三相女神

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「三相一体」の女神のしるし。月の三相(上弦の月、満月、下弦の月)にして、少女・母親・老婆が特徴的な徽章である。
三相一体の女神・ヘカテーの3つの姿。

三相女神(さんそうめがみ、Triple Goddess)は、太古の昔から世界を創造した地母神の三相と呼ばれている概念。「三柱女神」、「三相一体の女神」、「トリプル・ゴッデス(Triple Goddess)」とも。

由来[編集]

紀元前7千年紀アナトリアの村では女神の三相を表す、「うら若き少女(妙齢の処女)」、「成熟した母親」、「老婆」の3つの姿が描かれた太女神を崇拝した[1]、「三相一体の女神には3人の最も高貴なものたち」として知られている[2]。それは満ちる月・満月・三日月(欠ける月)というの三相でもあり、死と再生を繰り返す永遠の循環をも意味している。多面性を持った複雑な多種の相を持つ女神や魔女などは、刻々と姿を変える月に重ねられたのである。

概念[編集]

三相一体の地母神の主な概念は、「創造主」・「育成主」・「破壊主」が本来の意味であり、生産、死亡、豊饒、智、海、植物、森、雨、血、生命の循環等を司った。ギリシア神話などでは、「過去→現在→未来」、「生→死→再生」、「創造→維持→破壊」と「生誕→成長→衰亡」を司どる女神ともされて、「運命を支配する姉妹」、「高貴なる者」、「同様に高貴なる者」、「三番目の者」と呼ばれている。女神の三相は地上においては3種の魔女に擬人化されており、即ち「ヨーギニー(妙齢の処女)」、「マートリ(成熟した母親)」、「ダーキニー(老婆)」である。彼女たちで、この時には「自然の女神たち」と呼ばれた。

三相一体の女神[編集]

三相女神の3つ姿という典型的な組み合わせは、各神話にて三相一体の女神に代表される下記のリストを挙げる。

ギリシャ神話
ヘーベー(妙齢の少女)、ヘーラー(成熟した母親)、ヘカテー(老婆)
天界のセレーネー(月の光)、人間のアルテミス(善・悪)、冥界のヘカテー(月の闇)
モイラ(運命の三女神 - クロートー(創造者)、ラケシス(維持者)、アトロポス(破壊者))
ホーラ(季節と時間の三女神 - エウノミアー(秩序)、ディケー(正義)、エイレーネー(平和))
コレー(創造主)、デーメーテール(育成主)、ペルセポネー(破壊主)
ゴルゴーン(怪物の三姉妹 - ステンノー(力)、エウリュアレー(普遍性)、メドゥーサ(知恵))
グライアイ(魔女の三姉妹 - エニューオー(戦闘を好む者)、パムプレードー(意地悪な者)、デイノー(恐怖を与える者))
エリーニュース(復讐の三女神 - アレークトー(止まない者)、ティーシポネー(殺戮の復讐者)、メガイラ(嫉妬する者))
ムーサ(芸術の三女神 - アオイデー(歌唱(aoide))、ムネーメー(記憶(mneme))、メレテー(実践(melete)))
ローマ神話
ユウェンタース(妙齢の少女)、ユーノー(成熟した母親)、トリウィア(老婆)
ルーナ(妙齢の少女・満ちる月)、ディアーナ(成熟した母親・満月)、トリウィア(老婆・欠ける月)
天上のルーナ、地上のディアーナ、冥界のプロセルピナ
フォルトゥーナ(運命の三女神 - レゲア(支配権の女神)、ボナ(幸運)、マラ(悪運))
パルカ(運命の三女神 - ノナ(創造者)、デキマ(維持者)、モルタ(破壊者))
カピトリウム神殿に祀られていた三柱のペルソナ - ユーウェンタス(妙齢の少女)、ユーノー(成熟した母親)、ミネルウァ(老婆)
エジプト神話
ハトホル(生)、ネフティス(死)、イシス(再生)
北欧神話
フレイヤ(妙齢の少女)、フリッグ(成熟した母親)、スカジ(老婆)
ノルン(運命の三女神 - ウルズ(過去)、ヴェルザンディ(現在)、スクルド(未来))
ケルト神話
バイヴ・カハ(運命の戦女神 - モリガンヴァハバズヴ
トゥアハ・デ・ダナーンの戦いの三女神 - エリウバンバフォドラ
アナ(生)、バド(死)、モルガン・ル・フェイ(再生)
生命の母神 - アヌダヌタルトゥ
インド神話
カーリーの三相 - パールヴァティドゥルガーウマー
中国神話
八洞神仙の三柱女仙 - 麻姑(妙齢の少女)、何仙姑(成熟した母親)、黎山老母(老婆)

脚注[編集]

  1. ^ Merlin Stone『When God Was a Woman』より。
  2. ^ Waddell, L. Austine『Tibetan Buddhism』より。

関連項目[編集]