魔法少女

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魔法少女(まほうしょうじょ)とは、日本のサブカルチャーにおけるキャラクター類型(ストックキャラクター)の一つ。魔法などの不思議な力[1]を使い、騒動を巻き起こしたり事件を解決したりする。魔女っ子(まじょっこ、魔女っ娘)ともいう。代表的な例として夢野サリー(『魔法使いサリー』)や加賀美あつ子(『ひみつのアッコちゃん』)が挙げられる。

定義

定義の困難さ

魔法少女の確固とした定義の確立はその成り立ちから極めて曖昧であることもあって困難を極めている。実際、既に半世紀近い歴史があるにもかかわらず学者による本格的な学術的検討は、斎藤環の『戦闘美少女の精神分析』で「バトルヒロインとしての魔法少女」としての側面が取り上げられたこと、2000年代後半に東洋大学人間科学総合研究所による女児向けアニメ限定のジェンダー論からのアプローチ[2][3]がある程度で、「魔法少女」に関しての包括的な検討自体が行われていないと言ってもいい状況にある。

しかし、大雑把な傾向をまとめると、狭義の魔法少女(冒頭で例示した2作品に加え、タイトルに「魔法少女」を冠しているもの)は次の三条件を満たすものが呼称される傾向にある。

  1. 少女(成人前の女性)であること。
  2. 超常現象、例えば魔法少女自身が一瞬で大人の姿になるといったことを引き起こす能力を持っていること。
  3. その能力、もしくは引き起こされた超常現象を、作品本編中において「魔法」と呼称していること。
「少女」の傾向

上記でいう「少女」とはその人物の容姿を指しており、実際の年齢や性別は少女とは言えない場合もある。魔法少女が人間以外の長命の種族である場合、マリーベル・フォン・デカッセ(『花の魔法使いマリーベル』)などのように、暦年齢が人間の成人年齢を大きく上回っている例もある。また白姫彼方(ライトノベル『おと×まほ』)などのように、性別は男性で少年が女装(いわゆる男の娘)して魔法少女をしているという場合もある。

「魔法」の傾向

上記でいう「魔法」は、神秘性(その世界観において、通常の理論・認識の外に存在する)や特権性(一般の人間には使えない)を有するものであり、非日常的で不思議な存在として描かれる。このためハイ・ファンタジー作品に登場する職業的魔法使いの少女、例えばリナ=インバース(『スレイヤーズ』)などは「魔法少女」と認めない意見もある。こうした世界観においては、魔法は科学の対象となり習得可能なものとして確立されている。しかしそれは単なる技術であり、もはや不思議なものとは言えない。こうした神秘性や特権性などが損なわれた魔法では、物語上「非日常」としての機能を果たせないのである。

また作中で当該能力が「魔法」と呼称されなくとも慣例的に魔法少女と呼ばれる者もいる。具体的に例を挙げると、猿飛エツ子(『さるとびエッちゃん』)は「忍術」を使う。また西山リミット(『ミラクル少女リミットちゃん』)はサイボーグであり、これにより超人的運動能力をさす「ミラクルパワー[4]」を有する。しかしリミットを例にとれば、サイボーグ化による超人能力は本来SFの分野に属する設定であり、ファンタジーの下位カテゴリーとしての魔法少女設定とは認められないという意見もある。

魔法少女の「曖昧さ」の許容

『魔法使いサリー』に始まる東映魔法少女シリーズにおいては、「不思議な力を持つ少女」イコール魔法少女という扱いであった為、『エッちゃん』『リミットちゃん』両作の主人公も少々の設定の毛色の違いには拘らず、広義の魔法少女として扱われてきたのである[5]

こうした魔法少女作品創成期における「魔法」設定解釈の曖昧さは、後々まで「魔法少女とは何か」という定義を困難にしてきた。ただし、多くの視聴者においても、設定解釈の曖昧さは然程の意味を持つものではないことは、これら作品のヒロインが魔法少女として一般的に認知されている点[6]からも伺える。

魔法少女の分類

魔法少女と呼ばれるキャラクターは多数存在するが、大まかな分類はされている。

  • 出自―先天的な魔法使いであるか、魔法の道具を与えられた一般人であるか。
  • 魔法の力―万能な力であるか、変身魔法に限定されるか。

出自による分類

典型的な類型の一つは、先天的な魔法使いである。『魔法使いサリー』のサリーは魔法の国の王女であるという、ただそれだけの理由で魔法が使える。もう一つの類型は、魔法の道具を与えられた一般人である。『ひみつのアッコちゃん』のあつ子は、魔法のコンパクトを授かることで変身の力を使えるようになった。

尚、魔法少女の出自たる『魔界』及び『魔法界』の定義も事実上、曖昧であり意味がわからないものである点が京極夏彦により指摘されており[7][8]。魔法少女アニメの原点となる『魔法使いサリー』及び『ひみつのアッコちゃん』の原作には、魔法界の描写は存在しない[9]。後の作品では「妖精の世界」や「魔法が使える平行宇宙」といった作品毎の解釈が用いられている。

舞台による分類

その魔法少女が主に活躍する世界観による分類である。ただし、物語の途中で人間界から魔法界に(あるいはその逆に)舞台が変わったり、両方の世界を行き来しつつ物語が進行する例も存在する。

ここでいう「人間界」とは、常識的な現実の社会に近い世界観で、特に魔法の存在が公知されていない社会が形成されている世界を言う。魔法が一般的でない世界の日常に、魔法という非日常が紛れ込むという世界観で、ファンタジーの類型でいうエブリデイ・マジックに相当する。 東映魔法少女シリーズやぴえろ魔法少女シリーズなど、古典的な魔法少女作品の主人公の多くはこの「人間界型魔法少女」に分類される。

一方「魔法界」とは、ファンタジーの類型でいうハイ・ファンタジーに相当する世界観で、常識的な現実の社会とは異なった世界として設定されている。特に「魔法の存在が公知されている社会が形成されている」点が重要で、作品によっては魔法がその世界において体系化され習得可能な技術として確立されている場合もある。「魔法界型魔法少女」は日本の魔法少女作品としては少数派だったが、欧米のファンタジー作品の影響もあり、徐々に増えつつある。アルス(『魔法少女隊アルス』)などがこの「魔法界型魔法少女」である。また、現実の社会に近い世界観でも、『魔女の宅急便』や『魔法遣いに大切なこと』などのように魔法が公知されている社会の場合はこちらに分類できる。架空戦記的世界に魔法設定を組み込んだ『ストライクウィッチーズ』の世界観もこれに近い。

なお、人間界を舞台とする魔法少女作品でも、多くの場合は魔法の由来する場所として魔法界が設定される。つまりこの種の作品では、作品の世界観の中に人間界と魔法界の二つの世界が内包され、互いにパラレルワールドとして共存していることになる。 魔法少女たちは、魔法界から人間界にやってきたり(先天・人間界型魔法少女)、魔法界の住人から魔法を与えられたり(後天・人間界型魔法少女)する。

また、魔法界を舞台とする魔法少女作品の場合でも、作品の世界観の中に人間界と魔法界の二つが内包される作品がある。この場合『魔法騎士レイアース』や『魔法少女隊アルス』のように、主人公が人間界から異世界に何らかの理由でやってきて活躍する物語となる(後天・魔法界型魔法少女)。ファンタジーの類型で「ナルニア型」ともよばれる作品群で、ちょうど『魔法使いサリー』などの「魔法界から人間界に魔法少女がやってきた物語」と裏返しの関係になっており、様々な点で興味深い対照を示す。

ちなみに作品の世界観の中に魔法界しかない、つまり終始魔法界のみで展開する物語の魔法少女も存在する(先天・魔法界型魔法少女)。ハイ・ファンタジー作品に登場する職業的魔法使いの少女の場合がこれであるが、前述の通りこれを「魔法少女」と認めない意見もある。そこで特に神秘性、特権性また神秘的を補強した魔法が与えられる場合もある。例えば『ふしぎ星の☆ふたご姫』のファインとレインの場合、伝説的英雄プリンセス・グレイスから託された「サニールーチェ」という特別なアイテムで、「プロミネンスの力」という特殊な力を使う。これは魔法が公知されているこの作品世界の中でさえ「誰でも持っている」というものではなく、この世界観における(神秘的な存在として真の意味での)魔法といえる。

魔法の力による分類

サリーのような魔法少女は、その力の機能や用途に制限が設定されていない。イメージとしては、呪文を唱えてその後に何か願い事を叫ぶと、次の瞬間に実際にその言葉通りになるというものである。もちろん、本当に魔法で何でもできてしまうとストーリーにならないので、この汎用魔法型の場合でも魔法に何らかの制限が加えられている場合がほとんどである。例えば魔法の使い方を誤ると何らかのペナルティがある、専用の魔法アイテムが必要、使いこなすためには習熟が必要、何らかの対価を必要とするなどである。

制限された力の典型は『ひみつのアッコちゃん』に見られる変身である。ミンキーモモ(『魔法のプリンセスミンキーモモ』)の場合、指定した職業の大人に変身し、その能力を発揮できる。さらに、クリィミーマミ(『魔法の天使クリィミーマミ』)のように芸能人への変身に特化した変身アイドルもある。この種の魔法少女作品には、変身した自分と本当の自分との違いに悩むという主題を持つものがある。

また、セーラームーン(『美少女戦士セーラームーン』)は魔法の力で変身ヒーローのごとく、いわゆる戦闘美少女に変身する。

魔法少女ジャンルの歴史

1960~70年代

日本の魔法少女作品は、横山光輝原作で、東映動画によりアニメ化された『魔法使いサリー』(1966年)がジャンル第一作であるとされている[10]。『サリー』では、人間の世界にやってきた大魔王の娘サリーを取り巻く人間模様と、サリーの魔法による人助けが描かれる。

サリーに続いて東映動画でアニメ化された赤塚不二夫原作の『ひみつのアッコちゃん』(漫画1962年、アニメ1969年)では、鏡の精から魔法のコンパクトを授かった人間の少女・鏡アツ子(後の作品では加賀美あつ子)が登場する。ここに、『サリー』の「異世界からの訪問者」という設定に対し、『アッコ』の「魔法の力を授かった人間の少女」という設定が示され、以後の魔法少女アニメに於ける「先天型魔法少女」「後天型魔法少女」の二大主流ジャンルの原型が確立された。もっとも、同時期に流行した「変身ヒーロー」が人間から超人へ変身する以外に設定上の共通点を持たないように、東映の魔女っ子アニメは「魔女っ子=不思議な力を持つ少女」つまり「魔法少女の類型」を踏襲した少女が活躍するエブリデイ・マジック作品であった事実は後々まで様々な派生作品(戦闘美少女系を含む)を生み出す源になる。

また、『魔法使いサリー』のすぐ後にこちらはアメリカ映画『メリー・ポピンズ』の影響で同じ横山光輝原作(原画)の『コメットさん』(1967年)が実写メディアで製作されている。この時期、児童向けの映像作品はアニメーションと実写の児童向けドラマも同様に展開されており、NETでは1969年に『ひみつのアッコちゃん』と平行して土曜には『魔女シリーズ』として魔法少女アニメの祖となったドラマ『奥さまは魔女』を放送し、同放送枠で海外魔法ドラマ『かわいい魔女ジニー』【第2シリーズ】や松竹製作の『魔女はホットなお年頃』(1970年)と二年にわたって魔法物のドラマを放送した。この枠は『仮面ライダー』にとってかわられるが、その影響を受ける形で『仮面ライダー』の作者の石ノ森章太郎原作の『好き! すき!! 魔女先生』(1971年)において、アニメに20年先駆けて美少女戦士(アンドロ仮面)が登場している。

アニメのジャンルでは『アッコ』の後も東映製作によりシリーズを重ね、当時の少女漫画の影響を受ける形で登場した、1974年の『魔女っ子メグちゃん』の主人公として登場したお転婆でコケティッシュなメグのキャラクターは、『サリー』の優等生的な魔法少女像を払拭し、これ以降の魔法少女物では、やんちゃな主人公が幅を利かせることになる。また、クールなライバルヒロインのノンや、滑稽な調査官チョーサン、闇の女王サターンは、後の魔法少女作品のサブキャラクター像に大きな影響を与えている。

1980年代

1980年代に入ると東映製作の作品は一時中断し、葦プロダクション制作の『魔法のプリンセスミンキーモモ』(1982年)と、スタジオぴえろ制作の『魔法の天使クリィミーマミ』(1983年)から始まるぴえろ魔法少女シリーズが、第二期魔法少女ブームを引き起こす。『モモ』では、夢と魔法の国フェナリナーサのプリンセスである少女モモの人間界での活躍が、『マミ』では、魔法のステッキでアイドルに変身する人間の少女森沢優を取り巻く事件が、それぞれコミカルなタッチで描かれる。この両作品は本来の視聴対象である低年齢の女児のみにとどまらず、十代後半から二十代に至る男性層の間でも人気を博し、「魔法少女」ジャンルのファン対象を大きく広げる事になった。その背景要因として、社会的なアイドルブームがある。

1980年代末から1990年代初めにかけては、過去の人気作品のリメイクが行われた。当時はアニメ冬の時代でリバイバルブームでもあり『ひみつのアッコちゃん』(第2作、1988年)が、第1作を凌ぐほどの人気は得られなかったと評される一方で、マーチャンダイジングが成功し、バンダイによる女児玩具の強化が行われ、続いて『魔法使いサリー』(第2作、1989年)が製作され、その一環で実写の『東映不思議コメディーシリーズ』で石ノ森章太郎原作の『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』(1989年)が製作され、以後、同シリーズで1990年代初頭まで同ジャンルの作品群が製作された[11]

1990年代

武内直子原作の『美少女戦士セーラームーン』(1992年1997年)の成功は、アニメ版『赤ずきんチャチャ』(1994年)、『魔法騎士レイアース』(1994年)、『愛天使伝説ウェディングピーチ』(1995年)、『ナースエンジェルりりかSOS』(1995年)等の作品を生み出し、戦闘美少女(バトルヒロイン)系魔法少女作品は魔法少女の一ジャンルとして認知されるに至った。「魔法少女+戦隊モノ+恋愛」という図式は後の作品にも影響を与えている。

1995年には、OVAシリーズ『天地無用!』のスピンオフ作品『魔法少女プリティサミー』が制作された。本作は視聴対象を明確に女児以外の層に想定して制作され、同種の高年齢視聴者向け魔法少女アニメの先駆けとなった。

1998年から2000年にかけてCLAMP原作で設定やビジュアルが従来の作品の型にはまらない『カードキャプターさくら』が制作された。

2000年以降

1999年には『おジャ魔女どれみ』シリーズ(1999年2002年)が制作される。主人公による人助けという点で『サリー』に代表される古典的魔法少女の流れを、複数の主人公格のキャラクターの登場および魔法を行使するために変身(魔女見習い服へのお着替え)を要するという点で『美少女戦士セーラームーン』に代表される戦闘美少女の流れを、それぞれ継承している。

小学生向けの少女漫画では、安野モヨコが王道的な魔法少女を意識した『シュガシュガルーン』(2003年)を執筆、この形態を扱った少女漫画としては久しぶりの作品となり、2005年にはアニメ化された。なお、『シュガシュガルーン』が連載された「なかよし」には、時を同じくして『東京ミュウミュウ』(2002年2003年)や『マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ』(2003年2004年)等の1990年代の戦闘美少女系魔法少女の流れを受け継いだ作品も多数連載されている。『マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ』は歌と人魚をテーマとして取り入れ、歌を使った戦闘をメインとしている。

2000年代の魔法少女アニメの特筆すべき流れとして、男児向けヒーロー物のような肉弾戦の描写に力を入れた「魔法少女格闘物」を標榜する『プリキュアシリーズ』(2004年〜)が大ヒットし、魔法少女の新たなスタンダードを作り出したことが挙げられる。また、『魔法少女隊アルス』(2004年)、『ふしぎ星の☆ふたご姫』(2005年)などの魔法界型アニメも作られている。

また、ゲーム原作の『オシャレ魔女 ラブandベリー』(ゲーム2004年、アニメ2007年)が大ヒットした。

魔法少女ものの本流ではないが、この時期には魔法少女のフォーマットを利用した男性向けアニメが次々と現れた。毒のある描写を盛り込んだ2001年の『ぷにぷに☆ぽえみぃ』、2002年の『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』をはじめとする邪道魔法少女三部作、軍事・政治・英語卑語などの際どいギャグを盛り込んだヒライユキオの『魔法の海兵隊員ぴくせる☆まりたん』(2005年)や、アダルトゲームの外伝シナリオだったものを大幅に改変し少年漫画的要素を強く出した『魔法少女リリカルなのはシリーズ』(2004年〜)、自動車産業であるスバルのプロモーションのために製作された『放課後のプレアデス』(2011年)、魔法少女をモチーフとしたダーク・ファンタジー魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)、などである。 また、近年においては男性の主人公が何らかの理由により能力を発動する際、魔法少女の力をふるうのにふさわしい少女の体へと性転換させられる作品も登場している。

日本以外

アニメの魔法少女物は吹き替えや字幕付で輸出され、世界各地で放送されているものの、魔女という設定を比較的正確に伝えるもの(他にアメリカで同ジャンルとされているドラマ『かわいい魔女ジニー』も存在するが彼女はジンであり、日本では『ハクション大魔王』が該当する、この点からも日本と異質である)に対して日本の作品は前述の京極夏彦が指摘するとおり、日本で馴染みのない魔女設定を極めて曖昧且つファンタジー寄りに処理した事で独自のジャンルとして形成されている。アメリカのアニメシリーズ『パワーパフガールズ』(1998年)は、日本の魔法少女ジャンル、特に『セーラームーン』に影響を受けた作品であることは製作者クレイグ・マクラッケンが認めている[要出典](ただし、この作品自体は魔法少女作品ではなく、スーパーヒーロー作品として受け止められている)。この作品では、ユートニウム博士の実験から生まれた怪力と超能力を持つ三人の幼稚園児の少女が登場する。

欧米では、『セーラームーン』に代表される美少女戦士系ジャンルが魔法少女物の典型・事実標準であると受け止められており、magical girl (mahō shōjo) を主にこのジャンルを指すのに使うアニメファンも少なくない。

特に北米では、2006年の時点で、東映・葦プロ・ぴえろなどの戦闘要素が皆無ないしメインでは無い魔法少女アニメというものがほとんどまったく公開されておらず、これら本来の魔法少女については存在自体があまり知られていないため、上記のような(日本から見れば)ややずれた理解もやむを得ない。北米向きにローカライズされた『おジャ魔女どれみ』が4Kids TVで放映された例を除けば『魔法のステージファンシーララ』などごくわずかの比較的マイナーな作品が、例外的に深夜に有料テレビで放送されたりDVD発売[12]されたものの、歴史的にも重要な『魔法のプリンセスミンキーモモ』(空モモ・海モモ)さえ正式に紹介されるには至っていないし、上記のDVDも商業的には成功しなかった[13]。厳密に言うと『ミンキーモモ』のうち、OVA『夢の中の輪舞』は子供向けVHSとして吹き替え版が北米でも発売されたようであるが、一般の認知は著しく低い[14]

他方、イタリアなどヨーロッパの一部では、葦プロ・ぴえろなどに代表される非戦闘系の魔法少女物が、多少の改変はあったものの、代表的なものはすべて吹き替え放映されている。そのため、これらの国のアニメファンは本来の魔法少女をよく知っていて作品の愛好者も多く、mahō shōjo ないし majokko という語を日本語とほぼ同じ意味で使う。

魔法少女ジャンルの影響を受けた海外作品としては、イタリアのアニメーション製作会社 Rainbow S.r.l. による『Winx Club』(日本未放映)や、フランスでアニメ化されたイタリアのエリサベッタ・ニョネの漫画『ウィッチ -W.I.T.C.H.-』(日本では飯田晴子が漫画化、アニメはトゥーンディズニーJETIXで放送中)が挙げられる。これらの作品では、魔法の力を授かったティーンエイジャーの少女たちと悪の勢力との戦いが描かれる。

2000年代には、アメリカ合衆国で1962年からアーチー・コミックスにより出版されている、魔法使いと人間のハーフの少女サブリナの生活を描いたアメリカン・コミックスSabrina, the Teenage Witch』シリーズが、メキシコ系アメリカ人の漫画家タニア・デル・リオにより、日本の漫画風のスタイルでリメイクされた。

中国では2008年に『巴拉拉小魔仙』が特撮テレビドラマとして放映され[15]、2011年には続編である『巴拉拉小魔仙2彩虹心石』がテレビアニメとして放送された[16]

参考文献

脚注

  1. ^ 以下、作品ごとの設定は無視し、この力を魔法と呼ぶ。
  2. ^ 島田亜紀子 (2008年). “魔法少女 TV アニメーション番組におけるジェンダー・アイデンティティ構築--1970 年代前半 『ひみつのアッコちゃん』 にみる少女表象” (PDF). 東洋大学人間科学総合研究所. pp. 195--210. 2012年3月25日閲覧。
  3. ^ 島田亜紀子 (2010年). “魔法少女 TV アニメ 『魔法の天使クリィミーマミ』 における少女表象と視聴者分析--昭和 50 年代のフェミニニティの変容” (PDF). 東洋大学人間科学総合研究所. pp. 199--221. 2012年3月25日閲覧。
  4. ^ 本編初期にこれを「超能力」と呼んでおり、前作が超能力アニメ「バビル二世」だったこともあり誤解されがちだが、サイボーグ化でエスパーになったのではない。空を飛んだり透視できるのは、彼女がもつ七つ道具によるもの。
  5. ^ アンドロイドが主人公の『キューティーハニー』も企画段階ではこの東映魔法少女シリーズの作品であったが、企画の変更で少年向けアニメになった経緯がある。
  6. ^ 事実上の魔法少女人気ランキングであるgooランキング 思い出に残る女の子の変身少女キャラクターランキングに『エッちゃん』、『リミットちゃん』の他に魔法少女とは言いがたい『キューティーハニー』、『エコエコアザラク』及び『エスパー魔美』のヒロインもランクインしている。また2010年発売されたコンピレーションCD「キラキラ♡魔女っ娘♡cluv」にいたっては、一般的な魔法少女アニメに混じって『キューティハニー』『エスパー魔美』の他、『うる星やつら』のオープニング曲まで収録されている。
  7. ^ 『妖怪馬鹿』角川書店P162
  8. ^ 『魔法少女まどか☆マギカ』では、この曖昧さを逆手に取り、視聴者および劇中登場人物の「魔法少女」のイメージと実態の乖離を物語に取り入れている。
  9. ^ 『魔法使いサリー』の原作ではサリーは悪魔の国の帝王の娘であり、悪魔の国には魔物、怪物の類が生息している。『ひみつのアッコちゃん』の原作で魔法の鏡を与える為に登場するのはスパイの様な容姿の鏡の国のおじさんであり、彼以外に異世界の住人は登場しない。
  10. ^ キネマ旬報別冊『動画王 vol.02 スーパー魔女っ子大戦』 p25
  11. ^ 『ハイパーホビー』2010年12月号「石ノ森ヒーローの系譜【前編】」徳間書店
  12. ^ Fancy Lala - Complete Collection (DVD 1-6 of 6) - Anime News Network
  13. ^ Bandai Discontinues Collections - Anime News Network
  14. ^ Amazon.com: Magical Princess Gigi Hiroshi Watanabe (II): Video
  15. ^ 巴啦啦小魔仙
  16. ^ 巴拉拉小魔仙彩虹心石

関連項目

外部リンク