あきない世傳 金と銀

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あきない世傳 金と銀
ジャンル 時代小説
小説
著者 高田郁
出版社 角川春樹事務所
レーベル ハルキ文庫
刊行期間 2016年2月12日 - 2022年8月18日
巻数 全13巻+特別巻全2巻
ドラマ
原作 髙田郁
脚本 山本むつみ
演出 田中健二、船谷純矢
岡野宏信、中野亮平
音楽 未知瑠
放送局 NHK BSプレミアム4KNHK BS
放送期間 2023年12月8日 - 2024年2月2日
話数 全8話
テンプレート - ノート
プロジェクト テレビドラマ
ポータル 文学テレビドラマ

あきない世傳 金と銀』(あきないせいでん きんとぎん)は高田郁時代小説のシリーズである。2016年2月に「あきない世傳 金と銀 源流篇」がハルキ文庫角川春樹事務所)から刊行され、2022年8月に完結となる「あきない世傳 金と銀(十三) 大海篇」が刊行された。

2023年8月から、登場人物のうちの4人を主人公とした短編集 特別巻が刊行された。同年12月にNHKBS時代劇テレビドラマ化された。

江戸中期、兄と父を亡くし大坂天満の呉服商に奉公に出た学者の娘・幸(さち)が商才を発揮し商人へと成長する物語[1][2]

あらすじ[編集]

摂津国武庫郡津門村で、私塾を開いている頑固な父と、女に学問は不要と考える母、優しい兄と幼い妹と暮らしている幸(さち)は、学問が大好きだった。兄は、女も学問をするべきと考えて幸に様々なことを教えてくれたが、病に伏して亡くなり、そして父までも流行りの風邪で死去してしまう。母と妹は、豪農・彦太夫の屋敷の住み込み下女になることになり、幸は9歳で大坂天満の呉服商「五鈴屋」に奉公に行くことになった。

五鈴屋でも女衆(おなごし)は奥の仕事だけで、店に出てはいけないと決まっていたが、丁稚手習いの様子が気になってしかたがない幸は、三代目の三男・智蔵の口利きによって番頭の治兵衛からこっそり「商売往来」を教えてもらえることになる。やがて治兵衛は、そんな幸に商才を見出すのだった。

14歳で四代目徳兵衛の後妻となりご寮さんとなった幸は、商いの面白さに目覚めていく。

シリーズ一覧[編集]

  1. あきない世傳 金と銀 源流篇(2016年2月12日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75843981-7
  2. あきない世傳 金と銀(二) 早瀬篇(2016年8月9日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844027-1
  3. あきない世傳 金と銀(三) 奔流篇(2017年2月14日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844068-4
  4. あきない世傳 金と銀(四) 貫流篇(2017年8月9日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844110-0
  5. あきない世傳 金と銀(五) 転流篇(2018年2月15日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844147-6
  6. あきない世傳 金と銀(六) 本流篇(2019年2月15日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844233-6
  7. あきない世傳 金と銀(七) 碧流篇(2019年8月8日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844284-8
  8. あきない世傳 金と銀(八) 瀑布篇(2020年2月15日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844322-7)
  9. あきない世傳 金と銀(九) 淵泉篇(2020年9月15日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844361-6)
  10. あきない世傳 金と銀(十) 合流篇(2021年2月15日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844392-0)
  11. あきない世傳 金と銀(十一) 風待ち篇(2021年8月10日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-7584-4425-5)
  12. あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇(2022年2月15日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-7584-4461-3)
  13. あきない世傳 金と銀(十三) 大海篇(2022年8月18日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-7584-4506-1)
  14. 契り橋 あきない世傳 金と銀 特別巻(上)(2023年8月25日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844589-4
  15. 幾世の鈴 あきない世傳 金と銀 特別巻(下)(2024年2月29日、ハルキ文庫、ISBN 978-4-75844621-1

登場人物[編集]

主人公[編集]

幸(さち)
武庫郡津門村生まれの貧しい学者の娘。兄と父を相次いで亡くし、9歳で五鈴屋に奉公する。
聡明と商才を見込まれて14歳で四代目徳兵衛の後妻となり、その後、望まれて五代目(惣次)、六代目(智蔵)の女房になる。

五鈴屋(いすずや)[編集]

大坂天満呉服商で、当主は代々「徳兵衛」(とくべえ)を名乗る。伊勢出身の初代が古手の行商から始め天満の裏店に暖簾を挙げたのが始まりで、伊勢の五十鈴川から「五鈴屋」と店の名を決めた。二代目が絹も扱う呉服商の店を構えたが、跡を継いだ三代目が息子3人を残して夫婦共に早死する。二代目のご寮さん・富久が孫3人を育て、三代目の長男が四代目を継いだ。

富久(ふく)
「お家(え)さん」と呼ばれる、二代目徳兵衛の妻。三代目夫婦亡き後、その子供である3人の孫を育て、店を守ってきた。
四代目徳兵衛
三代目徳兵衛の長男。名は豊作(ほうさく)[3]
惣次(そうじ)
三代目徳兵衛の二男。商才に富む。
五代目を継ぐ。
智蔵(ともぞう)
三代目徳兵衛の三男。商才は無く読書家。
治兵衛(じへえ)
二代目から勤め「五鈴屋の要石」と呼ばれる番頭。幸に商いの才を見出す。
鉄七(てつしち) / 鉄助(てつすけ)
手代頭。治兵衛にあとを託され、番頭となって鉄助を名乗る。
お竹(おたけ)
一番年長の女衆(おなごし)
お梅(おうめ)
女衆。
賢輔(けんすけ) / 賢吉(けんきち)
丁稚。治兵衛とお染の息子。
五鈴屋の丁稚となって賢吉を名乗る。

津門村(つとむら)[編集]

重辰(しげたつ)
幸の父。私塾・凌雲堂(りょううんどう)の主宰者。
息子・雅由に続いて流行り風邪で亡くなる。
房(ふさ)
幸の母。
雅由(まさよし)
幸の兄。賢く、凌雲堂の跡継ぎとして周囲からも期待されていたが、疝気(せんき)で亡くなる。享年18。
結(ゆい)
幸の妹。
彦太夫(ひこたゆう)
村の豪農。重辰に凌雲堂の建物や田畑を無償で貸している。
有能な雅由を自分の娘の婿にと思っていた。
文次郎(もんじろう)
津門村の綿作農家から綿を買い集める綿買い商人。
彦太夫から頼まれて、9歳の幸を五鈴屋まで送り届ける。

その他[編集]

菊栄(きくえ)
船場の小間物屋・紅屋(べにや)の末娘。
17歳で四代目徳兵衛の嫁になるが離縁になる。
お染(おそめ)
治兵衛の妻。
柳井道善(やない どうぜん)
老齢の町医。富久や治兵衛、桔梗屋孫六を診る。
桔梗屋孫六(ききょうや まごろく)
天満の呉服商の店主。天満組呉服商仲間の世話役を務める。
伏見屋為右衛門(ふしみや ためえもん)
大坂一の呉服商・伏見屋の当主。
五鈴屋の番頭・治兵衛を「五鈴屋の要石」と認めている。
四代目徳兵衛の後妻に幸が相応しいかを評定する呉服商の寄合で、治兵衛の推薦ならばと一番に認める。
仁左衛門(にざえもん)
惣次が羽二重の生産を持ちかけた江州・波村の庄屋
亮介(りょうすけ)
江州・波村の織屋の「中庄(なかのしょう)」の旦那で、2年前に親が亡くなり跡を継いだ。
かつては羽二重も織っていた。

テレビドラマ[編集]

あきない世傳 金と銀
ジャンル 時代劇
原作 高田郁
脚本 山本むつみ
演出 田中健二
船谷純矢
岡野宏信
中野亮平(NHKエンタープライズ
出演者 小芝風花
加藤シゲアキ
渡辺大
松本怜生
いしのようこ
八嶋智人
萬田久子
高島礼子
舘ひろし
ナレーター 森田美由紀
音楽 未知瑠
製作
製作総指揮 山本敏彦(NHKエンタープライズ)
柳川強(NHK
放送
放送チャンネルNHK BSプレミアム4K
NHK BS
放送期間2023年12月8日 − 2024年2月2日
放送時間毎週金曜日19時30分 - 20時13分
放送枠BS時代劇
放送分43分
回数8
公式サイト
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2023年7月19日にBS再編成後初の時代劇として小芝風花・主演、山本むつみ・脚本で制作発表後[2]、同年12月8日から2024年2月2日まで放送された[4]

幸が智蔵(六代目徳兵衛)と夫婦になるまでが描かれた。

キャスト[編集]

五鈴屋(いずずや)[編集]

幸(さち)
演 - 小芝風花(幼少期:永瀬ゆずな
父と兄が急死し、大坂天満の呉服屋「五鈴屋」に奉公に出て女中となった後、三代目徳兵衛の長男(四代目)の後妻となる。
四代目に先立たれた後に五代目のご寮さんとなるが、商売上の揉め事が元で隠居した際に離縁される。
五鈴屋を守り継ぐためと六代目徳兵衛に請われ、ご寮さんとなる。
女中時代からの店の仲間や商売仲間、商売相手の事も考えて商いを行い、江州・波村の庄屋の仁左衛門から「店主の器」と言われる。
徳兵衛(とくべえ)
演 - 渡辺大
三代目徳兵衛の長男で、四代目惣領となり幸を娶るも、本人は商才に乏しい。
その事を自覚しており、自暴自棄な行動が多く、何度も売上を持ち出すために周りからは見放され、ついには暴言が元で長年勤めた店員が店から離れてしまう事態になる。
五鈴屋の商いを惣次に任せ、酒や通いで日々放蕩に明け暮れた後、事故死する。
惣次(そうじ)
演 - 加藤シゲアキ
三代目徳兵衛の二男で商才に長け、「五鈴屋を大阪一の店にする」と意気込む稼ぎ頭。働かない兄や商いをやる気のない末弟と反目する。
幸を認めており、折々に知識を授けて商才の成長を手助けする。
五代目の襲名後は幸と仲良く順調に商いをしていたが、己の目標達成に拘るあまりに自分本位の考えに囚われてしまい、商売拡大の助言をした幸すらも疎むようになり、商い相手を陥れる策まで行ってしまう。この時、相手に「店主の器ではない」と断言される。
最終話では五鈴屋が潰れる寸前に陥ってしまい、隠居して智蔵に店主の座を譲り幸とも離縁する。
智蔵(ともぞう)
演 - 松本怜生
三代目徳兵衛の三男で、子供の頃に五鈴屋に来た幸と気が合い、将来夫婦になることを考える。
戯作を書きたいと公言して商いに身が入らず、惣次に追い出される。
惣次が隠居する際、これまで守ってきた五鈴屋を絶やさぬよう諭され、六代目徳兵衛を継いで幸と夫婦になる。
富久(ふく)
演 - 高島礼子
二代目徳兵衛の妻。孫に商売を譲ってからも店を支える。
幸の才能を高く評価して、己の次代のご寮さんとして五鈴屋の将来を任せており、店が断絶の危機に陥った際は幸を養子にして継がせようとまで考えていた。
幸と智蔵の祝言を見届けたのち亡くなる。
治兵衛
演 - 舘ひろし
二代目から長年勤めた番頭。幸に商いの才を見出す。
卒中風で倒れ、五鈴屋を去ったあとも幸に助言する。
鉄七 → 鉄助
演 - 八嶋智人
手代頭として治兵衛等と共に五鈴屋を支えて来た。治兵衛が店を去った後に番頭となる。
お竹
演 - いしのようこ
一番年長の女衆(おなごし)。
お梅
演 - 内藤理沙[5]
お杉
演 - 大西礼芳[5]
五鈴屋は惣次が継ぐべきだと考えていて、彼が隠居し行方不明になったのち、失踪する。
留七
演 - 辻本祐樹[5]
佐七
演 - 葵揚[5]
伝七
演 - 虎太郎[5]
末七
演 - 北野秀気[5]

その他[編集]

菊栄
演 - 朝倉あき
船場の小間物屋・紅屋の末娘。四代目徳兵衛の嫁になるが離縁になる。
後に、彼女の新商品の話を聞いた幸は、雨傘に五鈴屋の名を入れる事を思いつき、大阪中に名を広めることに成功する。
お勢
演 - 萬田久子
五鈴屋と同じ菅原町の乾物屋主人。
お染
演 - 細川直美
治兵衛の妻。
桔梗屋孫六
演 - 吉見一豊
伏見屋為右衛門
演 - 田中健
柳井道善
演 - 秋野太作
備前屋番頭 宗助
演 - 松尾貴史
お房
演 - 街田しおん
演 - 長澤樹
彦太夫
演 - 板尾創路
亀三
演 - 星田英利
人形浄瑠璃の人形遣い。
仁左衛門
演 - 中原丈雄
幸の発想を元に、惣次が羽二重の生産を持ちかけた江州・波村の庄屋
亮介
演 - 神尾佑
江州・波村の織屋の中庄。

スタッフ[編集]

放送日程[編集]

話数 放送日 サブタイトル 演出
1 2023年12月08日 幸、商いと出会う 田中健二
2 12月15日 それぞれの道
3 12月22日 ご寮さん誕生
4 2024年01月05日 試されるご寮さん 船谷純矢
5 1月12日 二番目の夫
6 1月19日 五鈴屋の大改革 岡野宏信
7 1月26日 夫婦の亀裂 中野亮平
8 2月02日 店主の器

関連商品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ あきない世傳 金と銀 源流編”. 角川春樹事務所. 2023年12月10日閲覧。
  2. ^ a b BS時代劇「あきない世傳(せいでん) 金と銀」制作発表のお知らせ”. NHKオンライン (2023年7月9日). 2023年12月10日閲覧。
  3. ^ 高田郁『あきない世傳 金と銀(三) 奔流篇』ハルキ文庫、2017、13頁。ISBN 978-4-75844068-4。"四代目を継いだ長男の豊作(ほうさく)"。 
  4. ^ あきない世傳 金と銀”. NHK. 2023年12月11日閲覧。
  5. ^ a b c d e f BS時代劇「あきない世傳(せいでん) 金と銀」出演者決定のお知らせ”. NHK (2023年11月17日). 2023年12月11日閲覧。

外部リンク[編集]