背乗り
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背乗り(はいのり)とは、工作員や犯罪者などが正体を隠すために、実在する赤の他人の身分・戸籍を乗っ取って、その人物に成りすます行為を指す警察用語。
概要[編集]
成りすます手段には、既に死亡または失踪している人間の戸籍を不正に取得する場合と、成りすまし対象の人間を殺害した上で身分証明書などを奪って成りすます場合に大別されるという。
元々はソ連の情報機関が古くから用いた方法だというが、北朝鮮情報機関がよく使う方法でもあるため、旧ソ連からその影響下にあった北朝鮮にもたらされたとする指摘がある。日本人拉致事件に背乗りを目的としたものが多いのは、日本で工作活動を行うほか、大韓民国に入国するための日本国旅券を得るためといわれている。周囲に気付かれないよう、身寄りのない人が狙われやすいという[1]。また、日本の終戦後にかけてはかなりの数の遺体が特定されず、身元不明となったことからこの時期に大規模な背乗りを行うことも不可能ではなかったとされる。
平成28年10月には、平成3年6月6日に就学査証で日本に合法に入国し、在留期限が平成8年5月31日までであったにも拘らず、日本人になりすますことで、21年間不法滞在を行なっていた中華人民共和国国籍を持つ男が、入管難民法違反で京都府警察に逮捕された事例も存在する。日本の年金手帳は、定期的な更新の必要がないことを悪用して[2]、実在する日本人の年金手帳を身分証明書として背乗りすることで、本来の持ち主の日本人の名前と身分で生活していた[3]。
事件例[編集]
- 西新井事件 - 北朝鮮工作員であるチェ・スンチョルは、日本人になりすまして、日本や韓国、ヨーロッパで活動した。1985年に発覚。
- 大韓航空機爆破事件 - 北朝鮮工作員である金賢姫は、偽造した日本国旅券を使って日本人になりすまし、事件を遂行した。
- 辛光洙と共犯者による日本人拉致事件。
- 黒羽・ウドヴィン事件 - 1995年に、東アジア系のソ連工作員が失踪した日本人の黒羽一郎に成りすまして諜報活動を行っていた[4]事が警視庁公安部外事第一課の捜査で判明した。捜査に気付いたこの男は行方を絶ち、公安部は国際刑事警察機構(ICPO、通称インターポール)に男を手配したが、未だに行方は分かっていない。
背乗りを取り扱った作品[編集]
- 小説
- 漫画
- 釋英勝『ハッピーピープル I LOVE JAPAN』 - 主人公の山田久と実家にいる家族らが、日本を敵視する“集英国人”に背乗りされる。
- 太田垣康男『MOONLIGHT MILE』(2000年) - 登場人物の加藤研一(カトー)が、背乗りによって日本人に成りすました、中国の同盟国である「共和国」のエージェントとして描かれている。
- 安彦良和『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(2001年) - 『機動戦士ガンダム』では、主人公のライバルであるシャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)は素性を隠すために偽名で軍に入隊していたが、リメイク版の『ジ・オリジン』で、その手法が背乗りであったことが描かれている。
脚注[編集]
- ^ “スパイ:ロシア人の男を書類送検 失踪日本人になりすます”. 毎日新聞. (2008年8月14日). オリジナルの2008年9月5日時点におけるアーカイブ。
- ^ 井戸美枝『『社会保険 これでスッキリわかる!』』日本実業出版社、2007年8月。ISBN 978-4534042712。
- ^ “日本人なりすまし21年不法残留、中国籍男を再逮捕 京都”. 京都新聞. (2017年10月20日). オリジナルの2018年1月23日時点におけるアーカイブ。
- ^ “【成りすましスパイ事件】巧妙な背乗り 30年発覚せず (1/2ページ)”. MSN産経ニュース. (2008年8月13日). オリジナルの2008年8月14日時点におけるアーカイブ。
参考文献[編集]
- 軍事研究 「ワールド・インテリジェンス」 2006年11月号「北朝鮮&中国の対日工作」