ドロップキック
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ドロップキック (Dropkick) はプロレス技の一種。蹴り技および飛び技に分類される。
掛け方
対戦相手目掛けてジャンプし両足を揃えて足裏で蹴る。
- 技を出すタイミングの例
- 立っている相手に対し、その場で飛び上がって蹴りつける。
- 立っている相手に向かって走り、勢いをつけて蹴りつける。
- 走ってくる相手に対し、カウンターの形で当てる。
- コーナートップから飛びかかってくる相手を迎撃する。
- コーナートップに登ろうとしている相手を蹴り落とす。
- エプロンサイドに立った相手をロープ越しに蹴る。
種類
- 正面飛び式
- 仰向けに飛び上がり、ヒット後はそのまま後ろ受け身をとる。ドロップキックの原型といえる形であり、吉村道明がこのタイプを使用していて[1]、力道山の時代はこれが主流であった。
- スクリュー式
- 正面飛び式を改良したもので、捻り式とも言う。両足で相手を蹴り付けた後、空中でうつ伏せになるように体勢を変え、前受け身をとる。着地から素早く立ち上がり連発で放つことが可能。現在はこの形が主流になっている。
- 一回転式
- 相手にキックを当てた後、後方に一回転して前受け身を取る。跳躍力と身軽さをアピールするのに絶好の技。旋回式とも呼ばれる、ダグ・ファーナスがバク宙するような縦回転式を、三沢光晴が横回転式を得意としていた[2]。
- 低空式
- 立っている相手の下半身や、四つんばいになっている相手の顔面を狙うドロップキック。元祖は渕正信だが(横飛び式)[2]、この技を有名にしたのは武藤敬司である(正面飛び式)[2]。彼の得意とする足殺しや、そこからの足4の字固め、シャイニング・ウィザードに持っていくまでのつなぎ技となっている。
- 串刺し式
- コーナーにもたれかかっている相手に走って勢いをつけて放つ。
- 32文人間ロケット砲
- ジャイアント馬場の繰り出すスクリュー式のドロップキック。全盛期でも一年に一度くらいしか披露しなかったが、1968年6月27日に行われたインターナショナル・ヘビー級選手権ボボ・ブラジル戦では三連発で見舞い、フォール勝ちでタイトルを奪回した(一つの試合で複数回放ったのはこの時のみ)。名称は馬場のカウンターキックを16文キックと呼ぶところから来ている。また、ジャイアント馬場は全日本プロレス中継の解説時、ドロップキックという言葉は使わず「飛び蹴り」と表現していた。馬場は体重があるため受け身が痛く、客受けはするがあまり出さなかったようである。
- カンガルーキック
- 背後から羽交い絞めを繰り出してきた相手などに対し、体を前転させながらジャンプし、両足を揃えて蹴る変型の正面飛びドロップキック。派生技にチャパリータASARIのコーナーに振った相手に対しロンダートで近づいた後、カンガルーキックを見舞うロンダート・カンガルーキックがある。また、アントニオ猪木がアンドレ・ザ・ジャイアントにサーフボードストレッチで捕えられた際、この技で脱出する場面が度々見られた。
- コーナートップの相手へのドロップキック
- オカダ・カズチカのオリジナル技。打ち上げ式ドロップキックや雪崩式ドロップキックなどと呼ばれるが、正式名称はない。コーナートップに座らせた(登った)相手に対してその場跳びでドロップキックを打ち、場外へ転落させる。身体能力の高いオカダならではの技で、助走を付けずにその場で自分の身長以上の高さを蹴ることができる。
- ジョン・ウー
- 正面飛び式低空ドロップキック。SUWAの得意技。技名の由来は、独特の演出方法で有名になったアクション映画監督ジョン・ウーの名前から[1]。SUWA以外にも神田裕之やオカダ・カズチカも使用する。
ミサイルキック
コーナートップからのドロップキックはミサイルキック(英語ではMissile dropkick)と呼ばれる。
1948年にアントニオ・ロッカが開発して披露しているが、日本では国際プロレスに来日したエドワード・カーペンティアが初公開(週刊プロレスビデオ増刊号のレトロ編1に収録されている)、さらに1975年に全日本プロレスに来日したリッキー・ギブソン(ロックンロール・エクスプレスのロバート・ギブソンの実兄)が公開し、話題となった[3]。テネシー地区で彼のライバルだったココ・B・ウェアも得意としている。日本ではこの技をギブスンに受けたジャンボ鶴田が[2]ウルトラCドロップキック、ジャンボ・ミサイルキックの名称で若手時代の切り札にしていた。ダイナマイト・キッドやジョニー・スミスは着地した後にヘッド・スプリングの要領ですっと立ち上がるスタイルで人気だった。高野拳磁は2メートルの巨体からこの技を繰り出し、「人間バズーカ」の異名をとった。また、森嶋猛のものは「スカッド・ミサイル」と呼ばれ、この技を喰らった丸藤正道が、その威力の凄まじさから実在のミサイル兵器をイメージして命名した[2]。また、高田延彦も得意技としてよく使用していた[2]
種類
- スワンダイブ式
- トップロープの反動を利用してロープの上に飛び上がった後、相手めがけて放つドロップキック。大谷晋二郎が使い手として知られる[2]。
- 急降下式
- コーナーポストから膝などの下半身を狙って蹴る低空ミサイルキック。武藤敬司の得意技。武藤はセカンドロープから放つ場合もある。
- 長滞空式
- 相手にヒットするまでの滞空時間が長いミサイルキック。吉野正人、中嶋勝彦が得意としている[2]。
派生技
- ライダーキック
- 『仮面ライダー』のライダーキックから着想された、片足でのミサイルキック。DDTプロレスリングや格闘探偵団バトラーツ、リアルジャパンプロレスなどにレギュラー参戦している、仮面シューター・スーパーライダー(修斗ウェルター級初代王者・渡部優一)が得意技にしていた。ザ・グレート・サスケはこの技をリング外に向けて放っていたが、受け身に失敗して負傷して以来、封印している。他にもアキバプロレスにて「仮面ライダーの主役オーディションを七回受けた」と語った美月凛音など、何人かの使い手がいる。
- 福岡晶が使用していた同名の技は、相手の後頭部へ放つ前方一回宙返り式ミサイルキックである。紫雷イオが福岡から直接指導を受けて、この技を受け継いでいる。
- コーナー・トゥー・コーナー・ドロップキック
- 相手をコーナーに宙づり状態にして固定、自分は反対側のコーナーにたち、主に相手の頭部を狙って放つミサイルキック。元祖はロブ・ヴァン・ダムの「ヴァン・ターミネーター」でCIMAは「トカレフ」の名称で使用。非レスラーであるシェイン・マクマホンも使用している。丸藤正道は「fromコーナーtoコーナー」の名称でスワンダイブ式で使用している[2] 。
名手
- 1930年代に活躍したアメリカのレスラー、ジョー・サボルディが元祖である。
- 日本では遠藤幸吉、吉村道明が名手として名をあげ、ジュニア時代の藤波辰爾も連発式で繰り出していた[1]。木戸修も、かつては名手として評価されていた一人である。
- 三沢光晴は一回転式ドロップキックをヘビー級で本格的に使った第一人者である。現在では田口隆祐がこだわりを持って使っていることで知られ、この技のみで獣神サンダー・ライガーを秒殺したことがある。またオカダ・カズチカも高い打点で繰り出す。チェンジ・オブ・ペースの一つとして用いられる。
- 女子では豊田真奈美が正面飛び式を得意としており、相手が起き上がったところで間髪入れずに打ち込んで2度3度とぶっとばし、2ndコーナー(ときにはトップコーナー)からのミサイルキックへと繋ぐムーブメントをみせていた。また相手に組み付かれ、上に投げられた反動を利用して至近距離からの一撃も披露している。ともにアイスリボン所属で豊田よりお墨付きを受けている藤本つかさとつくしのタッグは「ドロップキッカーズ」と呼ばれている[4]。
- 現役の外国人選手ではAJスタイルズやハードコア・ホーリー、マーク・ジンドラック、WWEのトップとして活躍するエッジ、ランディ・オートンなどが使い手。
エピソード
- Mr.Childrenの桜井和寿が、「everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-」という楽曲を発表している。歌詞にはドロップキックのほか、水平チョップも登場する。
- プロレス以外でも、K-1ルールでは上山龍紀、河野真幸らが、総合格闘技でもミノワマンがドロップキックを使用した(反則ではない)。
- 宮迫博之(雨上がり決死隊)、ペナルティ・ヒデ、木梨憲武(とんねるず)など、お笑いのツッコミにドロップキックを用いる芸人もいる。
脚注
参考文献
- 『週刊プロレス』2015年4月1日号(通刊1784号)pp63 - 70掲載「21世紀の技解説ワイド版 ドロップキック」
- 主な使い手、フォームの種類などの確認に使用。