ダイヤモンド類似石

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ダイヤモンド類似石(ダイヤモンドるいじせき)あるいは模造ダイヤモンド(もぞうダイヤモンド)は、ダイヤモンド天然石あるいは合成石や外観や質感を模倣したもののことである[1]。つまり、ダイヤモンドの模造品のことである。

イミテーションイミテーションダイヤ(ダイヤ)ダイヤモンド・シミュラント(サイミュラント)、ダイヤモンド代用石などとも呼ばれる。

概説[編集]

ダイヤモンド類似石は人工合成ダイヤモンドとはまったく異なる。

ダイヤモンド類似石は、その化学特性、物理特性、 内部構造がダイヤモンドのそれと、一部あるいは全部が異なっている[1]。それに対して、人工合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同じ物理・化学特性を有している。また(人工合成ダイヤモンドは)資産価値も(天然ダイヤと)それほど違わない[要出典]

また、加熱や放射線照射により美しく見えるよう人工的に手を加えた、いわゆるエンハンスメント(処理)ダイヤモンドも、ダイヤモンド類似石の定義から除外されている。

ダイヤモンド類似石の代表的なものとしては、

  1. ガラス
  2. プラスチック
  3. セラミック
  4. 張り合わせ石[注 1]
  5. プレス(再生)製品

などが挙げられる[1]。 最もよく知られたダイヤモンド類似石としては、有鉛ガラス(クリスタルガラス、より具体的にはラインストーン)とキュービックジルコニア (CZ) で、いずれも天然には産しない人工合成石である。その他にも、チタン酸ストロンチウム、合成ルチルといった多くの人工合成ダイヤモンド類似石が1950年代半ばに開発されたが、すぐに廃れてしまい、いまやもう市場で見かけることはない。20世紀末にレーザー研究から開発された材料モアッサナイトもまた、ダイヤモンド類似石として出回りつつある。

ダイヤモンド類似石はその物理的諸特性、具体的には硬度屈折率複屈折熱伝導率などが本物のダイヤモンドと異なるため、鉱物学者宝石商は主には目視検査で、あるいは適切な測定機器を用いてその真贋を見分けられる。

また水晶などダイヤモンドとは全く組成が異なる鉱物を指して「○○ダイヤモンド」(○○には産地名などが入る)などと呼ぶことがある。こうした名称はフォールス・ネーム(false name)またはフェイク・ジェムストーン(fake gemstone)といい、販売業者が値を吊り上げるなど、手前の都合良いよう勝手にこじつけただけのものである。紛らわしいので、現在はまともな宝石店、ジュエリー・ショップではその使用を避けている。


諸特性の許容値とその差異[編集]

ダイヤモンドが有する特性については、「ダイヤモンドの物質特性」を参照されたい。

当然ながらダイヤモンド類似石に使用する石は、ダイヤモンドのような物理・化学的諸特性を有する必要があることが考えられる[要出典]。たとえその特性がダイヤモンドに極めて類似している最先端の人工ダイヤモンド類似石であっても、明らかに模造品だとわかる一つの、ないしは複数の特徴を有しており、ダイヤモンドに精通した専門家であれば、そういった特徴から類似石とダイヤモンドとの見極めができる。宝石学において重要なのは、そうした特徴のうち、とくに非破壊検査により判定できるものであり、その多くは自然光下において視覚的に認識できるものである。非破壊検査が好ましいとされるのは、真贋を見極めたい石の多くはすでにカットされ、台に据え付けられなどしてジュエリーに組み込まれているからで、破壊検査(その多くは硬度や耐久性を測る)で傷がついた場合(真のダイヤモンドであればふつう傷はつかない)、例えその石がダイヤモンドではない真っ赤な偽物であっても、骨董的、美術的といった別の価値があるわけで、その所有者にとっては傷物にされたという受け入れ難い結果になってしまうからである。

ダイヤモンドとダイヤモンド類似石の比較対照できる特性の一部を以下に示す。

硬度と比重[編集]

モース硬度は引っかき傷に対する抵抗性で示される非線形鉱物硬度指標である。ダイヤモンドは、天然石としてはこの指標において最高位の10にランクされている(人工物としてはダイヤモンド・ナノロッド凝集体など、ダイヤモンドより高い値を示す超硬度材料がある)。それゆえにダイヤモンドはダイヤモンドを用いた場合を除いてその研磨が非常に困難であり、宝石として通例傷がつくことはない。ダイヤモンドがとてつもなく硬いことは、語源となったギリシャ語のアダマントという形容詞からわかるように、丁寧にファセット・カットされたその光沢面をルーペや顕微鏡下で見れば、平面は傷一つなく滑らかで、エッジ(角)にも磨耗一つ見られず鋭敏であることが視覚的に明白に確認できる。この性質は当然ダイヤモンド類似石にも要求され、ダイヤモンド類似石に用いられる素材は他の宝石よりずっと硬いのではあるが、さすがに本物にははるかに及ばず、それゆえ表面の傷やエッジの磨耗の有無から区別できる。

ごく最近まで「窓ガラス検査」と呼ばれる判別法がダイヤモンドの真贋を見極めるのに妥当な方法であると一般的には考えられていた。これは破壊検査の一種で、検査対象石で窓ガラスをこすって傷の有無を見るものである。石が本物であれば窓ガラスにだけ傷がつき、石のほうには傷がつかない。通常のガラスの代わりにサファイアガラス(コランダム、モース硬度9)製の板を用いることもある。だが、この方法は以下に示した3つの理由からお勧めできない。まず、ガラスの硬度はふつう6あたりでかなり低く(サファイアガラスは9で相当硬いが)、多くの鉱物(ダイヤモンド類似石に用いられるものも多数含まれる)はこれよりは高い硬度値を示す。次に、ダイヤモンドは結晶構造上四方向のへき開面を有しており、これらの面に沿って力を加えると簡単に割れてしまう。すなわち、場合によっては検査の過程で砕けてしまう可能性が否めない。最後に、多くのジュエリーに組み込まれた《ダイヤモンドかもしれない石》は、その真贋とは別にそれなりの価値があるとされており、万一傷などついたらその価値を損なうからである。

宝石用ダイヤモンドの比重もしくは密度は3.52で、ほぼこの値から外れない。ほとんどのダイヤモンド類似石はこれよりずっと重いか、あるいは若干軽いため、裸石の場合はこの差を利用して簡単に真贋を見極めることができる。ジヨードメタンのような比重値の高い液体がこの目的のために使用されるが、こうした液体は強い性を有するのでこの鑑定法はあまり用いられない。より実用的な方法は、対象石の各パラメータを測定し、想定される容積値や重量値と比較する方法である。一例を挙げると、キュービックジルコニア(比重5.6-6)は、同サイズの本物のダイヤモンドに比較して、1.7倍ほどの重量になる。

光学特性と色[編集]

ダイヤモンドは通常、そのきらめき(ブリリアント)を引き出すためブリリアントカットが施される。ブリリアントとは、石に入射した光が全て石の底面で反射し白く輝くことであり、それに加え色のカラフルな光の明滅(ファイアと呼ばれる)を見せる。この2段階にわたる光の芸術は石に施されたカットによるものだが、カットでそうなるのはダイヤモンドが2.417(ナトリウムのD線波長589.3nm下において)という高い屈折率と0.044(ナトリウム光のB線~G線間の測定)という、(白色光を七色に分光できるレベルの)高い分散値を有するからである。であるから、ダイヤモンド類似石の屈折率と分散値が本物のそれより著しく低ければ、輝きが鈍って見える、あるいは「死んでる」といった表現が似合うかもしれない。逆に屈折率と分散値が本物のそれより高すぎれば、どこかまがまがしく輝き、美しいというよりむしろしつこいと感じるだろう。

要出典範囲|類似石のうち、ダイヤモンドにかなり近い屈折率と分散値を有する石はほとんどなく、それらの値がかなり近い石であっても、高度な経験を持つ職人が見分ける場合がある。最近では、ダイヤモンドの屈折率と非常に近い値を持つチタン酸バリウムキュービックジルコニアなどの模造ダイヤモンドが世に出回るようになってきており、これらは屈折率がダイヤモンドと非常に近いために、ブリリアンカットを施すと肉眼で見分けることは困難である[2]

なお、屈折率分散値を直接測定するのはあまり意味がない。というのも、ごくふつうに出回っている宝石用屈折計は測定可能な上限値が1.81までとなっているからである。だが、メーカーの中には赤外線をどれだけ反射するかを測定することで、間接的に石の屈折率を測定する反射率計を考案したところもある。

光学特性もまた重要な要素である。ダイヤモンド及び等軸晶系(一部ガラスのようなアモルファス材料を含む)の石は等方性、つまり媒質内に入射した光は結晶の向きに依存せず、同じ振る舞いを見せる性質を有している。対するに、多くの石は異方性を有しており、複屈折という、光軸を除いたあらゆる方向から入射した光が2方向に分光される性質を示す。複屈折はたいがい肉眼で検知可能で、複屈折を有する石は背面ファセットの稜線や内包物が二重に見える。

ダイヤモンドは、UV-A (365nm) 光下において、青、黄、緑、藤色、赤など様々な強い蛍光を発する。ほとんどの場合蛍光は青であるが、そうした石は黄色い燐光も発する。これらは宝石の種ごとに特有の組み合わせであると考えられている。多くのダイヤモンド類似石とは対照的に、本物はUV-C光下においては通例ほとんど蛍光しない。同様に、ダイヤモンド類似石の多くが人工合成石であるので、その光学特性も似通ったものになってしまう。ダイヤモンドをたくさん付けた指輪があるとすれば、その石それぞれが色や強さなどにおいて、異なった蛍光を発するのがふつうである。どの石も同じような蛍光を発するのであれば、それらはダイヤモンドではない可能性が高い。

無色とされるダイヤモンドの多くは、実際にはわずかに黄ばみ、もしくは茶色味を帯びている一方で、ダイヤモンド類似石はダイヤモンドのカラー用語でいうところの“D”クラス、つまり本物でも滅多にお目にかかれない完全に無色透明の石がごく普通に見られる。ゆえに、この手のあまりにも旨過ぎる話にはくれぐれもご用心すべきである。でも、と、なると、ファンシーダイヤモンド(無色透明~薄い黄色・茶色ではない、色の付いたダイヤモンド、カラーダイヤモンド)の偽物と本物の判別は一層難しいように思われるのだが、ダイヤモンド類似石で出せる色はほとんどが似せているだけである。無色透明も含めた多くのダイヤモンドを直視型分光器で観察すると415nm帯に特徴的な暗線スペクトルというものが見られる。人工合成された類似石にはしばしば不純物、具体的には希土類元素が意図的に混ぜられており、それらは本物には出るはずのない暗線スペクトルになって現れる。

本物のダイヤモンドにはしばしばその内外部に欠陥やゴミが見られ、その多くは格子欠陥と他の固体鉱物結晶である。人工合成石には欠陥やゴミがまったく見られず、例えあったとしてもそれは製造過程で紛れ込んだ、いわば製造工程上の特徴といったものである。天然の類似石にとりわけよく見られる欠陥は、本物のダイヤではほとんど観察されない羽毛状の液体である。ダイヤモンドのカットでは、しばしば原石の結晶面をそのまま残しておく場合がある。こうした面はナチュラルと呼ばれ、ふつうカット名称でいうところのガードル部分がそれに当たる。そういった場所にはトリゴン(又はトライゴン、trigon)と呼ばれる逆三角形の窪みが見られるが、これは格子欠陥に由来すると言われており、こういった印は本物のダイヤモンドにしか見られない[3]

熱および電気的特性[編集]

ダイヤモンドの熱伝導率はずば抜けて高く、ゆえにダイヤモンドは熱に関しては導体なのだが、電気的にはふつう絶縁体である。前者の特性はダイヤモンド熱慣性テスターの鑑定原理に利用されている。こうしたテスターはバッテリー駆動の二本のサーミスタに細い銅線をつないで作られている。サーミスタの一方は加熱装置として稼動し、もう一方で銅線の温度を測定する。被試験石が本物のダイヤモンドであれば、銅線の温度が劇的に下がることが観察できる。だがしかしほとんどのダイヤモンド類似石は熱に関しては絶縁体なので、そうはならない。この検査は2~3秒で済む。唯一の例外はモアッサナイトで、この石の熱伝導はダイヤモンドのそれに似る。古いテスタだとモアッサナイトに騙される可能性は否定できないが、最新の熱慣性テスターは、この2種を区別できるまでに改良されている。最後に開発されたのがナノダイヤモンドコートで、その名の通り、とても薄いナノレベルのダイヤモンドの膜を素材の上に設けたものである。こればかりはきちんと検査しないと、その反応が本物のダイヤモンドと同じなので騙されることになる。

ダイヤモンドの電気伝導に関しては、グレーから青を呈する石に関してしか明らかにはされていない。というのも、こうした色は結晶中のホウ素による発色であり、ゆえにこの色を帯びるダイヤモンドは半導体だからである。だから青いダイヤモンドに関しては、その上でちゃんと電気回路を構成できるのであれば、本物であると断言できよう[要出典]

ダイヤモンドとその類似石のまとめ[編集]

ダイヤモンドとその類似石の鉱物特性[編集]

材料 組成化学式 屈折率
589.3 nm
分散
431 - 687 nm
モース硬度 密度
(g/cm3)
熱伝導率 類似石として
の流通期間
ダイヤモンド C 2.417 0.044 10 3.52 1476 -
人工合成材料
ガラス SiO2Pb, Alまたは Tl ~ 1.6 > 0.020 < 6 2.4 - 4.2 1700 -
無色サファイア Al2O3 1.762 - 1.770 0.018 9 3.97 1900 - 1947
スピネル MgO・Al2O3 1.727 0.020 8 ~ 3.6 1920 - 1947
ルチル TiO2 2.62 - 2.9 0.33 ~ 6 4.25 1947 - 1955
チタン酸ストロンチウム SrTiO3 2.41 0.19 5.5 5.13 1955 - 1970
YAG Y3Al5O12 1.83 0.028 8.25 4.55 - 4.65 1970 - 1975
GGG Gd3Ga5O12 1.97 0.045 7 7.02 1973 - 1975
CZ ZrO2(+希土類元素) ~ 2.2 ~ 0.06 ~ 8.3 ~ 5.7 1976 -
モアッサナイト SiC 2.648 - 2.691 0.104 8.5 - 9.25 3.2 1998 -
天然産素材
水晶/石英 SiO2 1.543 - 1.554 7 - 2.50 - 2.65 古代から
ゴシェナイト Be3Al2Si6O18 1.577 - 1.583 7.5 2.7
トパーズ Al2F2SiO4
Al2(OH)2SiO4
1.62 - 1.63 0.014 8 - 3.50 - 3.57
ジルコン ZrSiO4 1.93 - 1.98 0.039 7.5 3.9 - 4.7 2000年前から
灰重石 CaWO4 1.92 - 1.94 0.026 4.5 - 5.5 5.9 - 6.1
白鉛鉱 PbCO3 1.804 - 2.078 0.051 3.5 6.51
閃亜鉛鉱 ZnS(FeS) 2.37 0.156 3.5 - 4 3.9 - 4.1
ツァボライト Ca3Al2(SiO4)3 1.74 0.027 6.5 - 7.5 3.1 - 4.3 1967 -
デマントイド Ca3Fe3+2(SiO4)3 1.89 0.057 6.5 - 7.5 3.1 - 4.3 1868 -

屈折率は、等軸晶系についてはそのまま、その他については複屈折を織り込んだ2値の平均を記している。

ダイヤモンドで終わるフォールス・ネーム[編集]

この石が元々ウラル山脈に産し、ガーネットにしては屈折率が高いことから。
オクシデンタルは「西洋の」と云う意味なので西洋のダイヤモンドと呼ばれることも[4]
コーニッシュは「コーンウォールの」と云う意味だが何ら関係ない。
  • サクソン・ダイヤモンド - トパーズ
  • シベリア・ダイヤモンド - 無色トルマリン
  • シミリ・ダイヤモンド - 水晶またはガラス
  • スラブ・ダイヤモンド - 無色トパーズ
  • ハーキマー・ダイヤモンド - アメリカはニューヨーク州ハーキマー郡で採れる透明度の高い水晶。
フォールス・ネームの使用は誤解を招くので避けられているのだが、これだけは例外でミネラル・ショップなどでよく使われている。
  • バクストン・ダイヤモンド - イギリスはバクストンで採れる水晶。
  • ハワイアン・ダイヤモンド - 水晶またはペリドット
  • ブラジリアン・ダイヤモンド - ブラジル産水晶
  • ブリストル・ダイヤモンド - コーニッシュ・ダイヤモンドに同じ[4]
ブリストルはイギリス中部の都市だが全く関係ない。
  • ペラム・ダイヤモンド - 水晶[4]
  • ペンシルバニア・ダイヤモンド - アメリカはペンシルベニア州産黄鉄鉱
  • ボヘミアン・ダイヤモンド - 水晶
  • マタラ・ダイヤモンド - スリランカ産無色ジルコン
  • マリ・ダイヤモンド - インド製の水晶ネックレス[4]
  • モーゴク・ダイヤモンド - ミャンマーはモーゴク鉱山産無色トパーズ
  • 夜のダイヤモンド - ペリドット
夜間もその輝きが衰えず、昼と同程度であり冴えわたっていることから。
  • ライン・ダイヤモンド - ゴシェナイト(無色の緑柱石)、またはラインストーン(ガラス等で作られた模造ダイヤモンド)
  • ラジウム・ダイヤモンド - 煙水晶
  • ラングーン・ダイヤモンド - ミャンマー産ジルコン
  • レイク・ジョージ・ダイヤモンド - ニューヨーク州レイク・ジョージで採れる水晶[4]
  • レインボー・ダイヤモンド - 合成ルチル
ダイヤモンドより高い屈折率を示し、ファイアが虹色に見えるところから。
  • ワイト島のダイヤモンド - コーニッシュ・ダイヤモンド、ブリストル・ダイヤモンドに同じ[4]
ワイト島は英仏海峡に浮かぶ小島だが、何の関わりもない。

人工合成された類似石[編集]

ダイヤモンドに似せた石を人工的に合成する行為は百年以上にわたって行われ続けてきており、こうしたダイヤモンド類似石が示す諸特性値は、技術の進歩により新しく登場したものほど、本物のそれにだんだんと近づいてきている。こうしたダイヤモンド類似石のほとんどは出現した時期ごとにそれぞれ特徴があり、一時的、または継続的に大量生産されることで今日の宝石業界においてもなお、様々な頻度で出現し続けている。これらはもともと先端技術での使用を念頭において開発されたものであり、そうしたハイテクにはレーザーの発振用媒質、バリスタ磁気バブルメモリなどがある。現在では生産量がきわめて限られるため、古いタイプの類似石を入手するためコレクターはプレミアを支払わねばならないときもある。

18世紀以降[編集]

ガラスにアルミナタリウムを混入して屈折率と分散を高める製造法はバロック後期から行われるようになった。こうして製造されたガラスはますます光り輝くようになり、新たにカットすれば驚くほど見事なダイヤモンド類似石になりえた。ラインストーン、ペースト、ストラスといった名で知られたこの種のちゃちな類似石は、アンティーク・ジュエリーの世界ではごくふつうに用いられている。よってこの種の石については、ジュエリー自体に骨董的価値がある場合もありえるので、ガラスだからといって資産価値が著しく落ちるとは限らない。有鉛化によりガラスが柔らかくなった(モース硬度6以下)ことで、ラインストーンのファセット(カット)面やその縁はより早く丸められ、傷つけられる。それとともに貝殻状断口、気泡、鋳型の継ぎ目といった特徴が中倍率程度で見つけられるため、ガラス製イミテーションの鑑定は容易である。近代になるとカットではなく成型による模造がごく一般的となったが、ファセット面は凸凹で、縁は相変わらずすぐに丸まってしまう。さらには鋳型に入れられた際についた傷や線が見られる。張り合わせ石など、ガラスは他の素材と組み合わされイミテーションに用いられることもある。

1900年 - 1947年[編集]

数あるダイヤモンド類似石のうち、最初に人造合成結晶として登場したのは無色の合成サファイア(Al2O3、コランダム単結晶)と合成スピネル(MgO・Al2O3、二アルミニウムマグネシウム四酸化物単結晶)である。この2つは、20世紀最初の10年にベルヌーイ法(火炎溶融法)によりかなりの量が製造された。もっとも、スピネルは1920年代になるまで特にこれといった使い途はなかったのだが。ベルヌーイ法では、逆さにした酸水素ガス吹管を内部に有した装置を用い、その吹管中に精製した原料粉と酸素を注ぐ。原料粉は酸水素炎中を落下しながら融け、ゆっくり回転する台座に堆積する。台座は常に炎をくぐりぬけた直下の位置に堆積物の頂上を据えるように、ゆっくりとその高さが調整される。数時間をかけて溶融粉末は冷却され、円柱状単結晶もしくはブールと呼ばれる塊の結晶に成長する。この製造法は経済的であり、最大径9cmまでの結晶を焼成できる。現在では、ブールはさらにチョクラルスキー法で数キログラムの大きさにまで成長させることができる。

サファイアスピネルは安定した鉱物(モース硬度はそれぞれ9と8)であり、光沢も見事なものだが、本物のダイヤモンドと比較した場合、屈折率がぐっと劣る(サファイアは1.762-1.770、スピネルは1.727)ため、カットを施してもどこか生き生きとしない(サファイアはまた三方晶系であるため複屈折が見られ、真贋の別が容易)。屈折率が低いということは分散値もまた低い(それぞれ0.018、0.020)わけで、ゆえにブリリアント・カットを施してもダイヤモンドのようなファイアは見られない。にもかかわらず、合成サファイアや合成スピネルは1920年代から1940年代後期にかけてダイヤモンドのイミテーションに広く用いられた。この2つはまた他の素材と組み合わされイミテーションに用いられることもあった。合成サファイアにはダイヤモンデッテ (Diamondette)「ダイヤモンダイト」(Diamondite)「ジュラードダイヤモンド」(Jourado Diamond)「スリリアント」(Thrilliant)、合成スピネルには「コルンドライト」(Corundolite)「ラスタージェム」(Lustergem)「マグラクス」(Magalux)「ラディアント」(Radiant) といった流通名が付けられた。

1947年 - 1970年[編集]

光学上の欠点が改善された最初のダイヤモンド類似石は合成ルチル(TiO2二酸化チタン単結晶)である。1947-48年ごろから用いられはじめた合成ルチルは、まばゆいばかりの光に溢れた石であった。いや、光り過ぎていた、と、言うべきかもしれない。合成ルチルの屈折率と分散値(2.8と0.33)は、本物のダイヤモンドのそれをはるかに越えているため、結果として生じるきらめきは目映いばかりの虹色を呈し、オパールではないかとすら思えてくる。合成ルチルはまた複屈折を示す。これはカットテーブルを光軸に垂直にした場合、表には出ない特性だが、それがわずかでもずれると背面ファセットの稜線が二重に映ることであからさまになる。こうして合成ルチルは一時はかなりもてはやされたものの、色が若干黄ばんで見えるのがどうやっても改善できなかったので、次第に用いられなくなってくる。しかしながら、合成ルチルは様々な金属酸化物を不純物として混入させることにより、青や赤といった幅広い色石を得ることが可能である。こういった色石や無色に近い石は、それまでになかった石としてたいへんに人気を博したのだが、この石はモース硬度も6以下と低くて傷つきやすく、おまけにかなり脆いので、次第に身に付けられることもなくなりやがて消えていった。この素材は第3の酸素パイプを設けたトリコーンバーナという発明を採用した改良ベルヌーイ法により合成された。チタンの焼成にはさらに多量の酸素を必要とするため、単結晶の生成にはこういった工夫が必要だったのである。この技術はCharles H. Moore, Jr.によりニュージャージー州サウスアンボイに位置するナショナルリード(後のN.L.インダストリ)により発明された。合成ルチルの製造はナショナルリードとユニオンカーバイドの2社でほぼ独占され、ピーク時の年間生産量は750,000カラット (150kg) に達した。合成ルチルには多くの流通名が付けられている。例を挙げれば「アストリル」 (Astryl) 「ダイヤモティスト」 (Diamothyst) 「ジャワゲム」 (Gava or Java Gem) 「メレディス」 (Meredith) 「ミリディス」 (Miridis) 「レインボー(マジック)ダイヤモンド」 (Rainbow (Magic) Diamond) 「ルタニア」 (Rutania) 「チタンジェム」 (Titangem) 「チタニア」 (Titania) 「アルティメット」(Ultamite) などなど。

天然産のタウソン石は上の写真のように宝石にはならない。

ナショナルリードはまた別のチタン化合物に目をつけ、その合成法を研究した結果リリースされたのがチタン酸ストロンチウム(SrTiO3タウソン石単結晶)である。この研究は1940年代の終わり頃から1950年初頭にかけ Leon Merker と Langtry E. Lynd の二人により、またもやトリコーンバーナを採用した改良ベルヌーイ法を用いて行われた。1955年にチタン酸ストロンチウムが市場に導入されると、それまでイミテーションダイヤモンドの市場を席巻していた合成ルチルにたちまちとって変わった。これはチタン酸ストロンチウムが目新しかっただけではなく、その光学的特性がダイヤモンドにきわめて近く(屈折率は2.41、分散値は0.19)、合成ルチルのけばけばしい極彩色の外観をかなり改善できたためである。合成ルチルと同じ不純物を混入させることにより、黄色、オレンジ、赤、青、黒といった色石も得られた。本物のダイヤモンドと同じく等軸晶系なので複屈折もなく、合成ルチルのようにファセットの稜線が二重に見えることもない。

チタン酸ストロンチウムの唯一にして最大の欠点は、焼成温度がかなりの高温になる点を除けば、耐久性に乏しい点である。モース硬度は5.5と傷つき易く、合成ルチルよりずっと脆い。それゆえチタン酸ストロンチウムと、安定した他の素材を組み合わせたダブレットが作成されたりもした。そういう欠点を抱えてはいたが、この時点では最良のダイヤモンド類似石であったので、ピーク時の年間生産量は150万カラット (300kg) に達した。製法特許の関係からアメリカ合衆国内ではナショナルリードの一社独占で製造され、海外では日本の中住結晶ラボラトリー[注 2]で製造された。チタン酸ストロンチウムには「ブリリアンテ」(Brilliante)「ダイヤジェム」(Diagem)「ダイアモンティア」(Diamontina)「ファブライテ」(Fabulite)「マーベライト」(Marvelite) といった流通名が与えられた。

1970年 - 1976年[編集]

1970年ごろから、チタン酸ストロンチウムは合成ガーネットとでもいうべき新しい部類のダイヤモンド類似石に置き換えられてゆく。これらはほんとうの意味でガーネットとは言えない。というのも、天然ガーネットはそのどれもがケイ酸塩鉱物であるが、これらは組成にケイ素を含まないのでむしろ酸化物だからである。だが天然ガーネットと同じ結晶構造(等軸晶系)を有し、一般的な化学構造式はA3B2C3O12で表される。天然ガーネットではCは常にケイ素であり、A、Bには地表にありふれた金属元素数種が入る。でも合成ガーネットではそのいずれにも、あるいは一方にあまり馴染みのない希土類元素が入る。これらはラインストーンをのぞき、天然に相当する鉱物が見当たらない唯一のダイヤモンド類似石である。宝石学的には、これらは合成宝石というより人工宝石と呼ぶ方がふさわしい。なぜなら、合成という単語には、自然界にもあるものを人手で組上げる、という意味を含ませてあるからである。

人工ガーネットは何種類も人工合成されたが、実際にダイヤモンド類似石として流通したのは2種だけ。1種は1960年代終わり頃に登場したイットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12、ヤグ (YAG))である。これらは溶融から結晶生長までチョクラルスキー法、別名結晶引き上げ法により製造され、現在も同法で製造されている。不活性ガスで満たされた空間にイリジウム製のるつぼを置き、中には酸化イットリウム酸化アルミニウムを入れ約1,980℃を保つよう注意深く温度を制御し、溶かして混ぜ合わせる。竿(ロッド)の先に小さな種結晶が取り付けられ、るつぼ内の溶融液表面に種結晶が接触するまで下げられる。そうすると種結晶の下に溶融液物がつくわけで、このとき液表面の温度は融点ぴったりから下になるよう温度管理をしっかりせねばならない。ロッドはその間ずっと回転させながら慎重に引き上げられ、るつぼ内の溶融液は徐々に円柱状のブール結晶へと析出し、同時に成長してゆくわけである。結晶の純度はかなり高く、一度に5cm高、径20cmの結晶9,000カラット (1.75kg) をつくれる。

YAGの今日の主な使用目的はレーザー光の発振媒質である。

YAGのモース硬度は8.25と高く、脆くないのもチタン酸ストロンチウムから大きく改善された点だといえる。一方で屈折率は1.83、分散値は0.028とかなり低いが、ブリリアントカットを施してもはっきりしたファイアが確認でき、輝き具合もよかった。繰り返すが、屈折率と分散値はダイヤモンドのそれよりかなり低いにもかかわらず、である。不純物の添加により得られる色の数はそれこそ無数で、黄や赤、それに模造エメラルドにできるレベルの鮮やかな緑があった[注 3]。主な製造元にはミシガン州のICT、ライトンシステムズ、アライドケミカル、レイセオン、ユニオンカーバイド社などがあった。ピーク時である1972年の年間生産量は40,000,000カラット (8,000kg) もあったが、その後は急落。流通名はそれこそ無数にあるが、代表的なものは「ダイヤモニア」「ダイヤモネア」(Diamonair)「ダイヤモニーク」(Diamonique)「ジェモネア」(Gemonair)「レプリーク」(Replique)「トリアモンド」(Triamond) である。

YAG生産量の急落は、一つには市場が飽和したのがその理由だが、その一方ですぐに新たなもう1種のダイヤモンド類似石として重要な人工ガーネット、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(Gd3Ga5O12、スリージー(GGG))が登場したこともある。製造法はYAGと同じ(ただしGGGの融点は1,750℃である)で、屈折率 (1.97) はダイヤモンドにより近くなり、分散値 (0.045) もダイヤモンドにほぼ一致する。GGGはまた主な宝石と比べても十分に強靭(モース硬度は7)だったが、原料費がYAGよりかなり高くつき、太陽光もしくは紫外光の曝露により色が次第に黒ずんでくることもまたその普及を阻んだ。これは、もともとGGGが技術分野で新材料として開発されながらも結局は役立たずに終わり、宝石向けに転用された事実を意味している。また比重 (7.02) はダイヤモンド類似石、いやすべての宝石の中で最大であり、対象の大きさから、それが本物のダイヤモンドであった場合推測できる重さと、実際のそれを比較すれば簡単に見分けがつくことを意味した。相当量が製造されたYAGと異なり、GGGの製造量は1970年代を通して増えも減りもしなかった。流通名は「ダイヤモニーク2」(Diamonique II)「ガリアント」(Galliant) などである。

1976年 - 現在[編集]

製造原価が相当に安く、見た目もダイヤモンドにそこそこ似ているCZは、1976年の登場以来、宝石としても経済的にも、もっとも重要なダイヤモンド類似石として今日の地位を築いている。

1976年にダイヤモンド類似石市場に投入されたCZことキュービックジルコニア(ZrO2、二酸化ジルコニウム。ジルコンと混同せぬこと。ちなみにジルコンはZrSiO4、ケイ酸ジルコニウム)は、瞬く間に市場を席巻し、宝石としても経済的にも、もっとも重要なダイヤモンド類似石として今日の地位を築いている。CZ自体は1930年から合成されていたのだが、それはセラミックス形態としてであった。CZの単結晶を得るには、これまでのダイヤモンド類似石合成法とは異なり、どんな材料でできたるつぼを持ってきても融けてしまう高い融点 (2,750℃) をどう克服するかにあった。これを解決へと導いたのが、水冷銅管の網と、電磁誘導加熱式コイルである。後者はジルコニウム原料粉を熱し、前者は表面を冷やし、1mm厚以下のガワを形成し保持し続けるために用いられる。CZはその結晶の表面が冷却により固化することで自身がるつぼとなり、その中で結晶が成長する。この技法を冷却るつぼ法(冷却管を用いることから)、スカルるつぼ法(るつぼを兼ねた成長する結晶の形状から)などと呼ぶ。

標準気圧下においては、酸化ジルコニウムは立方晶系よりむしろ単斜晶系の結晶を形成する。立方晶系へ持ち込むには安定化剤が欠かせず、それにはふつう酸化イットリウム (III) や酸化カルシウムが用いられる。スカルるつぼ法は1960年代のフランスで開発がはじまったが、技術が完成したのは1970年初頭、旧ソ連の科学者 V. V. Osiko の手によってで、場所はモスクワレベデフ物理研究所であった。1980年には年間製造量が50,000,000カラット (1t) に達した。モース硬度 (8-8.5)、屈折率 (2.15-2.18)、等軸晶性なので複屈折もなく、何より原材料費が圧倒的に安いことでCZはダイヤモンド類似石の代名詞におさまった。CZの光学及び物理特性値にはばらつきがあるが、これは各製造業者で用いる安定化剤が異なると云う事情による。CZは化合物ではない点は重要で、それゆえCZの安定化剤は何種類もあり、安定化剤によりCZの光学的、物理的特性は劇的に変化する。ダイヤモンドに視覚的に似せたCZは、日常的にダイヤモンドを扱わない人々のほとんどを欺くのに申し分ないが、CZは通常確実にそれとわかる証拠を残す。一例を挙げると、この石はごくふつうにジュエリーとして使用するだけで傷がつくほど柔らかで脆く、石の内部にはゴミも傷も一つも見当たらず、色も完璧な無色(一方で、ほとんどのダイヤモンドは内部に若干のゴミや傷を抱えており、色も少しは黄味がかっている)。さらに比重は大きく (5.6-6)、紫外光においては特有のベージュの蛍光を発する。

宝石商のほとんどはCZではないかと思われる石を検査するため熱慣性テスターを持っているが、これはダイヤモンドの熱伝導率が群を抜いて高い事実を利用している(CZのようなダイヤモンド類似石は熱伝導に対していわゆる断熱材である)。CZはいろんな色(黄色からキツネ色、オレンジ、赤からピンク、緑、漆黒など)にでき、ファンシーダイヤモンドのイミテーションまで勤められそうだが、その多くは本物のダイヤモンドに似てすらいない。CZには耐久性を上げるため、硬質炭素膜(ダイヤモンドライクカーボン)で覆う処理がなされることがあるが、そうやっても熱慣性テスターでの検知は可能である。

CZは1998年にモアッサナイト、モアッサン石、モアサナイト(SiC、炭化ケイ素)が出回るまで事実上その競合商品はなかった。モアッサナイトはモース硬度 (8.5-9.25) と比重(CZよりずっと低い3.2)の2点においてよりダイヤモンドに近い値を示す。先の特性はダイヤモンド同様の傷一つない滑らかなファセット面を見せ、後の特性はダイヤモンドとそれに似せたモアッサナイトの区別をかなり難しくした(後者については十分に検出可能なまでの数値の違いがあるにせよ)。しかしダイヤモンドやCZと明らかに異なるのは、モアッサナイトが強い複屈折を示す点である。これは合成ルチルにも見られる酩酊複視効果を呈するのだが、モアッサナイトのそれは合成ルチルほど酷くはない。モアッサナイトは上述した特性を匿すため、どれもそのテーブルを光軸に垂直になるようカットされるのだが、高倍率下において、わずかでも傾いた方角から見れば、ファセット背面の稜線(あるいは石の内包物)が二重に見えることで簡単に見破れる。

カットされ指輪になったモアッサナイト

モアッサナイト内部に見られる内包物もまた特徴的で、そのほとんどは細くて白く互いに平行なチューブ、もしくは針であり、石のテーブル面に対して垂直である。こうした平行チューブは、処理済みダイヤモンドにしばしば見られる、結晶内に混入した石墨をレーザーで焼いた痕に間違えられることがある。だが、モアッサナイト内部にあるこうしたチューブは、複屈折のおかげで顕著に二重に見える。この点も合成ルチルと似るのだが、現在製造されているモアッサナイトは、通例緑褐色がかったその色が抜けきれずに悩まされている。宝石質のモアッサナイトを製造できるのは、いまのところチャールズ&コルバードの1社のみである。また製造原価がCZの120倍にもなることも、普及を妨げているが、それでも本物のダイヤモンドよりははるかに安いのでモアッサナイトダイヤモンドなどと称して本物のダイヤモンド並みの値段を付け売りつける悪徳宝石商もいる。

天然のダイヤモンド類似石[編集]

天然鉱物で無色のダイヤモンドの代用品になるものは希である。というのも、天然の鉱物にはどうしても微量な不純物が混じって、その効果として色が付いてしまうからだ。最古のダイヤモンド類似石は石英(二酸化ケイ素の一形態、黒曜石、天然ガラス、ケイ砂といった形態になることも)、水晶(二酸化ケイ素の結晶)、トパーズ緑柱石(ゴシェナイト)である。これらは比較的ありふれている鉱物で、モース硬度もそこそこ (7-8) ある。だが屈折率が著しく低く、それに対応して分散もまた乏しい。しばしば「ダイヤモンド」の名を付けられ流通する非常に透明度が高い良質の水晶に、ニューヨーク州ハーキマー郡で産出される、いわゆる「ハーキマー・ダイヤモンド」がある。このほか、トパーズの比重 (3.50-3.57) はダイヤモンドのそれに収まる。

ジルコン[編集]

歴史的に見れば、もっとも注目すべき天然ダイヤモンド類似石はジルコンである。これは相当に硬く(モース硬度7.5)もあるが、もっと重要なのは高い分散値 (0.039) を有しており、カットすることでかなりのファイアが見られることである。無色透明のジルコンはスリランカで2,000年前から採掘されている。現代のように鉱物学が発展する以前は、無色透明のジルコンは成長一歩手前のダイヤモンドであると信じられ、産地名から「マタラ・ダイヤモンド」と呼ばれていた。ジルコンは今でもダイヤモンド類似石としてたびたび市場に出ることがあるが、異方性であり強い複屈折 (0.059) が見られる点から簡単に区別できる。またかなり脆弱なことでも有名で、ガードルファセットの稜線に磨耗がよく見られることでもわかる。

マニア向け珍品[編集]

無色のジルコンほどではないが、無色透明の灰重石(タングステン鉱)もまた天然ダイヤモンド類似石の一つである。分散値 (0.026) は高く、模倣ダイヤモンドに用いられるだけの値を示すものの光沢が強すぎ、またモース硬度 (4.5-5.5) があまりに低すぎて、良質な研磨が出来ない。光学的には異方性で複屈折を有し、さらに比重がかなり大きい (5.9-6.1)。チョクラスキー法で人工合成された灰重石もあるが、それがダイヤモンド類似石に用いられることはほとんどない。宝石質の天然灰重石がほとんど産しないだけに、人工合成灰重石は、ダイヤモンドよりむしろ天然灰重石のニセモノとして出回る。似たようなケースに斜方晶系の白鉛鉱炭酸鉛)がある。この石はとてつもなく壊れやすく(4方向のへき開面に対して脆い)、さらには柔らかい(モース硬度3.5)のでジュエリーに使用される例はまずない。カットがとても難しく、宝石コレクションに並んでいるのをたまに見かける程度である。宝石質の白鉛鉱は、高い屈折率 (1.804-2.078) と分散値 (0.051) からダイヤモンド光沢を呈し、宝石マニアには珍品として高い評価があるからだ。でも、その柔らかさとは別に高い比重 (6.51) や異方性から来る高い複屈折率 (0.271) からも簡単に見分けがつく。

ファンシーダイヤモンドの類似石[編集]

珍品と言われるファンシー(カラー)ダイヤモンドにも類似石が存在し、ジルコンがその目的に用いられることもある。茶色いジルコンを高温に加熱すると、鮮やかな色に変わることがあるからだ。中でもスカイブルー、ゴールデンイエロー、赤がよく見られる。ブルージルコンが一番多いが、この色は決して安定しておらず、長期間紫外光(太陽光に含まれる紫外線帯)に曝すことで褪色する。加熱処理はまたジルコンの結晶構造を変化させるので石は脆くなり、また特徴的な内包物が出る。

それとは別のファンシーダイヤモンド類似石は閃亜鉛鉱であるが、この石も相当に脆い。宝石質の石はたいていべっこう色からハニーブラウン、オレンジ、赤、緑といった色が着いている。高い屈折率 (2.37) と分散値 (0.156) から、宝石としてまこと見事な光沢とファイアを呈し、等軸晶系なので複屈折も見られない。でもしかし、この石もまた硬度が低く (2.5-4)、正十二面体の各面に沿ったへき開面を有しており、ジュエリーとして利用されない。二つのカルシウム含有ガーネット、グロッシュラー(灰礬柘榴石)(通常茶色がかったオレンジ、希に無色透明、黄、緑、ピンク)とアンダライト(灰鉄柘榴石)のがずっと適任である。後者は(大まかに分けると6種類ある)ガーネットのうちもっとも希少であり、それだけに価値もある。その色変わりの3つ、トパゾナイト(黄)、メラナイト(黒)、デマントイド(緑)はときおりジュエリーに用いられる。とりわけデマントイドは文字通り「ダイヤモンドに似た」という意味で、1868年ウラル山脈での発見以降珍重されてきた。この石(の使用)はロシアのアンティーク及びアールヌーボージュエリーの特徴として注目される。チタン石、別名スフェーンもアンティークジュエリーではよく見かける。これは濃淡のある黄緑色を呈し、光沢があり屈折率 (1.885-2.050) と分散値 (0.051) もダイヤモンドに見紛うだけ十分に高い。ダメなところは異方性である (0.105-0.135と複屈折率が高い)点と、傷が付きやすい点(モース硬度5.5)。

1960年代に発見された深い緑色のツァボライトは、グロッシュラーの色変わりの1つで、これも人気が高い。グロッシュラーもアンダライトも等軸晶系であり、比較的高い屈折率(各々1.74、1.89)と分散値 (0.027、0.057) を有しており、デマントイドについてはダイヤモンドの値を超えている。しかしながら硬度は低く (6.5-7.5)、ダイヤモンドではまず見られない内包物が見られる。デマントイド中には通称ホーステイルと呼ばれる石綿状の緑閃石が見られるが、これなど顕著な一例である。さらには、そのほとんどが結晶が小さく、ふつうは重量0.5カラット (100mg) 以下である。その光沢はガラス質からダイヤモンドに準じたもの、通常漆黒のメラナイトに見られる金属質まで様々で、メラナイトはそれゆえブラックダイヤモンドの類似石に使用されることがある。天然のブラックスピネルにも、往々にしてこの用途に適する十分に黒いものがある。

ダブレットほか[編集]

チタン酸ストロンチウムとガラスは指輪に用いるにはあまりに傷つきやすいので、他の素材と組み合わせた張り合わせ石と呼ばれるダイヤモンド類似石に用いられた。上記の2素材は宝石下部(パビリオン)に使用され、チタン酸ストロンチウムの場合、ずっと硬い素材、ふつうは無色透明のスピネルやサファイアをその上(クラウン)に載せる[注 4]。ガラスの張り合わせ石では、宝石上部にはアルマンダイン(鉄礬柘榴石)が置かれる。アルマンダインは色石だが、石全体の色を変えない程度にまで、とても薄くスライスしてある。ダイヤモンドの上にダイヤモンドを張った石すら存在したと云う報告があるが、どうもその小細工を思いついた人は、小さな二つの石を張り合わせ、一つの大きな石を得ようと企んだらしい。

チタン酸ストロンチウムやダイヤモンドそのものを使用した張り合わせ石には、上部と下部を接着させるのにエポキシ樹脂が用いられる。だがエポキシ樹脂は紫外線光下で蛍光を発し、また石の辺縁にはみ出している可能性もありえる。ガーネットを載せたガラスの張り合わせ石は物理的に融合するのだが、それも含め、その他のタイプの張り合わせ石も通例接合部に潰れた気泡が見られる。またどう接合しても、結合線は容易にわかってしまう。それらは通例ガードルの直上または直下に見られ、アングルに見られるときもあるが、ガードルそのものが結合線になるのは希である。

もっとも最近の手のこんだダイヤモンド類似石には、CZを核にし実験室で表面にアモルファスダイヤモンドの皮膜を着せたものがある。この発想は養殖真珠の構造[注 5]をダイヤモンドに持ち込んだものである。

注・出典[編集]

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  1. ^ 「ダブレット」「トリプレット」などと呼ばれる。
  2. ^ 経営者の高齢化に伴い2008年に廃業。会社も清算された。
  3. ^ 色つきのYAGは2011年現在もさまざまな色石の類似石に使用されている。
  4. ^ サファイアを使用した石はレーザージェム、スピネルを使用した石はニフティジェムの流通名がある。
  5. ^ 養殖真珠はビーズの核を貝に入れ、表面に薄い真珠層を着せる。

出典[編集]

  1. ^ a b c 社団法人日本ジュエリー協会サイト内「宝石とは.宝石の知識」
  2. ^ トーメイダイヤ株式会社「模造ダイヤモンドの見分け方」
  3. ^ 松原聡 (2006)「ダイヤモンドの科学」, p. 68, 69. BLUE BACKS; 株式会社講談社 ISBN 4-06-257517-5
  4. ^ a b c d e f g h 春山行夫 (1989-6-30). 春山行夫の博物誌IV宝石1. 平凡社. pp. 238.  ISBN 4-582-51217-8

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • Hall, Cally. (1994). Gemstones, p. 63, 70, 121. Eyewitness Handbooks; Kyodo Printing Co., Singapore. ISBN 0-7737-2762-0
  • Nassau, Kurt. (1980). Gems made by man, pp. 203-241. Gemological Institute of America; Santa Monica, California. ISBN 0-87311-016-1
  • O'Donoghue, Michael, and Joyner, Louise. (2003). Identification of gemstones, pp. 12?19. Butterworth-Heinemann, Great Britain. ISBN 0-7506-5512-7
  • Pagel-Theisen, Verena. (2001). Diamond grading ABC: The manual (9th ed.), pp. 298?313. Rubin & Son n.v.; Antwerp, Belgium. ISBN 3-9800434-6-0
  • Schadt, H. (1996). Goldsmith's art: 5000 years of jewelry and hollowware, p. 141. Arnoldsche Art Publisher; Stuttgart, New York. ISBN 3-925369-54-6
  • Webster, Robert, and Read, Peter G. (Ed.) (2000). Gems: Their sources, descriptions and identification (5th ed.), pp. 65-71. Butterworth-Heinemann, Great Britain. ISBN 0-7506-1674-1