上関原子力発電所

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上関原子力発電所(かみのせきげんしりょくはつでんしょ)は、中国電力が、瀬戸内海に面する山口県熊毛郡上関町大字長島に建設計画中の原子力発電所である。長島西端の田ノ浦の山林を切り開いて14万平方メートルの海面を埋め立て、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)2基の建設が計画されている。稼働後に発電される電力は、50万ボルト送電線で同県周南市まで引かれ、既存の高圧線を経て主に広島・関西方面に供給されるものと見られている。

海を隔てた対岸に位置する祝島(上関町)の島民九割以上が建設に反対していることをはじめ、周辺海域に小型クジラのスナメリや海鳥カンムリウミスズメなど複数の貴重な生物が生息することや、付近に活断層が存在する可能性があることなどから、計画が浮上してから着工許可を国に上程するまで複数回の延期を繰り返している。現在の状況については現状の項も参照。

目次

[編集] 設備

[編集] 1号機

  • 原子炉形式:改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)
  • 運転開始: 平成27年度(予定)
  • 定格出力:137.3万キロワット(予定)

[編集] 2号機

  • 原子炉形式:改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)
  • 運転開始: 平成32年度(予定)
  • 定格出力:137.3万キロワット(予定)

[編集] 推進運動と反対運動

原発推進を町政運営の悲願とする上関町執行部や、上関町商工会が中心になって原電(原発)誘致運動が進められている[1]。一方で、対岸の祝島の住民を中心に反対運動が根強い。

推進派は、過疎が進む現状を鑑みて、原子力発電所立地により交付される電源三法交付金固定資産税等により安定的な収入を得ると共に、関係者の定住により人口の減少に一定の歯止めがかかり産業が活性化されることを期待しているとされる[2]。実際、上関町は上関原発が建設着手・稼働にこぎ着けられれば町財政が安定し、自立した町政運営が可能との判断もあり[誰?]柳井市など周辺市町との合併協議会から離脱した。

一方、反対派は、原子力発電所の安全性や自然環境破壊[3]、農水産物の放射能汚染などへの懸念や、さらには建設計画の経緯への疑念[4]等も相まって、激しい反対運動を繰り広げている。特に祝島は、原発から見える唯一の集落で、一箇所に集中している島の集落のほぼ真正面(直線距離で約3.5km)に原発予定地が位置していることもあって、生活環境に与える悪影響が甚大であるとして反対の声が大きい。

2005年から2009年にかけて、中国電力は建設予定地での詳細調査を行っているが、祝島の漁業者を中心に調査の実力阻止が試みられるなど、対立は激しさを増している状況にある。

なお、上関原子力発電所計画を巡る一連の状況については、計画浮上から2001年までの朝日新聞山口支局の記事をまとめた単行本『国策の行方─上関原発計画の20年』(南方新社、2001年)や、現地の反対運動を撮り続けてきた写真家・那須圭子の写真集『中電さん、さようなら─山口県祝島 原発とたたかう島人の記録』(創史社、2007年)に詳しい。また、ローカル紙であり上関原発計画については反対の立場をとっていると見られる長周新聞にも多く掲載される。

[編集] 選挙

現在、上関町全域で見ると、選挙時における推進派候補と反対派候補の得票率はおおむね6:4で固定化されていると言われる[5]。このため上関町長選挙では原子力発電所誘致が表面化して以来、片山秀行加納簾香柏原重海と3代連続して推進派候補が当選し、上関町議会議員選挙でも推進派が反対派を上回る議席を得ている。しかし、2000年12月に朝日新聞が行った世論調査では、上関町民300人のうち、原発をつくることに賛成と回答した人と反対と回答した人の割合は42%:58%と逆転しており[6]、原発自体は反対だが選挙では推進派に投票している人も多いと思われている。

なお、原発計画が表面に浮上して以降の町長選挙では、中国電力の社員を含む100名以上が不正転入を行ったとして書類送検されたほか、推進派候補の後援会長で当時現職の町議が現金を渡して票のとりまとめを依頼した買収事件が発覚、10名以上の逮捕者が出たため当選した推進派の町長が辞任するなどの事態も起こっている[7]

一方で、上関町に比べ交付金などの恩恵が少ない周辺の市町では、労働組合や新聞社のアンケート結果などによると上関原発計画に反対の声が優勢と見られており[8]、2003年(平成15年)の山口県議会議員選挙(熊毛郡区)では反対派の前田布施町議会議員小中進が当選し、熊毛郡初の原発反対派県議として活動した[9]。しかし、上関町以外の周辺市町で上関原発計画の賛否を明言している自治体はない。

[編集] 神社地売却・入会権訴訟問題

建設予定地の一部が四代八幡宮の所有する山林にかかっていたが、当時の四代八幡宮宮司は神社地を原発用地に提供することに反対であったため、2003年には原発推進派の氏子が四代八幡宮宮司の解任を要求する騒動に発展した。結果的に当時の宮司は神社本庁により解任され、新しく任命された宮司が用地の売却を認めたため、宮司の任免権を持つ神社本庁と前宮司及び反対派の間で対立が続いている[10]

2004年11月には、氏子4人がこの土地の入会権の存在を主張して売却を無効とするによる訴訟を起こしたが、2007年12月に山口地裁岩国支部は、入会権の確認請求は権利者全員が共同してのみ提起しうるとして訴えを却下した。原告は控訴し、2009年6月に広島高裁は一審判決の一部を取り消して山口地裁に差し戻す判決を下した[11]

[編集] ステークホルダー以外の動き

[編集] 現状

2008年10月16日、自然保護団体「長島の自然を守る会」など複数の団体が、原発予定地の埋め立て許可を出さないよう求めた署名計約8万筆を山口県知事に提出し、10月20日には山口地方裁判所に対し漁業者74人が県に埋め立て免許を出さないよう求める提訴を行ったが、その直後の10月22日、山口県の二井関成知事が中国電力に対して用地を造成するための公有水面埋立免許を交付し、建設に向けて動き出した。計画が環境保全に十分に配慮しているとの判断によるものだが、同時に中国電力に対しては地元住民などから提出された意見書が1457通を数えたことにも留意すること、天然記念物であるカンムリウミスズメの調査を継続すること、地震に備えて活断層の調査を行うことなどを要求し、知事自身も「決して喜んで交付したわけではない」と述べるなど、複雑な心境を見せた。

2008年12月には、スナメリやカンムリウミスズメ、希少貝類のナガシマツボなど生物6種を原告に加えたいわゆる自然の権利訴訟が起こされ、山口県知事を相手に埋め立て取消を求める裁判が係争中のほか、前述の神社地の入会権訴訟も係争中である。

2009年4月、山口県から保安林作業の許可を受けた中国電力は、原子炉設置許可申請に先駆けて敷地造成工事に着手し、山林開拓や海面埋め立てを行うための排水路の整備や森林伐採を進めている。これに対し、原発に反対する「上関原発を建てさせない祝島島民の会」など5団体は、上関原発の建設中止を求める全国署名[15]を呼びかけ、反対の動きを強めている。

2009年7月現在、周辺の断層の追加調査や、カンムリウミスズメの繁殖の有無を巡る論議、予定地内にある田ノ浦遺跡の発掘調査などが続けられており、中国電力による国への原子炉設置許可申請が遅れているため、予定されている1号機の平成22年度内の着工は厳しいと見られている。


[編集] 脚注

  1. ^ 推進派は原子力発電所のことを「原電」と呼称しているが、日本で一般的に「原電」といえば茨城県福井県に原子力発電所を置く卸電気事業者の日本原子力発電を指す。
  2. ^ 第1次〜第3次上関町総合計画に原子力発電所誘致に関する記述が多数盛り込まれている。
  3. ^ 周辺海域にはスナメリが生息し、出産、子育てのフィールドとして機能しているとの報告がある(「スナメリの海」原発計画に波紋 - 中国新聞)。
  4. ^ 元々豊浦郡豊北町(現・下関市)で計画されていた豊北原子力発電所建設計画が地元の反対で事実上頓挫したのちに上関町が誘致を表明したという経緯がある[要出典]
  5. ^ 原発推進派過半数守る 山口・上関町議補選 2人当選逆風吹かず - 西日本新聞2003年7月14日付
  6. ^ 上関町民300人を含む山口県内の有権者1600人対象の世論調査 - 朝日新聞2000年12月20日付
  7. ^ <公選法違反>山口・上関町長が辞職へ 後援会長ら有罪で - 毎日新聞2003年8月18日付
  8. ^ 上関原発計画に関する近隣自治体の住民アンケート結果(祝島ホームページ内)
  9. ^ 2007年の選挙では定数減もあり小中は落選
  10. ^ 実質的に解任された宮司は、地位確認係争中の2007年3月に急逝した。
  11. ^ 上関原発の神社地入会権訴訟、一審に差し戻し 広島高裁 - 朝日新聞2009年6月25日付
  12. ^ 上関原子力発電所に係る環境影響評価についての要望書
  13. ^ 上関原子力発電所建設計画に係る希少鳥類保護に関する要望書
  14. ^ ミツバチの羽音と地球の回転 オフィシャルサイト
  15. ^ 上関町の「原発建設計画中止!」を求める署名用紙(上関原発を建てさせない祝島島民の会 ホームページ内)

[編集] 外部リンク