パピルス

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プラトンの著作を記した写本

パピルス(Papyrus,パピュルス)は、カヤツリグサ科の植物の名。または、この植物の地上茎の内部組織(髄)から作られ、古代エジプトで使用された文字筆記のための媒体をも指す。パピルス紙と呼ばれる場合があるが,一度分散した繊維を絡み合わせ膠着させてシート状に成形したものではないため正確には紙ではない。ただし、これは、中国で発明された「」を基準に、紙の定義が後に定められたからで、英語などの言語で紙を意味する「paper」や、フランス語の「papier」などは「papyrus」に由来する。

目次

[編集] パピルス(筆記媒体)

[編集] 製法

パピルスは次のような工程によって作られたとされる。

  1. 刈り取った茎の皮(表皮・皮層・維管束の部分)を剥いで長さを揃え、針などを使って縦に薄く削ぎ、長い薄片を作る。
  2. 薄片を川から汲んだ水に漬け、細菌が繁殖してある程度分解が始まるまで2日ほど放置する。
  3. フェルトや布を敷いた台の上に少しずつ重ねながら並べ,更にその上に直交方向に同じように並べ、さらに布で覆う。
  4. 配列を崩さないように注意しながら槌などで強く念入りに叩いて組織を潰し、更に圧搾機やローラーなどで圧力を加えて脱水する。
  5. その後さらに乾いた布で挟んで乾かし、日陰などで乾燥させる。
  6. 表面を滑らかな石や貝殻、また象など動物の牙などでこすって平滑にし、その後、縁を切り揃えて完成となる。

材料として数mの高さがある草の中ほどの部分を切って使用する。材料を取る場所が茎の中ほどから離れるほど製品の質は低くなる。茎は断面が三角形をなしていて広い面から薄片を削いでいくため、幅は少しずつ狭くなる。製作にはかなりの人手と日数(浸漬に1、2日、叩打・圧搾に2日、乾燥に4日ないし1週間)を要した事、1枚1枚手作業によって製作されていたために高価だった。また、エジプト政府が使うためのパピルスを確保するために専売制も導入されていた。プトレマイオス朝時代のペルガモン王国への禁輸も、同国の図書館と蔵書の数を競った為だけでなく、生産が間に合わずに品薄だったともいわれる 。

それぞれの薄片が接着して一枚のシートとなる機序は長い間謎となっていたが、今では膨潤して潰された植物組織が細菌の繁殖により粘性の物質に変化し、乾燥と同時に薄片どうしを強く接着するということが明らかになっている。

パピルスの製法は、生産がエジプトでその他で廃れて以来失われていた。大プリニウスはその著書『博物誌』の中で、自身で実地に調査した製法を記していたが、薄片の接着については記述が曖昧であったので、その部分は後世論議の的になった。幾人かの人々が大プリニウスの記述をたよりに試行錯誤を重ね、一応の復元に成功している。パピルスの製造はシチリア島シリアでもしばらく行われており、現在でもパピルス草が見られる。

[編集] 特性と使用法

パピルス製の巻物に書かれたエジプトの死者の書

完成した一枚のサイズ (幅) は最上質のものでは24cmほど、最も大きくて40cm程度、長さは25ないし30cmほどで厚さは0.1ないし0.25mmであった。

薄片を二層に接着して作るという構造上、表裏で繊維の向きが異なり、また折り曲げに弱いため冊子状にすることは難しいので,数枚から20枚程度のシートをアラビアゴムで長く繋ぎ合わせて巻物として使用された。一枚目をprotokóllonといってローマ人はそこに巻物の産地と日付を記した。この言葉は今でもプロトコルとして外交通信の用語として残っている。

巻き伸ばしの頻度の高い外側ほど強い良質なシートを使い、一番外側にはしばしば標題を記した羊皮紙のカバーを付けた。両端に巻物の幅より長い木の心棒を付け、読むときには片手で巻きを戻しつつ、もう一方の手で読み終わった部分を外側の心棒に巻き取りつつ読んだ。多くの巻物から必要な情報を探すには不便であったが、筆記用パピルスの、ギリシャなどへ盛んに輸出される前までの主な用途は副葬品である死者の書が大部分であったので巻物でも不便はなかった。古代ギリシアで作られた巻物は長くても10m内外だが、エジプトでは30mに及ぶものがあった。

製品には材料の薄片を取る部位などによって数等の等級があり、『博物誌』にはローマで流通する商品として八種類の名称が挙げられてある。高級品は純白で、罫線つきのものもあった。最低級品は包装用であった。しばしば古いものは表面を削って再利用されたり裏を使ったりされた。エジプトほど気候が乾燥していない地方ではパピルスは注意していないとカビなどに侵されやすかった。またローマでは古いパピルスを元の薄片に分解し、表面を削って文字を消したり傷んだ薄片を除いて新しいものと取り替えるなどしてあるいは小麦粉から作った糊で張り合わせた再生品の販売も行われていた。

後にキリスト教徒が聖書を筆写するようになると、幾度も読み返したり検索したりする必要からコデックス(冊子本)も作られるようになったが、強度上の問題があった。

パピルスに筆記するためにはエジプトではペンを使い、ギリシアやローマでは葦のほか青銅製のペンも使った。

[編集] 普及と衰退

プトレマイオス朝時代には,エジプトの輸出品として各地に広まった。フェニキア人の都市ビブロス(現在のレバノンのジュバイル)がそのギリシャ向けの積み出し港だったのでビブロスの名がパピルスを意味する語に、また本を意味するようにもなり、現在英語で聖書を意味するBibleという言葉もそこから来ているとされる。

後に小アジアヘレニズム国家、ペルガモン王国に対する禁輸がもとで同国で羊皮紙の生産や文芸書への使用が奨励され、使いやすい羊皮紙が生産されるようになった。羊皮紙を意味するパーチメントはこのペルガモンに由来すると言われている。羊皮紙も高価ではあったが、強度があり両面に書けるなど冊子としての利用に適しており、誤字は削って書きなおし可能という利点があったので、エジプトから遠い地方で普及したが、全ての書き物を羊皮紙で置き換えるのは高くつくため、手紙やノートなどにはパピルスが使われ続けた。800年頃に中国から紙の製法が伝わるとやがてパピルスは使われなくなった。

[編集] パピルス(植物)

?パピルス(植物)

パピルス(Cyperus papyrus
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: カヤツリグサ目 Cyperales
: カヤツリグサ科 Cyperaceae
: カヤツリグサ属 Cyperus
: パピルス C. papyrus
学名
Cyperus papyrus L.
和名
カミガヤツリ、カミイ
英名
Papyrus sedge

パピルス(和名:カミガヤツリカミイ、学名:Cyperus papyrus L.)は、カヤツリグサ科カヤツリグサ属の多年生の草本。アフリカ奥地の湖や河畔の浅い緩やかな流れの中に繁茂し、4-5mほどの高さになる。茎の断面は三角形で、最大6cmほどの太さになる。通常、根茎地下茎)によって増殖する。

[編集] パピルス(植物)の歴史

パピルスはもともと中央アフリカのナイル源流から洪水の際にデルタ地帯に流れてきた株が自生していた。それを人手をかけて栽培し、記録のための媒体はもちろん儀式祭礼用品や履き物のような生活雑貨、綱、舟の帆や舟そのものの材料として、また若い茎や根を食料としても利用していたものである。そのためエジプトのキリスト教化や、中国からの製紙法の渡来により需要が少なくなるとともに、自然にナイル下流部からは消滅した。今日パピルスの自生する地域はコンゴウガンダスーダンエチオピアシチリア島シリア地方のそれぞれ一部である。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

[編集] 参考文献

大沢忍 『パピルスの秘密 復元の研究』 みすず書房 1978年

ウィキメディア・コモンズ
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