「境界性パーソナリティ障害」の版間の差分

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== 対処 ==
== 対処 ==
アメリカでは境界性パーソナリティ障害の治療の中断率が高いとされる。ガンダーソンの調査では、半年間での中断率は患者の50%、一年では75%だとし、他の障害と比べ初期から終結まで一貫して治療する例は少なく、10%程度だった。日本での統計は少ないが、中断率14.9%、治癒率は18.4%、不変ないし悪化が33.3%との報告があり、精神科通院患者の中でも特別に中断率がいというわけではない。この違いは[[アメリカ]]と[[日本]]の医療システムの差異による部分もあるが、日本の患者の場合、発症の環境要因として[[虐待]]よりも[[過保護]]などのケースが多く、より依存的な性質をもつためとの説もあり、治療の継続のしやすさの面では有利であるが、一方では日本独自の精神療法を考慮する必要性もでてくる<ref>[[#町沢静男 (2005) |町沢静男 (2005) ]] p85,p87,p115</ref>。
アメリカでは境界性パーソナリティ障害の治療の中断率が高いとされる。ガンダーソンの調査では、半年間での中断率は患者の50%、一年では75%だとし、他の障害と比べ初期から終結まで一貫して治療する例は少なく、10%程度だった。日本での統計は少ないが、中断率14.9%、治癒率は18.4%、不変ないし悪化が33.3%との報告があり、精神科通院患者の中でも特別に中断率がいというわけではない。この違いは[[アメリカ]]と[[日本]]の医療システムの差異による部分もあるが、日本の患者の場合、発症の環境要因として[[虐待]]よりも[[過保護]]などのケースが多く、より依存的な性質をもつためとの説もあり、治療の継続のしやすさの面では有利であるが、一方では日本独自の精神療法を考慮する必要性もでてくる<ref>[[#町沢静男 (2005) |町沢静男 (2005) ]] p85,p87,p115</ref>。


なお、日本に80ある大学医学部のうち精神療法を得意としている大学はわずか数件しかない。ほとんどが生物学的な研究を主体としているため、精神科医がカウンセリングのトレーニングを受ける機会は稀である<ref>{{Cite journal|和書 |author=和田秀樹 |title=精神分裂病と人格障害 |journal=日本損害保険協会 総合安全防災誌「予防時報」 |volume=209 |issue= |year=2002 |pages=}}</ref>。
なお、日本に80ある大学医学部のうち精神療法を得意としている大学はわずか数件しかない。ほとんどが生物学的な研究を主体としているため、精神科医がカウンセリングのトレーニングを受ける機会は稀である<ref>{{Cite journal|和書 |author=和田秀樹 |title=精神分裂病と人格障害 |journal=日本損害保険協会 総合安全防災誌「予防時報」 |volume=209 |issue= |year=2002 |pages=}}</ref>。
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「精神的・肉体的に併存疾患のないBPD患者と現在薬を処方されている患者に対しては、投薬量を削減し不必要な薬物治療を打ち切る方向で見直すべきである」と定めている<ref>{{Harvnb|英国国立医療技術評価機構|2009|Ref=NICECG78}}</ref>。
「精神的・肉体的に併存疾患のないBPD患者と現在薬を処方されている患者に対しては、投薬量を削減し不必要な薬物治療を打ち切る方向で見直すべきである」と定めている<ref>{{Harvnb|英国国立医療技術評価機構|2009|Ref=NICECG78}}</ref>。


米国精神医学会では、副作用の少なさなどの観点から、第一選択は[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](SSRI)を推奨している。SSRIは主に衝動性や情動不安定性、抑うつの症状に有効である。[[モノアミン酸化酵素阻害薬]](MAO)もそれらの症状に効果的だが重篤な副作用がある。著功しない場合は他の[[抗うつ薬]]への切り替えが考えられるが、[[三環系抗うつ薬]]は衝動性にはマイナスになる場合がある。[[リチウム塩|炭酸リチウム]](商品名 リーマス)での強化も考慮される。[[ペルフェナジン]](ピーゼットシー)、[[トリフロペラジン]]、[[オランザピン]](ジプレキサ)、[[リスペリドン]](リスパダール)、[[ハロペリドール]](セレネース)など、低容量の[[抗精神病薬]]の使用は、怒りや認知・知覚症状などの精神病症状に有効である。[[バルプロ酸]](デパケン)などの[[抗てんかん薬]]類も第二選択である。解離には[[ナルトレキソン]](本邦未発売)、不安などの症状には[[クロナゼパム]](リボトリール)などの追加も考えられる<ref>[[#米国精神医学会治療ガイドライン (2006)|米国精神医学会治療ガイドライン (2006)]]</ref>。
米国精神医学会では、副作用の少なさなどの観点から、第一選択は[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](SSRI)を推奨している。SSRIは主に抑うつや情動不安定性の症状に有効である。[[モノアミン酸化酵素阻害薬]](MAO)もそれらの症状に効果的だが重篤な副作用がある。著功しない場合は他の[[抗うつ薬]]への切り替えが考えられるが、[[三環系抗うつ薬]]は衝動性にはマイナスになる場合がある。[[リチウム塩|炭酸リチウム]](商品名 リーマス)での強化も考慮される。低容量の[[抗精神病薬]]の使用は、怒りや認知・知覚症状などの精神病症状に有効である。[[バルプロ酸]](デパケン)などの[[抗てんかん薬]]類も第二選択である。解離には[[ナルトレキソン]](本邦未発売)、不安などの症状には[[クロナゼパム]](リボトリール)などの追加も考えられる<ref>[[#米国精神医学会治療ガイドライン (2006)|米国精神医学会治療ガイドライン (2006)]]</ref>。


[[1966年]]から[[2010年]]までの[[メタアナリシス]](研究結果を分析したもの)では、[[抗てんかん薬]]などの[[抗躁薬|気分安定薬]]と[[抗精神病薬]]に衝動性制御効果、情動不安定性への効果が示され、また[[抗精神病薬]]に関しては認知・知覚症状への有効性も認められた。[[抗うつ薬]]はそれらの症状に効果は無く、情動不安定性にのみ有効という結果になった<ref>{{Cite journal |author=Vita A, De Peri L, Sacchetti E. |title=Antipsychotics, antidepressants, anticonvulsants, and placebo on the symptom dimensions of borderline personality disorder: a meta-analysis of randomized controlled and open-label trials. |volume=31 |issue=5 |year=2011 |month=10 |publisher=J Clin Psychopharmacol |pages=613-24 |url=http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21869691 }}</ref>。また、[[ω-3脂肪酸]]サプリメントによる衝動性や抑うつ改善効果などについても研究されている<ref>{{Cite journal |author=Mary C. Zanarini, Ed.D.; Frances R. Frankenburg, M.D. |title=Omega-3 Fatty Acid Treatment of Women With Borderline Personality Disorder: A Double-Blind, Placebo-Controlled Pilot Study |volume=160 |issue=1 |year=2003 |month=1 |publisher=Am J Psychiatry |pages=167-169 |url=http://ajp.psychiatryonline.org/article.aspx?articleid=175972 }}</ref><ref>{{Cite journal |author=Stoffers J, Völlm BA, Rücker G, Timmer A, Huband N, Lieb K |title=Drug treatment for borderline personality disorder |volume=6 |issue= |year=2010 |month=6 |publisher=Cochrane Database of Systematic Reviews (Online) |pages= |url=http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD005653.pub2/abstract }}</ref>。
これらの薬物療法は、抑うつや感情抑制、知知の障害や妄想様観念などには一定の効果があるが、慢性的な空虚感、見捨てられ不安などには効果がないとされ、患者により治療法は一律ではない。[[オーバードーズ|過量服薬]]の危険性を考慮すると、より安全性が高く依存性が少ない薬剤の選択、および少量で最大の効果が望める薬物療法が薦められるのは当然といえよう。なお[[抗精神病薬]]に関しては専門家の間でも、[[統合失調症]]と同じ容量ではなくごく少量を投与するべき、という意見の合意が得られている。副作用や安全性の観点からは[[抗精神病薬|定型抗精神病薬]]よりも[[非定型抗精神病薬]]の使用が適している。副作用に対し敏感な患者も多いため、事前に詳細な説明をすることは不安に軽減に繋がる<ref name="hirashima">{{Cite journal |author=平島奈津子、野口堅吾 |title=[http://ci.nii.ac.jp/naid/40017364013 薬物療法的アプローチ (境界性パーソナリティ障害 境界性パーソナリティ障害と治療)]|journal=こころの科学 |volume=154 |issue= |year=2010 |pages=75 - 79 }}</ref>。

これらの薬物療法は、抑うつや感情抑制、知・知の障害や妄想様観念などには一定の効果があるが、慢性的な空虚感、見捨てられ不安などには効果がないとされ、患者により治療法は一律ではない。[[オーバードーズ|過量服薬]]の危険性を考慮すると、より安全性が高く依存性が少ない薬剤の選択、および少量で最大の効果が望める薬物療法が薦められるのは当然といえよう。なお[[抗精神病薬]]に関しては専門家の間でも、[[統合失調症]]と同じ容量ではなくごく少量を投与するべき、という意見の合意が得られている。副作用や安全性の観点からは[[抗精神病薬|定型抗精神病薬]]よりも[[非定型抗精神病薬]]の使用が適している。副作用に対し敏感な患者も多いため、事前に詳細な説明をすることは不安に軽減に繋がる<ref name="hirashima">{{Cite journal |author=平島奈津子、野口堅吾 |title=[http://ci.nii.ac.jp/naid/40017364013 薬物療法的アプローチ (境界性パーソナリティ障害 境界性パーソナリティ障害と治療)]|journal=こころの科学 |volume=154 |issue= |year=2010 |pages=75 - 79 }}</ref>。


また境界性パーソナリティ障害の薬物療法は、症状の緩和作用以上の深い意味を持つとの見解もある。薬物への意識または無意識的な「[[投影]]」である。それは患者が[[オーバードーズ|過量服薬]]する際、大半は他者から与えられる処方薬によって行われることにも表現されている。重要な他者(医師を含む)の存在の拒絶や受け入れ、一体感の切望または敵意による過量服薬、不安や疑心暗鬼から副作用に過敏になるなど、意識・無意識的な他者への「投影」が投薬治療に様々な意味を持たせているという。治療者も自身の能力に対する不安感を、患者に薬を与えることで解消しようとしていないか省みる必要があるだろう<ref name="hirashima"/>。
また境界性パーソナリティ障害の薬物療法は、症状の緩和作用以上の深い意味を持つとの見解もある。薬物への意識または無意識的な「[[投影]]」である。それは患者が[[オーバードーズ|過量服薬]]する際、大半は他者から与えられる処方薬によって行われることにも表現されている。重要な他者(医師を含む)の存在の拒絶や受け入れ、一体感の切望または敵意による過量服薬、不安や疑心暗鬼から副作用に過敏になるなど、意識・無意識的な他者への「投影」が投薬治療に様々な意味を持たせているという。治療者も自身の能力に対する不安感を、患者に薬を与えることで解消しようとしていないか省みる必要があるだろう<ref name="hirashima"/>。
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[[nl:Borderline-persoonlijkheidsstoornis]]
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[[no:Borderline personlighetsforstyrrelse]]
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[[pl:Osobowość borderline]]
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[[pt:Transtorno de personalidade limítrofe]]
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2012年5月5日 (土) 19:23時点における版

境界性パーソナリティ障害
概要
診療科 精神医学, 臨床心理学
分類および外部参照情報
ICD-10 F60.3
ICD-9-CM 301.83
MedlinePlus 000935
eMedicine article/913575
Patient UK 境界性パーソナリティ障害
MeSH D001883

境界性パーソナリティ障害(きょうかいせいパーソナリティしょうがい、Borderline Personality Disorder,BPD)は、境界型パーソナリティ障害とも呼ばれ、思春期または成人期に多く生じる、不安定な自己-他者のイメージ、感情思考の制御の障害、衝動的な自己破壊行為などの特徴とするパーソナリティの障害である。自殺率が非常に高く、通院患者の10%にも及ぶというデータもある[1]DSM-IV-TR日本語版2003年8月新訂版より、邦訳が境界性人格障害から境界性パーソナリティ障害と変更され、また日本精神神経学会は2008年5月に境界性パーソナリティ障害に用語改定をすることを発表している。一般ではボーダーラインと呼称される事もある。

旧来の疾患概念である境界例と混同されやすく、一般的に境界例と呼称される場合、境界性パーソナリティ障害を指すことが多い。

概説

近年患者数が増加しているともいわれ、医療費への影響や自己破壊的な行動による生産性の低下などから経済へ与える影響も大きい。主に力動的精神医学からの研究がなされているが、生物学的な研究は未だ少ない。治療法は精神療法を主体とし、薬物療法を併用することが多い。なお「境界性」の「境界」は現在は特別な意味を持たない。

境界(Borderline)という言葉は、神経症精神病の境界領域という意味の力動精神医学用語である「境界例 (Borderline Case)」を派生としている。1906年頃、フロイトの弟子である精神分析医のフェダーンは、神経症だとみなされていた患者に古典的精神分析を施すと、精神病症状が出現する者がいることを観察した。当初は精神分裂病の一表現型と捉えられており、境界例、潜在性分裂病、偽神経症性分裂病などと呼ばれた。

1950年代に入ると、それらの病態はナイトらにより、神経症から分裂病、あるいはその逆へ移行しうる状態であると考えられるようになった。 ナイトは精神病と神経症は区別されるべきという伝統的精神医学の前提を否定し、両者の境界領域の病態が存在するとした。ナイトは本質的には精神分裂病とみていたが、シュミデベルグはむしろ、移行することなく不安定さの中に安定している独立した一臨床単位であると説き、本質にはパーソナリティの重篤な障害があると言及した。

1950年代後半から1960年代にかけて境界例研究はさらに加熱し、各国で様々な議論が交わされた。精神分析学の立場からはカーンバーグの、安定的で特異な人格構造を有する「境界型人格構造 (Borderline personality organization - BPO) 」の概念が、記述精神医学の立場からはグリンカーによって「境界症候群 (Borderline syndrome) 」として統計的・操作的な診断基準が提出され、さらにケティらは遺伝学的研究から精神分裂病との違いを明確にしていった。これらの流れを受け、ガンダーソンは具体的な症状などを用いた独自の診断基準を完成させた。このガンダーソンの診断基準は、1980年に発表されたDSM-III に記載された「境界性パーソナリティ障害」の診断基準を作る際に参照され、現在使用されているDSM-IV-TRにも受け継がれている[2]。またICD-10では情緒不安定性パーソナリティ障害の下位カテゴリ「境界型」として存在する。

1970年代頃より、境界性パーソナリティ障害とうつ病などの気分障害との関連性に関する研究が進められており、長期予後を含め、現在でも様々な議論を呼んでいる[3]。Koenigsbergらが1999年に発表した論文によると、他のパーソナリティ障害に比べると境界性パーソナリティ障害と気分障害の関連は特別なものではないとされている。またガンダーソンらも気分障害の併存率は有意に高いが、それぞれ独立して存在しており関連性は低いとした[4]。また遺伝学的研究や、生物学的研究も行われている。

2000年代に突入した頃より、啓発本やインターネットなどにより、一般社会でもこの障害の存在が広く認知されるようになった。しかし病名が普及するにしたがって、意図せぬところで境界性パーソナリティ障害に対するネガティブなイメージも高まっていった傾向があり、患者自身あるいは周囲の人間も、この病名にある種の嫌悪感を持つことが多い。自分の周りにいる厄介な人間へのレッテル付けとして使用される場合もある。この傾向は医師カウンセラーなどの治療者にも存在し、不必要に忌避的になることもあるという。これは明確な治療法がないという誤った認識や、それにより治療に費やす労力が予想されること、感情的になった患者から怒りをぶつけられる恐れなどの結果である[5]。しかし1990年代以降、様々なアプローチでの治療法が生み出され、境界性パーソナリティ障害は、医療現場でもまた一般社会でも特別な存在ではなくなった。

また一般社会での名称の普及からも考察するに、対人関係において危機的状況に晒された時、人はみな自身の存在価値に悩み、理性的判断を失い、他者に対し特異的に振舞うといえる。このような病的な要素は正常な人間が誰しも持ちうる心的な反応である、との意見もまた正論であるといえよう[6]

統計

調査では、人口の0.7 - 2.0%程度に存在すると言われている[7]。女性が男性の2 - 4倍であり、出現率の高い年齢は19 - 34歳である[8][9]。男性より女性のほうが多いとされるのは、実際数である可能性もあるが、男性の場合、反社会性パーソナリティ障害自己愛性パーソナリティ障害と診断されることが多い為ではないかとする意見もある[10]

外来通院患者では約10%ほどとみられており[1][11]、入院患者では15 - 20%というデータがある[12]。しかし対人障害が一症状として存在する境界性パーソナリティ障害には、治療者との関係性の悪化などにより、治療者側の主観で診断される「医原性のBPD」も存在するのではないかという意見もあり、正確な患者数は掴みにくい[13]

患者の年代は20代が最も多いが、30代半ば以降では改善に向かうことが多い。またアメリカの調査では、外来患者の治療を始めてから1年後には41%が境界性パーソナリティ障害と診断されなくなっている。入院患者に関しても2年後には35%、4年後には49%、6年後には70%が診断されなくなっており、自傷行為薬物乱用、対人障害などは一旦改善しはじめると比較的早く治癒することが報告されている[14]。しかしこれら「陽性症状」ともいえる目立った症状がなくなることで診断基準に当てはまらなくなるだけとの見方もあり、思春期から青年期にかけての重要な時期を、社会的機能が著しく低下したまま過ごすことによる本人の損失は大きく、また慢性的な孤独感や空虚感、アイデンティティの拡散、依存や対人関係障害などの目立たない「陰性症状」は長期的に続くことが示唆されており[15]、早期の治療はやはり有用であるとされる[16]

症状

症状の機軸となるものは、不安定な思考や感情、行動およびコミュニュケーションである。

具体的には、衝動的行動、白か黒かの二極思考、対人関係の障害、慢性的な空虚感、自己同一性障害、薬物やアルコール依存、自傷行為や自殺企図などの自己破壊行動が挙げられる。また怒り、空しさや寂しさ、見捨てられ感や自己否定感など、感情がめまぐるしく変化し、なおかつ混在する感情の調節が困難である。

激しい感情は対人関係の摩擦や社会的機能の低下を生む。衝動的行為としては、性的放縦、ギャンブルや買い物などでの多額の浪費、より顕著な行為としてはアルコールや薬物の乱用がある。さらに自己破壊的な性質を帯びたものとして、過食嘔吐や不食などの摂食障害がある。自己破壊的行為で最も重いものは自殺であるが、そのほかにもリストカットなどの自傷行為、自殺企図(薬物の過量服薬等)など、自分自身を窮地に立たせることとなり危険である。

また自己破壊的行為のほとんどは抑うつ状態で起こっていることが種々の調査で明らかになっており、パーソナリティの問題が改善するとうつ状態が良くなることがある一方、うつ病の治療をすることで衝動的行動が改善することもあるなど、互いに密接にかかわっている[17]。またこれらの行為中は解離を伴うことがある[18]

境界性パーソナリティ障害では他者との分離不安があり、依存できる関係を求めたり、相手を過度に理想化する傾向にあるが、繊細で他者の感情に敏感であるがために、失望するととたんに相手の価値下げをすることがある。依存は自覚がなく無意識的なものであるが、追い払ったり引き戻したりすることで対人関係が激しく短期的なものになりやすい。周囲の人間はこれらの行動を『操作的(コントロール)』と否定的に受け取ることもある[19]

同一の対象に肯定的、否定的な感情を同時に抱けないという分裂(スプリッティング)思考は、原始的な防衛機制の一種であるが、この極端な分裂思考は対人関係の障害だけでなく、自分に対しても自己同一性障害などという形となって現れ、自己像の不安定さや、慢性的な虚無感、それに伴う社会的機能の低下の原因となりうる。投影同一化、他者の理想化、出来事の否認などの防衛機制についても、人生で起こりうる様々な問題に対する適応力の発達を妨げ、漠然とした不安感や抑うつ、衝動統制の困難さや一過性の精神病症状などを招くとされる[20]。この精神病症状は強いストレス下においてより顕著になり、解離や非現実感、離人感、パラノイア(根拠の無い疑惑・信念等)の出現などにより、現実検討力が著しく低下する事態を生むこともある。

なお同じ境界性パーソナリティ障害でも、患者によって非常に違って見えることがある。概ね抑うつ、衝動性、精神病症状のどれかが目立つとしている。また気分障害、他のパーソナリティ障害、器質性障害、非定型性精神病など他の疾患の併存もそれぞれの差となって現れる[21]

自傷行為の多くは心理的苦しみを軽減する為に行われることが多いが、自傷行為が発展し実際に自殺を招くこともある。東京都立松沢病院の調査では、入院していた患者の退院後2年以内の自殺率は、うつ病統合失調症の人が35%なのに対し、境界性パーソナリティ障害では67%と約2倍高いという結果が出た[1]。アメリカの調査でも、境界性パーソナリティ障害全体での自殺完遂率は9%と極めて高いものとなっている[22][23]

またリストカットなどの自傷行為を行う者が全て境界性パーソナリティ障害というわけではない[24]DSM-IV-TRでは、数ある診断名の中で自傷行為を取り扱っているものは、境界性パーソナリティ障害のみであるが、A.R.ファヴァッツらの調査では、自傷行為を行う者の中で、境界性パーソナリティ障害の診断に該当した者は全体の半数にも満たなかった[25]。日本での報告としては、自殺関連行動で入院した患者の53.8%が境界性パーソナリティ障害と診断されており、また一度でも自傷行為を行ったことがある患者については75%に達しており、パーソナリティ障害の中では最も自傷行為と関連性があるといえるだろう[26]

DSMによる診断基準

DSM-IV-TRの診断基準では、以下9項目のうち5つ以上を満たすこととなっている。『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』(著者:American Psychiatric Association、翻訳:高橋三郎、大野裕、染矢俊幸、出版社:医学書院、ISBN 4260118862) より引用。

対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式で成人期早期に始まり、さまざまな状況で明らかになる。

  1. 現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする気も狂わんばかりの努力(注:5.の自殺行為または自傷行為は含めないこと )
  2. 理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式
  3. 同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像や自己観
  4. 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質濫用、無謀な運転、むちゃ食い)
  5. 自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為のくり返し
  6. 顕著な気分反応性による感情不安定性(例:通常は2 - 3時間持続し、2 - 3日以上持続することはまれな強い気分変調、いらいら、または不安)
  7. 慢性的な空虚感
  8. 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかをくり返す)
  9. 一過性のストレス関連性の妄想様観念、または重篤な解離性症状

他の障害との関連

境界性パーソナリティ障害と診断された人の約60%が他の障害を併存しているという。他のパーソナリティ障害や、不安障害うつ病などの気分障害、薬物の依存症や摂食障害などが多い[27][28]

アメリカの統計では、合併症として多かったのは、身体表現性障害が約10%、不安障害が80%以上、うつ病などの気分障害が90%以上、アルコール依存が男性74%・女性46%、薬物乱用が男性65%・女性41%、拒食症が男性7%・女性25%、過食症が男性10%・女性30%、心的外傷後ストレス障害PTSD)が男性31%・女性61%であった[29]

また2009年に行われた別の調査では、アルコール依存が約49%、PTSDが39%、自己愛性パーソナリティ障害が39%、うつ病が32%、双極性障害(躁うつ病)が32%、パニック障害が30%、強迫性パーソナリティ障害が23%、妄想性パーソナリティ障害が21%、薬物依存が18%、反社会性パーソナリティ障害が14%であった[30]

このように実際に他の障害などど合併することも多いが、診断基準においても他の障害と重複する部分が多く判別がつきにくい。以下に相違点の一例を挙げる[31]

気分障害

気分障害でも情緒の不安定さがみられる。しかし不安定さが最小のサポートで機能できる人は境界性パーソナリティ障害の基準にそぐわない。通常境界性パーソナリティでの抑うつ症状は、大うつ病性障害の抑うつ症状とは異なるとされるが、対象飢餓、対人依存、傷つきやすい自己評価、無価値感・絶望感など共通点も多い[32]単極性うつ病の併病としてのパーソナリティ障害は、回避性依存性、強迫性が多く境界性は少ないのだが、入院患者に関しては53%が境界性パーソナリティ障害と診断されたデータもある[33]。これは手厚い入院治療により患者が退行し、性格が変容した可能性がうかがい知れる結果であり[34]、治療により退行した患者が境界性パーソナリティ障害と誤診されるケースもあるだろう。

境界性パーソナリティ障害は情緒障害スペクトラムであるとする研究もある。また、双極性障害(躁うつ病)の軽躁ないし躁状態の時は行動化が激しいなど症状が類似する。近年、境界性パーソナリティ障害との鑑別が困難な非定型の双極性障害が増加傾向にあり、その鑑別方法については議論される処となっている[35][36]。またアメリカの双極性障害研究者・臨床家達の間では、境界性パーソナリティ障害を人格の問題ととらえ精神療法のみを行うべきではなく、気分障害ととらえ、精神療法と合わせ気分安定薬を使うべきという意見が大半をしめている[37]。統合失調感情障害や、初期の統合失調症なども誤診されやすい所見を持つ[38]

広汎性発達障害

高機能広汎性発達障害の成人が境界性パーソナリティ障害を併存することは稀だとみられているが[39]、未だ研究段階である。傷つきやすい自己や被害妄想、対人関係の未熟さ・執拗さ、リストカットや大量服薬などの衝動行為を繰りかえす例もあり、発達障害が見逃されているケースでは、境界性パーソナリティ障害と診断されてしまうことがあるという[40]。またADHDと合併したと思われる例に、ADHDに対する薬物治療を開始したところ、敵意や猜疑心などの症状が治まったとの報告もあり、鑑別には慎重を要するだろう[41]

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

境界性パーソナリティ障害の人はしばしば顕著な外傷体験を持っている。しかしPTSDに見られるような過剰な警戒心、刺激への過敏反応、フラッシュバックなどはないことが多い。PTSD解離トラウマに関連した直接的な刺激で起こるが、境界性パーソナリティ障害の解離状態は一般的なストレス下で起こる。PTSDの研究で知られるアメリカ精神科医ジュディス・ハーマンはその著書の中で、境界性パーソナリティ障害は複雑性PTSDであると述べている[42]。なおDSM-IVには複雑性PTSDに該当する診断項目はない。

解離性同一性障害(DID)

自己同一性の拡散、不安定な情動統制、自己破壊的行動、対人関係の障害など、一見して境界性パーソナリティ障害と似た点も多い解離性同一性障害[43]だが、解離の表れには相違がある。境界性パーソナリティ障害では解離は、ストレス下において出現する防衛規制の一部であるが、解離性同一性障害では主軸にある症状である。またアメリカでは解離性同一性障害の35 - 71%が、境界性パーソナリティ障害の診断基準を満たすというデータがあり[44]、併存も多いとみられている。

その他のパーソナリティ障害

  • 自己愛性パーソナリティ障害 - 境界性パーソナリティ障害では、対人関係において支持への要求を顕著にあらわすが、自己愛性パーソナリティ障害の場合はそれよりも巧妙な手段を用いることが多い。自身を否定された時に対する過敏性は共通している。境界性パーソナリティ障害は情緒が極端で、対人関係の安定性が低いのに対し、自己愛性パーソナリティ障害はより安定し持続した関係を持つことができ、尊大であり自己評価も高い[45]
  • 反社会性パーソナリティ障害 - 境界性パーソナリティ障害が反社会的行動をとった場合は恥や呵責、不安を感じることが多い。一方、反社会性パーソナリティ障害の人が後悔する場合は、自分自身にもたらされた結果においてのみであり、不安も感じない。
  • 統合失調質パーソナリティ障害 - 境界性パーソナリティ障害の感情の平坦さは抑うつとともに現れる状態様であるが、統合失調質パーソナリティ障害の感情の平坦さは性格的なもので恒常性がある[46]。薬物の乱用率も低い。
  • 演技性パーソナリティ障害 - 演技性パーソナリティ障害の方が、全体的な機能水準が高く、対人関係や自己像などの安定性が高い。自己破壊的な行為はないとされる[47]

原因

近年の研究結果から、次のものが原因として考えられている。

生物学的要因

いくつかの生物学的研究では、発生的、神経学的、生物学的な可能性を示唆している。ある研究では一親等が境界性パーソナリティ障害である場合が、一般母集団より5倍高かった。環境の関与も否定できないが、発生的要因ともとらえることが出来る。1980年代の研究では、境界性パーソナリティ障害の親は統合失調症が少なく、気分障害の頻度が高いとしている[48]

さらに多くの神経心理学的研究や脳機能画像研究によって、境界性パーソナリティ障害における大脳皮質前頭前野機能の低さが指摘されている。MRIによる脳画像では、海馬扁桃体が一般の人よりも小さかったという報告がある[49]。前頭前野の機能の低さは、不安や攻撃性などの情動のコントロール、思考の柔軟性、共感性に関係しているとみられている[50]。さらに境界性パーソナリティ障害の患者が自傷行為を習慣的、嗜癖的に行う際、不安や痛みなどの不快反応を感じにくいことが知られているが、脳機能のレベルでも痛みに対する体性感覚野の反応が低いこと、自傷行為により、不安を生み出す扁桃核の反応が一時的に抑制されることが示されている[51]

また境界性パーソナリティ障害の際立った症状は、基底に生物学的基質を有するとされる。情動不安定性、抑うつは脳のアドレナリンセロトニン作動性の異常に関連し、一過性の精神病性エピソードはドパミン、自傷や自殺企図などの衝動的攻撃的行動はセロトニンの異常であるとされる研究がある[52][53][54][55]

さらに40%において脳波上、非局在性の機能不全を示す異常な広汎性徐波がみられるという研究がある[56]

環境的要因

アメリカの統計では、境界性パーソナリティ障害の人の91%が小児期の外傷体験を持っているとされる[57]。小児期における養育者からの早期の分離や、ネグレクトなどの虐待経験が多いとされる研究もある[58]。成人の場合はパートナーからの性的暴力などのドメスティックバイオレンスを受けている人に有意に多かった[59]。また、日本での調査でも小児期の虐待は多くみられ、ある調査では身体的虐待33%、性的虐待51%、情緒的虐待68%であった。他のエピソードとしては養育者の過保護などもあった[60]

対処

アメリカでは境界性パーソナリティ障害の治療の中断率が高いとされる。ガンダーソンの調査では、半年間での中断率は患者の50%、一年では75%だとし、他の障害と比べ初期から終結まで一貫して治療する例は少なく、10%程度だった。日本での統計は少ないが、中断率14.9%、治癒率は18.4%、不変ないし悪化が33.3%との報告があり、精神科通院患者の中でも特別に中断率が高いというわけではない。この違いはアメリカ日本の医療システムの差異による部分もあるが、日本の患者の場合、発症の環境要因として虐待よりも過保護などのケースが多く、より依存的な性質をもつためとの説もあり、治療の継続のしやすさの面では有利であるが、一方では日本独自の精神療法を考慮する必要性もでてくる[61]

なお、日本に80ある大学医学部のうち精神療法を得意としている大学はわずか数件しかない。ほとんどが生物学的な研究を主体としているため、精神科医がカウンセリングのトレーニングを受ける機会は稀である[62]

深刻な自殺企図などの衝動的行動、他害の危険、一過性の精神病症状、他の合併症(うつなど)が重篤な場合、外来治療に反応しない例などでは短期入院の適用となる[63]

精神療法

主な治療法は精神療法である。精神療法は、精神力動的精神療法(支持的精神療法など)や、その一派である精神分析的精神療法、認知療法、対人関係療法、家族療法など様々なものがある。精神療法の効果が出るには一年以上などの長期間がかかるとされている。アメリカ1991年に自殺行為の治療の為に開発され、境界性パーソナリティ障害の治療に応用されている認知行動療法の一種、弁証法的行動療法(DBT - Dialectical Behavior Therapy)は新しいアプローチとして日本でも関心が高まってきている[64]。またイギリス1999年にベイトマン、フォナギーにより開発されたメンタライゼーション療法(Mentalisation Based Treatment - MBT)[65]は弁証論的行動療法と共に、現在最もエビデンスのある精神療法である。

伝統的な力動的精神療法、支持的精神療法などの精神力動的治療では、治療開始から18週後には、対人関係の改善、自尊心や人生への満足などが生まれ、8ヵ月後にも治療成果が維持された[66]。精神分析的精神療法についても、12か月 - 18か月の治療で、自傷行為や自殺企図、入院期間の長さ、不安、抑うつ、全体の適応性が有意に改善したという結果が出ている[67][68]認知療法に関するデータは少ないが、アメリカ国立衛生研究所のデータでは16週間の治療後の比較では、対人関係療法に優るとの結果が出ている[69]。弁証法的行動療法でも短期での改善は得にくいが、治療開始後1年以上の経過では、社会適応や仕事の実績の向上、怒りまたは不安や動揺の減少などが見られた[70]。また弁証法的行動療法は他の治療法に比べ継続率も高いという[71]

これらの精神療法は、通常1時間ほどの面接を週1 - 2回、弁証法的行動療法では1回50分から90分の面接を週1 - 2回、150分のスキルトレーニングが1回、さらに電話によるコンサルテーションなどの手厚い治療体制であり、日本においては保険診療内に収まらず広く普及することは困難との見方もある。しかしイギリスで開発されたメンタライゼーション療法(MBT)は週2回の外来治療やデイケア、集団療法などで行うことが出来、導入のしやすさと確実な効果で注目を集めている[72][73]

精神分析的精神療法は一定の効果が示されているが、一部では精神分析的な関わり自体、境界性パーソナリティ障害の治療に有益でないとの声もある。メンタライゼーション療法を開発した精神分析家フォナギーは、メタファーの解釈などの従来の精神分析的な関わり合いは、かえって他者の心情を理解しにくい境界性パーソナリティ障害の患者を混乱に陥れ、病理を助長させると苦言した。弁証法的行動療法の創始者であるリネハンも、患者を中傷する可能性を持ち、辛いトラウマの再現となりうる解釈については批判しており、症状を悪化させると述べている[74][75]

薬物療法

現在境界性パーソナリティ障害に対して保険適応のある薬剤はない。薬物療法は根治的治療にはならないが、付随する症状の緩和の為に使われる。薬物は、自殺関連行動、自傷や他害などの急性症状には最も有効であるが、維持的に使った場合は限定的な効果しかないとする意見もある[76]

英国国立医療技術評価機構では2009年のガイドラインにて、エビデンスが弱くかつ薬物治療による副作用が深刻であるため、BPDの治療では「BPD・個人の疾患・行動の疾患に対して薬物治療はすべきではない(should not)」しかし「併存疾患の全体的治療という点では薬物治療も考慮することができる」とし、 「精神的・肉体的に併存疾患のないBPD患者と現在薬を処方されている患者に対しては、投薬量を削減し不必要な薬物治療を打ち切る方向で見直すべきである」と定めている[77]

米国精神医学会では、副作用の少なさなどの観点から、第一選択は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を推奨している。SSRIは主に抑うつや情動不安定性の症状に有効である。モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO)もそれらの症状に効果的だが重篤な副作用がある。著功しない場合は他の抗うつ薬への切り替えが考えられるが、三環系抗うつ薬は衝動性にはマイナスになる場合がある。炭酸リチウム(商品名 リーマス)での強化も考慮される。低容量の抗精神病薬の使用は、怒りや認知・知覚症状などの精神病症状に有効である。バルプロ酸(デパケン)などの抗てんかん薬類も第二選択である。解離にはナルトレキソン(本邦未発売)、不安などの症状にはクロナゼパム(リボトリール)などの追加も考えられる[78]

1966年から2010年までのメタアナリシス(研究結果を分析したもの)では、抗てんかん薬などの気分安定薬抗精神病薬に衝動性制御効果、情動不安定性への効果が示され、また抗精神病薬に関しては認知・知覚症状への有効性も認められた。抗うつ薬はそれらの症状に効果は無く、情動不安定性にのみ有効という結果になった[79]。また、ω-3脂肪酸サプリメントによる衝動性や抑うつ改善効果などについても研究されている[80][81]

これらの薬物療法は、抑うつや感情抑制、認知・知覚の障害や妄想様観念などには一定の効果があるが、慢性的な空虚感、見捨てられ不安などには効果がないとされ、患者により治療法は一律ではない。過量服薬の危険性を考慮すると、より安全性が高く依存性が少ない薬剤の選択、および少量で最大の効果が望める薬物療法が薦められるのは当然といえよう。なお抗精神病薬に関しては専門家の間でも、統合失調症と同じ容量ではなくごく少量を投与するべき、という意見の合意が得られている。副作用や安全性の観点からは定型抗精神病薬よりも非定型抗精神病薬の使用が適している。副作用に対し敏感な患者も多いため、事前に詳細な説明をすることは不安に軽減に繋がる[82]

また境界性パーソナリティ障害の薬物療法は、症状の緩和作用以上の深い意味を持つとの見解もある。薬物への意識または無意識的な「投影」である。それは患者が過量服薬する際、大半は他者から与えられる処方薬によって行われることにも表現されている。重要な他者(医師を含む)の存在の拒絶や受け入れ、一体感の切望または敵意による過量服薬、不安や疑心暗鬼から副作用に過敏になるなど、意識・無意識的な他者への「投影」が投薬治療に様々な意味を持たせているという。治療者も自身の能力に対する不安感を、患者に薬を与えることで解消しようとしていないか省みる必要があるだろう[82]

境界性パーソナリティ障害の有名人

太宰治(1909 - 1948)

過去(または現在)境界性パーソナリティ障害だったとされる有名人は、ヘルマン・ヘッセ太宰治ダイアナ妃マリリン・モンローウィノナ・ライダー[83]ブリトニー・スピアーズ[84]、弁証法的行動療法を開発した、心理学者マーシャ・リネハンなどがいる。

太宰治は慢性的な虚無感や疎外感を抱えていた。安定している時期は自己愛的性格だったが、不安定時は感情統制が困難であったとされ、芥川賞を逃した時の怒りは常軌を脱していたという。感受性が強く、なおかつ高い知能を持っていた太宰がパビナール依存に陥ったのは当然の成り行きだったのかもしれない。また離人感や希死念慮も有しており、自殺(心中)未遂を繰り返し5回目で自殺完遂に至った。28歳の時には精神科病院である、江古田の東京武蔵野病院へ入院している[85]

マリリン・モンローも、7回に及ぶ自殺未遂を繰り返し、薬物の過量服薬で死去した。母子家庭であったが、母親はうつ病で何度も精神科病院に入院しており、孤児として育てられたモンローは、愛情に飢えていたが他者との親密な関係を保ちにくかったといわれる。睡眠薬アルコールの依存症になり、1954年から精神分析医による治療を受けている。主治医はモンローについて「いつも自分を価値のないつまらない人間だと思っていた」と振り返る。死の数日前のインタビューでは、女優としてのこれからの抱負を語り、「世界が必要としているのは本当の意味での親近感です。どうぞ私を冗談扱いにしないで下さい」と述べている[86][87]

境界性パーソナリティ障害で入院歴もあるウィノナ・ライダーは、主演・制作総指揮をした映画「17歳のカルテ」で、境界性パーソナリティ障害の主人公スザンナ役を演じている。映画の原書となったノンフィクション小説 「思春期病棟の少女たち」 に惚れ込んだ彼女は、映画化権を買い取り制作にも参加した。原作者のスザンナ・ケイセンは、10代の頃に境界性パーソナリティ障害と診断されたが、治癒した後に作家になり同自伝的小説を書いた[88]。スザンナは現在でも小説家として活動を続けている。

なお、ウィノナ・ライダーは「バカに見える」という理由で元来ブロンドである髪を黒く染めており、女優業については長い間、軽薄で恥ずかしい仕事だと思っていたという[89]

ダイアナ妃もリストカットなどの自傷行為、過食嘔吐などの摂食障害を克服した人物として知られている。特に王妃として公人生活を送るようになってからは、衆人の目に晒されるストレス、夫婦間の諍いにより摂食障害が悪化し、剃刀やレモンスライサーで体を切ったり、夫のチャールズと口論中にテーブル上にあったペンナイフで自分の胸や腿を刺すなど衝動的な行動を取る事もあった。慢性的なうつ状態もあり、大勢の心理療法士心理学者、精神分析医にかかっていた。後年のダイアナはチャリティー活動に生きがいを見出し、対人地雷の廃絶、ホームレスエイズ患者、暴力被害や薬物依存症などの女性問題に取り組むなど、既存の枠に捕らわれない奉仕活動を行い、「病んでいる人、苦しんでいる人、虐げられた人とともに歩んでいる」と称えられ、世界中で愛された[90]

弁証法的行動療法を開発したワシントン大学博士マーシャ・リネハンは、17歳の時にひきこもりとなり精神科病院に入院した。当初の診断名は統合失調症であった。薬物療法を受け始め、その後何時間ものフロイト式精神分析や30回に及ぶ電気けいれん療法も行ったが症状は改善せず、自傷行為の激しさの為に2年以上も入院生活を送り、退院後も自殺未遂を起こしたが、退院後は保険会社事務員として働きながら、ロヨラ大学の夜間部に通い心理学を勉強した。1971年博士号を取得。現在でも心理学者として第一線で活躍している[71]

脚注

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  • 町沢静男『ボーダーラインの心の病理―自己不確実に悩む人々』創元社、2005年8月。ISBN 9784422113395 
  • 秋山剛、酒井佳永、松本聡子「双極スペクトラムと気質」『こころの科学』第131巻、2007年1月。 
  • 林直樹『リストカット ― 自傷行為をのりこえる』講談社、2007年10月。ISBN 9784062879125 
  • 岡野憲一郎「医原性という視点から」『こころの科学』第154巻、2010年11月、30-35頁。 

関連項目

外部リンク

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