スペシャルティカー
スペシャルティカー (Specialty car) とは自動車のカテゴリの一つ。実用型大衆車のシャシとコンポーネンツを基に、スポーツカーにも通じるスタイリッシュなクーペのボディを架装したもので、比較的低廉な価格で、スポーツカーやGTカーの雰囲気が味わえるのが特徴である。自動車メーカーにとっては、開発や生産にかかるコストを抑えられる割に利益率を高く設定でき、旨味のある商品となる。
スペシャリティカー、スポーティーカー、デートカーともいう。
概要
「スペシャルティカー」を初めて世界に周知させたのは、1964年に発売されたフォード・マスタングである。同社の(en)ファルコンのシャシの上に(スポーツカー風の)クーペのボディを乗せた車で、大ヒットを記録した。
日本では、マスタングの成功に触発されて1970年に発売されたトヨタ・セリカが、初めて大々的に売れたスペシャルティカーである。セリカは主にE20型カローラのコンポーネンツを一部流用して作られたが、シャシは既存の車種(プラットフォーム)をベースとしておらず、その数か月後に、セリカと同じシャシでノッチバックセダンボディのカリーナが登場している。このシャシは、後のE30型/E50型カローラシリーズとも共通点が多い。
日本ではその後、排ガス規制の沈滞ムードを打ち破り、マツダ・コスモAPが広い年齢層に支持され、爆発的なヒットを記録。次いで1970年代末のS110型系シルビアと、1980年代の2代目ホンダ・プレリュードが2大デートカーとして君臨した。
その後、バブル期に目立ってセールスをあげた車種は、3代目プレリュードとS13型系シルビア程度となり、この市場はさらに実態の不明瞭なハイソカーというものにシェアを奪われていく。
バブル崩壊後は1990年代のRV(日本での「RV」の意味は完全な誤用で、ここでは現在でいうところのSUVやミニバンなどを指す)ブームから、ステーションワゴンやSUV(四輪駆動車)、2000年代以降はミニバン、コンパクトカー、軽自動車(特に軽トールワゴン)、ハイブリッドカーなどが、入れ替わり立ち代わり一般大衆の人気の中心となって推移し、一連の4ドアノッチバックセダンや2ボックス型ハッチバックよりも更に実用性・機能性・合理性に乏しい2ドアノッチバック、および3ドアハッチバックのスペシャルティー市場は完全に壊滅した。
現況
2ドアクーペ、および3ドアクーペの需要の半数以上は北アメリカ(以下北米)であり、各社とも北米市場を主眼に開発しているものが多い。それゆえ、モデルチェンジごとに大排気量化し、より大型の車体が採用される傾向が強くなる。大型化に伴う上級移行で、空いたポジションに新たな小型車が投入されることもあるが、大部分が大衆車、あるいはバジェットカーをベースとしたセクレタリーカーで、多くは、デザイン、動力性能共に日本市場での評価は決して高くない。
日本においてこの種の車種が完全消滅したのは、背が高くてスペース効率や日常での使い勝手などに優れる(座席定員やドア数も多い)車種が人気の主流となり、一般的なステーションワゴンや4ドアのノッチバックセダン、2ボックス型ハッチバックなどと基本性能がほぼ変わらない独特の雰囲気やキャラクターだけを愉しむ2ドアのノッチバッククーペ、および3ドアのハッチバッククーペが多くの大衆に支持されなくなったこと、北米向けの車が日本の道路事情や日本人の嗜好にそぐわなくなったこと、仮に日本向けに改善したとしても、元々需要の少ない車両を販売するため必然的に高価格になり、さらに需要が減るなどといった悪循環に陥ったことなどによる。
日本国内で発売されたスペシャルティカー一覧
☆は軽自動車。
- リーザ☆
関連項目
参考リンク
- 特集 スペシャリティカーの魅力を考えるJAMA 日本自動車工業会