減圧症

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減圧症
分類及び外部参照情報
米国海軍兵士が治療のため減圧室に入っているところ
ICD-10 T70.3
ICD-9 993.3
DiseasesDB 3491
eMedicine emerg/121
MeSH C21.866.120.248
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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減圧症(げんあつしょう)は、身体の組織や体液に溶けていた気体が、環境圧の低下により体内で気化して気泡を発生し、血管を閉塞して発生する障害の事である。潜水症(病)潜函症(病) あるいは ケーソン病 とも呼ばれる。

概要[編集]

減圧症イメージ画像

酸素二酸化炭素は、呼吸により速やかに排泄されるので減圧症を発生させることはほとんどない。通常問題になるのは窒素で、大深度潜水に用いられるヘリウムが原因になることもある。

スクーバダイビングケーソン工事などにより高圧環境下で体内に溶け込んでいた窒素が、急浮上などにより急速に周囲の圧力が低下することにより気泡化するケースが典型的である。

与圧された旅客機において何らかの原因で急減圧が生じたときや、戦闘機で急速上昇を行った場合、高高度において爆撃機に搭乗中に被弾した場合、宇宙服宇宙空間に出た場合など、通常の気圧から急激に気圧が下がった場合にも減圧症になる場合がある。

日本国内では、西伊豆でスクーバダイビングを楽しんだあと、箱根を越えて帰宅する場合に発症するケースが多く報告されている。

症状[編集]

急性症状としては関節痛(ベンズともいう)が典型的である。重症例では呼吸器系の障害(息切れ・胸の痛み)やチアノーゼが見られる場合もある。生涯にわたる神経系の損傷等、重篤な後遺症を招くケースも少なくない。

ごく軽い減圧症では、ごく微細な毛細血管のみが閉塞し、これらの急性症状が見られない場合もあるが、この程度の減圧症でも長期的にはの組織壊死を招く場合がある。

治療[編集]

高圧酸素療法が、ほぼ唯一の治療法である。自然治癒はしないものと考えた方が良い。発症後できる限り早い時期に治療を開始することで、後遺症を最小限に留めることができる。特に重症の場合は一刻を争い治療を開始する必要がある。緊急的には、再度潜水して気泡を縮小させ症状を軽快させる(フカシと言う)ことも行われないわけではないが、一般には推奨されない。

救急処置として(常圧の)純酸素を呼吸させることで、血管の閉塞に起因する低酸素状態から発生する障害や後遺症をある程度緩和できる可能性が高い。減圧症を発症した場合には、可能な限り早期に最寄の医療機関を訪問し、あるいは救急車を呼ぶなどして酸素吸入を開始し、その後高圧酸素療法を施行可能な医療機関に移送すべきである。

高圧酸素療法は、どこの医療機関でも施行可能な治療ではないが、大学病院等の高度医療機関、労災病院、沿岸部の公立病院等、減圧症患者の来訪頻度が高い医療機関には施行設備が設置されている場合が多い。また徳洲会系列の病院は、経営方針として高圧酸素療法の施行設備を有している場合が多い。同時に多人数の患者を治療することはできないため、訪問予定の医療機関が、減圧症患者の受け入れ可能な状態にあるか否か、あらかじめ確認してからの受診が望ましい。

潜水病の医学的研究機関として海上自衛隊潜水医学実験隊横須賀市に設立されている。また、空中での減圧症については、航空自衛隊航空医学実験隊で研究されている。

予防[編集]

減圧症は環境圧の急激な変化で発生するため、少しずつ圧力に体を慣らす事で防ぐことができる。戦闘機搭乗や宇宙遊泳などの場合には、減圧症を発生させにくい純酸素を呼吸して予防することもできる。

特殊な環境下でなければ減圧症にならないので、スクーバダイビングなどをする場合にのみ注意すればよい。一般に、スクーバダイビングを行ってから24時間以上経過しなければ、飛行機に搭乗してはならない。また、ダイビングの直後に高山に登ってはならないなどの指導がある。

なお、潜水直後の飲酒は減圧症を招きやすく危険である。

外部リンク[編集]

  • 潜水医学(東京医科歯科大学医学部附属病院高気圧治療部准教授による減圧症の解説ページ)

関連項目[編集]