村雨辰剛

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村雨むらさめ 辰剛たつまさ
生誕 (1988-07-25) 1988年7月25日(35歳)
 スウェーデン
国籍 スウェーデン
日本の旗 日本
職業庭師俳優タレントモデル

村雨 辰剛(むらさめ たつまさ、1988年7月25日 - )は、日本の庭師俳優タレントモデルスウェーデンスコーネ県エルケルユンガスウェーデン語版出身[1]、2015年(当時26歳)に日本帰化した。出生名は、ヤコブ・セバスチャン・ビョーク(: Jakob Sebastian Björk[2]。身長182cm、B.101、W.78、H.96。血液型O型。所属事務所はワイエムエヌ[3]

経歴[編集]

出生から日本移住まで[編集]

1988年7月25日にスウェーデンで誕生した。幼い頃に実の両親が別れることになり、実の母親とスウェーデン空軍パイロットの継父によって、スウェーデン南部スコーネ地方の人口8000人ほどの小さな田舎町で育てられた[4]

継父の影響でスウェーデン陸軍のレンジャー部隊へ入ることを考える一方、中学校の世界史の授業で日本の歴史を知って興味を抱き、Yahoo!チャットで日本人を見つけて、チャットで日本語を勉強していた[5]。幼い頃から「?」が多いものに魅力を感じる性格だったと回想しており、日本の歴史では戦国時代や武士道に関心を抱いた[6]。日本語の学習には英日辞典を使い、単語を片っ端から頭に叩き込んだ。他人と群れるのが嫌いで、常に英日辞典を持ち歩き、少しでも時間があると一人で辞典を広げて日本語を覚えていたため、周囲からは変なヤツだと見られ「ヤポン(日本人)」とあだ名を付けられていた[6]。現在、スウェーデン語、英語、日本語の三言語話者である[3]

チャットで知り合った日本人から招かれて[2]、16歳の夏休みの時に初めて日本を訪問し、神奈川県の逗子市横須賀市で3か月間のホームステイを経験した[7]。ホームステイ先は何代も続く旧家であり、伝統的な生活を体験した[8]。日本滞在中は鎌倉市などの神社仏閣を訪れたという[8]。ホームステイ後は日本に住みたい気持ちが強くなっていき、レンジャー部隊の入隊試験に合格したものの入隊を辞退し、高等学校卒業後にアルバイトをしてお金を貯めて19歳で日本へ移住した[9]。移住を決めた頃にはかなり日本に傾倒しており、将来的には帰化して日本人になることを考え始めていた[10]

日本移住後[編集]

日本へ移住後は愛知県名古屋市[5]スウェーデン語や英語の語学講師として生計を立てていた[3]。その時点では仕事内容は重要視しておらず、将来的に帰化するとしたら一定期間以上、日本に住み続けて安定した収入が必要だったために自分にできることは何かと考えて選んだ仕事だった(本当は日本の伝統的な職に就きたいと思っていたが、どうすればいいのかわからなかった)[11]。語学講師時代に外国人が所属する事務所からスカウトされた。知り合いに「幅広い仕事ができる」と言われて事務所に登録し、モデルや翻訳の仕事も引き受けるようになった[12]

しかし、2011年(平成23年)3月11日に東日本大震災が発生し、スウェーデンの家族から心配され、ちょうど語学講師の契約が切れるタイミングでもあったため、スウェーデンに一旦帰国した[13]。日本に移住してから始めての帰省で、自分の将来についての悩みを親に相談したことで心が軽くなり、再び日本で暮らす決意を固めた[9]

しばらくして再来日し、日本の伝統的な職に就きたいと思って仕事を探し始めた。最初は宮大工になりたかったが大工の経験がないと無理だと断られ、次に求人情報誌で見つけた「造園業」という言葉の意味を調べ、自分の探していた仕事にピッタリだと思い、名古屋市の山本庭苑という造園業者で短期アルバイトとしてワンシーズン(8カ月)働いた。仕事内容は掃除や荷物運びなどの「お手伝い」だったが、休憩時間には植物の名前や世話の仕方を教えてもらったり、3カ月が経った頃からは鋏を持たせてもらい、剪定の理論ややり方など基礎的なことを学んだ。この時の経験から庭師になりたいと思うようになった[14]

村雨は元々徒弟制度に憧れを抱いていた[15]。その理由として「学校へ通って、決められたカリキュラムをこなすだけでは学べないことがある」と述べている。山本庭苑のアルバイト経験で庭師の仕事に憧れ、親方に弟子にして欲しいと頼んだが、既に兄弟子が存在し、これ以上の弟子を採る余裕が無かったため断られた[14]

アルバイト期間が終了し、造園業の仕事を探し始めたものの外国人であることが壁となり数十社から断られた[13]。ハローワークへ相談に行ったとき、たまたま職員の知り合いに庭師の親方がいてすぐにでも働ける弟子を探していると聞き、担当者に紹介してもらい愛知県西尾市の加藤造園に採用された[14]。2012年6月1日(23歳の時)[16]から庭師の徒弟となり、5年間修業を積んだ。親方は無口で厳しく褒められたことはないが、家族のような絆を感じているという。庭師としては西洋の庭園は綺麗だが人工的だと感じる一方、日本庭園は自然と対話して人間が自然と触れた時の感覚を再現しようとしており、経年変化を良いものと捉える美意識があると語っている[6]

帰化後[編集]

日本へ移住した19歳の頃から帰化して日本人になることを考えはじめ[10]、26歳の時(2015年)に日本に帰化した(国籍がスウェーデンから日本に変わった)。日本名の「村雨」は親方の父親の名前であり[2]作家の村雨退二郎に由来し[1]、『南総里見八犬伝』に登場する架空の日本刀の名称が「村雨」であることにも由来する[2]。「辰剛」の「辰」は辰年生まれであることに由来し、「剛」は親方の名前から一文字いただいた[2]。なお、日本へ帰化する際には、スウェーデン人の親から「戦争になったら、日本のために戦って死ねるのか」と問われたが、村雨は自分の覚悟を伝え、許してもらったという[15]。この頃からSNSなどを通じて「日本に帰化したスウェーデン人の庭師」とメディアで取り上げられるようになった[12]

2016年(平成28年)1月2日[16]株式会社YMNにタレントとして所属。庭師の仕事に支障が出ない程度にテレビ番組やラジオ番組、テレビ広告などに出演するようになる。

加藤造園では庭園の手入れや管理の技術を学んだが、一から庭園を造る「設計」の仕事があまりなかったため、5年間の修業を終えた後、親方に相談し、2017年に東京の造園業者へ転職した。声を掛けてくれた造園業者では契約社員のような形で造園に関わっていたが、徐々にメディアに出る仕事が多くなり[12]、SNSで自身の活動を発信することで世間に認知され始めた。

2018年、NHK『みんなで筋肉体操』に出演したことが転機となり、一躍注目されるようになる[8]

2019年、初の自伝的エッセイ『僕は庭師になった』を出版。

2021年4月、NHK Eテレ趣味の園芸』のメインナビゲーターに就任。

2021年11月、NHK連続テレビ小説カムカムエヴリバディ』のロバート・ローズウッド役に抜擢。長い間、演技に挑戦してみたいと思っていたが[1]、初めて大役を得たことにより演技することの楽しさに目覚め、役者としても活動したいと思うようになった[12]

2022年、2冊目の自伝的エッセイ『村雨辰剛と申します。』を出版。

2022年現在、庭師として独立し、個人自業主となっている。庭師の仕事は季節によって仕事量にバラつきがあるため、今後は庭師と俳優・タレントの仕事をバランスを取りながら両立していきたいと語っている[12]

人物[編集]

  • 趣味:筋トレ肉体改造盆栽[3]
  • 好奇心旺盛な性格で、なんでもすぐに行動するタイプ。帰化してからは日本人らしさを大切にし、「郷に入っては郷に従え」をモットーとしながらも、スウェーデン人の自由な気質は残っており、心の中はいつも自由で冒険心に溢れているという[12]
  • 庭や植物に興味を持ち始めたのは日本に移住後、アルバイトで造園業者に入ってからである。庭師になった当初は頭が固く「その道一筋でいく」と考えていたが、徐々にそのスタンスは自分には合わないと思い始め、庭師の仕事を軸としながらタレントやモデルの活動もするようになった。自分がメディアに出ることで、減少しつつある日本庭園の良さを広めたいという思いもあったという[12]
  • 加藤造園の親方には非常に感謝しており、今でも師匠だと思っている。しかし自分のやりたかった「造園」(庭や公園等をあらたに造ること)の仕事があまりなかったため、親方とも話し合って5年で修行期間を終了し、東京の造園業者に転職した。その後、自営業となり、念願だった古い日本家屋を借りて和風の生活スタイルをYouTubeで発信している[12]
  • 踏切の近くで鳴いていた子猫を保護して「芽吹き」(「めぶき」ちゃん)と名付け、飼育している[17]
  • 2021年、NHKの朝ドラカムカムエヴリバディ』でロバート・ローズウッド役に抜擢された。演技経験が少なく初の大役で緊張したものの、演じることの楽しさに目覚め、演技をすることが大好きになった。庭師と役者は一見関係ないように見えるが「表現する」という点で繋がっているという。今後は庭師の仕事と並行しながら役者の仕事をもっとやっていきたいと語っている[12]
  • 好きな戦国武将は上杉謙信武田信玄[18]。帰化人としてはウィリアム・アダムス(日本名・三浦按針)を尊敬しており、TBS『世界ふしぎ発見』でミステリーハンターとして按針を紹介した時は大変嬉しかったという。いつか按針役を演じてみたいと思い続けていたが、NHK大河ドラマどうする家康』でウィリアム・アダムス役として出演が決定し、「熱望していた三浦按針役をいただけたことに心から感謝と、感激でいっぱいです!」とコメントしている[19]
  • 庭師に専念した方が良いという声もあるが、メディアに出てからの方が造園の仕事をもらえるようになったことや、芸能活動をすることでコミュニケーション能力が上がりお客様との打ち合わせがうまくいくようになったことなどプラスになる面が多く、もっと自分を成長させたいという思いがある[1]ので、これからも役者をはじめとして色々な活動にチャレンジしたいと語っている。
  • 庭師という肩書にはこだわりはないが、和の庭園にはいつまでも関わっていきたいという思いが軸にあるので、日本庭園に関わる仕事は一生続けたいと思っている[12]
  • 結婚歴があり、東日本大震災の発生後にはスウェーデンの家族を安心させるために当時の妻と共にスウェーデンに帰国している。その後、加藤造園で働いている時期に離婚。娘がいる[4]

出演歴[編集]

テレビドラマ[編集]

テレビ番組[編集]

映画[編集]

  • ショートフィルム「The Izakaya Dialogue」(2023年、ホッピービバレッジ) - 主演・マーク 役
  • ショートフィルム「Wife's Power Outage 妻の電池切れ」(2023年、東北新社) - サラリーマン 役

CM・広告[編集]

  • カードローン比較サイト 考える人銅像役
  • KAGOME野菜ジュース 英会話教師役[3]
  • 千葉銀行
  • アメリカン・エキスプレス(2018年)
  • 明治 THE GREEK YOGURT(2019年)
  • 資生堂 ANESSA(2019年)
  • コカ・コーラ「爽健美茶」(2019年)
  • メンズグルーミングブランド「PROUDMEN.」(2019年) - アンバサダーに就任
  • アース製薬「スッキーリ! 」(2020年)
  • Majesty-onarimon club-(2021年) - イメージキャラクター
  • ヴァーナル(2021年)
  • Takayama Dish-covery(2023年) - ナビゲーター
  • アサヒビール 9LIVES「挑戦者に捧ぐワイン」篇(2023年)

ラジオ番組[編集]

著書[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 【カムカム】朝ドラ出演の庭師・村雨辰剛が帰化してまで日本文化を守りたい理由”. となりのカインズさん. カインズ (2022年4月5日). 2023年10月17日閲覧。
  2. ^ a b c d e 「古き良き日本文化に惹かれ、日本に帰化したスウェーデン人庭師」リクルート公式サイト「Meet Recruit」(2016年6月20日)2022年6月15日閲覧
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 所属芸能事務所(株式会社YMN)公式サイト内のプロフィール(2022年6月15日閲覧)
  4. ^ a b 武士道精神に魅せられ、日本に帰化したスウェーデン出身庭師。日本人として、文化を継承していくことに相応しい人間になれるよう、日々鍛錬を続ける」HIGHFLYERS(2020年3月24日)2022年6月15日閲覧
  5. ^ a b なにもしなくても、日本は「出る杭」だ NHK『筋肉体操』出演・庭師の村雨辰剛さんインタビュー 文春オンライン(2019年4月14日)2022年6月15日閲覧
  6. ^ a b c 【著者】村雨辰剛と申します。新潮社・1600円村雨辰剛さん「好き」が僕を運んでくれた毎日新聞』朝刊2022年6月11日(今週の本棚)2022年6月15日閲覧
  7. ^ NHK『みんなで筋肉体操』で話題の庭師・村雨辰剛さんインタビュー「庭師は、世界規模で日本の伝統を伝えていける立派な仕事」タウンワーク「働くコラム」(2018年09月20日)2022年6月15日閲覧
  8. ^ a b c 筋肉と日本庭園を愛する村雨辰剛さんが日本人に伝えたいこと”. 読売新聞社「大手小町」 (2019年3月14日). 2023年10月19日閲覧。
  9. ^ a b 著書『僕は庭師になった』より。
  10. ^ a b 村雨辰剛・筋肉庭師「スウェーデン出身の僕が日本で庭師になったわけとは」”. 朝日新聞社・telling, (2019年4月19日). 2023年11月19日閲覧。
  11. ^ 村雨辰剛【前編】19歳で日本移住「朝ドラ出演は想像してなかった」”. 読売新聞社「大手小町」 (2022年6月20日). 2023年11月19日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j 「カムカムエヴリバディ」「みんなで筋肉体操」――大注目の34歳、待望の本格自伝!”. 書籍詳細:村雨辰剛と申します。. 新潮社 (2022年6月1日). 2023年10月17日閲覧。
  13. ^ a b 「みんなで筋肉体操」に出演の北欧出身の庭師、初の自伝的エッセー AERA dot.(2019年3月30日)2022年6月15日閲覧
  14. ^ a b c 村雨 辰剛さんインタビュー:「日本が好き!」が原動力 失敗を恐れなければ道は拓く(2023年1月17日号)”. UNIADEX (2023年1月17日). 2023年10月20日閲覧。
  15. ^ a b 徒弟制度に憧れ帰化。筋肉と庭園を愛する庭師、村雨辰剛さんパソナキャリア(2018年4月25日)2022年6月15日閲覧
  16. ^ a b 本人のフェイスブックアカウントの「基本データ」
  17. ^ 道ばたで拾った子猫 イケメン庭師はひっそり猫を愛でる」sippo(2019年5月4日)2022年6月15日閲覧
  18. ^ “スウェーデンから移住…村雨辰剛が日本を好きになったきっかけは?「世界史の授業で知りました」”. TOKYO FM + PRニュース. (2022年5月25日). https://news.audee.jp/news/ZHgPFxRNZf.html?showContents=detail 2023年10月27日閲覧。 
  19. ^ “どうする家康:村雨辰剛が念願のウィリアム・アダムス役に 「お手本にしている歴史人物」”. MANTANWEB. (2023年8月3日). https://mantan-web.jp/article/20230803dog00m200029000c.html 2023年10月27日閲覧。 
  20. ^ テレビ東京開局55周年特別企画ドラマスペシャル『二つの祖国』公式サイト「国際派キャスト」
  21. ^ 綾野剛主演『オールドルーキー』第2話に桂宮治、村雨辰剛、竹財輝之助がゲスト出演”. Real Sound. 2022年6月25日閲覧。
  22. ^ “『大奥 Season2』平賀源内役は鈴木杏に 「その命を、魂を、大切に、演じたいです」”. リアルサウンド映画部 (blueprint). (2023年3月14日). https://realsound.jp/movie/2023/03/post-1280741.html 2023年3月15日閲覧。 
  23. ^ “ドラマ「大奥」Season2の放送開始日は10月3日、主題歌はAimerの「白色蜉蝣」”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2023年8月29日). https://natalie.mu/eiga/news/538759 2023年8月29日閲覧。 
  24. ^ “スウェーデン出身俳優・村雨辰剛、大河ドラマ初出演が決定 朝ドラ『カムカム』ロバート役でも話題”. ORICON NEWS (oricon ME). (2023年8月3日). https://www.oricon.co.jp/news/2289462/full/ 2023年8月3日閲覧。 
  25. ^ 筋肉、刀剣、U.S.A.... 「カオス紅白」まとめたウッチャンに絶賛の声”. J-CASTニュース (2019年1月1日). 2023年11月19日閲覧。
  26. ^ 「庭師・村雨辰剛、数学番組で自慢の“筋肉”を披露」ORICON NEWS(2020年12月2日)
  27. ^ "NHK『趣味の園芸』番組の"顔"11年ぶりに交代 "園芸王子"三上真史から庭師・村雨辰剛にバトンタッチ". ORICON NEWS. oricon ME. 8 March 2021. 2021年3月8日閲覧
  28. ^ あさチャン! あさトク 密着 日本文化を継承する外国人”. TVでた蔵 (2018年3月5日). 2022年7月6日閲覧。
  29. ^ NEWSな2人 外国人が大激怒!外国人が生きづらい日本、反対!”. TVでた蔵 (2018年1月13日). 2022年7月6日閲覧。
  30. ^ 『みんなで筋肉体操』で話題の金髪イケメン庭師に密着 修業時代を振り返る”. exciteニュース (2018年10月29日). 2022年7月6日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]