原丈人

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原 丈人(はら じょうじ、: George Hara1952年 - )は、欧米、アジア、アフリカ等でグローバルに活動する日本の事業家ベンチャー・キャピタリスト、複数の先端技術ベンチャー企業創業者、中央アメリカ考古学研究家。「公益資本主義」の提唱者として、アメリカや中国をはじめグローバルな政財界に通じ、世界で最も影響力のある日本人の一人。

国連経済社会理事会の特別協議資格をもつ合衆国非政府機関アライアンス・フォーラム財団会長、DEFTA Partners(デフタパートナーズ)グループ会長。財団法人原総合知的通信システム基金創設理事(現評議会会長)。香港理工大学工学部栄誉教授、香港中文大学医学部栄誉教授、香港中文大学経営大学院招聘教授、大阪大学医学部大学院招聘教授、大阪市立大学医学部大学院特別客員教授、大阪公立大学特別客員教授、香港理工科大学国際評議会メンバー。

これまで米国共和党全国委員会ビジネスアドバイザリーカウンシル名誉共同会長、国連政府間機関特命全権大使、国連WAFUNIF代表大使、アフリカ最大の自由貿易共同体COMESAの本部があるザンビア大統領特別顧問、香港政府HKSTP特別顧問、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)グローバルアジェンダカウンシルメンバー、メタカウンシルメンバー、イスラエル商工会議所顧問、AFDPアフリカ首脳経済人会議議長、AFDPイスラム57か国経済人会議議長、AFDP太平洋島嶼国14か国首脳経済人会議議長、日米欧がん撲滅サミット会長、米国ソーク生物学研究所カウンシルメンバーなどを務め、「健康で教育を受けた豊かな中間層を生み出すための政策の助言」を積み重ねてきた。国内でも、内閣府本府参与、財務省参与、経済財政諮問会議専門調査会会長代理、政府税制調査会特別委員、経済産業省(産業構造審議会)、総務大臣ICT懇談会、文部科学省学術審議会などの政府委員を兼任して歴代の首相に助言し、公益資本主義の普及に尽力。

これらの世界的な活動の影響で、2022年に中華人民共和国政府の国家行政学院は、公益資本主義の主張を述べた原の著作「21世紀の国富論」の中国語版を出版。この著作では、広大な中国14億人が、新しい資本主義を活用して、豊かな中間層を継続的に生み出す提案がなされている。近年、原の主張は、米国のみならず、中国にとっても格差問題を本格的に是正する重要な理念として重要視されている[1]

父親は原信太郎[2]、祖父は原正次と黒田善太郎。慶應大学法学部卒業、スタンフォード大学大学院工学修士。

経歴[編集]

幼少期より親しんだ鉄道を追いかけてエルサルバドルに渡り、その遺跡群に魅せられ27歳まで中央アメリカ考古学を志す。研究資金を稼ぐために渡米し、スタンフォード大学経営大学院に所属。1981年に同学内キャンパスで起業し、米国初の光ファイバーディスプレイ装置の開発販売、企業売却に成功した。手に入れた資金を、インターネットプロトコールTCP/IPソフトウエア製品開発を手掛けるウォロンゴング・グループに出資して経営に参加、取締役として事業開拓を積極的に行い世界的企業へと導いた。同時期に弟の原健人を誘ってデータコントロール社を創業し、米国で開発したICT関連技術の日本向けの開発を行う。

さらに、「地球上に健康で教育を受けた豊かな中間層を生み出すこと」を目的とする技術開発事業会社として、1984年にデフタパートナーズを創業した。この目的達成のために技術の活用が必須であると考え、以後ソフトウエア、情報通信や半導体技術分野、バイオテクノロジー、創薬のベンチャー企業への出資と経営を行う。

世界初のISPとなったUUNETなどインターネット創世記時代の創業期にいくつも出資し、インターネット時代の礎を作ることに貢献した。1990年代にはマイクロソフトと覇を競ったボーランド、ピクチャーテル、SCO(サンタクルスオペレーション)、ユニファイ、トレイデックスなどエポックメーキングなベンチャー企業の社外取締役や会長として、それらをグローバル企業に成長させた。また、デフタパートナーズが創業期に出資し、パートナーを兼務していたアクセル・パートナーズが、90年代には全米第2位のVCとなり、シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストの一人となった。

1990年代後半からは、米国のみならず英国、イスラエルへも進出し、オープラス・テクノロジー(2005年インテルと合併)やブロードウェア(2007年シスコと合併)、フォーティネット(2009年ナスダックへ公開)の会長、社外取締役として、ポスト・パソコン時代(PUC)の世界事業展開を切り拓いた。

1985年のデフタパートナーズ創業と同時に、アライアンス・フォーラム財団(現在は、国連経済社会理事会の特別協議資格をもつ合衆国非政府機関)をスタンフォードで創立し、栄養不良改善や金融制度改革や貧困層の自立化のための事業を行ってきた。さらに2012年から、アフリカCOMESA加盟国19か国、太平洋島嶼国14か国、イスラム57か国などの大統領や首脳を招き、民間セクターの経営責任者と「途上国に教育を受け健康で豊かな中間層をつくるために何ができるか」を議論するAFDP途上国首脳・経済人会議を主宰してきた。また中国においては、香港中文大学経営大学院招聘教授、同学医学部栄誉教授、香港理工大学工学部栄誉教授として、中国での公益資本主義の普及に努める。

1991年には、郵政省所管の財団法人原総合知的通信システム基金を父原信太郎の指示で創設した。コンピューターサイエンスとライフサイエンスの共通領域を研究する若手にフェローシップを提供し、その数は500名近くとなる。現在は公益財団法人となり、原健人と二人で経営を行う。

また、考古学を志した時期に熱帯感染症の脅威に晒されたことから、医学にも関心が深い。スタンフォード大学経営大学院工学部大学院在学中から、ノーベル生理学・医学賞を受賞したアーサー・コーンバーグに師事した。80年代後半には、世界最初の遺伝子治療ベンチャーであるバイアジーンや、世界初のアンチセンス創薬ベンチャーのアイシス、世界初のバイオインフォマティックス・ベンチャーのアリス・ファーマスーティカルなどのバイオベンチャーにも創業期から出資し成功へと導いた。全米最先端基礎医学研究を主導するソーク研究所のカウンシルメンバー、大阪大学医学部大学院招聘教授、香港理工科大学国際評議会メンバーなどを歴任し、2021年9月には香港中文大学医学部栄誉教授として招かれ、スウェーデンのカロリンスカ研究所香港大学医学部の共催ファーラムで特別講演を行った。国際的に先端医学と先端ICTの融合領域を切り開く試みを続ける。2023年10月からは、香港理工大学工学部栄誉教授にも就任し、最先端医学と工学の共通領域の融合促進を主導する。

2013年、安倍政権の経済財政諮問会議専門調査会会長代理、内閣府参与の時「天寿を全うする直前まで健康であることを実現することができる世界最初の国を創る」と宣言し、この実現のために、技術イノベーション、制度イノベーション、エコシステムの構築に取り組んできた(米日欧の医学分野のトップが集まるワールド・アライアンス・フォーラム in San Franciscoを主宰)。加えて、2019年からは日米がん撲滅サミットの大会長、2020年7月には公立大学法人大阪アドバイザリーボード、2021年には大阪市立大学医学部大学院特別客員教授に就任した。2023年4月からは、大阪公立大学特別客員教授に就任している。

日本では、内閣府本府参与(2013年~20年)、財務省参与(2005年~9年)、経済財政諮問会議専門調査会会長代理、政府税制調査会特別委員、経済産業省(産業構造審議会)、総務大臣ICT懇談会、文部科学省学術審議会などの政府委員などを務め、中長期に持続的な経済成長を遂げるために、革新的技術を実用化し新しい基幹産業を創出し、英米型の株主資本主義でもなく、中国型の国家資本主義でもない、21世紀の新しい資本主義として「公益資本主義」を提唱し、日本が主導して実践し、雇用と実質所得を増やし、最終的には、税率を下げても歳入が増える仕組みを作り、日本の国民が繁栄する国づくりを目指す。世界の多くの国々が高齢化社会を迎えるにあたって日本が世界に先駆けてその解決策を実行し、世界から必要とされる国となれるように活動を続けている。

人物[編集]

  • 世界中を訪問して、父・原信太郎の鉄道関連コレクションの収集に協力している。
  • 香港中文大学客員教授も務めている[3]

主張[編集]

  • 2007年、自らの著書で新しい資本主義である公益資本主義を提唱した。「利益率」を示す各種経営指標はあくまで「流行」にすぎず、公益資本主義では利益は株主だけでなく従業員、顧客、取引先、地域社会、さらには地球全体に還元されるべきだと主張した。この場合の利益は税引後当期利益である[4][5]
  • 2021年10月に岸田文雄が内閣総理大臣就任後に提唱した方針である新しい資本主義について、2021年11月の国際会議で岸田総理は、公益資本主義が新しい資本主義実現のための両輪の1つであると述べた[6][7]

講演[編集]

  • 2012年1月、日本創造教育研究所の新春経営者セミナーで、ビル・ゲイツが恐れた唯一の日本人として「日本から新たな産業、価値観、資本主義を世界に発信せよ」という講演を行った[8]

受賞[編集]

  • 2003年、アメリカで米国の雇用の大幅な増進とサンフランシスコへの貢献を理由にNational Republican Congressional CommitteeよりNational Leadership Awardを受賞した。さらに共和党Business Advisory Boardの名誉会長に任命された。

出演[編集]

TV[編集]

インターネット動画[編集]

  • 西田昌司×原丈人 公益資本主義対談 VOL.1~3(週刊西田)- 2023年8月1日~15日配信[12][13][14]

著書[編集]

単著[編集]

共著[編集]

翻訳[編集]

  • サラ・ギルバート, アーロン・フリッシュ,ヴァレリー・ボッデン『夢を追いかける起業家たち: ディズニー、ナイキ、マクドナルド、アップル、グーグル、フェイスブック』翻訳 野沢佳織、日本語版監修 原丈人(西村書店)2017年 ISBN 978-4890137640

脚注[編集]

  1. ^ 增补21世纪国富论”. 百度百科. 2024年4月10日閲覧。
  2. ^ ほぼ日刊イトイ新聞 - とんでもない鉄道模型とすごいテレビ電話の話
  3. ^ Hara, George(原丈人)” (英語). CUHK Business School. 香港中文大学. 2023年4月1日閲覧。
  4. ^ 欧米に洗脳された日本の経営者公益資本主義を説く原丈人氏に聞く 2015年2月19日 日経ビジネスONLINE pp.1-2。
  5. ^ 日経ビジネス 2017年7月3日号 編集長インタビュー利益は株主より従業員に』(2017年6月30日 日経ビジネスDIGITAL)。
  6. ^ 分配の次は財政出動強化、首相に助言の原氏が分析-新しい資本主義 - Bloomberg
  7. ^ 姿見えぬ「新しい資本主義」 所得倍増など課題なおざり 2022年4月12日 産経新聞。
  8. ^ 新春経営者セミナー 日本創造教育研究所。
  9. ^ マネー資本主義 最終回 危機を繰り返さないために - NHKスペシャル ホームページ。
  10. ^ 世界に提言 日本が金融危機を救う - BSフジLIVE プライムニュース アーカイブ。
  11. ^ 2017年4月20日(木) 脳がよみがえる!? 再生医療大国・日本の逆襲 - NHKクローズアップ現代+ ホームページ。
  12. ^ 「世界で活躍する実業家、原丈人氏に聞く。“会社は株主のもの”が貧困を拡大させている…デフレ日本に集る外国人に行う施策は」西田昌司×原丈人 公益資本主義対談 VOL.1”. 2023年11月3日閲覧。
  13. ^ 「アメリカに規制され潰された日本経済。日本人に合わない米国式の企業統治から社中分配で富を還元する政策を」西田昌司×原丈人 公益資本主義対談 VOL.2”. 2023年11月3日閲覧。
  14. ^ 【最終回】「欧米型金融経済から脱却し、日本の強みを生かす実体経済と日本のルールで動く経済圏を確立せよ」西田昌司×原丈人 公益資本主義対談 VOL.3”. 2023年11月3日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]