ぼっけもん

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ぼっけもん』は、岩重孝(後のいわしげ孝)作の漫画(劇画)。第31回(昭和60年度)小学館漫画賞受賞作[1][2]

概要[編集]

1978年から1985年にかけて、小学館ビッグコミック」(1978〜1979)および「ビッグコミックスピリッツ」(1980〜1985)において連載されていた。ビッグコミックに投稿した本作の第一話となる「忘れ雪」が第二回小学館新人コミック賞に入選してデビューのきっかけとなり、1986年には第31回小学館漫画賞を受賞した作者の代表作である[1]

鹿児島市出身の若者が東京と故郷で葛藤する泥臭い生き方を描いた自伝的作品[2]唐湊(とそ)や上町(かんまち)、薬師町(現・薬師)などの鹿児島市の下町が主人公の故郷として描かれ、鹿児島市や鹿児島人気質を窺い知れる作品と云える。

タイトルの「ぼっけもん」とは、大胆な人、乱暴な者を意味する鹿児島弁であり[3]薩摩鹿児島県人の気質を表した言葉である。

あらすじ[編集]

●東京生活の始まり

鹿児島の高校を卒業後,浅井義男は東京の大学の夜間部に進学する。いくつかの失敗を重ねながら東京生活にも慣れた頃、バイト先の書店で同じバイトの秋本加奈子と出会う。太士郎が義男のアパートに引っ越してきて、歓迎会の最中に井香がが産気づき、男たちは右往左往するが、加奈子は的確に指示し、井香は無事に女の子を出産する。よかったと義男の背中で泣く加奈子を強く意識するようになる。

●秋本加奈子との接近

夏休みに義男は1年数ヶ月ぶりに帰郷し、東京に戻る列車の中からエールを送るような桜島の爆発を見て、義男は思わず雄叫びをあげる。東京で再会した加奈子から別れ際に「アタシのことどう考えているの」とたずねられ、複雑な思いを抱く。泉と太士郎と雑魚寝の二日酔いの朝、デートの時間に寝過ごした義男は3人で加奈子に会いに行く。映画エデンの東とお茶の後、泉のはからいで加奈子と二人きりになり、多摩川の堤防で立ち止まり、義男は「俺、秋本が好きやよ」と打ち明ける。加奈子は義男にしがみつく。

●白石の結婚式

3年目の夏、故郷の白石から絶対帰ってこいという手紙が届く。さらに、電話で白石が結婚し、義男に司会を依頼する。羽田行きのモノレールの中で加奈子は四国に遊びに来ないと誘う。実家で加奈子は姉からいい感じの子やない、でも今は親には合わせん方がええかもねと忠告される。阿波踊りを見物し、ホテルにチェックシンするとき、義男は自分の名前に加え秋本加奈子と記帳する。結婚式の途中で朝子の父親が嫁にやるつもりつもりはなかどとテーブルをたたいて荒れるが、カンジの一言と義男たちの怪しげな校歌でなんとか収まる。

●4年目の春

義男と加奈子の関係は恋人以上には進展しないまま、4年目の春を迎える。加奈子は東京の出版社の入社試験を受けてみないかと誘われる。義男は東京に残るか故郷に帰るかすら考えていない状況である。加奈子はちゃんと言葉で二人の関係を確かめておく時期にきているような気がすると切り出す。義男は秋元のことは本気で好きだが、結婚とかはよう分からんと答えるが、もし俺が嫁さんをもらうとしたら秋元しかおらんとも付け加える。これで加奈子は安心する。

●転機

加奈子は東京出版局で高校の2年先輩の清水に出会い、新しい女性誌の編集のバイトを始め、将来はその方向に進みたいと考える。義男に先んじて自分の将来像を決めるのに不安を感じた加奈子が新しいバイトは止めようかと言うと、義男はお互い芯のところでひっついとったら関係なかよと答える。夏休みに帰省した義男は白石たちからシアタービル建設について説明を受け、高校時代の夢の実現しようとする。加奈子は鹿児島の朝子からの電話でシアタービル計画について知り愕然とする。加奈子は義男が鹿児島に帰ることに反対だよと伝える。年の暮れとなり、義男はシアタービルの件で帰郷しているときに卒論の締め切り日となり、加奈子が口述筆記で完成させたが、卒論は受理されず義男は半年間の留年となる。義男は退学を決断し、加奈子は清水から就職内定が出たことを聞かされる。

●破局

京都取材のあと、加奈子は義男と合流して京都観光の間に義男の退学を思いとどまらせようとする。秋元は込んでいる店での夕食時に「清水さんが…いくらひっついていても 男と女は離れたらダメになるって…中退はやめて…そしてシアタービルも…アタシのこと本当に好きならそうして…お願い…」と迫る。ぼっけもんの性格をもった浅井にはこのような迫られ方には我慢できず、一人で店を出る。風俗店から出てきた義男と一緒にホテルに戻ってから、秋元は「仕事を捨ててオレについて来いと言われるのをずっと待っていたのかもしれない」と述懐するが、二人の関係は精神的な破局を迎える。加奈子は故郷に帰りますというメモを残してホテルを出る。外見的には以前と同じように振る舞う加奈子は最後のデートで「あたしたち終わりにしよう」と言葉をかみしめるように告げる。義男は退学届けを出す。

●シアタービル

鹿児島で4人で始めたシアタービル計画は怪しげな工務店に契約金の1000万円を持ち逃げされ、出だしからつまづく。4人は生活費を稼ぐためバイトと持ち逃げ犯探しに明け暮れ、更地にはシアタービル建設予定地の看板がむなしく立っている。川辺の提案により残された2000万円で規模を小さくしたシアタービルを造って、そこから始めることにする。川辺の父親のつてで見つかった工務店の親父から予算計画が甘いと一喝され、計画より1年遅れでシアタービル1階の着工が始まる。

●不滅のカップル

東京での加奈子に言い寄る男性は多いが、加奈子の身持ちは固く、鏡に向かってアタシまでしんどいよとつぶやく。博多取材のあと、加奈子は衝動的に鹿児島に向かう。シアタービルの宣伝のビラの中に義男の名前を見つけ、アパートを訪ねるが、ノックに対してちょんまげかと対応され会わずに退居する。シアタービル1階にファーストゲートがオープンして1ヶ月、客入りはぼちぼちといったところで、4人は交代で運送屋のバイトを続ける。そんな中、泉とメガネの結婚式の招待状が届く。結婚式場で再会した二人はぎこちなくあいさつを交わす。スピーチでは二人一緒に前に出され、司会からは不滅のカップルを復活させて欲しいという新郎新婦からのメッセージを伝えられる。披露宴の後、別々に行動していた二人は泉夫婦の策略により、仮新居のアパートに泊まることになる。二人はお互いに好き合っていることは確認できたが、1年半の時間を埋めることはできない。

●すれちがい

義男は羽田から引き返し、加奈子を探し、駅で寝込んでいる加奈子を見つけ部屋に送り届ける。アパートの前で島貫と会った義男は秋元がかわいそうだと聞いてしばらく東京に留まるとのメモを残す。加奈子はもう自分の気持ちにうそはつかないと決心し、義男はシアタービルを捨てて東京に戻ろうとする。鹿児島で義男は白石にシアタービルをためると告げ、その夜、加奈子は義男の部屋を訪ねる。そこで、酔ってやって来た白石と鉢合わせになり、義男から本気だと言われ殴り合いとなる。加奈子は白石たちにいきさつを説明し、東京に戻り清水に辞職を伝える。送別会の後、アパートの前で義男を見つけ、加奈子は愕然として部屋にこもる。就職活動はうまくいかず、泉を訪ねた義男はシアタービルを続けるよう諭される。失意の加奈子はアパートを引き払い実家に戻る。

●大団円

加奈子の実家を訪ねた義男は加奈子の父親に結婚の意思を伝えるが、加奈子は義男と会おうとはしない。バイトをしながら加奈子に何度も電話をし、義男は再会を果たす。二人は素直に謝りあい、加奈子はシアタービルに戻ることをお願いする。義男はシアタービルに電話し、戻る意思を伝え、その後で加奈子にプロポーズする。加奈子の結婚に反対していた父親も義男と会うことになり、結婚に向かって大きく進展する。二人の結婚は白石にも祝福される。ファーストゲートで開いた二次会で義男はこの場所から二人、仲良う新しい生活を初めていきたい思うていますと述べ、加奈子の父親からも丁寧に挨拶される。二人の新居は鹿児島の街を見下ろし、その向こうに桜島を眺望する高台の借家となる。結婚して1年が過ぎ、加奈子は皆の前で妊娠を報告する。家に戻る途中の夏空と風に加奈子は様々な想いにとらわれる。

登場人物[編集]

浅井 義男(あさい よしお)
主人公、鹿児島市出身、りえ子という妹がいる。高校卒業後に上京し本屋でバイトをしながら大学夜間部に通う。そこで秋元加奈子と知り合い、恋仲になる。卒業後は鹿児島に戻り、高校時代の友人である白石,河辺,米森と一緒にシアタービルを設立する。
秋元 加奈子(あきもと かなこ)
徳島県出身、離婚歴のある姉が一人いる。浅井より1歳年上。浅井と同じ夜間部に通い、同じ本屋でバイトをしている。4年生からは「Miss Time」の編集部でバイトを始め、卒業後はそこに就職する。
泉 勝広(いずみ かつひろ)
老舗の蕎麦屋の息子であるが今のところ家業を継ぐ気はない。浅井と同じ夜間部に通い、同じ本屋でバイトをしている。浅井と秋元のよき理解者。卒業後は家業を継ぐため調理師学校に行く。学友のメガネこと佐藤聖子と結婚する。
白石 徹(しらいし とおる)
浅井の高校時代の同級生、バンドをやっていた。卒業後は運送業で働く。21歳で神領朝子と結婚、仲人は押坂カンジ,司会は浅井が務めた。シアタービル設立4人衆の一人。
川辺(かわべ)
浅井の高校時代の同級生。実家は土建屋で複数のアパートを経営しており、息子が卒業後も職を転々とするので、その一つの土地を与え事業をさせようとする。シアタービル設立4人衆の一人。
米森 義昭(よねもり よしあき)
浅井の高校時代の同級生、卒業後は銀行に就職する。シアタービル設立4人衆の一人。
押坂 カンジ(おしさか かんじ)
高校時代の担任、豪傑、白石の結婚式では仲人を務める。
中村 太士郎(なかむら たしろう)
浅井の高校の1年後輩、寮に居られなくなり浅井のアパートの隣りの部屋に引っ越してくる。かなり口は悪い。
鈴木 喜太郎(すずき きたろう)
浅井のアパートの住人、秋元の3年後輩であり秋元のことをマドンナ視している。気の弱いうじうじした性格を直そうと太士郎と男になる旅に出る。
愛田 智子(あいだ ともこ)
浅井の高校時代の同級生、浅井と付き合っていたが卒業後前川良と東京に駆け落ちする。その後、前川とは分かれて水商売に入る。

脚注[編集]

  1. ^ a b 小学館漫画賞:歴代受賞者 - 小学館 2013年6月2日閲覧。
  2. ^ a b 「ぼっけもん」の漫画家、いわしげ孝さんが死去 Archived 2013年4月29日, at the Wayback Machine. - MSN産経ニュース 2013年6月2日閲覧。
  3. ^ ぼっけもん(鹿児島の方言)の意味・変換 - 全国方言辞典(goo辞書) 2013年6月2日閲覧。