テトロドトキシン
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| テトロドトキシン | |
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| 別名 | テトロドトキシン |
| 分子式 | C11H17N3O8 |
| 分子量 | 319.27 g/mol |
| CAS登録番号 | [4368-28-9] |
| SMILES | C([C@@]1([C@@H]2[C@@H]3[C@H](N=C(N[C@@] 34C([C@@H]1O[C@@]([C@H]4O)(O2)O)O)N)O)O)O |
テトロドトキシン (tetrodotoxin, TTX) は化学式 C11H17N3O8 で表され、ビブリオ属やシュードモナス属などの一部の真正細菌によって生産されるアルカロイドである。一般にフグの毒として知られるが、他にアカハライモリ、ツムギハゼ、ヒョウモンダコ、スベスベマンジュウガニ、トゲモミジガイ、カブトエビもこの毒をもっている。習慣性がないので鎮痛剤として医療に用いられる。分子量 319.27、CAS登録番号 [4368-28-9]。
目次 |
[編集] 毒性
- マウス経口 LD50 0.01 mg/kg
- マウス皮下 LD50 0.008.5 mg/kg
テトロドトキシンは300℃以上に加熱しても、分解されないので注意が必要である。ヒトの経口摂取による致死量は2–3mgで、経口摂取では青酸カリの850倍の毒性を持つ。
[編集] 単離・構造決定
1887年、高橋順太郎教授(東京帝国大学)と助教授の猪子吉人と共にフグ毒の研究を始め、1889年にフグ毒が生魚の体内にあること、水に解けやすいことなどから、高橋はそれがタンパク質(酵素)様のものでないことを証明し、毒力表を作成した[1]。
1907年、田原良純(東京帝国大学)によりTTXが世界で初めて単離された。しかしその複雑な構造や化学的不安定性から構造決定は難航した[2]。
1964年、平田義正(名古屋大学)、津田恭介(東京大学)、ロバート・バーンズ・ウッドワード(ハーバード大学)の3グループが独立に構造決定を行った。同年京都で開催されたIUPAC国際天然物化学会議において、この3者が同時に同じ構造を発表している。
[編集] 全合成
1972年に岸義人が D,L-テトロドトキシン(ラセミ体)の全合成に成功した。2003年には磯部稔・西川俊夫(名古屋大学)らと J. Du Bois(スタンフォード大学)が別々に初の不斉全合成を達成している。
[編集] 生物がもつ毒
クサフグ、トラフグに代表されるフグ毒の成分はTTXであるが、ハコフグではパフトキシンを蓄積する。何れも、もともと細菌が生産したものが餌となるヒトデ類、貝類を通して生物濃縮され、体内に蓄積されたものと考えられている。
フグやイモリなどの保有生物はTTXに対し高い耐性を持っているため、保有生物自身が中毒死することはない。これは自然に蓄積する濃度のTTXに耐えられるという意味で、作用点となるイオンチャネルの形が他の動物と違うのである。しかし人為的に高濃度のTTXを与えれば中毒する。
- 毒と毒化に関する研究
- 季節により毒の量が変わり、種によって毒化する部位が異なる。
- 餌の種類を変えて養殖すると、同じ種であってもフグ毒が少なかったり、全くない場合がある[3]。
- 無毒の養殖フグの群れの中に、毒を持つ天然種を放流すると無毒の群れも毒性を帯びることもある。
- TTX生産菌の V. alginolyticus がクサフグの消化管内に生息しているが、腸内細菌の一つとして生息している可能性がある[4]。
- フグは、TTXを含む餌を好んで摂食していることから、フェロモン的な作用も持っているとも考えられる[5]。
- TTX耐性の低い種は積極的にTTXを排出している[3]。
- 石川県の河豚の卵巣の糠漬けの毒素分解の仕組みは不明[6]。
フグ毒についてはまだまだ解明されていない部分が多いのが実情である。
[編集] 耐性
幾つかの生物では、耐性の仕組みが解明されつつある[7]。
- ヒガンフグの肝臓中で、TTX はグルタチオン、システインに抱合され無毒化。
- ヒガンフグの血漿中には、TTX. および サキシトキシン(STX.)と結合する糖タンパク質(PSTBP)が存在し、TTXと結合することでTTX.の血中濃度が低下。サキシトキシは貝毒の原因物質のひとつ。
- ヒガンフグのNaチャネルは、ラットと比較するとH-STXが結合しにくい。
[編集] フグ以外の主な保有生物
ここに記載されている生物全てが常にTTXを蓄積している訳ではなく、生息海域や季節で保有の有無や毒の量は変化する。
- 両生類
- Ateropus属のカエル、カリフォルニアイモリ、アカハライモリ[8]
- 魚類
- ツムギハゼ -- フィリピン、台湾などに生息。
- 甲殻類
- スベスベマンジュウガニ[9]、カブトエビ、ウモレオウギガニ
- タコ類
- ヒトデ類、貝類
[編集] 毒の目的
- フグ:卵巣に多いことから、卵を捕食されることを防ぐ目的と考える説がある。また、フェロモン的な作用で産卵期にメスがオスを誘引する[5]。
- ヒョウモンダコ:餌のカニを捕獲する際に、毒素を分泌し獲物を麻痺させている。
- カリフォルニアイモリ:捕食者からの防衛
[編集] 中毒
[編集] 外傷性中毒
ヒョウモンダコと接触した。
[編集] 食中毒
毒化した魚介類の有毒部位の摂食により発症する。
[編集] 臨床所見
神経毒であるテトロドトキシンは神経細胞や筋線維の細胞膜に存在する電位依存性ナトリウムチャネルを抑制することで、活動電位の発生と伝導を抑制する。そのため、フグ毒の摂取による主な症状は麻痺である。
[編集] 症状
摂食後の20分程度から数時間で症状が現れる。意識が明瞭なまま麻痺は急速に進行し24時間以内に死亡する場合が多い。
- 第1段階
- 指先や口唇部および舌端に軽い痺れ。目眩により歩行困難。頭痛や腹痛の場合も有り。
- 第2段階
- 運動麻痺が進行、嘔吐、知覚麻痺、言語障害、呼吸困難、血圧降下。
- 第3段階
- 全身の麻痺症状、骨格筋の弛緩、呼吸困難及び血圧降下が進行。
- 第4段階
- 意識の消失、呼吸停止。死亡。
[編集] 処置方法
拮抗薬や特異療法が存在しない為、最も有効な処置は毒を口から吐き出させることで、次に人工呼吸などを行う。これは呼吸系の障害が起きるためである。2007年現在、解毒方法は見つかっていない。ただし、処置さえ間違わなければ救命率は高いとされる[要出典]。経口摂取の場合は全身に毒が回るまでに時間を要するので、適切な応急処置を施せば助かる可能性は高い。しかし血液中に直接毒が入った場合、全身に毒が回る速さが経口の場合の最大100倍になるといわれる。
[編集] 脚注
- ^ 高橋順太郎・猪子吉人「河豚之毒」明治22(1889)年『帝国大学紀要医科』第1冊第5号
- ^ 石原明「明治前後における医薬の変遷」『漢方の臨床』1962年、9巻、9号、p493
- ^ a b フグ肝組織におけるTTXの蓄積-東京水産大学水産学部食品生産学科日本水産学会誌 Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries 68(6) pp.920-921 20021115
- ^ フグ毒添加によるVibrio alginolyticusの増殖促進効果PDF 東海大学海洋研究所 研究報告 第29号(2008年)
- ^ a b フグ毒テトロドトキシンはフェロモンか?ファルマシア Farumashia 32(8) pp.961-962 19960801 社団法人日本薬学会
- ^ フグ卵巣ぬか漬けの微生物によるフグ毒分解の検討日本水産学会誌 69(5) pp.782-786, 853 20030915 社団法人日本水産学会
- ^ フグとイモリのテトロドトキシン耐性機構について天然有機化合物討論会講演要旨集 (49) pp.443-448 20070824 天然有機化合物討論会
- ^ イモリのテトロドトキシン新誘導体について天然有機化合物討論会講演要旨集 (29) pp.240-247 19870725 天然有機化合物討論会
- ^ スベスベマンジュウガニの自切 : 有毒の有効性(英文)甲殻類の研究 Crustacean research (24) pp.137-145 19951215 日本甲殻類学会
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- フグ毒研究の最近の進歩藥學雜誌 Journal of the Pharmaceutical Society of Japan 120(10) pp.825-837 20001001 社団法人日本薬学会
- 総説: 野口、フグ毒研究の展望 日本水産学会誌 Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries 68(6) pp.928-929 20021115
- フグ毒テトロドトキシンの構造決定と合成
- フグにおけるフグ毒の存在形態日本水産学会誌 68(6) pp.922-923 20021115 社団法人日本水産学会

