もんじゅ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

高速増殖炉「もんじゅ」
高速増殖炉「もんじゅ」

もんじゅは、福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構原子力発電所高速増殖炉)である。敦賀半島北端部西岸に位置する。


目次

[編集] 名称

もんじゅは敦賀市(緑色の部分)北西部の敦賀半島に位置する
もんじゅは敦賀市(緑色の部分)北西部の敦賀半島に位置する

「もんじゅ」の名は仏教文殊菩薩に由来し、同じ若狭湾に面する天橋立南側にある天橋山智恩寺本尊から来ているといわれる。

所在地:福井県敦賀市白木2-1

[編集] 概要

もんじゅは日本初の高速増殖炉の原型炉である(高速増殖炉についてはこちらを参照)。福井選出の自民党議員である熊谷太三郎が経営する熊谷組が建設を担当した。

もんじゅでは1995年温度計の設計ミスから温度計のさやが折れ、そこからナトリウムが漏れて火災が発生した。

事故原因の究明、安全性総点検を経て、安全性を一層向上させるための設備改造に対する国の安全審査が2002年末に終了した。また福井県の全自治体での説明会開催などの地道な地域理解活動が行われており、もんじゅは2008年の運転再開を目指して現在改造工事中である。この間、動燃は国による二度の組織再編を受け、核燃料サイクル開発機構(サイクル機構)を経て独立行政法人 日本原子力研究開発機構(原子力機構)となっている。また最近では、放射性物質が陸路を使い東北から都心を通り、輸送された。

[編集] 仕様

[編集] 反原発訴訟

[編集] 最高裁判決

もんじゅの原子炉設置許可について周辺住民32人が国(経済産業相)に許可処分の無効確認を求めた行政訴訟(1985年提訴)が争われてきたが、2005年5月30日に最高裁は「国の安全審査に見過ごせない過誤や欠落があったとは言えず、設置許可は違法ではない」との判決を下し、国の勝訴が確定した。

一方、もんじゅの建設・運転の差止を求めた民事訴訟も争われてきたが、2003年に原告自らが訴訟を取り下げた。

[編集] 反対派の主張

[編集] 主張の概要

もんじゅは、高速増殖炉の原型炉であるが、冷却材に通常の原子力発電所で使われる水の代わりに金属ナトリウムを使い、発電タービンはやはり水蒸気作動となるため、2つの熱伝達部分をもっている。炉心の金属ナトリウムからタービン系統の水部分へは薄い蒸気発生器の壁を通じて熱伝達を行う。蒸気発生器の壁は薄いため、ピンホールが発生する可能性を完全には否定できないが、このために爆発するリスクがある。また、これら金属ナトリウムは融点は低いがそれ以下の室温になると固形化するため、ナトリウム管にはニクロム線を巻き付けることで保温している。これらは複雑なプラントであり、効率が低い。

日本が将来、核武装する為のものではないのかという疑念がある。発電用に使用するプルトニウム燃料はプルトニウム241などプルトニウム239以外の同位体の割合が高いため、核兵器の材料とするのは難しいが、高速増殖炉のブランケット部はプルトニウム239の比率が非常に高く「兵器級プルトニウム」が生産される。(→放射性同位体)。

  • プルトニウムを増殖させて主たる核燃料として使用する核燃料サイクルの一部であるため、高い建設費にも関わらず建設された。
  • プルトニウムは、1グラムが空気中に拡散するだけで、5千人以上の人が肺ガンとなる地上最高の猛毒である。このようなものを主燃料にして国内を流通させることはリスクが大きすぎる。
  • 発電時には二酸化炭素を発生させないが、核燃料サイクルを全体では輸送などで二酸化炭素が発生する他、電力も消費される。したがって二酸化炭素が余剰に発生するという主張があるが、これには異論もある。
  • もんじゅにおいては、1次系金属ナトリウムと熱交換した2次系金属ナトリウムが、蒸気発生器において3次系のと熱交換を行う。2次系と3次系を隔てているのは、熱伝達のための薄い熱交換器なので、ピンホール発生の可能性がある。ピンホールが発生すると、爆発して大事故になる可能性がある。実際、イギリスで事故が起きている。[1]

[編集] 反対派の主張に対する批判

  • 原子炉が核爆発を起こすことはないにもかかわらず、反対派の主張には原子炉が核爆発を起こすと解釈されかねない内容のものがあり不適切という主張がある。また研究段階にある高速増殖炉の経済性を実用炉と比較することについては異論がある。
  • 核燃料サイクルを動かすために消費される電力のために二酸化炭素が余剰に発生するかどうかは、その電力の由来が何であるかに依存する。その電力がすべて原子力発電によるものならば二酸化炭素の余剰発生はない。

[編集] 事故

1995年、二次冷却系で温度計の設計ミスからナトリウム推定700kgが漏出し、火災となった。国際原子力事象評価尺度では最も低いレベル1であるが、対応の遅れや動燃による事故隠しが問題となった。

[編集] 経緯

1995年12月8日、「もんじゅ」では運転開始前の点検のために、出力上昇の試験をしていた。目標の熱出力43%を目指し、出力を徐々に上げていたところ、二次冷却系配管室で配管のナトリウム温度計が「温度高」を示した。引き続き同じ場所で、火災報知器が2箇所で、更にナトリウム漏洩を知らせる警報も発報した。

その後も火災警報の範囲は広がり、ついには階を超えて発報を始めた。すぐに試験を中止し、運転員らが現場に駆けつけたところ、目視で白煙を確認。ナトリウム火災の特徴だった。火災警報機が14箇所発報した時点で、運転員らは原子炉停止を決断し、原子炉の出力を徐々に落とし始めた。原子炉を急激に停止させる「緊急停止」は炉に負担をかけるため、炉を保護する為に緩やかな出力降下を目指した。しかし、一旦は落ち着いたように見えた火災報知器がさらに発報し、ついには34箇所にも及んだ。事態を重く見た運転員らは、事故発生から1.5時間後、原子炉を緊急停止させた。充満した白煙と高温により、防護服を着用しても現場に立ち入ることは困難で、被害状況は全くつかめなかった。しかし、原子炉停止後も火災報知器の発報は続き、最終的には66箇所に及んだ。

後に事故現場に立ち入り、状況を確認したところ、高融点鋼鉄製の床が浸食され、さらにナトリウムが周囲にスプレー状に散布されている事がわかった。

なお、漏洩した金属ナトリウムは二次冷却系で、放射能は帯びておらず、原子力発電所国際原子力事象評価尺度としては極めて軽微な被害ということになった。ただし、尺度そのものに対する批判も絶えない。

[編集] 事故後の対応

事故後の会見はもんじゅのプレスセンターで行い、動燃は事故当時撮影した1分少々のビデオを公開した。しかし数日後、これが編集されたビデオであることが発覚し、マスコミに指摘を受けた動燃は編集前のビデオを渋々公開した。不適切な対応はこれに留まらず、さらに数日後、動燃側から更に事故発生直後の現場のビデオがあるとの発表があった。

[編集] 原因

事故翌年の1月8日未明、前夜から行われていた漏洩箇所のX線撮影により、事故後一ヶ月経ってナトリウム漏洩の明確な原因が明らかになった。それまで最も有力だったのは、ナトリウムの温度を測定する熱電対温度計の収めてある「さや(ウェル)」と配管の接合部の破損であった。「さや」は、ナトリウムの流れる配管の中に棒状に突出しており、直径3.2mmの温度計を保護する役割を果たしていた。この「さや」は大変丈夫に作られており、ナトリウムの流速程度の機械的負荷で折損するとは考えにくかったため、破損箇所があるとするなら接合箇所だろうと考えられていた。しかし、X線写真によれば問題の「さや」の先端は途中のくびれ部分から完全に折損しており、中の温度計は45°ほど折れ曲がった状態で管内にむき出しになっていた。日本原子力研究所が調べたところ、ナトリウムの継続的な流れにより「さや」に振動が発生。徐々に機械的強度が衰え、折損に至ったことがわかった。

さらに、火災報知器が広範囲で発報した理由として、ファン付き換気ダクトによって白煙の拡大を招いたことが明らかになった。直径60cmのナトリウム管路の下方に、直径90cmの換気ダクトがある。事故当時、換気ダクトのファンは作動したままになっていた。原子炉停止後ナトリウムの抜き取り作業が進み、ナトリウムの液位が下がった事でようやく自動停止した。

管路周辺にスプレー状にナトリウムが散布されていた事も予測できぬ事態であった。高速増殖炉では金属ナトリウムは加圧されていないため、スプレー状に散布されるほどは勢いよく噴出しない。しかも、問題の配管は全て保温材で覆われており、仮に管内が多少加圧されていても、スプレー状の飛散には至らないはずである。調査の結果、換気ダクトのファンに付着したナトリウムが遠心力で周囲に飛散していたことがわかった。

事故発生直後、運転員らはゆるやかな出力降下による原子炉停止を行っていたが、これは運転マニュアルに違反した対応だった。運転マニュアルには、火災警報が発報した場合は直ちに原子炉を「緊急停止」するように記載されていた。

[編集] 今後

2005年2月6日西川一誠・福井県知事は、それまで留保していた「もんじゅ」の改造工事を了承した。これにより、「もんじゅ」の再稼動にひとつ道が開かれた形になる。西川知事は、「これをもって運転再開を了承するものではない」としているが、反対派からは、当然の如く激しい非難が噴出している。

2005年9月27日フランスは日本に対し、もんじゅの共同利用を提案した。

[編集] 関連項目

[編集] 関連文献

  1. ^ 『高速増殖炉もんじゅ』―巨大核技術の夢と現実 小林圭二 七つ森書館刊

[編集] リンク

日本の原子力発電所

泊原発 | 東通原発 | 女川原発 | 福島第一原発 | 福島第二原発
東海第二原発 | 浜岡原発 | 志賀原発 | 敦賀原発 | 美浜原発
大飯原発 | 高浜原発 | 島根原発 | 伊方原発 | 玄海原発 | 川内原発

長期運転停止中の発電所

柏崎刈羽原発 | もんじゅ

建設・計画中の発電所

大間原発 | 浪江・小高原発 | 上関原発

運転を終了した発電所

東海原発

原子炉設置許可申請を取下げた発電所

巻原発 | 芦浜原発

他の言語