新しい資本主義
期間 | 2021年 - |
---|---|
場所 | 日本 |
種別 | 経済政策 |
提唱者岸田文雄 | 内閣総理大臣
新しい資本主義(あたらしいしほんしゅぎ、英語: New Form of Capitalism[1])とは、第101代内閣総理大臣である岸田文雄が掲げる経済政策である[2][3][4]。小泉内閣以降の新自由主義的な経済から脱却し、「成長と分配の好循環」や「コロナ後の新しい社会の開拓」を目指すとしている[2][5]。
概要
新しい資本主義は2021年自民党総裁選挙において当時候補者であった岸田が「新しい資本主義の構築を目指す」として初めて発表した[6]。詳しい内容に関しては、2020年9月11日に2020年自由民主党総裁選挙への出馬に合わせて出版された著書『岸田ビジョン 分断から協調へ』に書かれており、成長戦略として、「科学技術によるイノベーション」「デジタル田園都市国家構想による地方活性化」「カーボンニュートラルの実現」「経済安全保障の確立」の四つを掲げる[7]。一方、主な分配戦略として、「働く人への分配機能の強化」「中間層の拡大と少子化対策」「看護、介護、保育などの現場に働く人の収入増」の三つを掲げている[8]。
提唱者である岸田本人がこれらの意味を演説などにおいて詳しく述べておらず、与野党からもよく分からないとの声もある。ただし、アメリカ合衆国のジョー・バイデン大統領とのオンライン首脳会談では、岸田が新しい資本主義について熱く語った後、バイデン大統領が「素晴らしい、私のしようとしていることと全く同じだ」と発言して賛同している。また、日本経済団体連合会(経団連)会長の十倉雅和も、新しい資本主義は経団連が掲げる「サステナブルな資本主義」と一致していると賛意を示している[9]。
2021年10月15日に新しい資本主義実現本部が設置されたが[10]、新型コロナウイルスの感染再拡大やロシアのウクライナ侵攻、また2022年はこれらに起因した世界経済の変動に端を発する物価高や円安の急速な進行などに迫られて、世界や日本ののっぴきならない情勢下における喫緊の重要な諸課題への対応を優先せざるを得ない状況が続いている。これに対して、岸田文雄首相は、物価高・円安などの経済的困難への解決策であるとともに、成長と分配の好循環を持続的にポンプアップさせる「構造的な賃上げ」を、みずからが掲げる新しい資本主義の実現に向けた最優先事項とする考えを示した[11]。
組織
第1次岸田内閣は2021年10月15日に「新しい資本主義の実現」のため内閣総理大臣を本部長とする新しい資本主義実現本部の設置を閣議決定した。「本部の庶務は、内閣府の助けを得て、内閣官房において処理する」と定められている[10]。本部員には国務大臣の他、民間人である渋沢健や平野未来、芳野友子が起用された[12]。
原丈人の公益資本主義
新しい資本主義の理論的な骨格は、経済政策を巡って岸田文雄首相に助言している原丈人の公益資本主義にある[13]。原丈人は自身の著書『「公益」資本主義 英米型資本主義の終焉』[14]で解説している。会社は株主のものであるとする株主資本主義から、会社は社会全体の利益つまり公益を追求するものに変わるべきであると提唱している。
なお、公益資本主義の推進を掲げて2014年に設立された一般社団法人の公益資本主義推進協議会は、倫理研究所や都築学園グループと密接な関わりを持つとされる。詳しくは公益資本主義の項目を参照。
新しい資本主義担当大臣
代 | 氏名 | 内閣 | 在職期間 | ||
---|---|---|---|---|---|
国務大臣(成長と分配の好循環による新たな資本主義の 構築に向けた施策を総合的に推進するため企画立案 及び行政各部の所管する事務の調整担当) | |||||
1 | 山際大志郎 | 第1次岸田内閣 | 2021年10月4日 - 2021年11月4日 | ||
2 | 第2次岸田内閣 | 2021年11月4日 - 2022年8月10日 | |||
改造内閣 | 2022年8月10日 - 2022年10月24日 | ||||
3 | 後藤茂之 | 2022年10月25日 - 現職 |
脚注
- ^ “Outline of Emergency Proposal Toward the Launch of a "New Form of Capitalism" that Carves Out the Future” (英語). Prime Minister of Japan and His Cabinet. Cabinet Public Affairs Office, Cabinet Secretariat (内閣官房内閣広報室) (2021年11月8日). 2022年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月17日閲覧。
- ^ a b “未来を切り拓く「新しい資本主義」”. 首相官邸ホームページ. 2022年1月27日閲覧。
- ^ “岸田首相「新資本主義で世界リード」 アベノミクスを転換:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2022年1月27日閲覧。
- ^ “Kishida vows focus on COVID-19 response and 'new capitalism'” (英語). The Japan Times (2022年1月1日). 2022年1月27日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “「成長と分配の好循環 "新しい資本主義"問われる実現する力」(時論公論)”. 解説委員室ブログ. 2022年1月27日閲覧。
- ^ “岸田文雄新総裁「新しい資本主義の構築目指す」”. 毎日新聞. 2022年1月27日閲覧。
- ^ “成長戦略”. 首相官邸ホームページ. 2022年1月27日閲覧。
- ^ “分配戦略”. 首相官邸ホームページ. 2022年1月27日閲覧。
- ^ “岸田首相と経団連会長「新しい日本型資本主義」で一致”. SankeiBiz (株式会社産経デジタル). (2021年10月5日). オリジナルの2021年10月5日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b “新しい資本主義実現本部の設置について”. 内閣官房. 2022年1月27日閲覧。
- ^ “岸田首相 新しい資本主義実現へ “構造的な賃上げ最優先で””. NHK NEWS WEB. (2022年10月27日). オリジナルの2022年10月28日時点におけるアーカイブ。 2022年10月28日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “政府「新しい資本主義実現本部」設置決定 税制措置など検討へ”. NHK政治マガジン. 2022年1月27日閲覧。
- ^ 分配の次は財政出動強化、首相に助言の原氏が分析-新しい資本主義 - Bloomberg
- ^ 原丈人『「公益」資本主義 英米型資本主義の終焉』文藝春秋、2017年3月17日。ISBN 4166611046。