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== 狙撃銃としての使用例 ==
== 狙撃銃としての使用例 ==
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== 日本軍での使用 ==
== 日本軍での使用 ==

2020年1月5日 (日) 03:47時点における版

ブローニングM2重機関銃
ブローニングM2E2重機関銃
ブローニングM2重機関銃
種類 機関銃
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計・製造 ジョン・ブローニング(設計)
ジェネラル・ダイナミクス
U.S.オードナンス
FNハースタル
マーモント
ラモ Lnc.
仕様
種別 重機関銃
口径 12.7mm
銃身長 1,143mm
ライフリング 8条右回り
使用弾薬 12.7x99mm NATO弾(通常弾、焼夷弾徹甲弾など)
装弾数 ベルト給弾(1帯110発)
作動方式 ショートリコイル
全長 1,645mm
重量 38.1kg(本体のみ)
58kg(三脚を含む)
発射速度 485-635発/分(M2HB)
750–850発/分(AN/M2)
1,200発/分(AN/M3)
銃口初速 887.1m/s(M33)
射程 2,000m(有効射程)
6,770m(最大射程)
歴史 
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ブローニングM2重機関銃(ブローニングエムツーじゅうきかんじゅう)は、ジョン・ブローニング第一次世界大戦末期に開発した重機関銃である。

前身である水冷式M1921がアメリカ軍に制式採用されたのは1921年空冷式に改良されたM2の採用が1933年であるが、信頼性や完成度の高さから現在でも世界各国で生産と配備が継続されている。

概要

第二次世界大戦以来、現在でも各国の軍隊で使用されている著名な重機関銃である。M2のストッピングパワーや信頼性は伝説的で、口径が0.50インチであることから別名“キャリバー50” (Caliber .50) や“フィフティーキャル” (.50 Cal) と呼ばれる。第二次世界大戦中アメリカで200万挺以上が生産された。

アメリカでは、M2の後継として1950年代後半に車両搭載用途を更新するものとしてM85機関銃が開発されたが、問題が多く、M2の後継とはならないままに終わった。1990年代後半より再び後継用機関銃の開発が進められ、XM312XM806といった新型機関銃の開発が進んでいたが、2012年に開発が中止された。

結果、設計されて80年以上も経つが、費用を考慮しての基本構造・性能トータル面でこの重機関銃を凌駕するものは、現在においても現れていない。FNハースタル社が代表的な改良型として、銃身交換を容易にしたFN M2HB-QCB(M2 Heavy Barrel-Quick Change Barrel)を開発し、先進諸国を中心に現有M2重機関銃のQCB改修、生産の切り替えが進んでいる。

日本では、住友重機械工業の田無製造所が1984年からライセンス生産しており、主に自衛隊で使用している。陸上自衛隊では主に戦車自走砲装甲車などの車載機関銃や対空用として「12.7mm重機関銃M2」という名称で採用しており、海上自衛隊でも護衛艦などに不審船対処用として搭載しているほか、航空自衛隊でも本機関銃を四連装としたM55機関銃トレーラーを基地防空用として採用した[注釈 1]。現在では前述のQCB仕様のものが調達されている。調達価格は約530万円。

海上保安庁でも創設当時から運用しており、13mm単銃身機関銃として巡視船巡視艇に搭載されている。

操作

装填は銃本体のフィードカバーを前方へ押し上げて、ベルトの第1弾を給弾口に差し入れた後、コッキングレバーを後方へ引く必要がある。カバーを開けずに装填も可能であるが、この場合コッキングレバーを二度引かないと薬室に初弾が入らない。発砲は後部に露出するトリガーを親指で押す押金式で、トリガー下のボルト・ラッチ・リリース(セレクター)の切り替えで、セミ/フルオートの選択が可能である[1]。射撃方向も両脇ハンドルで変える。

特徴

M2の原型となった水冷式のM1921は、敵の砲兵観測気球を撃つことを目的に配備されたが、その威力と射程は様々な標的に対し有効であった。以降、M1921は改良型のM2と共に戦車装甲車トラックジープなどの車載用銃架、地上戦闘用の三脚架、対空用の背の高い三脚銃架、連装、または四連装の動力付き対空銃架、艦船用対空銃架、軽量銃身型の航空機用固定機銃、航空機用旋回機銃架、動力付き航空機用旋回機銃架など、様々な銃架に載せられ空軍を問わず広く配備された。簡単な部品交換だけで左右どちらからでも給弾できることも柔軟な運用を可能にした。

M1921はM2に比べて冷却水分重かったものの、水冷式ならではの射撃持続時間の長さを生かして艦艇用としてM2採用後も併用されたが、第二次世界大戦終結後にはM2に交替して運用を終了している。

M2は、12.7mm弾を音速の3倍の速度で発射する。M2の精度は素晴らしく、800m先の標的にも正確に命中する。 英語には「whole nine yards」という慣用表現があり、これには一切合切、全てのなどといった意味があるが、これは第二次世界大戦時、M2の給弾ベルトの長さが9ヤード(およそ8m)あった事に由来するとも言われ、9ヤード分が全弾を全部から生じたとも言われている。

歩兵の場合、3名のチームで運用するためCSW(Crew Served Weapon)の一種である。画像にある三脚は対地攻撃用のM3三脚架(現在はM205三脚へ代替中)で、銃自体とは別の装備品である[注釈 2]M60パットンM1エイブラムスなどの戦車やM113M109といった装甲戦闘車両では主に車長武装としてキューポラに、ソフトスキン車輌ではキャビン上にマウントリングを追加して自由に旋回させられるようにして装備している。さらに、近年はM2を搭載した遠隔操作銃座(RWS)が複数種開発され、ストライカーICVなどの車輌に搭載されている。

M2は、第二次世界大戦中に使われたアメリカ軍航空機の代表的な武装でもあった。しかし、高いGのかかる空中戦では、翼内の弾薬の長いベルトリンクがねじれ、装弾不良が頻発、装備方法に改良が加えられたが、完全とはいえなかった。このため、航空機には1機当たり多数を搭載することで、ねじれの発生で火力を失う事態を避ける工夫が成された。中でもA-26は、前方固定のM2を14門(加えて旋回機銃として連装機銃2基、合計18門)装備することにより機体性能も相まって圧倒的な攻撃力を得た。しかし、口径20mm以上の機関砲に火力で劣るため、現在ではM61などの航空機関砲に取って代わられ[注釈 3]、アメリカ軍の固定翼機でこの銃を搭載する機種は運用されていないが、アメリカ海兵隊ではUH-1NCH-46ECH-53Eなどのヘリコプタードアガンとしてキャビン内から乗員が対地射撃をする際に使用している。また、アメリカ海軍の一部艦艇にも最終防衛ラインの一翼を担う兵器として装備されている他、アメリカ沿岸警備隊も使用している。

銃身は100発程度の発砲で銃身の温度が約130-230℃に達する。これにより、銃身底部と機関部の間隔を調整する頭部間隙(ヘッドスペース)の調整と、撃発と排莢のタイミングを最適化するタイミング調整という作業が必須となる。これを怠ると命中精度が著しく損なわれる他、排莢不良や過大な発射ガス漏れによる射手の負傷など、事故へとつながる。調整にはそれぞれ専用のシックネスゲージを用いて行われる。本稿冒頭で紹介したFNハースタル社のFN M2HB-QCBは、この調整作業を省略できるようにした改良である。

陸上自衛隊でも戦車や装甲車への車載用の他、各部隊が対地対空兵器として装備しており、年間80挺を新規調達している。M3銃架は96式40mm自動てき弾銃と互換性がある。対空兵器として地上設置する場合はM63対空銃架を使用する。海上自衛隊でも護衛艦などに数挺搭載していたが、現代戦では威力不足と短射程を理由に一時期搭載する艦艇はなくなった。しかし、北朝鮮不審船事件などを受けて、皮肉なことに現役艦載武器の威力過剰[注釈 4]が問題とされて、小目標に対する適切な火力を有する本銃が再び搭載されるようになった。なお、M2は艦艇固有の装備ではなく搭載品として扱われている。海上保安庁では「13ミリ機銃」と呼称され、多くの巡視艇に装備されている。

2013年(平成25年)12月18日、メーカーの住友重機械工業において、5.56mm機関銃(ミニミ軽機関銃)・74式車載7.62mm機関銃・12.7mm重機関銃(ブローニングM2重機関銃)の3種で少なくとも合計5,000丁にものぼる試験データ改竄が発覚。同社は5ヶ月の指名停止処分となった。

銃架

各種銃架が制式化されている。

M3三脚架
三脚(トライポッド)式の銃架。M2重機関銃の基本銃架であり、もっとも多用されている銃架である。重量は約20kgで本体重量(38kg)も相まって12.7mmの強烈な反動を吸収している。
M1対空銃架
M3三脚架に支柱と補助脚を付けた高射用銃架。しかし、安定性が悪く、後にM63が制式化されると退役していった。
M63対空銃架
WW2後に設計された新型の銃架で、トリガーハンドルの位置を変える事で地上用と対空用に対応する。脚部は十字型の四脚構造になっていて安定性が高い。
M3対空銃架
M3三脚架と名称は同じであるが別物である。水冷式のM1921重機関銃用に造られた対空銃架で、後方に梯子状の取っ手が付いて、バレルジャケットの上に専用の照星と照門が付属している。
M46連装対空銃架
これもM3対空銃架同様、水冷式のM1921を並列にマウントする対空銃架である。艦艇用に使われている。
M35車載銃架
車両搭載用の単脚銃架。ジープや小艦艇などに使われている。
M46車載銃架
車両搭載用のリングマウント。トラックハーフトラックの防御火器として使われる。リングに沿って全周射撃が可能。
M33連装対空銃架
爆撃機の旋回機銃塔から発展した連装銃架。M13対空自走砲に用いられたが、すぐに砲門を倍加させたM45に取って代わられた。
M45/M55四連装銃架
M16対空自走砲などに使われる四連装銃架。目的は対空用だが地上用にも転用され、凄まじい威力から「ミートチョッパー」との渾名がある。M45は車載用。M55は牽引式に与えられた制式名。
M205三脚銃架
M3に代わる、新型の三脚銃架。

狙撃銃としての使用例

リューポルド・マーク8照準器を載せたM2を撃つアメリカ海兵隊員

ベトナム戦争において、後に確認殺害戦果93を挙げたアメリカ海兵隊のトップ・スカウト・スナイパーであるカルロス・ハスコックが、この重機関銃の射程の長さと威力に注目して前線基地で単発狙撃に使用し、7.62mm弾よりも弾道特性が良好で射程も威力も充分であると報告している。実際に、この時の狙撃は当時の最長距離の狙撃記録を大きく上回り(約2,300m)、その35年後に元から狙撃用として作られた対物ライフルによって、やっとこの記録は破られた。この銃は長時間の射撃に耐えるために長く重いブルバレルを持ち、三脚による固定と本体重量の恩恵で単発射撃では反動の問題もほとんどなく、発射速度が機関銃としては比較的遅いことから、トリガーでセミオート、フルオートのコントロールをするのが容易であったという。銃身・弾薬の精度は比較的高く、構造上も他の機関銃に比べれば狙撃に向いている。これは、ハスコックのオリジナルではなく、古くは朝鮮戦争の長期に亘る山岳戦において、長距離での狙撃に使われている。そこではブリーチをロックしてセミオート化し、上部にテレスコピックサイトを追加する事で、据付の長距離狙撃銃として使用したという記録が残されている。

フォークランド紛争ではアルゼンチン軍がM2にスコープを装備し、イギリス軍に対して単発射撃で遠距離狙撃に用いる戦術がとられた。これに対しイギリス軍では、自動小銃では応射できず(先述のとおり、有効射程が遥かに短いので撃っても弾が届かない)、高価な対戦車ミサイルミラン」をアルゼンチン軍陣地個々に撃ち込むシラミ潰し砲撃で対抗することになった。この件は後に、バレットM82などの12.7mm以上の大口径対物狙撃ライフル開発のきっかけとなった。[信頼性要検証]

日本軍での使用

手前がホ5 二式二十粍固定機関砲、中央がホ103 一式十二・七粍固定機関砲タイ王国空軍博物館収蔵品)

太平洋戦争では大日本帝国陸軍陸軍航空部隊)を中心に、日本軍でも航空機関砲(固定式・旋回式)としてブローニング系機関銃やその改良型が大々的に使用された。

ホ103
陸軍は、M2重機関銃の航空機搭載型であるAN/M2(MG53-2)をベースとし、弾薬筒をブレダSAFAT 12.7mm重機関銃の規格(12.7x81mmSR)に変更し、独自の改良を施した、ホ103(一式十二・七粍固定機関砲)を採用し、一式戦「隼」を始めとする大半の陸軍戦闘機に装備した。
ホ103はM2と比べ、砲自体が一回り小型軽量でかつ発射速度に勝るものの、代償として弾頭が少々軽いので、威力と初速で劣った(代わりにM2には無い榴弾「マ弾」が使用可能)。また、M2の欠点は大きく重いことだが、ホ103はその重量を大きく下回った。
ホ5
更に陸軍は、高威力20mm機関砲の開発に着手し、12.7mmのホ103をベースに20mm弾(20x94mm)に対応するように拡大改良したホ5(二式二十粍固定機関砲)を開発採用、四式戦「疾風」を始め、太平洋戦争中期以降登場の多くの陸軍戦闘機が装備した。
ホ5は、口径20mmながら口径12.7mmのM2とほぼ同寸法同重量であり、発射速度や初速も優秀で相応の威力を持つ。
三式十三粍固定機銃
海軍でもM2をベースに、オチキス(保式)系である九三式十三粍重機関銃銃身と13mm弾(13.2x99mm)を用いる三式十三粍固定機銃として採用したが、搭載機は大戦後期登場の零戦五二乙型以降の少数の海軍戦闘機のみに留まった。こちらはM2と比べ発射速度に勝りサイズや重量はM2とほぼ同等だが、初速が低く、威力が劣った。

バリエーション

P-51Dの主翼に搭載された3丁のAN/M2と給弾ベルト
XM59 マウントによってAN/M2をUH-1Dに取り付けた、XM213ドアガンシステム
M2E1
トリガーを電磁(ソレノイド)式とした車載型。M45 4連装対空機関銃架や、M16M15といった自走対空砲の備砲、T42中戦車(M47中戦車の試作型)やM41軽戦車の試作型と初期生産型などの主砲同軸機関銃、M48パットンの銃塔機銃やM1エイブラムスの車長展望塔用機銃として用いられた。
AN/M2
航空機搭載型。M2を航空機に乗せるため改造したモデル。登場初期から戦闘機に搭載され、射手が操作する手動型と、P-47 サンダーボルトなどの戦闘機の主翼や機首に装備され、コックピットからの遠隔操作で発射できるようになっているがある。ベトナム戦争に入り、ヘリコプターなどにも搭載された。
地上型のM2とは、電磁トリガーに対応した撃発システムに対応している他、バレルジャケットが銃口部まであることが識別点である。
AN/M2[2]
口径 0.50in (12.7mm)
全長 固定式:57.09in (145.01cm)、旋回式:56.4in (143.26cm)
砲身長 36.0in (91.44cm)
総重量 固定式:61.4lbs (27.85kg)、旋回式:65.4lbs (29.66kg)
砲身重量 10.2lbs (4.63kg)
砲口初速 2,900fps (884m/s)
発射速度 700-850rpm
弾頭重量 M2 AP:706.7gr (45.79g)、M8 API:622.5gr (40.34g)
AN/M3
AN/M2の発展型。電気モーターを用いた補助機構により発射速度を1,200発/分に強化している。F-86 セイバー他初期のジェット戦闘機の搭載武装として用いられた他、XM14/SUU-12 ガンポッドとしても使用された。
AN/M3[3]
口径 0.50in (12.7mm)
全長 4ft 9.5in (146.05cm)
総重量 69lbs (31.30kg)[4][5]
砲身重量 10.91lbs (4.95kg)
砲口初速 2,870fps (875m/s)[注釈 5]
発射速度 1,150-1,250rpm
弾頭重量 1.7oz (48.19g)
射程 5,350-7,275yd (4,892-6,652m)
砲身命数 15,000発
GAU-15/A、GAU-16/A、GAU-18/A
AN/M2及びAN/M3を基に軽量化されたヘリコプター搭載型。乗員が直接射撃を行うタイプ。
M3M/GAU-21
AN/M2を基にしたヘリ搭載型。FN社製。ヘリコプターの側面ドアに銃架と共に固定されており、安定性が上がっている。連射速度を上げ、スペードグリップを大型化している。メタルループが付けられており、弾詰まりのトラブルを減らすことができる。
M3P
AN/TWQ-1 アベンジャー防空システムに搭載するために開発された、FN社製のAN/M2の発展型。発射速度が950発/分と1,100発/分の選択式となり、銃口部に大型の筒形フラッシュハイダーが装着された。給弾方式は機械式のメタルループ方式となっている。FN HMP中国語版ガンポッドにも搭載される。
12.7 Lkk/42 VKT
フィンランドでコピーされたM2。銃身のヒートカバーの形状がベルグマン MG 15nAに似た形状になっている。
空包発射補助具を取り付けたK6
K6
韓国統一重工業が老朽化したM2の代替に設計したコピー。銃身に把手を取り付けて、銃身交換を容易にしたもの。1989年から韓国軍に配備されている。
BRG-15
FN社がM2の後継に提案した改造型。口径の大きい15.5x106mm弾を使用。
M85
ジェネラル・エレクトリック社がM2の後継としてM2の設計を発展させて開発した50口径重機関銃。まず車両搭載用として開発され、M60戦車LVTP7水陸両用装甲車に搭載されたが、問題が多く、M2の後継とはならなかった。
XM806
ジェネラル・ダイナミクス社がM2の後継として開発を行っていた50口径重機関銃、2012年に開発が中止された。

登場作品

脚注

注釈

  1. ^ 後継機種であるVADSの導入にともなって現在では実戦運用を外れており、予備装備として保管されるのみである。
  2. ^ 本来は(実際には不可能だが)他の機関銃同様、ハンドルの保持だけで撃つもの。
  3. ^ 第二次世界大戦後では、ジェットエンジンの発達によって軍用航空機の高速化が進んだ結果、無誘導の銃弾や砲弾を命中させること自体が困難となり、「一発当たりの火力の大きさと、速射性のバランスがとれた対空火器」として機関砲が着目され、重機関銃は弾薬の威力不足、高射砲は速射性の悪さからいずれも力不足と見なされた。
  4. ^ 艦砲ミサイルでは小型船は一撃で沈んでしまう。また、威嚇射撃にしても対費用効果が高すぎる欠点があった。
  5. ^ 発射する弾種によって2,730-3,450fps (832-1,052m/s) の間で変動。

出典

関連項目

類似の大口径重機関銃

外部リンク