高山病

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

高山病(こうざんびょう、altitude sickness)とは、低酸素状態に置かれたときに発生する症候群。最近では、(熱射病や日射病という病名がより病態を表現した熱中症と呼称変更されたように)「高度障害」と呼ぶ場合も多い。

概要[編集]

高山では空気が地上と比べて薄いため、概ね2400m以上の高山に登り酸欠状態に陥った場合に、さまざまな症状が現れる。 主な症状は、頭痛、吐気、眠気めまい)である。他に、手足のむくみ睡眠障害運動失調、低圧と消化器官の機能低下からくる放屁などが現れることもある。低酸素状態において数時間で発症し、一般には1日後 - 数日後には自然消失する。しかし、重症の場合は高地脳浮腫(High-Altitude Cerebral Edema; HACE)や高地肺水腫(High-Altitude Pulmonary Edema; HAPE)を起こし、死に至ることもある。

予防[編集]

危険因子として、呼吸器系・心血管系の既往症を持つ者は勿論だが、他に「過去に高山病の症状を呈したことがある者」や「偏頭痛の既往を持つ者」が指摘される。また、海面近くの標高から2500mの高地へ1日の内に移動すると発症しやすい。人によっては2000m前後の標高でも発症することがある[1]血液中の酸素飽和度は、小型のパルスオキシメーターを使って比較的簡単に測定できる。これを使えば、酸素欠乏症に移行する前に予防策が立てられる、と期待されている。

高所順化[編集]

逆説的ではあるが2400m以上の高地に移動した日は、すぐには休憩せず30分〜1時間ほど歩きまわることで人体の高所順化を促すことができると経験的に知られている。

治療[編集]

低地への移動[編集]

パルスオキシメーターで酸素不足が確認されたら、根本的な治療は低地に移動することである。重症の場合は、直ちに集中的治療が必要である。 他に上記のリスク因子を持つ者への対処として、危険因子を持つ者や軽症(下山を要さない程度)の者は1日当たりの登高を500m以下にする[2][1][1]、他に高地での激しい運動を回避するなどが挙げられる。 負傷や症状の進行により移動が困難な場合はガモウバッグと呼ばれる可搬式の加圧カプセルに入りカプセル内の気圧を上げることで疑似的に標高を下げる方法もあるが、症状が軽微な場合は高度馴化をいたずらに遅らせるため使用は推奨されない[3]

薬物的治療[編集]

酸素投与によって登山を続行できる可能性があるのは肺水腫の兆候が無い者だけである。徴候があれば下山か救助要請しか無い。

最も命を脅かすのは肺水腫による呼吸不全である。アセタゾラミド(ダイアモックス®)の服用[4]は利尿作用によって肺水腫を軽減すると考えられている。また、(高地性でなく一般的な肺水腫の治療を応用し)ニフェジピンプレドニゾロンの投与もありうる[1]エビデンスはない。脳浮腫による頭痛に対しては非ステロイド性抗炎症薬が有効とされる[1]が、この薬剤の禁忌(喘息などのアレルギー胃潰瘍、小児)には注意が必要である。 また、直接の治療ではないが、高山病の症状のひとつである脱水症状からくる血栓を防ぐために低容量のアセチルサリチル酸(アスピリン®)を予防的に服用することもある[5]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e Bärtsch P, Swenson ER (June 2013). “Clinical practice: Acute high-altitude illnesses”. N Engl J Med 368 (24): 2294–302. doi:10.1056/NEJMcp1214870. PMID 23758234. http://www.nejm.org/doi/abs/10.1056/NEJMcp1214870?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed. 
  2. ^ Tod Schimelpfenig "Wilderness Medicine, 4th ed." Stackpole Books, ISBN 08-117-3306-8
  3. ^ 国際山岳連合医療部会公認基準 ポータブル高圧チャンバー(pdf)
  4. ^ メルクマニュアル家庭版, 296 章 高山病
  5. ^ 社団法人日本登山医学会 急性高山病とは

関連項目[編集]