、さらには暴力でアフリカ人をアフリカからアメリカに強制移住させたことにも一切謝罪していない」と述べ、「アメリカは日本・中国・朝鮮半島間にわざとトラブルを発生させ、目的を達成させたいようだ」と述べた[37] また、 英国の大手のマスメディア BBCの記事は、アメリカ合衆国 ラントス下院外交委員長(民主)の批判「吐き気を催させる否定」 (Nauseating denial)を 引用し、日本の保守論客を非難した[4]

なお、アメリカ議会がこのような態度に出たのは、いわゆる人権外交の一貫であり、アメリカの価値観にそぐわなければ同盟国であっても容赦しない姿勢があったという見方もある[38]。一方で日本の右派・保守派の中にはアメリカの揺るぐことなき第二次世界大戦における戦勝史観からすれば、背景に日本軍は卑怯で愚劣であったとする「思考停止的」な歴史認識もあるとの指摘もある[38]

また、日本の右派・保守派の間には、この間の動きを、朝日新聞やニューヨークタイムスなどの親中国系とされるメディアが主導したことや、ホンダ議員への中国系の献金が多いことなどをとらえて、日米離間工作の一種ととらえる人もいる。

当決議案採択の後、フィリピンやオーストラリアの議会でも慰安婦問題に関して日本の謝罪を求める決議案が提出された。[39]

[編集] 法案成立後の動き

法案成立後、この法案の成立を主導した在米韓国人の団体「韓人有権者センター」は、日本の蛮行とその被害を米社会に知らせるために、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、バージニア州など韓国人が多く居住する地域を中心に追慕碑を建設することを決定し、署名と募金運動を展開している[40]

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ U.S. House committee passes resolution demanding Japan's apology on comfort women
  2. ^ a b 2007年7月31日 産経新聞
  3. ^ その混同報道を行った植村隆は現在、朝日新聞中国特派員である。
  4. ^ 日経ネット2007年3月7日配信「台湾も慰安婦問題で安倍首相に抗議」2007年7月16日確認
  5. ^ 賛同者が連名で記載されているため、連名の個人が各々責任を持つといえる
  6. ^ 『AERA』2007年8月13日・20日号)
  7. ^ 西村幸祐 (2007年6月). “酔夢ing Voice - 西村幸祐 -”. 2009年12月20日閲覧。
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  13. ^ 抗議書送付と記者会見の映像[リンク切れ]
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  22. ^ 『朝日新聞』2007年6月26日朝刊
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  28. ^ Wikisource-logo.svg Larry Niksch: Japanese Military's "Comfort Women" System - ウィキソース "Foreign Reactions to the Asian Women's Fund/... However, after the Asian Women's Fund was established, the government and South Korean NGOs used the government's fund as a tool to pressure and dissuade former Korean comfort women from accepting payments and other assistance from the Asian Women's Fund. The South Korean government took an immediate position against the Asian Women's Fund when the Fund made atonement payments to seven South Korean women in January 1997. The government officially expressed displeasure to the Japanese government over the Asian Women's Fund and demanded that the Japanese government pay direct compensation. The South Korean government also supported the similar stance taken by the leading Korean NGOs claiming to represent former Korean comfort women: the Korea Council for Women Drafted for Military Sexual Slavery by Japan, and the Citizens' Coalition for the Resolution of the Forced Recruitment of Comfort Women by the Japanese Military. These groups sharply criticized the seven women who had accepted payments from the Asian Women's Fund. At the recommendation of these groups, in March 1998, the South Korean government announced an upgrading of its fund for former Korean comfort women, offering larger payments. South Korean officials stated that the South Korean fund was intended to eliminate the possibility that Korean women would accept assistance from the Asian Women's Fund, and this became a required condition for any woman who applied to the South Korean government's fund. The Korea Council and the Citizens' Coalition also campaigned against women accepting assistance from the Asian Women's Fund. They raised money for former comfort women but conditioned payments on pledges by the women not to accept any assistance from the Asian Women's Fund. The result was that no other Korean women applied for assistance from the Asian Women's Fund after the original seven had received atonement payments in January 1997. 41) The Asian Women's Fund reportedly sought to continue offering assistance in South Korea beyond the original five year deadline which ended in 2002; but it ultimately decided to end its program partly because of South Korean government and NGO opposition." " Conclusions/... The military may not have directly carried out the majority of recruitment, especially in Korea."
  29. ^ 朝鮮日報 2012/01/30 12:39 [1]
  30. ^ 『朝日新聞』2007年8月1日朝刊
  31. ^ 時事通信2007年8月1日付
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  33. ^ 米国下院が「慰安婦対日非難決議」を採択「つくる会」は「河野談話」破棄を求める声明を発表
  34. ^ 『米国下院議会へ陸続と抗議文 日本の保守系文化人が立ち上がる』 宮崎正弘の国際ニュース・早読み
  35. ^ 慰安婦決議で新聞「猛反発」 朝日社説だけが「孤立」
  36. ^ 中国新聞』2007年8月2日
  37. ^ “The U.S. wants to create trouble between Japan, China and Korea” - Aljazeera.com
  38. ^ a b 『中国新聞』および『山陽新聞』2007年6月28日付朝刊(時事通信社配信の記事より)
  39. ^ 「慰安婦決議案、比下院に提出 米決議の追い風期待」朝日新聞2007年8月13日付
  40. ^ 聯合ニュース 「慰安婦問題忘れない」、在米同胞が追慕碑設立推進[2]

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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