プラウダ (真実)

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プラウダ (真実)
Pravda
監督 ジガ・ヴェルトフ集団
ジャン=リュック・ゴダール
ジャン=アンリ・ロジェ
ポール・ブーロン
脚本 ジガ・ヴェルトフ集団
製作 クロード・ネジャール
出演者 ヴェラ・ヒティロヴァ
イヴァン・パッセル
ジャン=リュック・ゴダール(声)
撮影 ジガ・ヴェルトフ集団
編集 ジガ・ヴェルトフ集団
製作会社 欧州映画ラジオテレビ放送センター
配給 アメリカ合衆国の旗 グローヴ・プレス
フランスの旗 NEF
日本の旗 フランス映画社
公開 アメリカ合衆国の旗 1970年5月21日
日本の旗 1971年11月3日
チェコの旗 2001年10月 イフラヴァ映画祭
上映時間 58分
製作国 フランスの旗 フランス
西ドイツの旗 西ドイツ
言語 チェコ語
英語
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プラウダ (真実) 』(Pravda露語Правда、「真実」の意)は、ジャン=リュック・ゴダールジャン=アンリ・ロジェポール・ビュロンら「ジガ・ヴェルトフ集団」の共同監督による、1969年製作のフランス西ドイツ合作の映画である。チェコスロヴァキア(現チェコ)の首都プラハで3月[1]に撮影した。

概要[編集]

「ジガ・ヴェルトフ集団」(1968年 - 1972年)の第三作である。前作『ブリティッシュ・サウンズ』を完成させた1969年3月、ゴダールらはプラハに飛んだ。「プラハの春」と呼ばれた1968年、同6月27日の『二千語宣言』、同8月20日深夜、ソ連による軍事介入とその失敗、1969年1月1日のチェコとスロヴァキア連邦制による「チェコスロヴァキア社会主義連邦共和国」成立の流れのなかで、同4月に終わりを告げる、まさにその直前のプラハである。

そこで「ジガ・ヴェルトフ集団」は、『ひなぎく』(1966年)を監督した「チェコ・ヌーヴェルヴァーグ」の女性監督ヴェラ・ヒティロヴァを直撃した。ゴダールはヒティロヴァを批判し、「あなたはザナックでありパラマウントではないか」と問う。彼女は答える。「アーサー・ペンアントニオーニのようなものです」。同席した同じくプラハの映画監督イヴァン・パッセルがゴダールに対し「あなたこそプチブル的だ」と反駁するという一幕もある。パッセルは同年、アメリカに亡命する。その直前のプラハでの貴重な映像である。

クロード・ネジャール1940年生まれの若手プロデューサーで、ルネ・アリオ監督の長篇第一作『La Vieille dame indigne』(1965年)で25歳にしてプロデューサーになり、フィリップ・ガレル監督の中篇『現像液 Le Révélateur』(1968年)などを経て、本作は4作目となる。その後ルイ・マル監督の『好奇心』(1971年)では製作とともにマルと共同で脚本も手がけた。パッセルは、アメリカ亡命後は英語読みの「アイヴァン・パサー」として、ジョージ・シーガル主演の『生き残るヤツ』(1971年)やピーター・オトゥール主演の『クリエイター』(1985年)などの監督作を手がけ、現在も活躍中である。

プラウダ Правда」とは、ロシア語で「真実」を意味すると同時にソ連共産党の機関紙の名であり、同集団が名を冠したソ連の映画監督ジガ・ヴェルトフの短篇シリーズ『キノ・プラウダ』(1922年 - 1925年)にも由来している。同集団が追求するドキュメンタリーの手法「シネマ・ヴェリテ」とは「キノ・プラウダ Киноправда」の直訳である。ゴダールと「ジガ・ヴェルトフ集団」は、本作で、アメリカ帝国主義とソ連のスターリニズムとの関係における「真実」を「1969年のプラハ」に見出そうとしたのである。

日本では、フランス映画社の配給と大島渚佐々木守らの「創造社」(1961年 - 1972年)の共催による「ゴダール・マニフェスト」のシリーズで、1971年11月3日、東京・新宿の「蠍座」で『ブリティッシュ・サウンズ』とともに公開された。チェコでは2001年の「イフラヴァ国際ドキュメンタリー映画祭」で上映されている。

構成[編集]

基調は、チェコスロヴァキアの日常生活がモンタージュされ、「ウラジミール」という男と「ローザ」という女のナレーション[2]でその分析が行われる。

  • 具体的状況
日常のさまざまなシーンを短い断片的なショットでつないでみせる。
  • 具体的状況の具体的分析
おなじショットを、学生、カードル、農民、兵士プロレタリア、ソ連などの項目に対応して長めに再現する。映画監督ヴェラ・ヒティロヴァとの対話。経済主義(労働組合主義)、スターリン主義、官僚主義、西欧主義(対義語は汎スラヴ主義)や修正主義の具体的問題点を分析する。
  • 新たな具体的状況
プラハの中心から郊外へと走る赤い市電のクローズアップなどを提示しながら、間違った「映像」へのマルクス・レーニン主義の「音響」による修正の方法を示す。
  • 正しい思想
階級闘争、生産闘争、科学実験の社会的実践と闘争の呼びかけ。

作品データ[編集]

カラー作品(16 mm) / 上映時間 58分 / 上映サイズ1:1.37(スタンダード・サイズ

スタッフ[編集]

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  1. ^ 仏語版Wikipediaのページには「4月」とある。IMDb、『ゴダールの神話』(雑誌「現代思想」臨時増刊号、青土社1995年10月20日 ISBN 4791719921)のp.174から始まる山田宏一『ゴダールの決別』をはじめ、あらゆる文献には「3月」とある。ここでは後者に従った。
  2. ^ このネーミングについては『ウラジミールとローザ』のページを参照。「ウラジミール」の声は同作に引き続きゴダールだが、「ローザ」の声はアンヌ・ヴィアゼムスキー説あり。

外部リンク[編集]