原子力発電所反対デモ

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新宿(東京)での反原発デモ

原子力発電所反対デモ(げんしりょくはつでんしょはんたいデモ)とは、原子力発電所の新設や既存の原子力発電所の存続に反対するデモ活動である。反原発デモ脱原発デモとも言う。

傾向

傾向として、原子力発電所事故が発生した際に盛り上がる例が多い。近年でも、1986年(昭和61年)4月26日旧ソ連(現ウクライナ)で発生したチェルノブイリ原子力発電所事故や、2011年(平成23年)3月11日に発生した[1][2]日本の福島第一原子力発電所事故を引き金にして盛り上がっている。特に福島原発事故以後は、日本をはじめ世界各国で多い所では数十万人単位の参加者が集うようになっている。

日本

東京での反原発ラリー(2011年3月27日)
VOA Herman 東京での反原発デモ(2011年4月16日)

2011年(平成23年)3月11日東北地方太平洋沖地震を主因に福島第一原子力発電所事故が発生すると、地震による原子力事故への危惧が高まり、東京福島県浜通りなど全国各地で、原発の廃止を求めるデモ活動が行われるようになった。

同年3月20日に東京・渋谷で、同月27日には銀座で大規模なデモが行われ、いずれにも約1000人が集まったと報道された[3][4]

3月31日には約100人による東京電力に対する抗議デモが行われたが、行進を停滞させるなど、デモの許可条件や警察官の警告に反する違法な先導をしたことから、極左過激派団体(極左暴力集団)の中核派の活動家3人が逮捕された[5]

4月10日には高円寺で主催者発表で1万5千人、ロイター通信によれば5千人のデモが行われた[6][7]6月11日には新宿で主催者発表で約2万人が参加するなど[8]、「6・11脱原発100万人アクション」としてデモやイベントが全国各地で開かれ、参加者は合わせて朝日新聞によれば7万9千人と報じられた[6]。なお、公安当局によれば6月11日のデモには革マル派中核派などの極左過激派や原水協が後ろ盾にいたという[9]。この時、自由民主党石原伸晃幹事長は「アナーキー(無政府主義的)で代替エネルギーのことを考えていない」と発言した[9]。同日、宮崎駿スタジオジブリのある東小金井でデモを行っており[10][注 1]、スタジオジブリの屋上では同月16日から、「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたい」と書かれた横断幕が掲げられている[11]

9月11日には新宿でデモが行われたが、参加者が機動隊員らの顔を殴ったことや車道で行進していたデモの隊列を歩道に広げたとして、公務執行妨害東京都公安条例違反の疑いで12人が逮捕されている[12](この日のデモ参加者は警視庁公安部発表では2200人[13])。

同月19日には東京・明治公園で、ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎らが呼びかけて主催者発表によれば6万人規模のデモが行われた[6][14]

公安調査庁は、2011年平成23年)の動向として、中核派革マル派などの極左過激派(極左暴力集団)が、反原発運動の高まりを好機と見て反原発を訴えながら活動を活発化させる一方で自派の機関紙やビラを配布するなどの宣伝活動に取り組み勢力拡大を図っているとした。同時に一部の右翼団体が「祖国を荒廃させるリスクがある原発依存体質からの脱却」を主張し、7月から11月にかけて「右から考える脱原発集会&デモ」と称して集会・デモ行進を実施したことも取り上げた[15]

反原発抗議デモに対するデモ

一部の保守・右派系団体は、反原発を唱える団体には革マル派中核派原水協などの「反日左翼団体」「極左暴力集団」や在日韓国・朝鮮人などの「反日外国人」の参加や関与があると主張しており[16]、電力不足に陥ることから、原発に替わるエネルギーが確保できるまでは原発の再稼動による電力確保が必要と主張してデモ活動を行った[15][16]福島第一原子力発電所事故の影響で社会問題化した電力不足については「在日朝鮮人・韓国人の基幹産業であるパチンコ業界が電力を浪費している」などとして、パチンコ全廃を訴えた[15]

経産省前テントひろば

原子力発電所の廃止を日本政府に求めることを目的として、2011年(平成23年)9月11日東京都千代田区霞が関経済産業省庁舎敷地内の一角にテントが設営された。以降は24時間体制での泊り込みや議論、交流、行動する場となっている。2012年(平成24年)1月24日には枝野幸男大臣より退去命令が出された[17]

台湾

2011年3月20日に日本の福島第一原発で放射能漏れが起こった為に中華民国(台湾)臨時首都の台北市で四基目になる新規の原子力発電所の増設に反対及び現存している原発の総点検を求めるデモが行われた。デモ参加者は主催者発表では約5000人で警察発表では約2000人で参加者には元行政院長や野党・民進党の政治家も参加していた[18]

ドイツ

ドイツで関心を持っているということが強調され、2011年3月26日から3月27日にかけてはベルリンハンブルクミュンヘンケルンなどの大都市で反原発デモが開催され、約25万人が集まったと報道されている[19]

フランス

発電量の多くを原子力発電に頼っているフランスでも、原子力発電所に反対するデモが行われるようになってきているものの、廃止することによるダメージは相当大きいために難しいと想定されている[20]

注釈

  1. ^ 表紙は「NO ! 原発」と書いたプラカードを胸に下げて歩く宮崎駿で、「6月11日、宮崎駿監督は東小金井で小さなデモをした」と書かれている。またこの号で宮崎駿は、原発をなくすことに賛成と述べており、ジブリとしては原発に反対であることなども語られている。

出典

  1. ^ “原発事故1年 産・読「『脱』で年3兆円の損」”. 産経新聞. (2012年3月19日). http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120319/plc12031907350004-n1.htm 2012年3月21日閲覧。 
  2. ^ 原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書” (PDF). 経済産業省 (2011年6月). 2012年3月21日閲覧。
  3. ^ “渋谷でデモ「原発は即刻停止せよ」…中国メディアが注目”. サーチナ. (2011年3月22日). http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0322&f=national_0322_014.shtml 2012年3月21日閲覧。 
  4. ^ “反原発デモ:東京で行われる 市民ら1000人が参加”. 毎日新聞. (2011年3月27日). http://mainichi.jp/select/today/news/20110328k0000m040029000c.html 2011年3月27日閲覧。 [リンク切れ]
  5. ^ “東電へのデモで中核派3人を逮捕 警視庁”. 産経新聞. (2011年3月31日). http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110331/dst11033118370053-n1.htm 2011年12月16日閲覧。 
  6. ^ a b c “6・11脱原発デモ、48%が初参加 ネット・口コミ7割”. 朝日新聞. (2011年10月19日). http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201110190199.html 2012年4月30日閲覧。 
  7. ^ ロイター通信 2011年(平成23年)4月11日
  8. ^ “震災3カ月、各地で脱原発デモ 福島・新宿・フランス…”. 朝日新聞. (2011年6月11日). http://www.asahi.com/national/update/0611/TKY201106110405.html 2012-04-30日閲覧。 
  9. ^ a b 毎日新聞 2011年(平成23年)6月19日
  10. ^ 『熱風』第8号、スタジオジブリ、2011年。 
  11. ^ ジブリ屋上に幕「原発抜きで映画を」”. ビジネス情報誌オルタナ (2011年6月17日). 2012年4月30日閲覧。
  12. ^ “原発デモで12人逮捕、機動隊員暴行などで”. 読売新聞. (2011年9月12日). http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110912-OYT1T00004.htm 2011年9月14日閲覧。 
  13. ^ 2011年(平成23年)9月12日 産経新聞
  14. ^ “大江健三郎さんら脱原発訴え 都心で6万人参加デモ”. 朝日新聞. (2011年9月19日). http://www.asahi.com/national/update/0919/TKY201109190278.html 2012-04-30日閲覧。 
  15. ^ a b c 「内外情勢の回顧と展望」(平成24年版)” (PDF). 公安調査庁 (2012年1月). 2012年3月21日閲覧。
  16. ^ a b やまと新聞 平成23年(2011年)9月12日
  17. ^ 脱原発テント村”退去期限迫る! 経産省前からニコ生放送中”. ガジェット通信 (2012年1月27日). 2012年3月21日閲覧。
  18. ^ “「台北で反核デモ、第4原発の建設に反対」”. 台湾通信【Taiwan News Web】. (2011年3月21日). http://taitsu-news.com/front/bin/ptdetail.phtml?Part=fkn11032101&Category=306583 2012年3月21日閲覧。 
  19. ^ “ドイツ各地で反原発デモ 廃炉求め25万人”. 日本経済新聞. (2011年3月27日). http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE0E4E2E1EB8DE0E4E2E1E0E2E3E39494EAE2E2E2;at=ALL 2011年3月27日閲覧。 [リンク切れ]
  20. ^ “[FT]フランスでも揺らぐ原発への信頼”. 日本経済新聞. (2011年3月25日). http://www.nikkei.com/biz/world/article/g=96958A9C93819584E0E7E2E2E38DE0E7E2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E7E2E0E0E2E3E2E6E1E0E2 2011年3月27日閲覧。 [リンク切れ]

関連項目

外部リンク