アクリル絵具

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アクリル絵具

アクリル絵具(アクリルえのぐ、アクリリックペイント: Acrylic paint)は、アクリル樹脂固着材に用いた絵具

特徴[編集]

近代的な企業が石油化学の発達によって生産することが可能になった「絵具」であり、自作が困難である[1]とか、メーカーやブランドの異なる製品の併用に難がある[2]といった性質が知られている。固着材の加工について絵画材料と絵画技法に関する著作では言及されず、伝統的な絵具とは性格が大きく異なる、批判的に考察されるものである[1]。現在一般に購入できるアクリル絵具のほとんどは水溶性であり、これは乾燥が極めて早いことと、乾燥後に耐水性となる性質から、手軽な絵具のひとつとして知られている。

アクリリックス(acrylics)は当初工業用途として開発されたものの、メキシコ壁画運動に加わったディエゴ・リベラダビッド・アルファロ・シケイロスホセ・クレメンテ・オロスコらが壁画に適したペイント塗料絵具)を求めたことから、描画に適した製品の開発が進められた[3]

商業用絵具として発売された最初のアクリル絵具は、アメリカ合衆国のボクーが開発したMagnaという製品で、溶剤型の絵具であった。モーリス・ルイス、ロイ・リキテンスタイン、ケン・ノーランドなどがMagnaを使った作家である。その後、1958年に、アメリカ合衆国のパーマネントピグメントが販売を開始した水性のアクリル絵具により急速に普及した。アメリカ合衆国の企業が大手筋でありアメリカ合衆国の製品が多い。固着材の性質に由来する顕色成分の少なさなどから、いわゆる塗料のような性質も具えている。アクリルラッカーエナメル塗料の類縁である。

種類[編集]

溶剤型アクリル絵具と水性アクリル絵具とがある。

溶剤型アクリル絵具[編集]

1940年代後半に開発された絵具で、溶剤で希釈して用いる。アメリカ合衆国のゴールデン社のMSA修復用絵具などがある。乾燥後も溶剤に可溶であり除去が比較的容易なために、絵画修復の補彩作業にも用いられる。溶剤型アクリル絵具はロイ・リキテンスタインなどが使用したことでも知られる。

水性アクリル絵具[編集]

水性アクリル絵具は、顔料にアクリル樹脂エマルションで練り上げた絵具 である。水彩絵具と同様に水に溶けるが、乾燥すると優れた耐水性を示す。耐候性にも優れ、屋外に使用できる。接着力が大きく、紙やキャンバスだけでなく、金属、ガラス、コンクリート等様々な支持体に描画できる。また、油絵具と比較すると速乾である。水溶性を活かした透明水彩絵具に似た技法から、耐水性や速乾性を活かした厚塗りの油彩的手法まで、様々な技法を用いることが出来る。また、様々なメディウムを混合することにより、光沢や粘稠度等を調整してさらに多様な表現が可能である。絵画以外にも、壁画や装飾、模型などに用いられる。また、顔料単体に似た発色をする艶消しのアクリルガッシュもある。

アクリルガッシュ[編集]

アクリルガッシュは水性アクリル絵具の一種である。英語圏にあってはAcryl Gouache(アクリルガッシュ)という表現もあるが、一般的にはAcrylic Gouache(アクリリックガッシュ)と呼ぶ。

アクリルガッシュは、主として耐水性を付与されたデザイン用途での絵具としての性格が念頭にあり、固着材がいわゆる水性アクリル絵具より少ないことや、鮮やかだが耐光性のない顔料がしばしば使われていることから、耐光性には注意が必要である。モデリングペーストなどを用いれば、極端な厚塗りも可能である。アクリル絵具は速乾性の効率的な塗料であり、人工物としての性格が強く、多くポップで軽快なテイストのイラストなどに用いられる。ただし、削り出しなど工夫によって重厚な画風とも調和し得る。アクリルガッシュは、水分が蒸発することで塗膜が固化するので乾燥は早く、効率的に描画出来るので、美術系大学のデザイン科などの入試における平面構成やイラストレーション、建築のパースなどに用いられる。

アクリル絵具の製造・供給を行っている企業[編集]

他多数

脚注[編集]

  1. ^ a b クルト・ヴェールテ(Kurt Wehlte)、ゲルマール・ヴェールテ(Germar Wehlte)『絵画技術全書』佐藤一郎監修翻訳、戸川英夫、真鍋千絵・訳、美術出版社、1993年 ISBN 4568300460
  2. ^ 森田恒之ほか『カラー版 絵画表現のしくみ―技法と画材の小百科』美術出版社、2000年 ISBN 4568300533
  3. ^ http://www.kyoto-seika.ac.jp/event/kiyo/pdf-data/no36/musashi_atsuhiko.pdf
  4. ^ a b リキテックス、ウィンザー&ニュートン、ルフランブルジョアなどはコルアート社(:多くのブランド、絵具会社を吸収)の傘下にある。
  5. ^ 画家の千住博が材料・素材として「ラスコー」と書くのは、この会社。

参考文献[編集]

  • クルト・ヴェールテ(Kurt Wehlte)、ゲルマール・ヴェールテ(Germar Wehlte)『絵画技術全書』佐藤一郎監修翻訳、戸川英夫、真鍋千絵・訳、美術出版社、1993年 ISBN 4568300460
  • 『絵具の科学』ホルベイン工業技術部編、中央公論美術出版社 1994年(新装普及版) ISBN 480550286x
  • 『絵具材料ハンドブック』ホルベイン工業技術部編、中央公論美術出版社、1997年(新装普及版) ISBN 4805502878
  • 森田恒之ほか『カラー版 絵画表現のしくみ―技法と画材の小百科』美術出版社、2000年 ISBN 4568300533

関連項目[編集]

外部リンク[編集]